タイトル:【BV】疑うということマスター:敦賀イコ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/13 00:37

●オープニング本文



「突然だが、グリーンランドに行ってくれないか」
 草刈正雄似の上司はナイスミドルなダンディスマイルを浮かべてロズウェル・ガーサイド(gz0252)の肩を叩いた。
 ものすごい顰めっ面で振り返ったロズウェルに怯むことなく、上司は続ける。
「ゴッドホープでうろついてくるだけの大変簡単なお仕事です」
「‥‥絶対裏があるだろ。あー、もう、拒否らねぇから正直に言ってくれ」
「ふむ、話が早くて助かる。だいぶ丸くなってきたようじゃないか」
 傭兵達と関わらせた甲斐があったな、と笑う上司の態度に舌打ちし、そっぽを向いたロズウェルに事態を説明する。

 最近、基礎行動が敵に漏れていると思わしき事態が発生している。
 一、二度程度ならば偶然で片づけられるだろうが、それが立て続けとなれば情報の漏洩を疑う他にない。

「調査のため内部監察の人間を、という話も出たのだがこの時期に『仲間』を疑うのが仕事という人間を入れるのは憚られてな」
 対象がゴッドホープの防衛戦力として派遣されたカンパネラ学園の生徒となれば尚更、と上司は続けロズウェルにニヤリと笑いかける。
「その点、君ならただのニートであることだし、ゴッドホープ内部をぷらぷらしてても警戒されるどころか特に気にされることも無かろう」
「空気よりも薄っい存在ってか?ハハハ、ブン殴りてーなーチクショー」




 寒冷地用装備の開発及び試験という名目でゴッドホープに送り込まれたロズウェルは、言いようのない閉塞感に息苦しさを覚えずにはいられなかった。

 事実、閉鎖空間にも等しいのだ。
 生物が生存するには厳しすぎる土地に、技術によって強引に造られた都市。その上、前線にあるとなれば人や物資どころか空気の出入りにさえ細心の注意を払わなければならない。
 片隅に設けられた喫煙所でロズウェルはイライラと煙草を吹かしながら、通路を行き交う人々の姿を眺めていた。
 この状況下で自分の職務を全うすべく勤しんでいる年端もゆかない少年少女の姿には頭が下がる思いがある。
 だが、その子供らを片っ端から自分は疑って行かなければならないのだ。
「恨むぜぇ‥‥」
 上司の顔を思い浮かべながらロズウェルは低く呟き乱暴に頭をかいた。

 それから数日。
 ロズウェルは一部の生徒が奇妙な行動をとっていることに気が付いた。
 大なり小なり何らかの発表が行われるたび、しきりにメモを取る生徒の姿を当初は健気なものだと感心していたが、生徒はその直後、決まって外出しているのだ。
 試しに声をかけてみても、その場ではぐらかされて生徒はふらふらと出ていってしまう。

 ゴッドホープは出入りに厳しくあったが、カンパネラ学園の生徒、傭兵には比較的自由な外出が認められていた。
 多感な時期に過酷な環境に置かれる少年少女への配慮からこの措置が取られている。

 取りためたメモを外部に持ち出し、何者かに渡しているのだとしたら、そこから情報が漏洩していることに間違いないのだが、生徒の外出を禁止するわけにも、メモを取ることを禁止するわけにも行かない。
 該当の生徒を被疑者として確保することは簡単だが、確証を得ていない現状では後に禍根を残しかねない。
 風評というものが人生にどれだけの影響を及ぼすのかをよく知るロズウェルは、途方に暮れたように殺風景な天井を見上げた。

●参加者一覧

錦織・長郎(ga8268
35歳・♂・DF
最上 空(gb3976
10歳・♀・EP
桂木菜摘(gb5985
10歳・♀・FC
海東 静馬(gb6988
29歳・♂・SN
アローン(gc0432
16歳・♂・HG
天羽 圭吾(gc0683
45歳・♂・JG

