タイトル:Surpriseマスター:朝臣 あむ

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/06/23 12:10

●オープニング本文


『遊園地、行けなくなった。
 悪いんだが他の奴を誘って行ってくれ。
 お詫びにチケットの枚数を増やしておく。
               キルト・ガング』

 エリス・フラデュラー(gz0388)の元に届けられた手紙には、そう書かれたメモと9枚のチケットが入っていた。
 キルトがチケットを送ってきた遊園地は、以前彼に連れて行ってもらったことのある場所だ。
 また行きたいと駄々を捏ね、依頼が終わったら一緒に行く約束だった。
「‥‥危ないこと‥‥してるの、かな‥‥?」
 兄‥‥と言うよりは、父親への思慕に近い感情を彼に持つエリスにとってはかなり複雑だ。
 約束を守って貰えないことは辛いが、守れないのは仕事が影響しているのだとわかっている。
 だからこそ素直に受け止めなければいけないのだが、その仕事が危険なものだとしたら‥‥そう考えると、色々な感情が渦巻いてくる。
「パパも、同じだった‥‥」
 遊園地には父親とも行ったことがある。
 たった一度だけ行った場所。
 一度は破られた約束を守る形で行った遊園地での思い出は、エリスにとって良いものになっている。
 それを振り返っていた彼女を、もう一度同じ場所に連れて行ってくれたのがキルトで、その時に父親に似た感情を持った。
「‥‥パパ‥‥」
 思い返せば父親は遊園地に行ったあとで消息を絶った。
 もしかするとキルトも‥‥そう思うと遊園地になど行く気にはなれない。
 だが、メモの端に書かれている文字を見て彼女の気は変わった。
「‥‥サプライズ‥‥?」

『5日後に行くように予定を調整しておけ。
 そこでサプライズを用意しておく。楽しんで来い!』

 力強い字で書かれた文字に目を瞬く。
「5日後に‥‥サプライズ‥‥?」
 5日後にいったい何があるのだろう。
 遊園地はエリスにとって夢の国だ。
 そこに用意されたサプライズ。それが何なのか知りたい。
 エリスはキルトが送ったチケットを握り締めると勢いよく家を飛び出した。
 向かうのはUPC本部だ。
 本来はこのような依頼を出すべきではない。そうだとわかっていながらも出さずにはいられなかった。
「遊園地‥‥行ってくれる人、募集‥‥しなきゃ」
 彼女はそう呟き、駆ける足を速めた。

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
一ヶ瀬 蒼子(gc4104
20歳・♀・GD
ミコト(gc4601
15歳・♂・AA
イスネグ・サエレ(gc4810
20歳・♂・ER
天羽 恵(gc6280
18歳・♀・PN

