タイトル:【AP】究極の薬マスター:ArK

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 5 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/04/10 11:38

●オープニング本文


※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。


 【ついに発見!? 究極の薬】目立つ文字で大々的にそれは報じられた。
 完全に花粉症を身体から排出する薬が発見されました!
 開発者はウソマジツ研究所所属マリナ・ノワール女史。
 幾度も試行錯誤を重ね完成した薬は、瞬時に花粉症の原因となる物質を患者から消し去りました!
 しかし実用化に向けてはまだまだ問題が多いとのことで――――プツッ。


「みなさん、この度はご協力ありがとうございます。既にテレビ等でご存知と思いますが、花粉症撲滅薬が完成しました」
 凛々しく語るのは白衣のマリナ。年齢不相応に大人びて見える。
「しかし‥‥ナイショですけど本当に偶然の産物だったんです。昼食のあまり物をちょっと出来心で入れただけなんですよね」
 製薬中になにやってるの、と若干あきれた視線を投げるものもちらほら。
「ただ、あの食材なんですが、特殊なところで採取したものでして、ついでのついでにちょこっとしかなかったのです。でも、おいしいんですよ?」
 物事の誕生は、ときに気まぐれがもたらす。
「――味はともかく、量産のため、みなさんにはそれの採取をお願いします。残念ながらサンプルになるものはありません。採取場所のメモだけです」
 メモ帳のコピーを渡しながら説明するマリナ。メモには一匹の魚の絵と、もやもやした海草のようなものが描かれている。
 そんなところ、1人の有志がマリナへ尋ねる。
「失礼ながら、女史がいかれてはいかがでしょう? 現物をお知りなのですよね?」
 それは最もな意見、しかし――
「それは山々なのですが、この後取材スケジュールが詰まってて‥‥手があかないんです‥‥申し訳ありません。あ、あと何かおいしそうなものあったら採ってきてもらえるとうれしいです♪」
 マリナはにっこりと微笑んで答えた。


【マリナ女史のメモ】
 (探索対象)カンパゲリラ洞窟内、地底湖。
 (採取対象)湖中に住む巨大魚エープリル。地底湖に沈む遺跡に生えるシーフール。
 (特記事項)人面魚とか人食い鮫とかが居る。エープリルが美味しい。

●参加者一覧

ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
百地・悠季(ga8270
20歳・♀・ER
山下・美千子(gb7775
15歳・♀・AA
アレクセイ・クヴァエフ(gb8642
15歳・♂・DG

●リプレイ本文

●嘘真実研究所
「花粉症の特効薬発見なんて、流石よね〜。あたしもうかうかしていられないわね」
 配布された資料に目を通し、言葉するのは百地・悠季(ga8270)。
「百地さんは確か‥‥、ヤンデレの発症と制御に関する研究中でしたね。ご自身の研究も大変なのに今回はすみません」
 同僚の研究内容を思い出し、マリナ・ノワールは、それを中断し応援に駆けつけてくれたことを感謝する。
「はいはーい♪ 美味しいモノときたら、あたしを忘れえてもらっちゃこまるな〜」
 部屋の隅のほうで茶菓子を頬張っていた山下・美千子(gb7775)が元気にやってきた。
「ええっと山下さんは‥‥猫舌撲滅協会からの派遣でしたね、ご足労ありがとうございます」
 マリナは手元の協力者資料をパラパラと捲り、確認するや深々と一礼。
「そうそ、猫舌ってフォンデュ系の敵だから撲滅目指して頑張らないと、ってね」
「あと‥‥こちらのお2人が‥‥」
 視線を察した2人が恭しく立ち上がる。
「真能力開発所から護衛として指名されてきた。宜しく頼む」
 低い声で淡々と挨拶を述べるホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)と、
「同じく協会所属、まだアーマー級ではあるが、ナイト級に負けない自信はあります! 無事任務達成させてみせますよ!」
 その隣でアレクセイ・クヴァエフ(gb8642)が引き締まった敬礼をした。
「はい。それでは――」
 と、一通りの挨拶を確認し、説明を続けようとしたところ、廊下からバタバタと大きな、明らかに慌てている足音が聞こえ、突然扉が開け放たれた。
「マ、マリナ君、大変だ! やっと背後霊の実体化に成功したんだが、どうも怨霊の類らし――って、あれ?」
 飛び込んできたのは鬼気迫る表情の夜十字・信人(ga8235)。そしてその背後には半透明に霞む、かわいらしい少女がぴったりとくっつき寄り添っていた。
 どちらともなく目が合うや、凍りついたように動きを止める一同。
「‥‥えーっと‥‥みなさん、なんのシュウカイ中で‥‥?」