●リプレイ本文


「よぅ、ニート。情報漏洩か‥‥あっちゃならねぇことだよなぁ。重要な時期だし、情報を持ち出す目的は何なんだろうな。金でも貰ってるのか、それとも親バグアなのか、恐喝でもされているのか‥‥。共犯なのか単独犯なのか‥‥調べることは沢山あるな、ニート」
「オッス、オラ、ニート!正直いっぱいいっぱいで、クラクラしてきたぞ!」
 天羽 圭吾(gc0683)の軽いようでいて内容的には結構重い挨拶に、やけっぱちなテンションでロズウェル・ガーサイド(gz0252)が応える。初対面の人物にニート呼ばわりされても、既に開き直ったのか突っ込むこともない。
 端から見てもテンパってるのが丸わかりの様子を見かねた海東 静馬(gb6988)がロズウェルの肩を叩いて労う。
「‥‥後で、愚痴ぐらいは聞いてやるからサ‥しっかり頼むぜロズウェル?」
 励ましつつも「ニート脱却しとけ」釘を差すのは忘れない。
「ガー兄さん、お手伝いしにきましたっ。スパイさん、いなければいいですね」
 朗らかな笑顔の桂木菜摘(gb5985)は、人を疑うのは疲れることなので、これが少しの癒しになればいい、とミニメロンのキーホルダーをロズウェルに握らせる。思いも寄らない場所で向日葵のような笑顔を向けられロズウェルは相好を崩すが、つい保護者の姿を探してしまう。
「おう、ありがとさん。でもなっちゃん、どうしてここに‥」
「ととさんを説き伏せてきちゃったですよっ。あ、ととさんから手紙預かってきたですよ〜」
 どうやら彼女は『簡単な依頼』と父に伝えここまで出てきてしまったらしい。彼女の父からの手紙の内容は開けなくても判るような気がするロズウェルだった。きっと、なっちゃんが怪我とかしたら俺もう生きていけないみたいな泣き言が便箋にビッチリとしたためられているのだろう。
「‥‥あー‥無理、しないでね‥?」
「はいっ、勿論ですっ。皆さんと協力して頑張るです!」
 ぴっ、と宣誓するかのように片手を上げて元気良く応える姿に、居合わせた傭兵達は思わず顔を綻ばせた。



「まず、生徒に情報を与える。これは勿論ダミー情報だが。この情報をもって外へ出ていったヤツを抑えればって寸法だ」
 圭吾が『新しい情報』を与え、生徒達がどういった動きを見せるのか探ることを提案する。
「ふむ、抜ける棘はできるだけ一気に排除するに越したことはない」
 錦織・長郎(ga8268)が効果は高そうだと頷く。
「ごたごたを長引かせるのはかなり具合の悪い事だしね」
「はい。では、空は最近ゴットホープでは生徒同士の恋愛絡みで風紀が乱れており、その調査をしていると言う大義名分をでっち上げて情報収集したいと思います。頻繁に外出=逢い引きに違い無い=風紀の乱れ!と言う図式です」
 提案に同意しつつ、独自の方法でもってアプローチすることを宣言した最上 空(gb3976
 恋愛絡みであれば年頃の少年少女の興味も高く、ゴシップも聞き出しやすいだろうとの考えのようだ。
「俺は‥調べモンした後、出入り口辺りで張らせてもらうとするかねぇ」
「はいっ、わたしも一緒に外の監視をするですよっ」
 アローン(gc0432)は口にくわえた火のついていない煙草を上下に動かし、菜摘は元気良く手を挙げた。
「僕は内部の聞き込みを主にしよう。疑わしい二人の他にも探らなくてはなるまい」
「それじゃあ、俺はエイミア・サーズビーってお嬢ちゃんを追ってみるさ」
 続いて長郎、静馬と淀みなく自分と任務目的に合った役割を選んで行く。
「無線機はゴッドホープ内ならどこからでも使えるように調整してある。今回は特別ってことで電波使用の許可とってあるから、周波数はコレを使ってくれ」
 ロズウェルが予め用意していた無線機をそれぞれ手に取り装着すると、一通りの確認を行う。
「――さあ、エスピオナージュの時間だ。巧緻を尽くそうではないかね」
 開幕を宣言するかのように、長郎がやや芝居がかった仕草で両手を広げた。



