タイトル:【AEE】次世代MBTマスター:碧風凛音

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/11 03:24

●オープニング本文


●試作機完成
 アプソリュ・エスポワール・エタ研究所、通称AEEに、一つの朗報が舞い込んだ。
「所長、試作戦車が完成したとの連絡が入りました」
 それは所長のジャンヌ・ライラックの元に研究所の職員が渡したデータだった。
 彼女は次世代主力戦車の開発を行い、先月それをコンペにかけて試作機の制作を依頼した。そして待ちに待った完成である。彼女は早速それに目を通す。

 名称:MR−200 アストレア
 乗員:乗員:2名。ただし1名でも戦闘可能
 重量:43t(基本車体重量のみ、装備分は含まず)

 そこでライラックの目がとまった。
「ちょっと、重量43tてどういうこと? 少なくとも37tは切るように設計したはずだけど」
「その、それはですね‥‥」
 恐縮する職員に変わって、副所長の如月・孝之(きさらぎ・たかゆき)が説明する。
「第一に、シナプス網を形成するためのアンテナが大きくなりすぎたこと、第二に、M1のパーツを流用したため重量が増えたことです。残りの部品もハンドメイドなので、強度と軽さのバランスを取るのが難しかったと現場からは言われました。それでもKVの技術と理論を流用した複合装甲のおかげで重量は減っています。防御力もM1よりは若干下がりましたが、M1の全装備重量が59tですから、これは成功と言っても良い部類のはずですが」
 その言葉にライラックは一度考えてから、答えた。
「そうね、確かに成功と言っても言い部類だけど、あたしがやりたいのは輸送機に搭載して、複数車輌同時展開ができる軽量な戦車よ。少なくともあと8tは減量が必要ね」
「それは、アストレア専用の生産ラインができれば可能でしょう。それよりも、続きをご覧ください」
 促されてライラックは資料に再度目を通す。

 主砲:120mm−55口径滑空砲 GD−120。攻撃力はM1ライフル砲の1.6倍、磁力砲より僅かばかり上。

「うん。主砲のスペックは良いわね。ところで、滑空砲も軽量化できないかしら? そうすれば少しでも目標に近づくと思うんだけど」
「検討しておきます。それから、これから実演することになりますが、射撃管制装置は私が自ら開発の指揮を取りました。かなりの距離での走行間射撃が可能なレベルにはなっています」
 その言葉を聞いてライラックは微笑んだ。そして「それは期待しているわ」と言い、資料に再び目を落とした。

 最高速度:90km/h これは目標値と同等である。
 特殊兵装:データリンク式パラボラアンテナ

「先ほども言いましたがアンテナが試作段階なためかなり大型になりました。これを小型化していけば数tの減量は可能なはずです」
「それは期待しているわ。でも、M3砲は結局間に合わなかったわね」
 呟くライラックに声をかける者がいた。兵器運用アドバイザーの、ヨハン・アドラー(gz0199)である。
「まあ、今回も工場の方には色々無茶を言いましたからね。試作機ができただけでもたいしたものです」
「そうね。たしかに試作段階にしてはまずまずの性能というべきね。それじゃあ早速で悪いんだけど、試作機の性能テストと改良案をコンペにかけて頂戴」
「了解しました。なお、M3砲に関しては他の研究所に開発を委託する方向で話を進めています。それから、マウント型の副兵装ですが、KVの人型形態での手持ち武器を使うことはコストパフォーマンス面から考えて廃案にすることになりました。戦闘機形態時のみ使用可能な兵装ならば何とか採算がとれるレベルです」
「うーん。それじゃあKVが使用して本来の能力を発揮するもので、かつ戦車で使用してもキメラに対抗できるだけの火力を持つ副兵装を考えないと駄目ね」
「そうですね。それもコンペにかけます」
 アドラーがそう言って所員に指示する。
「如月副所長、あなたは演習場で射撃管制装置の実演テストをやってちょうだい」
「はい。すぐに手配いたします」
 そして1週間後――