●ゆけゆけ研究員
 見渡す限り大海原の無人島。一同は。その中央付近にあるカンパゲリラ大空洞に降り立った。目的地はこの地下深く――
「魚と草の収集ね、っと。うん、やっぱり同僚同士協力しあうのが筋だよな!」
 スクラップ帳をバックパックに放り込み、意気込む夜十字。初めは怨霊少女の対処を、と騒いでいたのだが、目的地が湖と聞くや、改まり協力を申し出たのだ。
「ともかく、そろそろ集中したほうがいいぞ。少し急な斜面が続くようだ」
 先頭を歩いていたホアキンが全体へ注意を促す。
「ん〜、あのマリナが行けたんだし、そんなに危険じゃないんじゃない?」
 マリナの運動神経を思い出しながら百地が思いついたようにぽつり。
「‥‥いや、何かが滑り落ちた痕跡が闇の奥に続いているところから察するに」
「うわぁ、豪快に滑り落ちたって感じ‥‥気をつけたほうがいいかも」
 ホアキンに促され、状態を覗き込んだ山下は絶句する。露出した岩盤に蒸した一面の緑が、ある一部だけ一直線に削り取られていたのだ。
「じゃ、俺は荷物担いで殿を努めますのでお先にどうぞ」
 潜水器具の運搬を担うアレクセイが照明を持ち、足場を照らす。尚、器具といっても人数分の薄手スーツと、錠剤が入った小瓶だけだが。
 下りながら手をつけている壁を見て山下ぎょっとした。
「な、何これ‥‥怖いよ!?」
 そこには意味ありげな複数の紅い手形が、苦しみもがいたように、べたべたと擦り付けられていたのだ。その上部の岩は何か文字のようなものが刻み込まれているが、解読は出来なかった。
「これはまさか‥‥!」
 一瞬、嫌な悪寒が夜十字の背を通り抜ける。背後の怨霊少女もそれに合わせ、妖しげな笑みを浮かべた――が。
「ん〜‥‥これってばマリナの手形じゃない? 大方どこかで手のひら怪我して、昇る時か降りる時にぺたぺた、って」
 朱色の手形を鑑定した百地がずばり言い切った。百地自身の掌と重ねた大きさが大体それだったのだ。
「これはまた味というか、雰囲気があるな‥‥」
 デコボコに刻まれた壁を手すり代わりに移動しながら、ホアキンは感心したような、呆れたようなため息を漏らすのだった。


 天井から突出した岩を避けながら進んでいくと広間らしき場に出た。
「この辺りが目的地のようだが‥‥」
 メモの地図と方位磁石、そして足元を確認しながら闇の中に進み出るホアキン。そこには冷えた空気が滞留していた。
「う、さむっ! だけど実は寒いのは平気なんだよね」
 首筋に触れる冷気に身震いした山下だったが、すぐに慣れてしまったようで、灯りを手に広間の調査を始める。
「噂の地底湖はどこだ! ‥‥何、こっちにありそうだって?」
 いつの間に意思の疎通が可能になったのやら、夜十字に付きまとう怨霊少女が、彼を手招きしていた。釣られて歩き出す宿主。無防備にも、誘われるままに進んでいくと不意に足が地を失った。
「うわ――」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
 巨大な水音と、黄色い悲鳴が同時に木霊した。水音は夜十字が湖に落ちた音。そして、
「骨、骨っ!! 一杯転がってるよぉ〜」
 アレクセイが抱えていた荷物を投げ出して駆け寄り、該当の部位を照らした。そこには大量に転がる白骨と、力なく座り込んでいる山下の姿があった。遅れて百地、ホアキン両名も駆けつける。
「これは‥‥」
 しゃがみこみ、慎重に骨の1つを拾い上げるホアキンと、その手元を照らすアレクセイ。
「「魚の骨、だね」」
「若干他のも混じってるけど」
 確認するや、声を合わせてそう告げた。途端、きょとんと放心してしまう山下。恐る恐るじっくりみてみると確かに魚を思わせる部位が多かった。
「な、なんだぁ。驚いて損したっ!」
 ほっとして苦笑い。
「‥‥すご〜く器用な、無作為の演出を感じるのはあたしだけ?」
 おそらくその痕跡を残したであろう要因を思い浮かべつつ、百地は誰にでもなく呟くのだった。
 それからまもなく、這い上がってきた夜十字が湖の場所を知らせ、入水準備に取り掛かることになる。
「女史曰く、このスーツを着て、この錠剤を飲めばいいらしい。若干の不安を感じるが‥‥」
 ウェットスーツにも見える服と、白い小さな粒を配布しながら説明するアレクセイ。
(「全部脱がなくても着れるからいいけど、嫌な視線を感じるわね」)
 百地が羽織っていたコートを脱ぎ、スーツを纏いながら感じる視線を追うと、
「遠慮しないで早く着替えるんだ! 早く行かなければならないだろう!」
 やましい気持ちなど微塵もないという物言いで、夜十字がじっと見ていた。百地は視線が合うや、即座に言葉をまくし立てて追いやった。そうしているうちに全員が着替え完了。情報を頭に叩き込み、不要な荷を残して潜水開始。