●リプレイ本文

 早朝の遊園地で、天羽 恵(gc6280)はそわそわとした気持ちを抑えながら、依頼人であるエリス・フラデュラー(gz0388)の到着を待っていた。
「遊園地なんて何年ぶりだろう」
 普段足を踏み入れる戦場とは違う雰囲気に気分が高揚してゆくのだが、恵の顔がすぐに曇った。
「すごく楽しみではあるんだけど‥‥ま、まさか、ね‥‥」
 呟き視線が落ちる。
 彼女の危惧していることはこれから現実のものとなるのだが、ここでは敢えて伏せておこう。
 恵は嫌な予感を振り払うように盛大に息を吐くと顔を上げた。
「あ! 一ヶ瀬さんも、来てたんですね!」
 目に飛び込んできた一ヶ瀬 蒼子(gc4104)の姿。
 蒼子は恵に気付くと、軽く片手を上げて近付いて来た。
「おはよう、元気そうで何よりだわ」
 依頼で何度か顔を合わせた事のある2人は、互いの息災を確認して笑みを零す。
 その上で今回の依頼について話し始めた。
「本部で依頼を見つけて、また何か起きたのかと思って見たら‥‥ねえ?」
 クスリと笑う彼女に、恵は「わかる」と言った様子で頷きを返す。
「依頼を見たら、遊園地のお誘いで驚きましたよね」
「少し拍子抜けしたのだけど、チケットを用意したのがキルトだって言うし、興味が湧いてね」
 悪戯っぽく笑んで見せる蒼子に、恵は頷きを返す。
 エリスはまだ来ていない。
 現地集合な上に、開園前なのだからそれも仕方がないだろう。
 2人は他愛ない雑談をしながらエリスを待つことにしたのだが、そこに新たな人物が合流してきた。
「やあ、久しぶり」
 声に目を向けると、そこには同じく依頼を何度か一緒にしたことのあるミコト(gc4601)が立っていた。
「ミコトも依頼を受けたのね。よろしく」
 言って蒼子は片手を上げたのだが、彼の顔をを見た恵の首が傾げられた。
「‥‥ミコトさん、少し顔引き攣ってません?」
 顔色自体は悪くないのだが、何と言うのだろう。表情には覇気が無いというか、曇っているというか‥‥とにかく普通ではない気がする。
「もしかして、遊園地が苦手とか‥‥?」
「え!」
 蒼子の何気ない呟きに、恵の目が輝く。
 だが直ぐにそれを咳払いで誤魔化すと、彼女はあと2人、何やら人を待っているらしい人に気付いた。
「あ、もしかしてあの人たちも‥‥」
 そう口にして声を掛けようとした時だ。
「お、お待たせ、しました‥‥っ!」
 カメラを抱えて走ってくる少女がいる。
 そう、エリスが到着したのだ。
「やぁ、エリスちゃん。招待、ありがとね」
 ミコトはそう言ってエリスを出迎えたのだが、その表情はやはり引き攣り気味だ。
 それはエリスも気付いたのだろう。
 彼の前で足を止めると、カクリと首が傾げられた。
「体調、悪い‥‥?」
「あ、う〜ん、気にしなくて良いよ。エリスちゃんが乗りたいもの、やりたいことをやれば良いんだよ」
 そう言っていつものように笑った彼へ、エリスはホッとした笑みを浮かべて頷きを返した。
 そして改めて集まってくれた能力者を見る。
「あ、あの‥‥今日は、来てくださって、ありがとうございます‥‥!」
 勢いよく下げられた頭、それに何かが触れた。
 顔を上げた先に居たのはイスネグ・サエレ(gc4810)だ。
 彼はエリスの頭にミニハットを乗せ、熱中症対策に水筒を持たせると、ニコリと笑んで頭を下げて見せた。
「エリスさん、お久しぶりです‥‥こうやってみると普通のカワイイ女の子だなぁ」
 ね? そう首を傾げる彼に、エリスの目が瞬かれる――と、そこに新たな声が掛かった。
「おはようございます」
 穏やかな声に目を向けると、そこには声と同じく穏やかな微笑みを向ける終夜・無月(ga3084)がいた。
「はじめまして、終夜 無月です‥‥今日は1日、楽しみましょうね」
 この声にエリスは元気よく頷きを返す。
 そしてその返事を待っていたかのように、開園を知らせるアナウンスが流れた。
「それでは、行きましょうか」
 そう言って無月の手が差し伸べられる。
 これにエリスの手が重なると、皆で遊園地の中に足を踏み入れた。

