●オープニング本文

●ＨＥＮＴＡＩは朝から元気

「アッハぁ〜ン☆流石ボクっ、こんな自分を愛しちゃうっ♪」

　Ｑ（gz0284）はバグアの隠れ家的な基地の片隅で身をくねらせ、感極まったように細腕で自らを抱きしめた。
　それを見かけた長躯の少年‥‥ＡｇがすかさずＱの後頭部をはたく。
「朝っぱらからキメェんだよ」
「Ａｇたんたら、ひっどォ〜っいっ。ボクはキモくなんかないよっ、美しいんだよっ」
「Ａｇたん言うな。キモウゼェ」
「ああん、照れ屋さんっ♪」
　衝動的にわき上がる殺意をぐ、と堪えるＡｇ。こんなヤツでも『大切な仲間』なのだ。コイツを真面目に相手をしちゃ駄目だと自分に言い聞かせながら、深呼吸をして気を取り直す。
「──で、オメーは何をしてたんだ」
「あぁ、よくぞ聞いてくれたネっ。さァ、見てよコレ！！」
　得意満面などや顔でオーバーに両手を広げ自分の背後を示す。
　そこにはレックスキャノンにアヌビスの上半身をとりつけた何かが三機（三体？）並んでいた。いわゆる廃棄物利用のニコイチ兵器なのだが。
「‥‥見なきゃよかった‥‥」
　片手で顔を覆い、うつむくＡｇ。
　その三機の姿はあまりにも異様で、朝から目にすべきものではないように彼には思えた。
　恐竜っぽい後ろ足に人間っぽいアヌビスの上半身が乗っかったといういびつな形だけならまだしも、何故か股間に相当する部分にレックスキャノンの象徴である大砲が取り付けられていた。ご丁寧にも全体的に肌色に塗装されている。
　悪趣味キメラ（Ｑ曰く妖精（フェアリー））といいコレといい、Ｑが関わるとどうしてこうなるのか。文字通り頭を抱えてしまったＡｇの様子お構いなしに本人はますます身をくねらせる。
「ンフフフッ、このあまりの美しさに声もないみたいだね、Ａｇたんっ☆」
「‥‥頼むから俺の知らないところで死んでくれないかな」


●妖精、氷原に立つ

　グリーンランド。
　氷床と万年雪に覆われた極寒の大地。
　昼尚暗い北の荒野に悲鳴が響く。

「助けてくれェェェ！！悪魔が、悪魔が出たぁぁ！！」

　ＵＰＣグリーンランド基地周辺の哨戒に出ていた兵士二人が半狂乱で帰還した。
　極度に脅えきり、パニック状態に陥っていた彼らをどうにか落ち着かせ、詳しい話を聞きだしたところ『とてつもなくおぞましい姿のでっかい何か』と遭遇したということだった。

「どうやら、これが例のでっかい何かのようです」
　哨戒に出ていた兵士が逃げながらも撮影した写真数枚がデスクの上に広げられる。
　上官はそれをちらりと一瞥しただけで天井を仰いだ。
「ホントもう、グリーンランドは呪われてるんじゃないかと思うね」
「まったくです。今回もＵＬＴに依頼ってことでいいですよね」
「ああ、頼む。アレは強靭な精神力を持つ能力者でなければ対処できまい」

●参加者一覧

●リプレイ本文

●
　極北の厳しくも美しい白銀の世界で傭兵達はそれと出会う。
　ボーイ・ミーツ・ガールならぬ傭兵・ミーツ・妖精。
　出会ったところでジュブナイルや少女漫画のように両者が恋に落ちたりはしないが。

　傭兵達と出会った妖精、奇怪な巨大キメラはご立派な股間の大砲を誇示するかのように腰を振り、ぬめぬめとブレイクダンスを踊っている。ぎこちなさなど微塵も感じさせない動きが無性に腹立たしい。