 支給された水中用ライトを手に探索を開始する一行。ホアキンは水中戦に備えて両手に武器を構える。それを補佐するようにアレクセイが追い、先を照らす。
『なぁなぁ、あの魚美味そうに見えるぞ!!』
 どこから取り出したのか、ホワイトボードに文字と魚の似せ絵を描き、照明で照らして見せる夜十字。
「あんた、しゃべれるわよ?」
 こぽっ、と小さな泡を吐きながら百地がしゃべってみせた。想定外の出来事に、夜十字の手は力を失い、その中を滑りぬけてボードは水面へと上昇していくのだった。
「あー、ピラニアの群れか〜。美味しいって噂だけど本当かな? あ、尾びれにリボン結んでる子がいる〜」
 潜水前の尻込みは何処へやら、いざ水面下の探索が始まると、山下は目を輝かせてあちこちを見て回っていた。
「おい、あまりはぐれるな、人食い鮫がいると書いてあったろう」
 普段は見ることがない幻想的な光景なのはホアキンも承知していた。しかし敵がいることもまた事実、注意を促し、目的の深く深い場所にある遺跡を目指すのだった。
 途中、獲物を見つけたとばかりに近寄ってくる小ぶりの肉食魚がいたが、山下が振り替えるや、すぐに反転し泳ぎ去って行くことしばしば。また通りすがりに電気をなすりつけてくる魚は、それぞれ手にした獲物で軽く退場してもらうことになった。
「これはまた、見事に屋根部分がなくなってるなぁ」
 上部から湖底を照らし、アレクセイが言い放った。目的の遺跡は発見したが、見事に屋根部分がなく、中の構造の殆どが上から見て取れたのだ。石の壁際では緑の陰が揺らいでいる。
「あの中にシーフールがあるのか‥‥降りるぞ」
 ホアキンは着地体制に入り、ゆっくりと湖底の砂を巻き上げた。
「昆虫の翅みたいな形してたよね、どれだろ〜?」
 1つの群生地を書き分けながら山下が呟いた。殆どが深い緑色をしていたが――
「あ、これじゃない? 白いヤツ」
 白く透き通った藻を手に取る百地。それは小さな若芽のようだった。
「成長しきるとこの緑になるのか。若いのだけ探せとは面倒だな。アレクセイ、捜索は任せて警戒にあたるぞ」
「はいっ」
 水草に目を凝らし、周囲への警戒が緩んだ隙に奇襲を受けては叶わないと、ホアキンは水の流れ、頭上を泳ぐ魚の群れに注意を向けることにした。
「おーれはー、降りるんだ! 何で引き上げようとする!」
 半端な位置で、まるで溺れていると見紛いかねない動きをしているのは夜十字。怨霊少女が黒い髪を水草のように絡め、夜十字の動きを封じていた。落としたり引き上げたりなんなんだ、と四苦八苦の1人(?)劇場。


