タイトル:クリスマスメロンマスター:敦賀イコ

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/12/29 08:53

●オープニング本文


 師走。
 中国での大規模作戦が集結し、落ち着きを取り戻したLH界隈。

 カンパネラ学園ではサンタ帽子をかぶり、白いカイゼル髭をつけたメカメロンが校内をねりねりと練り歩いていた。

 メカメロンというのはカンパネラ学園の地下研究部に住み着いている研究員、ロズウェル・ガーサイド(gz0252)が作ったメロン型メカである。
 直径1.5m程の巨大マスクメロンに逞しい脚が生えているという姿は大変シュールに意味不明ではあるが、本体メロン部分を覆う外皮はしっとりさらさらでもっちりとした適度な弾力を持ち、さらにはリラックス効果の高いアロマを放つことから癒し系として(ごく一部から)人気が高い。さらには生みの親よりもよっぽど優秀なのではないのかという評価さえあった。

 そんなメカメロンが一足も二足も早く、クリスマス気分満載で練り歩いているカンパネラ学園。
 地下ではニートがこたつで丸くなっているカンパネラ学園。

 なんだか今日も平和です。

●参加者一覧

/ 終夜・無月(ga3084) / 百地・悠季(ga8270) / 御巫 雫(ga8942) / 如月・菫(gb1886) / 最上 空(gb3976) / 冴城 アスカ(gb4188) / 桂木穣治(gb5595) / 桂木菜摘(gb5985) / 湊 雪乃(gc0029

●リプレイ本文


「こんな時間‥‥本当に久し振り‥‥」
 終夜・無月(ga3084)は何をするでもなく、手入れの行き届いた中庭の芝生に寝転がり、流れる雲をぼんやりと眺めていた。
 バグアとのいつ果てるとも知れない戦いに身を投じている彼らにとって、『戦闘のない一日』というものは実に貴重な『休日』であった。

 その休日を各々が思い思いに過ごす。

「うぼぁー。暇すぎるのです」
 如月・菫(gb1886)は女子寮の自室でごろごろとしていた。ごろごろ生活を満喫していた。ごろごろとしすぎてベッドからぶち落ちたりしていた。

「これがあの二人の通う学校か、中々楽しそうではないか!この雪乃感服したぞ!」
 友人の通う学舎とはいかなるものかという興味を持って湊 雪乃(gc0029)はカンパネラ学園に来訪していた。手にはグツグツと煮えたぎる土鍋を持って。

 同じ頃、同じ女子寮の一室では百地・悠季(ga8270)講座の時間割を手に机に向かっていた。
 スケジュール帳を開き、本日開かれる講座と、受けるべき講座をチェックして開始時間と会場を書き込んで行く。
 その作業途中、ふと、窓の外を眺めた。
『忙しいな‥‥別に気にしてもしょうがないんだけど』
 先だっての大規模作戦が一段落付いたかと思いきや、欧州に呼び出され、それが終われば年末進行が続いている。
 学生と傭兵と‥‥主婦業を兼務している悠季は一息入れる暇もない。
 任地とLHとカンパネラ学園を駆けめぐっている毎日だ。
『これも青春の一環、かしら‥‥ね』
 シャープペンシルを指でくるりと回しながらくすり、と笑う。
 久しぶりに講習を纏めて受ける時間が出来たので、今日の悠季は学生として一日を過ごそうと決めていた。
 自室を改めて見渡せば、去年の今頃は色々有った私物がすっかりと消え失せ、勉強に必要な最低限の物しかないのを見ると、自身の変化に気が付く。
 愛する伴侶と渇望していたものとを得て、環境だけではなく内面での変化も大きかったことだろう。
 だが、悠季はそこで立ち止まることを由としなかった。
 未だ自分は未成年であり、学ぶべき事が多い未熟者であるのだから前に進むしかない、と、目線を机に戻すとスケジュール帳を閉じ、必要な予習を開始するために参考書に手を伸ばした。


 駐車場に停められた車から桂木穣治(gb5595)と桂木菜摘(gb5985)の親子と、穣治が誘った飲み仲間の冴城 アスカ(gb4188)の三人が降りる。
 車から荷物を下ろすのを手伝おうとした菜摘を穣治がやんわりと制して、ちょうど駐車場を右から左に横切って校庭へと向かい歩いているメカメロンを指さした。
「こっちはいいよ、そのかわり、なっちゃんにはあのメカメロン追跡の任務をお願いしよう」
 菜摘はぱっと瞳を輝かせてぱたぱたと走り出す。