「見つけたぞ、世界の歪み！」
　ダグ・ノルシュトレーム（gb9397）が妖精達に指を突きつける。
　自然豊かなスウェーデンで育ったダグにとって、極北の地に出現した変態的に歪んだキメラに憤りを感じずにいられなかったのだ。レオタードを服の下に着込んでいるダグ自身はどうなのだ、とツッコミを入れる人間がいないのは幸か不幸か。
　幡多野　克（ga0444）はこの嬉しくない出会いにこめかみを押さえる。
「このセンス‥またＱの仕業‥。これで３度目‥。‥俺が呪われてる気さえ‥してくる‥。出来るだけ早く‥あの存在を消してしまおう‥」
　口に放り込んだ芋けんぴを咀嚼しながら佐月彩佳（gb6143）はのんびりと首を傾げた。
「機械か。食べるところがない、ね。ピクルスの人は、相変わらず変な、ものを作る」
　彩佳の判断基準は実に明確で、食べものかそうでないものかのどちらかでしかない。食べものではない物との遭遇に少しだけ落胆しつつも、彩佳は意欲を失ってはいなかった。
「早く片づけて、暖かい、ご飯を食べに、帰ろう」
「‥‥」
　伊鷹　旋風（gb9730）は自分を落ち着けようと、保温性の水筒に入れてきたお茶を啜り、ほぅ、深く息を吐く。
「うん、とても美味しいね‥‥。やはり故郷、福岡の八女のお茶は最高だな、嫌な物を見て荒んだ心も洗われてリラックス出来るよ‥‥」
　瞳を閉じ、口中いっぱいに広がる爽やかな緑茶の風味を楽しむことで現実から逃避したが、目を開ければ嫌でも視界に入る異形。
「アヌビス乗りが見たらブチキレそうだね。酷いセンスだ、まったく‥」
　首を力無く左右に振り強く決意する。『アレはこの世から消してしまわないといけない物だ』と。
「全力で潰そう、うん」
「‥‥バグアって、本当に何を考えているのか分からんな」
　鹿島　綾（gb4549）が遠く、彼岸でも見ているような目で呟く。バグアは異種族どころか異星人なのだから仕方ないのだろうかと、諦めに似た気分が去来した。
「まぁいい。そっちがその気なら、こっちも突っ走るまで！」
「‥‥ほう、あれが『デッカ・イナニ・カ』か‥」
　名称未設定の巨大キメラを夜十字・信人（ga8235）は無理矢理に命名していた。
「バグアにもユーモアを解する奴がいるとはな。だが、センスは悪い。行くぞ、バディ」
　多彩な副業を持つ故か感性の許容範囲が他者よりも広めの信人は、いささかの余裕を持ってキメラを鼻で笑い飛ばす。
　だが、今回、彼の相棒となるウラキ（gb4922）の心情は穏やかではなかった。
「砲への冒涜‥‥放置しておくには危険過ぎる‥」
　砲撃戦を至上とする彼にとって、悪ふざけの過ぎたキメラの姿は万死に値するものであった。

「アヌビスの上半身にレックスの下半身、股間からプロトン砲か。まぁ、肌色という点はまずまずだが‥‥しかしなんで、毎回中途半端な造形なんだキッサマァア！！」
　ブチ切れつつ駄目出しを行うエリノア・ライスター（gb8926）
　芸術全般に造詣が深く、物事にこだわりをもつ彼女にとって、中途半端に見えるキメラの姿は許し難かったのだ。
「バランスと頭の悪そうなキメラだ。ペットは飼い主に似ると言うし、これを作った奴も相当マヌケなんだろうね」
　ダグも同意しシニカルな笑みを浮かべる。
「せめてお前、そこまでやるなら、全身オイルでヌルヌルにして、もじゃもじゃアフロ付けて星形ニップレス、あーんど、オプションで触手くらいやれよ、グルァァア！！」
　同意を得たことに弾みをつけてなおも駄目出しを続けるエリノア。そこへ聞き覚えのない少年の声が割り込んできた。
「ボクが言うのもなんだけど、それはマジないわー」
　声の正体はキメラの制作者であるＱ（gz0284）なのだが、その声にはドン引きといった雰囲気が漂っていた。
「え？何？私の方がやっちまった的なこの空気」
　傭兵達の間に沈黙が落ちる。
「──ハリボテのような空洞の造形ッ、上辺だけの美学ッ‥こいつは‥芸術の冒涜ッ！！断じて赦さんッッ！！」
　微妙な空気をかき消すようにエリノアは激昂し、怒りをキメラに向けた。
「てめぇは黄金分割からやり直して来いやぁあ！！」
　八つ当たりが混じっていると思えるのは間違いではないだろう。