●夢の国にて
「さて、エリスさんは何処に行きたいですか?」
「えっと‥‥」
 遊園地のパンフレットを手に、イスネグが問いかけ、それにエリスが行きたい場所をピックアップしてゆく。
 その様子を耳にしながら、蒼子は落ち着かない様子で辺りを見回していた。
「楽しんでいますか?」
「え?」
 彼女の様子に気付いたのだろうか。
 にこりと笑んで無月が問いかけてきた。
 これに彼女の目が瞬かれ、僅かに耳が赤く染まる。
「べ、別に浮かれてなんか‥‥!」
 ぷいっとそっぽを向いた彼女に、無月は「おや」と声を零したうえで笑みを深める。
 蒼子は幼い頃に両親を亡くしており、遊園地というものに殆ど行ったことが無い。
 そのため、今回遊園地に来るのは楽しみだった。
 だからだろうか、それがどうも態度に出てしまうよう。
 それでもそれを表に出さないのは、彼女らしい。
 そして若干バツの悪くなった彼女の耳に、エリスの声が届いた。
「あれに、乗りたい‥‥!」
 どうやら乗り物が決まったようだ。
「う、嘘でしょ‥‥」
 エリスが指差したのはジェットコースター。
 それを目にして恵が思わず声を零す。
 その顔色は青い上に口元も僅かにだが引き攣っている。
「‥‥ダメ‥‥?」
「え‥‥だ、大丈夫‥‥あはははは」
 完全にカラ笑いだ。
 そう、開園前に恵が危惧していたのは、絶叫系の乗り物に対してだった。
 そして引き攣ったままエリスに手を引かれてゆく彼女を、何とも言えない表情でミコトが見詰める。
 そして、いざジェットコースターに乗る。ここまで来て、恵の顔色はいっそう悪くなっていた。
「‥‥だ、大丈夫‥‥じゃない、かも‥‥」
 物凄い勢いで落ちるコースター。
 その度に上がる悲鳴に危機感が募って行く。
「あ、ああああの、私ちょっと乗り物の身長制限に引っ掛かったからベンチで待っ‥‥」
「‥‥恵さん‥‥?」
 きょとんと首を傾げるエリスと目が合った。
 見つめ合うこと僅か。
「‥‥うん‥‥なんでもないわ‥‥」
 良く考えたらエリスの方が背は低かった。
 つまり、今の言い訳は不採用で、要はもう乗るしかないと言うことだ。
 恵は覚悟を決めてエリスの手を握り締めると、意を決してジェットコースターに乗った。

 そして――

「きゃー―――っ♪」
「いやああ‥‥落ちるぅうぅうぅ!!!」
 嬉しそうに歓声を上げるエリスと、悲鳴を上げる恵。そして、その直ぐ後ろには、絶句しながら手摺に掴まるミコトがいた。
「‥‥恵さん、無理しなくて良かったのに‥‥」
「きっとこれは、序章ですよ‥‥」
「え?」
 後方に同乗していた蒼子の声に、イスネグが悲鳴を噛み殺しながら呟く。
 それに蒼子は首を傾げたのだが、その理由はすぐに分かった。

――数十分後。

「もう一回、行こ‥‥?」
 そう言って首を傾げたエリスに、恵はギブアップを唱えた。
 そして彼女と同じくジェットコースターが苦手だったミコトは、蒼い顔をしたまま表情を引き攣らせる。
「ミコトさん‥‥顔色、悪い‥‥大丈夫?」
「あ、うん‥‥気のせいだよ、気のせい」
 努めて明るく振る舞うのだが、明らかにヤバそうだ。
「ミコトさん、あまり無理は――」
 思わず声を掛けた無月だったが、無情にも5回目のジェットコースターへの乗車は実行された。
「‥‥、‥‥きゃぁぁぁあああ!!!!」
「「「「!」」」」」
 今まで無言で悲鳴を押し殺していたミコトから洩れた黄色い悲鳴に、同乗していた全員が振り返る。
「ミコト‥‥」
 蒼子は胸の内で合掌すると、これで悲劇を終わらせようと心に誓った。