 そんな愉快な採取作業が出来たのも僅かの時間だった。ホアキンはアサルトライフルで近づかれる前の肉食魚を撃墜。アレクセイが銛の様に魚を串刺しにしていた時、小さな魚達が周囲から消えていったのだ。
「何か変だな。まるで何かから逃げ出すように――」
「‥‥上か!」
 ホアキンは上部を仰ぎ見た。するとそこには巨大な口をあけて魚の群れを追い、飲み込み泳ぐ巨大魚が居た。
「これがエープリル‥‥切り身にしないと運びにくそうだな」
 ため息をつきながらも、大きな獲物に狙いを定めるアレクセイ。射程を見極め、せいっ、と槍を投擲する。しかしその矛先は水の流れに飲まれたのか、鱗へ到達する前に勢いを失いゆっくりと跳ね返った。
 突然の翳りに、採取作業に準じていた2人も気付き、それぞれ武器を手に合流。シーフールは百地が持参したケースに仕舞い、確保した。
「こんな大きいのに美味しいのかな〜? それを知るにも頑張って捕まえようっ!」
 山下が元気よく蛟を掲げ、正面から突撃。広げられた口の中へ槍をつきさす形。あやうくそのまま山下自身も口の中へ飛び込みそうになるが、慌てて口の端を蹴り、反動で離れた。
「まったく、何を食べたらこんなに育つんだか」
 近接し、持てる力すべてをこめた一撃で鰓を狙うホアキン。ゆっくりと開閉運動をしているそこが開いた瞬間に一突き。途中で何かに遮られる感触があり、貫通には及ばなかったが、傷口から大量の赤い液体が水中に溶け出してきた。
「俺を忘れてもらっては困る!」
 魚籠をいっぱいに充たした夜十字が、真上からアンダロイドの水刃を掲げ、何かに引っ張られていると見紛う程の速度で降下してきた。そのまま背びれ付近に着地、斬撃を浴びせる。リアクションが少ないため痛みという痛みを感じているのか不明だが、次第にエープリルの動きは鈍くなっていった。
「じゃ、これの運び方を相談しないとね」
 百地がそう言いながらエープリルの周囲を回っていた時だ、
「皆、注意しろ! 何かが来る!!」
 戦地が確保できるよう照明を維持していたアレクセイが突如叫んだ。全員が照らされた方角へ目をやると、しなやかなフォルムの巨影がこちらにやってくるところだった。
「く、血の臭いを嗅ぎつけて来たか‥‥サメだ! 複数いる!」
 引き締まった夜十字の声が戦況を伝えるとほぼ同時、サメ達がエープリルに到達し、その肉に噛り付こうと牙を剥いた。
「人の獲物横取りなんていい度胸! 返り討ちにしてフカヒレにしちゃうよ!」
 常に相手の正面に位置取ることを留意していた山下が、突進してきたサメの鼻頭目掛けて強い一撃を繰り出す。相手の推進力も相成り効果は抜群だ。
「本当、目敏いわね‥‥はっ!」
 身じろいだ瞬間を狙い、百地が止めの一撃を加える。
「逃げ場を封じてから迎撃っていうのも戦略でね」
 エープリルの鰓を貫いた時に浴びた血を利用し、サメ達を遺跡へ誘導するのはホアキン。あわや追いつかれようとした所で選手交代。護りを強化したアレクセイが間に割り込み、その身を壁とする。方向転換の間に合わなかったサメは頭から突撃。衝突の衝撃により全反応が鈍る。その瞬間を狙い、ホアキンが再び登場、両断。2人は遊撃を繰り返すのだった。


●続・嘘真実研究所
「海草とのマリネなんか美味しいですね」
 目的のものを入手した一行は研究所に無事帰還した。
「また採取出きるようにあまり荒さないようにはしてきた――って、マリナそれは味醂!」
 採れる限りの採取は尽くしたが、今後のことも考え場の維持はした、とアレクセイが報告する。
「流石に丸ごとの塩焼きは出来ない‥‥な、あれでは。切り身は人数分でいいか?」
 折角なので美味しいと噂のエープリルを食せないかと持ちかけたホアキン。少々ならば問題ないとなり、今、調理場に居る。
「えへへ〜、ちゃんとデザートにケーキもあるんだよ♪ 無事成功したお祝いしないとね!」
 にこにこと食卓の準備を進めるのは山下。まだまだ色気より食い気のお年頃。
「仕事の後に甘いものは重要よ」
 それは家事全般を得意とする百地が焼いたもの。味は保障する、と艶やかな笑顔でウインク。
「あ、信人さん、そういえば何の用でしたっけ?」
 思い出したように問いかけるマリナ。「ん?」と採って来たカラフルな魚を焼きながら顔を上げる夜十字。
「次の研究対象に変更したから大丈夫だ。どうも俺に気があるようだし祓うのも悪いと思うしな」
「よかったですね! こちらも皆さんのおかげで無事量産出来そうです。今度、何かありましたら協力しますね」
「マリナ! それ片栗粉!」
 アレクセイの慌てた声が響き続けるマリナの手元。正規レシピはきちんと用意したのだが――案の定見てない。『王道だけでは新発見は出来ない』だとか。

「それでは今回の成功と功績を祝って乾杯!」
「「「かんぱーい!!!」」」
 明るい食卓に百地の声が、みんなの声が重なった。