●HENTAI
 1週間の準備期間を経て、ドローム社の上役とUPC北中央軍の佐官を迎えての試作機のテストが行われた。
 演習場には完成したばかりの試作MR−200アストレアが演習場に1輛だけ佇んでいて、約3kmほど先には標的が配置されている。
「では、テストを開始します。まずはUPC北中央軍の第三世代戦車と同じ3kmからの走行間射撃を行います」
 そして開始の合図が流れると戦車兵はアストレアを操作する。それは重い音を立てて走り出すと、主砲であるGD−120滑空砲を標的に向ける。そして、砲弾が放たれる。
 一発、二発、三発‥‥をれは次々と標的に命中する。
「おお、さすが日本の技術を取り入れたことだけのことはある。やはり日本人はHENTAIだな」
 誤って定着してしまったHENTAIのイメージを元に、軍人が唸る。
「砲身を短くして大口径にした分射程距離は落ちていますが、最大射程は4kmほどになります。もちろん百発百中というわけにはまいりませんが‥‥」
 アドラーが軍人にそう説明する。
「いや、3kmでも十分だ。それに、キメラ相手ならこの距離はまず無いだろうしな」
 そう言ったのはドロームの上役である。
「それで、威力の方はどうなのだね? スペック的にはM1を上回っていると聞いているが?」
「それに関しては、次のテストで御覧にかけましょう。では、あちらを御覧ください」
 アドラーが示した方向には、KVが人型形態で立っていた。
「撃墜され、これから分解して再生するKVですが、キメラの代わりに用意いたしました。KVの防御力は皆様もご存じかと思われます。ヘルメットワームをはじめとしたバグアの兵器相手に渡り合える代物ですからね。今回は、実際にキメラと戦闘する距離であろう500mから、あのKVに向けて主砲を発射します」
「ほほう。それは見物だな。はたして廃棄前とはいえKV相手にどれほどの打撃を与えられるのか‥‥」
 ドローム社の上役が好奇心を丸出しでそういった。そしてアストレアが移動して滑空砲を発射する。その砲弾はKVの装甲を削り、それを見た者達が歓声を上げる。
「ふむ。エミタとSESを介していない空のKVだとは言え、あれだけの威力なら主砲に関しては十分ですね。あとは所長の目標である軽量化と、副兵装の開発を進めればいいと思いますよ。戦略を根本から変えられるなら、M1を駆逐できるでしょう。それができるのであれば予算は回します」
 そう言ったのはまだ若いドロームの上役である。
「はい、そのつもりです」
 ライラックは若干緊張して答える。そのほかにもいくつかの試験項目を行い、試作機のテストは無事終了した。
 今後の課題として残ったのは、滑空砲とアンテナのみで現在の重量であること。副兵装の開発。ことに副兵装はKVと共用になるので能力者の要望をできるだけ取り入れつつ、コストパフォーマンスが良いものを開発しなければならないと言うことだ。
「というわけで、今回のコンペを皆様にお願いすることになりました」
 アドラーはそう言って能力者達に微笑んだ。

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
綿貫 衛司(ga0056
30歳・♂・AA
クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
戌亥 ユキ(ga3014
17歳・♀・JG
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
エドワード・リトヴァク(gb0542
21歳・♂・EP
アーサー・L・ミスリル(gb4072
25歳・♂・FT