 調査本部となった研究室にはアローンと圭吾、ロズウェルが残っていた。
 圭吾は情報端末で生徒が閲覧できる掲示板に偽の情報を書き込み、その旨を仲間達に無線で伝える。
「スパイねぇ、まったく学生の時分からいい根性してるぜ‥‥」
 アローンはシニカルな笑みを浮かべながら、もう一つの情報端末を操作していた。
 画面にはゴッドホープに派遣されているカンパネラ学園の生徒の行動記録が表示されている。エミタのメンテナンス時に収集される各種データから抽出されたものだ。個人情報と重要機密の塊であるデータだが今回はULTからの正式な調査依頼と言うことで特別に閲覧が許可された。
「一条 真一にエイミア・サーズビー、と」
 捜査対象の二人の共通点、また、他の生徒にも同じ共通点がないか表示されたデータをを注意深く目で追って行く。
 ふと、顔を上げれば「何もそこまでしなくとも」という表情丸出しのロズウェルと目が合い思わず苦笑いを零すアローン。
「‥‥連中は人間を洗脳するんだろ?もしかしたら、と思ってな」
「ニート、お前はお人好しなんだな。俺は、信じるより疑う方が楽だと思うがね‥‥」
 無線機を机に置き、ゴッドホープに赴く前に入手していた二人の身辺調査の結果書類を捲りながら、圭吾もほろ苦く笑う。
 その書類に寄れば両名共に怪しいところはない。出身地はバグア支配地域の影響をあまり受けていない場所であったし、親類縁者にバグアと接点があったこともなく、これといった不自由のない中流家庭で育ったと言うことが淡々と記されていた。
「‥‥こればっかはなぁ‥」
 性分だから仕方ねぇ、と微妙な渋面を作るロズウェルの言葉をモニターに目を向けたままのアローンが片手を上げ遮る。
「ちょっと、ここ、見てくれ」
「どうした?」
 書類の束を机の上に置き、アローンが見つめているモニターを覗き込む圭吾。その後ろからロズウェルも覗き見る。
「一条 真一とエイミア・サーズビーが同じ任務に就いてんだ。で、その日ってのが、情報が漏れ出したとされる日の前日だ」
「偶然‥だとも言い切れなんな‥‥」
 顎髭を撫でながら圭吾が唸るように呟く。
「そして同じ任務についてた生徒は‥‥この連中だ。念のため、コイツらもマークしといた方がいいな」
 抽出したデータをプリンターに印字させ、出力されたリストを一通りチェックするとアローンはそれをロズウェルに手渡した。
「仲間への連絡と、必要なら上層部へ報告ヨロシク。じゃ、俺、なっちゃんとデートしてくるわ」
 アローンは上着を肩に掛けると飄々とした歩きで部屋を出て行く。
「俺も嗅ぎ回ってくるとしますかね」
 ロズウェルが手にしたリストを眺め、内容を一通り頭に入れると圭吾は持参してきた白衣を羽織って部屋を後にした。派遣された傭兵、ではなく研究員を装っていろいろと話を聞き出すつもりであるらしい。



 空はロズウェルのツケで購入したメロンパンを囓りながら食堂で一休みしていた。
 食事は最大の娯楽である。との言に違わず、食堂は多くの学生でごった返していた。
 風紀調査の名目で聞き込みを行ったものの、はっきりと明らかになったのは昼のメロドラマも真っ青な当世の恋愛事情だった。
 そういった話題に飢えているのか、少年少女、特に少女は見た目が幼女の空に気を緩めるのか、あることないこと、事実妄想願望織り交ぜて延々と語るものだからたまったものではない。
「うむむ、このように風紀が乱れているとは‥‥」
 恋愛話に食傷気味になりながら、メロンパンをミックスジュースで押し流す空の肩を女生徒がつつく。
「空ちゃん、一条君、どこかでかけるみたいよ?」
 女生徒の指さす方向にはどこかフラフラと歩く一条 真一の姿があった。