●
　戦闘態勢に入ったことを察したキメラ三体は、ダンスを止めると互いの背中と背中をを合わせるようにがっちり腕を組み、回転し砲撃を開始。プロトン砲大回転乱れ撃ちとでも言おうか。光線の色が微妙に白っぽく見えるのは気のせいだ。絶対に気のせいだ。
　ろくすっぽ狙いもしない砲撃だったが乱射されているため弾道が見極めづらいうえに意外と隙が無い。イラッとくる思いを抱えたままに回避行動を行いながら、傭兵達は三隊に分かれてキメラへとぶつかる。

　まず、克の長距離ショルダーキャノンが火を噴いた。
　牽制の意味合いでの一撃だったが、回転するキメラの足下に着弾したそれは動きを阻害する。
　その間に、Ｒ−Ｐ1マシンガンによる彩佳の援護を受けながら、綾のリヴァイアサンが雪煙を上げながらキメラに接近。おたつくキメラの側面に回り込んだ綾は、わざと敵に防がれるような攻撃を行い、仲間の攻撃が当たりやすくなるよう、また、プロトン砲が仲間の方を向かないように、キメラの隙を作り出す。
　ドミネイターのブースターをも利用し、左右へと動きながらキメラを翻弄する綾。回避と攻撃の動作が直結している見事なまでの技量を惜しげもなく披露していた。
　そこに克の雷電と彩佳の翔幻が合流する。


　難なく距離を詰めたどころか巧みな攻撃を開始する傭兵達に、これはいかん、と腕をほどいて個々に散会するキメラ。
　バラけたキメラを各個撃破するために各隊が猛攻をかける。
　キメラも黙って攻撃を受けているわけではなく、それなりに反撃を行ってはいるが、いかんせん『冷静なバーサク状態』の傭兵達にかなうわけがなかった。


　闇雲に振り回される斧を機盾で防御した克は、すかさず機杖を突き入れ、キメラが持っている盾を叩き落とす。
「その自慢のモノは２度と使わせない‥！　一撃を味わえ！」
　防御姿勢がとれず、ガラ空きになったプロトン砲をレッグドリルで蹴り上げる雷電。
「去勢すれば大人しくなるって言うよな。試してやるよっ！」
　綾の練剣が所在なく跳ね上がったプロトン砲を切り落とした。
　その勢いのまま零距離にまで接近し、ソードウィングでコーティングした立派なスイカバー‥‥違う、リーゼント、もとい、頭部をキメラの頭部にぶつける。
「王立海軍の伊達と矜持が詰まった頭部を甘く見るなよ！」
　ご立派なプロトン砲を切り落とされ、ものすごく切なげに物を言いたげなキメラの瞳（？）と目が合う。
「何メンチ切ってんだゴラァァッッ！」
　問答無用で目から怪光線‥メガレーザーアイを発射。
　顔面を焼かれたキメラは「目がぁ、目がぁぁ！？」と頭部を両手で押さえ悶え苦しむ。
　一度距離を離した綾はシステム・インヴィディアを発動させると、ドミネイターを何度も繰り出しキメラをメッタ刺す。
　情け容赦一切無用の怒濤の攻撃。ミサイルポッドがそれに続いた。