「サンタメロンさん、メリークリスマス♪プレゼントにもふもふさせてくださいなっ」
 菜摘のジャンピング抱きつきにも慣れたのか、メカメロンは本体メロン部分でしっかと菜摘を受け止め、そのままぴこぴこと左右に揺れる。
「相変わらずもっちもちのふかふかで気持ちいいですね〜」
 嬉しそうに頬ずりをする菜摘から一度離れるとメカメロンは体勢をぐっと低くして迫る。
 小首を傾げながら、菜摘がサンタ帽子の上からぎゅっとしがみつくと、メカメロンは菜摘を落とさないように絶妙なバランスを取ってゆっくりと立ち上がる。
「わあっ、高いですよっ、スゴイですよっ」
 メカメロンの頭上に乗った状態で喜色満面にはしゃぐ菜摘。そしてそのまま練り歩くメカメロン。時折くるくる回ったりもした。
 絵面はシュールだがとてもほほえましい雰囲気である。

「ふむクリスマスか。もう一年も終わりだな」
 その様子を目にした御巫 雫(ga8942)が手作りケーキの入った箱を手に感慨深く呟く。ロズウェル・ガーサイド(gz0252)(以下、ニートと呼称)への日頃の礼にと腕によりをかけて作った自信作であるらしい。
 そこへと暇つぶしにぶらぶら出歩いていた菫が通りかかった。サンタ風味の格好をしているメカメロンを目にした菫はわき上がる衝動の赴くままに行動する。
「よし!ぶん殴ってやるのです!」
 殴ると言いつつ菫は胸の前で両手をクロスさせ、フライングクロスチョップの姿勢。
「ぬ、待てぇい!!」
 雫が止めに入ろうとするがドジッ子スキルが炸裂し何も無いところでコケた。両手で持っていたケーキボックスが宙に舞い、菫の側頭部にヒットし落ちた。
「な、なんなんですかコンチクショー!? ‥‥ってクサッ!!?」
「本当だ、クサッ!?」
 周囲にたちこめる異臭に二人は顔を顰め、臭気の発生源に目を落とす。
 そこには潰れたケーキボックスから溢れる半個体の何かがでろりとはみ出していた。色はどす黒い半透明、所々に白いまだら模様。
 瞳を逸らし遠くを見つめた雫に菫は問いかける。
「‥‥もしかしてアレはアナタ様が作ったのでございましょうか?誰かを毒殺する使命でもありましたか?」
「毒とはなんだ!あれは手作りケーキだ!」
「あれのどこがケーキ!?アナタとんだ錬金術師だよ、フルカオスアルケミストだよ!!? どうやったら食材をBC兵器に変質させられるの!?」
「う、うるさい!気が付くとああなっていたのだから仕方あるまいが!!」
 雫の手料理は熊を殺せるレベルなんだそうです。

 その一方、悠季は講習・実験・発表会・訓練、教室群を駆け回り講座を受け続けていた。
 短い休憩時間の合間に友人・知り合いに掛け合ってノートを見せてもらい、進捗を確認し足りなければ補足を行うということを粗方こなして一息ついたところで、空腹を訴える己の腹具合に苦笑をもらしながら学生食堂へと足を向けた。
 悠季は料理が得意ではあったが、忙しい状況においてはその手間が惜しい。自分のためだけであるなら尚更。故に自分で用意や片づけをしなくてすむ食堂の存在は大変にありがたい。
 だしのきいた暖かいうどんを胃に収めながら、友人のアスカがなにやら飲み会に誘われて学園に来ている、ということをふと思い出し、予定帳を捲った。




 第705研究室。
 ロズウェル・ガーサイドが主任を務める研究室だが、室員はロズウェル一人のみ。通常であれば研究室員分のデスクと各種研究資料・資材で埋まるはずの室内には家具や家電、インテリアまでもが持ち込まれ、さながら広めのマンションの一室、という風になっていた。ほんの一角、申し訳程度に研究室らしく資料や資材、様々な計測機器が置かれていたが、たいして使われていないのか整然と片づいている。
 研究室、という性質上、室内は広々としているうえに、泊まり込みで研究を続ける職員のために簡易ではあるが台所にシャワー・トイレが完備されている。賃料は研究成果から差し引きされているためにほぼただであり、一定の成果を上げつつ、地下であること、監視下に置かれていることさえ気にしなければ需要過多で住宅事情の厳しいLHに比べれば、夢のような物件であった。