 ここへは余り来慣れてないために勝手がわからない、といった風を装い、長郎はそつなく聞き込みを重ねて行く。
 そう長くはない時間で被疑者二名の大方の行動範囲、その範囲の地理情勢、一日の行動パターンで不意に居なくなるタイミングをも把握したのは元情報調査室の人間といったところか。目標当人らには決して接触せず、気付かせずにそこまでのことを突き止めてしまうのだから恐るべし。
 集めた情報をロズウェルに伝えながら、長郎は更に周辺の観察を重ねる。自分自身に後ろめたい事があればギクシャクした不自然な態度を取るのが明らかだとして、どんな不審も見逃すまいと鋭く周辺に目を光らせていた。


 圭吾は軽快な話術を駆使して被疑者のクラスメイトに接近し「あいつ、俺のダチの弟(妹)なんだけどさ、どうよ?」と、普段の素行や友人関係などに探りを入れていた。個人調書で兄弟・親戚等がいるかどうかは既に確認してあり、会話内容に破綻も矛盾もない。そして何より、いささかの疑わしさも感じさせないのは人生経験が豊富な故か。
 被疑者二名ともに、素行は普通、友人関係も普通。更に親友と言って良いほど深い関係にある人間がいないことが共通していた。
 他人との深い関わりを持ち、それを失うことを極度に恐れているだろうことは、容易に想像できる。
 自分も他人もいつ死ぬか判らないという情勢を如実に反映していた。
「世知辛いもんだな‥‥」


 静馬は物陰に隠れて被疑者の一人、エイミア・サーズビーの監視をしていた。
 トレードマークである煙草だが仕事中は控えている。当たり前のことのように思えるが、こういった小さな心がけがきちんと実行できるか否かは物事の結果に大きく関わってくる。
 気付かれない様に細心の注意を払いながら監視を続けるが、友人達と談笑しながら歩いているエイミアは普通の、ちょっとお調子者の少女でしかなかった。本当にスパイなどをしているのかと疑わしく思えるほど自然な行動ぶりであった。
 監視と尾行を続けながら内心で首を捻る静馬。だが、エイミアは友人らと別れ一人になると、カクリと首を垂れ何かに操られるようにフラフラと歩き出した。そのまま自室に入り、程なくして出てきたエイミアは分厚い外套を着込み、手袋をした手には何かを握っている。先ほどよりはしっかりとした足取りではあるが、どこか上の空と言った様子でゆるゆる歩いていった。
 十中八九外出するだろうその様子を無線で仲間に知らせ、静馬は目標をエイミアから他に怪しい人物が居ないかに切り替える。
『さてさて、何が出てくるか‥もしくは別にターゲットが居るか。有事には備えておかんとな』
 懐に納めた小銃S−01を布越しに触れ確認する。


 菜摘は学園の生徒や傭兵がよく利用する出入り口に設置されている守衛所で、人の出入りを監視していた。
 傭兵が任務のために監視を行うという連絡を受けていたものの、初老の守衛は菜摘の幼い姿に驚きを隠せなかった。驚きはしたが守衛は菜摘を邪険に扱うこともなく、それどころか、普段監視に使っている場所を譲りさえした。
「ありがとうございますっ」
 その親切にぺこりと頭を下げる菜摘に守衛は柔和な笑みで応える。
「お仕事、頑張ってくださいね」
「はいですっ」
 分厚い二重窓から何処までも白い外を眺める菜摘の視界に、ほんの少しの暖かな色彩が過ぎった。サッシの横にそっと貼り付けられた家族写真。そこには初老の守衛と若い夫婦、そして菜摘と同い年ぐらいの男の子が写っていた。
 そこへと、アローンが入ってくるのと同時に、無線機からエイミアが外へ向かったという連絡が入る。蜻蛉返りにアローンは通用口に向かう。
「よー、どこ行くんだ?この寒いのに大変だねぇ」
「‥‥」
 連絡通りに出てきたエイミアに声をかけるが反応は薄く、ただ無心に歩みを進めて行く。
 守衛所に向かって『追跡する』というハンドサインを送るとアローンはエイミアの尾行を開始した。
「‥‥つってもきついねえ、なんとも」
 雪こそ降ってはいないものの氷点下の世界である。吐いた側から白く凍って行く呼気にアローンは身を震わせた。
「やれやれ、俺今日はよく働いてると思うよ、ほんと」