　信人はレーザーバルカンで牽制射を加えながらキメラを追う。
「悪趣味なパッチワークだ。ウラキ君、フォーメーション・Ｄだ！」
　信人はそれっぽく言ってはいるが、そんなフォーメーションはもともと存在しないし組んだ覚えもない。相棒となるウラキはそれをさっくりスルーしていた。彼にとってそれ以上の問題が目の前にいるのだ。
「‥あんな非合理的な兵器‥許容できない‥」
　雪原迷彩を施した車両形態のゼカリアが氷床を疾走する。
「目標視認し――くそっ‥」
　キメラの姿が視界に入ったその瞬間に強いめまいを覚え、悪態を付く。平素の彼らしくない荒々しさであった。
「駄目だ‥敵を見ないと‥」
　普段通り冷静であろうと努力はしているが、砲に対する拘りの強さ、キメラに対する憤怒が祟り、やや崩壊気味になってしまっている。
「どちらの砲が『強力』なのか‥試してみようか‥うん‥？」
　眩暈を振り払い、適正距離をキープするとウラキは凄味のある笑みを浮かべながら大口径滑空砲で砲撃を開始する。
「砲が焼けつくまで‥撃つのをやめない‥ふふ」
　砲撃がキメラの目を引きつけるその間に、側面に回り込んでいた信人は一撃を加えすぐに離脱するが、キメラの反応もなかなかのもので、拡散プロトン砲が斜め後ろに走輪走行で退避するシュテルンを追いかけるように乱射される。
「くっ、思った以上にやる。やはり、抜くしかあるまいか」
　牽制射を行っていたバルカンを投げ捨て、背中のアタッチメントからデモンズ・オブ・ラウンドを抜き放つ。獄炎のような禍々しい濃い赤色の光が白銀の大地にこぼれ落ちる。
「夜十字さん‥あの忌々しい砲もどきを‥早く！」
　ウラキの放った徹甲散弾がキメラの脚部に炸裂し、自由を奪う。
　その一瞬の間にブーストをかけたシュテルンが即時接近、斧をかいくぐり懐に飛び込むとそのままソードウィングで体当たり、防御の盾ごとキメラをはじき飛ばした。
　信人の攻撃に合わせ、ウラキは砲撃での援護を続ける。
「‥‥その拘りは認めよう」
　砲撃の着弾により、砕かれ吹き飛ばされる氷床。白くきらめきながら落下する破片に、信人が構えた凶刃の赤い光が反射する。
「だが、情熱・思想・良心・倫理・気品・優雅さ・勤勉さ──」
「そしてなにより」
「情熱が足りない！」
　刃は一閃。
　いとも容易く切断されたご立派なプロトン砲が重い音と共に地に落ち転がる。
「俺たちの銃口にっ」
　主兵装を失ったキメラはよたよたと力無く蹌踉めき後退するが、ブーストをかけてまで突撃を敢行したウラキのゼカリアの砲口からは逃れることが出来なかった。
　上半身部分にピタリと密着した砲口が火を噴く。
「Ｆｉｒｅ、Ｆｉｒｅ、Ｆｉｒｅ‥」
　ウラキは淡々とキメラを粉砕するまで撃ち続けた。