 そんな705研究室にニートが一人。
 どこからか調達した畳マットを敷いてその上に据えたこたつで丸くなっているところに穣治とアスカが顔を出した。
「ようガーさん!メリークリスマス&行く年来る年ー。どうせ相手もいないし暇だろ?忘年会でもしようぜ」
「こんにちは、ニー‥ロズさん♪今日はよろしくね♪」
 食材と酒をどっさりと抱えた二人の姿にツッコむことも忘れるニート。
 何せ穣治は日本酒一升瓶、焼酎(麦・芋)一升瓶、白ワイン、シャンパン、ウィスキーに泡盛各1本に加え、愛娘のために用意したオレンジジュースに手作りのブッシュ・ド・ノエル(チョコ)、あまつさえ餅と焼くためのトースター、みかん一箱まで持ち込んでいるのだ。
 ツッコむよりはお祭り好きの酒飲みのこだわりに脱帽する思いの方が強かった。

「今日は冷えるから鱈チリにしましょうかね。台所借りてもいいかしら?」
 早速、アスカは鍋の準備を始める為に食材の入った買い物袋を手に台所へと向かう。
「出来上がるまで、おつまみで繋いで頂戴」
 こたつの上に枝豆とスルメ、チーズと柿ピーチョコを置いて行くことも忘れない。
「‥‥なんつーか、ジャパニーズ・おっかさん?」
 アスカの浮ついたところのないそつの無さ、気配りの仕方に感心してニートが言葉を探す。
「ガーさん、独身女性にそれは流石に失礼だろ」
「じゃあ、姐さん?」
「ホンット、微妙なチョイスするよなぁ‥‥」
 ほろ酔い気分で苦笑う穣治。気を張る必要のない他愛のない会話は良い具合に気が抜けて心地がよいものだ。

 台所では昆布を敷き水の張られた土鍋が用意され、別の小鍋では鰹節が湯に踊っている。
 鱈・豚バラ・牡蠣・白菜・しいたけ・えのき・春菊・水菜などの具材を手際よく切り分け、皿の上に盛りつける。
 特製鱈チリ(本人曰く『と言う名のごった鍋』)がアスカの手によって着々と用意されているその間に、菜摘とメカメロンが研究室にやってきた。
「おぉ、なっちゃん!外は寒かっただろう?早く暖まろうな」
 穣治はこたつから出て立ち上がり菜摘を出迎える。
「はいっ、ガー兄さん、お邪魔します」
 メカメロンの上からぴょん、と降りると菜摘は礼儀正しく家主に一礼をしてから、コートをいそいそと脱いで、待っていた穣治に手渡す。そのかわいらしいコートをごく自然に自分のコートと一緒にハンガーにかける
 互いを思いやり、愛情のある親子というものはいいもんだ、とニートは思う。それから、自分の育ってきた境遇と比較しそうになり、慌てて枝豆を口の中に放り込むと荒くかみ砕いて飲み下した。