「じ、自分で操縦する分には問題ないのに‥‥」
 ベンチにぐったり項垂れるミコトと、同じく項垂れる恵。
 エリスはオロオロとした様子で2人を見ていたのだが、この場で一番元気なのはエリスだったりする。
 他の面々は若干、胃が押され気味だ。
「‥‥先輩、ジュース6本、1分で‥‥よろしく、お願いします」
 気分が悪ければ冷たい飲み物を。
 恵はイスネグにお金を差し出すと、人数分のジュース購入を頼んだ。
「1分‥‥そんなこと、出来るの‥‥?」
「ふっふっふ、見せてあげよう、能力者のパシリと言うものを、とぅ!」
 得意気な笑みを浮かべて駆け出したイスネグは、あっと言う間に見えなくなってしまった。
 これにエリスは驚くばかり。
 しかし他の皆は彼が何をしたのか心得ていた。
「‥‥瞬天速」
 無月が何気なく呟いたその声に、他の能力者の顔に苦笑が浮かんだ。
 そして一分後。
 彼は宣言通り戻って来た。
「どうだ!」
 得意気に胸を張る彼に、エリスは嬉々として拍手を送っている。
 それに満足そうに笑みを浮かべると、彼は皆にジュースを配ってエリスに目を向けた。
「さて、次はどうするのかな?」
「え‥‥えっと‥‥」
「どうせなら次は大人しいのが良いかもね?」
 ジュースを飲みながら周囲を見回していたエリスに、イスネグが助言を放つ。
 その声に目を瞬いた様子から、どうも絶叫系を梯子しようとしていたようだ。
「あ、それなら、あそこはどう?」
 絶叫系が回避できれば儲けもの。
 恵はジュースで回復した体力を発揮して、近くのホラーハウスを指差した。
「お‥‥お化け、屋敷‥‥」
 先程までの活き活きとした表情は何処へやら。
 ごくりと唾をのんで固まった彼女の顔を無月が覗き込む。
「苦手ならやめても‥‥って、エリスさん?」
「いく!」
 どうやら無理してジェットコースターに付き合ってくれや恵への恩返しのつもりらしい。
 彼女は勇ましく頷いて見せると、残りのジュースを一気に飲み干して歩き出した。
 そしてお化け屋敷に足を踏み入れたのだが――
「ふぎゃあああああ!!!」
 物凄い勢いで蒼子に抱き着いたエリス。
 蒼子は彼女の背を宥めるように叩きながら、出口を目指して歩いてゆく。
 そしてその後ろからは、恵が楽しそうな声を上げて笑っているのが聞こえていた。
「あははは、何これ、面白い! イスネグさん、このお化け、良くできてますよ!!」
「‥‥いや‥‥泣くぞ、わりと本気で泣くぞ」
 イスネグにお化けのリアル具合を解こうとする恵と、本気でお化けを怖がっているイスネグ。
 完全に逃げ腰で、半分以上は恵の影からお化けを見ている状態だ。
「なんというか‥‥凄いわね‥‥」
 そう蒼子が呟いた時だ。
「ひぎゃああああああ!!!!」
 再び響いた悲鳴に、蒼子は慌ててエリスを抱きしめた。
 だがどうやら彼女ではなかったらしい。
 呆然と前を見詰めるエリスに気付き、蒼子の目も前を捉え、そして固まった。
「‥‥大丈夫ですか?」
 無月に必死にしがみつくのはミコトだ。
 それを無月は平然とした様子で宥めるのだが、何とも言えない構図だ。
「‥‥そう言えば、入り口で蒼い顔してたかもしれないわね‥‥」
 思い返せば「大丈夫、大丈夫」と口中で呟きながらお化け屋敷に入っていた気がする。
 つまり、ミコトは絶叫系に続きお化け屋敷もダメだったと言うことだ。
「災難ね‥‥」
「ぅあああああ!!!」
 お化けに脅かされて再び無月にしがみ着くミコトを見て、蒼子はそっと額に手を添えた。
 当のエリスは怯えることも忘れて食い入る様に2人の様子を見ている。
 そして出口まで辿り着いた所で、ミコトは咳払いをしながら無月から離れた。
「‥‥コホン、失礼」
 耳まで真っ赤にしながら呟くが、既に色々遅い気がする。
 それでも――
「ミコトさん‥‥面白かった?」
 笑顔で駆け寄ってきたエリスを見ると、彼は「まあいいか」と苦笑して、「次は何に乗る?」と問いを向けたのだった。