 それから間髪入れずに真一が外へと向かったという連絡が入り、菜摘は白いコートに腕を通し守衛所から出る。
 先ほどのエイミアと同じように上の空と言った様子で歩いてくる真一。その後ろからは「ゆきだるまのきぐるみ」を着た空がついてくる。ぽてぽてと歩くその可愛らしい姿に飛びつきたいという衝動に駆られたが、それをぐっと堪えた菜摘は空と並んで歩き、真一の尾行を始めた。


 15分ほど歩いたところでエイミア、真一の両者(それぞれ場所は別だったが)はともに足を止め、手の中にあったモノを無造作に放り捨てた。
 踵を返してゴッドホープに戻ろうとする真一を雪だるまが通せんぼし、捨てた紙片を菜摘が拾い上げる。
「さあ、証拠は掴みましたよ!観念するがよいでしょう!」
「っ!?‥ち、違うっ、ボクじゃない‥違うんだ‥‥」
 空に腕を掴まれ、我に返ったのか真一は恐怖に脅えた表情で頭を振る。菜摘が拾った紙片、メモには圭吾が掲示板に書き込んだ偽情報が記されていた。
 エイミアの方も同じく、捨てたメモには偽情報が書かれていた。真一の場合と違うのは、エイミアにはまったく自覚が無く、アローンに声をかけられて初めて自分が外にいることに気が付いて慌てた程である。
 また、長郎と静馬がゴッドホープ内で挙動不審な一名の身柄を押さえていた。手にはやはり偽情報が記されたメモを持っていた。



「やっぱり、洗脳ってことだったな」
 研究室でガスコンロの上に置かれた鍋をかき混ぜながらロズウェルはやり切れない、といった風にため息を付いた。
「一条 真一はそれにしたってだいぶ怪しかったですけど」
 ストーブで手をあぶりながら空と菜摘が顔を見合わせ頷きあう。
「一条は自分がおかしいことに薄々気付いてたんだが、どうすることもできなくて‥ってことらしい。教師陣は『ある任務に出た生徒の様子がおかしい』ってことを押さえてたらしいんだがなぁ‥」
 ロズウェルは程良く熱々になった鍋の中身、甘酒を人数分茶碗に注ぎながら、どうにも、と緩く首を振る。
「ま、お疲れさん。アンタらが来て証拠と現行犯確保してくれて助かったよ」
 手渡された茶碗にふうと息を吹きかけ、長郎は目元で笑う。
「当然さ。仕事なのだからね」
 依頼された仕事は確実にこなすという清々しい自負がそこにあった。
「ふぅー、やっぱ仕事の後の一服は格別だな」
 静馬はトレードマークの煙草に火を付け、大きく吸い込むと味わうように細く深く吐き出す。未成年のいる手前、ガスコンロ近くの換気扇の下で、であったが。

 こうして、傭兵達の活動によりスパイの身柄と証拠を無事に確保し任務は終了した。
 だが、洗脳されていると思われる生徒はまだ複数人おり、全てが確保されたわけではない。全容の解明と然るべき対応がこれから展開されて行くのだ。
 今回得られた手掛かりが今後に活用されるだろうことは言うまでもない。