「さぁ行くぞ、スモークグレネードッ！」
　突撃するタイミングに合わせてエリノアが煙幕を展開する。
　ヘルヘブンが三機揃ったらやることは一つ。ジェットでストリームな攻撃しかあるまい。
　高速で走破するあの世への道先案内人と化す三機。
　エリノアが真正面に立ち、マシンガンでの弾幕でキメラの気を引いたその間に、旋風とダグがが高速二輪モードでキメラの後ろ両側面に回り込む。
「貴様のその歪み、この俺が断ち切る‥！」
「気分は『ヒャッハー』‥っと、ご機嫌だね」
　白銀の雪を巻き上げ滑り込むように、優雅なまでの動きを見せる二機。
「さぁ踊れ、無様に踊り続けるんだ‥ッ　肌色が嫌なら、直ぐに染めてあげるよ‥。奴の血飛沫でね‥」
　キメラの足元を狙ってミサイルランチャーを撃ち込むダグ。足元をすくうように炸裂したミサイルにキメラは大きくバランスを崩し無防備な姿を晒す。
「ウホッ！お尻がガラ空きだ！そんなにコイツで掘られたいのかッ！」
　尻の穴を２つに増やしてやろうと、いい男はバイコーンホーンをキメラに突き立てる。その衝撃にアッー！と仰け反るキメラ。
　更に旋風の機杭が追撃に叩き込まれる。「くっ悔しい、こんな攻撃に晒されちゃうなんて‥」とキメラは身体をビクビクと痙攣させた。
　そしてとどめとばかりにエリノアがウィガードリルをかまえて真っ向からキャバリーチャージ。ドリルが無慈悲にもキメラの主兵装を抉り穿ちギュルギュルと粉砕する。
「こちとら、伊達に髪型をドリルにしちゃぁいねぇんだよ！」
　個人の髪型と武器の性能はまったくもって関係ないが何故かスゴイ説得力があった。縦ロールisドリル。ガイアが俺にもっと輝けと囁くのと同系列の説得力だ。
　活動を停止し、どう、と倒れたキメラに向かってグレネードが投下される。
「『汚ブツは消毒だ！』という諺が日本にあったな‥へっ、この火葬は私からのサービスだッ！！」
「ヒャッハー」
やや棒読みでヒャッハーしながら旋風もショルダーキャノンを連発する。
「‥任務‥‥完了！」
　葬送の焔を背にしたダグは特に意味もなくポーズを決めていた。
「見ているかっ、俺が‥俺がフェアリーだ！（クラス的な意味で）」


●よいお年を
　こうして、氷原に静寂が訪れる。

　エリノアに盛大に燃やされたキメラの残骸を前に、やけにスッキリとした表情の綾はコクピットの中で背を伸ばし、一息ついた。
「こういうストレス発散の仕方ってのも、たまには悪くないな」
　清々しい、といった風の綾とは対照的に、旋風は言いようのない脱力感に襲われていた。
「うん、こんなのが何度も出てくるなんて呪われているよね、ここ」
　克は業務用の大袋に入れられた塩を雷電の手でばっさばっさと撒いている。
「たぶん‥またヤバイ物が出てくるんだろう‥ね‥。ここに‥平穏が訪れるのは‥いつなんだろう‥」
「‥‥」
　仲間の会話を聞きながら、普段通りに任務後の珈琲を淹れようとするウラキであったが、怒りのために手が震え珈琲を飲めずにいた。
「いや、あの、すみません。ホント、こんな初陣にするつもりでは‥‥」
　その横で信人は、とんだ初陣を飾った『デモンド様』にひたすら平謝りをしている。

　ふと、克はこの一部始終をＱが見ているかも知れない、と周囲を窺う。見つけて何をするでもなかったが、相手の確認をしておきたいという気持ちがあった。
　やがて、ＫＶのカメラが白い氷原に赤い姿を捉えた。Ｑは虎のようなメカキメラの上に腰掛ており、ＫＶのカメラ越しにねちっこい投げキッスを送ってきた。
「‥っぐ！こんな精神攻撃って‥有り‥？」
　克は口元を手で覆い、耐えきれない、といったように顔を背ける。
　Ｑの存在に気付いたウラキはゼカリアのエンジン回転数を上げてロケットスタートを切った。
「大丈夫‥少し、踏むだけだから、ね？」
　砲を冒涜した者をただで済ませてなるものかという心の現れだった。
　地響きを立てて迫るゼカリアに背を向けてＱは逃走を開始。その姿が丘陵の影に隠れたその時、突如として強い雪風が吹き荒れ、あっという間に傭兵達の視界を白く塗りつぶしてしまった。
「じゃあねェ〜ン、傭兵ちゃん達ィ、また来年もヨ☆ロ☆シ☆ク〜」
　粘着質な声が各機体に届く。
　機体を横滑りさせながら急停止させたウラキは北へと飛び去る影を見たが、追跡はかなわなかった。


　再びの静寂。
　雪嵐は消え、風が途絶え、舞上げられていた雪が氷床にそっと降り積もる。


「ヨロシクしてたまるかぁぁ！？！」


　きれいにハモった全員の叫びがグリーンランドに木霊した。