●Surprise
 ある程度の乗り物を乗り終えた頃、無月は自らの時計に視線を落とした。
「そろそろ時間ですね」
 言って、彼の顔がエリスの顔を覗き込む。
「エリスさん、折角なのでお城まで行きませんか?」
「‥‥お城?」
 目を瞬くエリスに、彼は微笑んで頷く。
「はい、そこにキルトさんからのサプライズが‥‥」
「!」
「行きましょうかお姫様?」
 無月の声に目を輝かせた彼女の前に、スッと手が差し伸べられる。
 その主は蒼子だ。
「エスコートさせてもらうわね」
 彼女は自らの胸の前に手を添えると、悪戯っぽく片目を瞑って見せた。
 その様子を見ながらふとミコトが呟く。
「お城に招待って‥‥お姫様みたいな感じかな?」
 お城と言えば王子様やお姫様のイメージが強い。
 だが実際に足を運んでみて、何故キルトがこの場所を選んだのかわかった気がした。
「凄いわね、こんな場所があったなんて‥‥」
「そうだけど‥‥お城の貸切って、ちょっとやり過ぎじゃない?」
 パレードが一望できるお城の展望台。
 キルトはそこを貸し切ってエリスにサプライズを用意していた。
 蒼子と恵はそのことに感心して呟くと、ふとエリスを見た。
 これに他の面々も彼女に目を向ける。
「今度はきっと一緒に来れますよ‥‥」
 お城に来た時から少し様子がおかしかった。
 元気がないような、落ち込んだ様子の彼女に無月が声を掛ける。
 それにエリスの目が瞬かれる。
 そして頷きを返したところで、更なるサプライズが訪れた。
「お客様方、記念撮影は如何ですか?」
 遊園地のスタッフだろう。
 微笑みながら進言する女性に、エリスの顔が一気に明るくなる。
「これは、撮るしかなさそうですね」
「だね」
 イスネグの声に頷きながら、ミコトがエリスを中央に促す。
「では、撮りますよ!」

――3、2、1‥‥

「うわあ!」
 シャッターが下りた瞬間、青の鳥が羽ばたいた。
 それに合わせて舞い上がった花弁に歓声が上がる。
「‥‥気障ね」
「気障だね‥‥」
 ミコトと蒼子は互いに口にして頷くと、頬を紅潮させて空を見上げるエリスに目を向けた。
「まあまあ、エリスさんが楽しんでるからイイじゃないですか」
 ね? 恵はそう言って笑みを浮かべると、エリスと同じく空を見上げた。

●more
「こ、これ、落ちないよね?」
 ぎゅうぎゅう詰めの観覧車。
 その中で怯えたように小さく鳴りながらイスネグが呟く。
「定員オーバーな気もするけど‥‥まあ、乗って良いって言うんだから、大丈夫でしょ」
 蒼子はそう言いながら膝に乗ったエリスの頭を撫でた。
 観覧車から見えるのは、遊園地の夜景だ。
「‥‥また、みんなで、こんな時間が過ごせると良いね」
 ミコトは夜景を見詰めながら呟く。
 この声に恵が頷くと、ふと無月が声を零した。
「世界は‥‥少し違う位置から見るだけで随分と違って見えるものです‥‥」
 今見える景色も、戦場で見る景色も現実で、世界は色々な顔を持っている。
 その声にエリスが目を向けようとした時、観覧車が最上部に辿り着いた。
 そして――
「これは凄いね」
「本当‥‥良い景色だわ」
 目の前で咲いた大輪の花。
 それを前に各々の口から歓声が漏れる。
 こうして忘れられない景色を胸に、夢の国の夜は深けて行ったのだった。