「ガーサイドはいるか!!」
「ニートめ!美少女が遊びに来てやったぞ!喜びにむせび泣くがいい!!」
 校内での異臭騒ぎの後、なんとなく意気投合した菫と雫の二人が遠慮なく上がり込みこたつに潜り込む。物怖じしないというか度胸が据わっているというか。それでも菜摘とはきちんと挨拶を交わすのだから礼儀正しかったりもする。
 続いて最上 空(gb3976)が勢い良く、ノックもせずに問答無用でドアを開けて部屋に踏み込み捜索を開始した。
「ちょ、おまっ、何っ」
「ニートさんは以外とむっつりスケベな気がするので、要チェックです。突撃隣の私生活です」
「むっつりって何だ!?俺はどっちかっていうとオープン‥‥ちょおおおおお、そーゆーのはやめてあげてぇぇぇ!!?」
 俺も健全な男の子ぉぉ、とこたつから這い出て慌てるニートの懇願を勢いで無視してベッドの下や本棚をがっつりチェックする空。
「俺の経験上(?)真面目な本と並んでることが多い気がするぜ」
 スルメイカをかじりながら穣治がニヤニヤと人の悪そうな笑みを浮かべる。
「桂木テメェェっ!?!」
「‥しかしガーサイド。前から疑問だったのだが、お前なんでニートと呼ばれているんだ?」
「そうです。それは空も疑問です。実は偽ニートだったり、自称ニートだったりするんですか?」
 雫が小首を傾げる。空もまったく同じ疑問を抱いていたのか、手掛かりを求めて室内をじっくりねっちり観察する。
「一応役職もあるし、飛び込みの仕事も受けるし、空気も読めるし、小奇麗だし、無駄に高スペックで、ロリコンでもない(?)お前はニートらしくないと、各方面から苦情が着ているぞ」
 ニートは面倒そうに後ろ頭をかき、拗ねた投げやりな口調で答える。
「知るか。そんなもんは上司に聞いてくれ」
「あぁ、あの草刈正雄似の上司さんか」
 以前の依頼でニートの上司に顔を合わせたことのある穣治がぽん、と手を叩く。
「あの人がニート呼ばわりしだしたおかげですっかりニートが定着してんだ。ロズウェルにしろガーサイドにしろ字数使うからめんどいってのもあんだろ」
「うーん。結構普通の理由ですね。もっと複雑怪奇に笑える理由があるんだと思ってましたよ」
「お前は俺に何を期待してんだ」
「‥ふん。まぁいい。おい、ガーサイド。暇だろ、どうせ。私に勉強を教えてもらおう。文系脳だからかどうにも物理が苦手でな」
 普段はドジッ子メイドで変わり者の面が目立つが、実のところは努力を怠ることのない勤勉な優等生である雫。苦手分野を補おうとニートに協力を求める。
「ああ‥拒否は認めない。私の神懸り的なドジッ子スキル発動で、お前のPCのCドラを消されたくあるまい?」
 半ば脅迫に近いものがあった。が。
「ひゃっはー、ニートの隠しフォルダ検索なのです!」
 菫がプライバシーの侵害とかも何のその、生き生きとひゃっはーしながらPCを起動させぁやしぃファイルを根ほり葉ほり捜索していた。そして勢い余ってHDへエルボードロップ。沈黙するPC。何故そういうことになったのかはわからない。きっと神の見えざる手が働いた。
「ほぎゃああああああ?!!!?!」
「くぉら!?韮ぁぁ!?!!!!!」
「韮っていうんじゃねぇーーー!!」
 ニートの絶叫を余所に毛を逆立ててる猫のようにフシャーッと威嚇しあう二人。
「隙アリ!」
 と、そこへ空が乱入する。
 最近になって急成長をして、主に胸があり得ない発達を見せた雫の胸が本物であるかどうかを確かめたいと思っていた空は、千載一遇のチャンス、と背後から雫に迫る。
「正直、短期間でこの成長はあきらかに、偽乳!きっと胸にメロンパンやら、パッドやらを詰めているに違いません!」
 決してやましい気持ちは無い。あくまで確認のためだと言い張る空。
「揉むか揉まれるか、女の意地を掛けた勝負です!」
「ならば受けて立つ!!」
「よろしい!戦争だ!!」
 美少女三人によるドタバタファイト。
 じゃれ合う美少女達の姿は世の男性諸氏にとってきっと眼福だったのだろうが、渦中の穣治やニートはそれどころじゃなかった。
 穣治は愛娘を避難させ、こたつを移動させ、嵐が収まるのを待っていた。
 ニートに至ってはアルカイックスマイルを浮かべて中空を見つめ、「人生の全ては試練だ。これもそのひとつに過ぎない。これを乗り越えたときに俺は一歩先に進めるんだ」などと自分自身に説法を始めている。
 その姿に穣治は涙せずにいられない。
「そういえばロズさんは苦手なものとかある?」
 ひょっこりと台所から顔を覗かせたアスカだったが、穣治は力無く左右に首を振り、状況を察したアスカは肩をすくめて調理に戻っていった。



「はいお待ちどう‥‥って人が増えてるわねぇ」
 あらあらと言った風に笑いながらアスカが土鍋と具材を持って台所から姿を現す。

 アスカが台所にいる間に、喧噪に誘われて研究室を訪れた無月と授業帰りの悠季、職員に連れられてやってきた雪乃の三人が加わっていた。
 もともと部屋にあったこたつだけでは対応できず、急遽他の研究室からひとつ借り受け、二つを並べて縦長になったこたつに八人(+メカメロン)がそれぞれ座る。

 こたつの上には卓上電熱器が三つ置かれており、そのうち二つは既に埋まっていた。
 ひとつは悠季がアレンジしたレーションのレッドカレー、もうひとつは雪乃の牡蠣鍋だ。
「今日は丁度、調理実習があってね。差し入れに来たの」
「この雪乃、熱々の味噌田楽と牡蠣の鍋を持ってきてやったのだ!遠慮無くむさぼり食うがよい」
「お鍋ですか‥楽しそうですよね‥。あ、鍋には入れられませんが‥どうぞ‥」
 途中購買で買って来た色々なパンを差し入れとしてテーブルの上に置く無月。
「おぉ、これは‥‥ありがたく頂戴しますよ!」
 その中にあった激レアメロンパンに空が真っ先に飛びつく。普段の言動こそカッ飛んでいるが、今この場では甘いものに目がない少女でしかなかった。
 気の抜けたまったりとした空気に微笑みながら、アスカは土鍋を電熱器の上に置き菜箸を手に取る。
「さ、準備も出来たし始めましょうか♪」
 火の通りにくい豚肉を筆頭に牡蠣、しいたけ、白菜、えのき、鱈、春菊、水菜の順に鍋に入れて蓋をして待つこと暫し。
「鍋から湯気が出始めたら完成よ。 ポン酢とゴマダレ好きな方で召し上がれ♪」
 味噌田楽と先に煮えていた牡蠣鍋、レッドカレーをつつきながら、成年組はアルコール、未成年組はオレンジジュースで飲み会の開始となった。
「こうしてだらだらコタツで鍋食って酒飲んでのんびりしてると年末って感じだよなー」
「今年もあっという間だったわねぇ‥」
 穣治はグラスでロックの焼酎を、アスカは持参した鬼殺しを熱燗でちびちびと飲みながらしみじみと息を付く。
「まあそんなわけでだ、今年がどんな年だか振り返ろうぜ。10大ニュースでもいいけど。俺は‥不謹慎かもしれないがいろんな依頼を受けられて楽しかったかな。もちろんガーさんや他の人とも出会えて嬉しかったぜ」
 照れたように鼻の頭を指でちょいちょいとかきながら、穣治は朗らかに笑って見せた。
(能力者にならなきゃ多分今でも引きこもりだっただろうからなあ‥。んな暗いことは言わなくてもいいか)
「今年はメロンさんにも会えたし、お友達も増えたし、とってもいい年です♪」
 その隣で菜摘が父・穣治お手製のブッシュ・ド・ノエルをほおばりながら天真爛漫な笑顔を振りまく。
 このまま戦争が終わって、平和になるといいのにな〜、と続いた言葉には全員が強く頷いた。
「‥‥ま、俺もお前さんたちとの出会いが重大ニュースだな」
 ニートは舐めるように呑んでいたウィスキーのグラスをこたつのテーブルの上に置き、微笑する。
「人との出会い、ってのは何だかんだ言って大切なモンだ。お前さんたちと縁が出来たのはありがてぇと思ってるよ」
「フ、フン、貴様は引きこもりすぎなのだ!」
 いつになく神妙な雰囲気のニートの様子にやや動揺しながらも雫がばっさり切り捨てる。
「にーとは仕事も出来るし眼鏡で顔も良い、しかし働かんとろくな給料もでないぞ、それに運動不足のようだのう。たまには外に出ろ」
 雪乃もうむうむと頷きながら腕を組む。
「‥‥チクショウ!どーせ俺はヒッキー属性の一途なインドア派だよ!?!」
「ガー兄さん、頑張るですよっ」
 一瞬にして通常運転に戻りイジけたニートの丸まった背中を菜摘が慰める。
「甘やかしちゃダメだぞ、なっちゃん」
「そうそう、ドアウェー人生を選んだのは本人なんですから」
「そういえばロズさんの思い出話とか聞かせてもらえる?いろいろと面白い話があるって聞いたけど」
 湯気の上がった土鍋の蓋をあげながらアスカがニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべながら尋ねる。
「いじめっ子かおまえら!?」
 ここぞとばかりにいじられるニートを後目に菫は鍋とカレーに舌鼓を打っている。頬張りすぎてハムスターのようになっている。
「たくさん食べなさいね‥」
 気配りの男、無月は甲斐甲斐しく小椀に鍋の中身を取り分けては仲間に配っていた。ニートには微笑みと共に少し多めにお肉を小椀によそりつけるという優しさ。
「きっと良い事ありますよ‥」
「く、ありがとよ‥‥」
 人の情けが目に染みる、と天井を仰ぐニートであった。


 ふわりと立ち上る鍋の湯気、こたつの温もり、気の良い仲間達との賑やかな会話。
 何よりも得難い『休日』がここにあった。


「お酒をのみながらのんびりと鍋をつつく‥あぁ、幸せぇ〜♪」
「あ、それ辛いから気を付けてね」
「ここで一気ですよ! あ、穣さんの、ちょっといいトコ見てみたい」
「大きく三つ、小さく三つ──それ、一気!一気!一気!」
「女の子からのお願いじゃ断れないな!パパ頑張っちゃうぞー!」
「ととさんったら、飲み過ぎですっ」
「ふふ、こういうのもたまには良いものですね‥‥」
「実に楽しいものだ!いや、この雪乃、真に満足したぞ!」
「ちょ、こんくらいできるって」
「うるさい!お前はいちいち頼りなくて、それがやたら目について気になるんだ!それならいっそ手伝ってしまった方が精神衛生上良いわ!」


 鍋を囲み、ただの人間としてひとときを全力で楽しむ能力者達をメカメロンがそっと見守っていた。