●リプレイ本文

「と言う訳で、8名の能力者の方にお集まりいただきました。よろしくお願いいたします」
 アプソリュ・エスポワール・エタ研究所、通称AEE。フランス語で絶対的な希望の国という意味だ。その研究所の一室でそう言ったのはヨハン・アドラー(gz0199)である。そして彼は能力者達に軽い自己紹介を求めた。
「この研究室独特の空気、なんか落ち着くなぁ。水上・未早(ga0049)です。現場を知らない素人が生意気言いますけれどもよろしくお願いします」
「綿貫 衛司(ga0056)です。旧陸自出身です。元兵士の立場からも色々と意見を出したいと思います」
「クラリッサ・メディスン(ga0853)です。KVばかりで戦争が出来る訳ではありませんし、優秀な戦車が配備されれば、それだけ敵に傾いた針をこちらに引き戻す事が出来るはずです。及ばずながら意見を述べさせて頂きますわね」
「新居・やすかず(ga1891)です。軽量化とか言うのは簡単ですが、実際にやるとなると難しいとは思いますが、精一杯意見を出させていただきます」
「戌亥 ユキ(ga3014)です。なんか色々と頭が痛いけど、それでも色々と考えてきました。よろしくお願いします」
「カルマ・シュタット(ga6302)です。M1にはどうしても不安が残るので、いいものができるように頑張りたいと思います」
「エドワード・リトヴァク(gb0542)です。ゼカリア以来久しぶりに戦車に関わりますが、戦車が時代遅れじゃないってところを見せたいと思います」
「アーサー・L・ミスリル(gb4072)です。元テストパイロットです。久々に戦車に関わりますがよろしくお願いします」
 能力者達の自己紹介が終わるとアドラーは自分の上役達に目配せをした。
「所長のジャンヌ・ライラックです。『戦争は物量と適切な戦略・兵站である』というのが信念で、主に量産化及び非能力者向けを前提とした機体・装備の研究をしているわ」
「副所長の如月 孝之です。日本で戦車やKV開発に携わっていた縁でこちらにおります。よろしくお願いします」
 そして最後にアドラーが改めて挨拶をする。
「ヨハン・アドラーです。兵器運用アドバイザーをやらせていただいております。よろしくお願いします。では早速ですが、まずは今回の最大の問題点である軽量化についての意見からお願いいたします」
 アドラーがそう言うと、最初に水上が口火を切った。
「そうですね、エンジンや足回りの軽量化を行うといいと思います。まずエンジンですが、およそ車両と区分されるモノの軽量化はこれ抜きでは始まらないと思っています。送油、排気、冷却系等のレイアウトの効率化を図ることでエンジンブロック自体を小型化等ですね。足回りに関してはKVの装輪技術を転用してはどうでしょうか? ブーストに耐えられるKVの技術を転用すれば軽量化が見込めると思いますが」
 それに答えたのは副所長の如月だった。
「前者に関しては問題ないでしょうね。我々の設計力の問題となる訳ですから。ただ、KVの技術は高価で強度な材料を用いているから可能な部分もありますので、転用は不可能ではありませんが難しいでしょう。最大のデメリットはコスト面ですね。KVのような汎用性が少ない分、安価で大量に導入できるのが戦車の強みですので、コストが上がりすぎるのは問題です」
「そうですか。では、ゴムキャタピラを使ったキャタピラの軽量化やKVアクセサリの軽量型燃料タンクの転用等を考えたのですが、これはどうでしょう?」
 新居の質問に今度はライラックが答えた。
「先ほどの案と同じく、前者は可能ですが後者はNGですね。KVのアクセサリの転用は基本的に無理です。設計思想が戦車とは根本的に違いますので。他にエンジン回り足回りに関して何かご意見はあるかしら?」
 ライラックが能力者を見回すが、それ以外は特に無い用である。
「では、他の軽量化案があればお願いいたします」
 アドラーが能力者達に発言を促す。それに応えて発言したのは戌亥だった。
「うーん。軽量化って難しいわよねえ。そう言えば私もそろそろダイエットを‥‥っととと、今のはオフレコでお願いします。えっと、パラボラのメッシュ鏡面化とか、部品の数を減らしたり一体化したりするとか、素材を見直すとか色々ありそうなんですけれども、どうでしょう?」
「これもオフレコでお願いしたいけど、わたしもダイエットを考えているのよね。でも研究職という仕事上‥‥いえ、何でもありません。そうですね、メッシュ鏡面は弊社の技術ではないので無理ですけど、部品の数を減らすことや一体化させることは可能だと考えます。ただ、それには『アストレアが売れる戦車である』と証明されて専用のラインを貰えないと難しいけどね。当面はM1のラインを間借りしながら専用のパーツを作りつつ、新型の複合装甲の開発を継続したいと思います」
 ライラックが答えると、綿貫が手を挙げた。
「先ほど挙がったパラボラですが、一律に全車両に搭載せずオプション化した方がいいのでは? その上で小型化し以降のバリエーションタイプとも共用できる仕様を整えるとかはどうでしょう?」
 その綿貫の言葉に賛同するように、シュタットが意見を述べた。
「俺も綿貫さんと同意見だな。そのうえで改良によって小型化、軽量化が可能になったら全車両に搭載するなら搭載する形にした方がいいと思う」
「そうだね。試作品だからかもしれないけど今のアンテナじゃ重すぎますね。お二人の意見に加えて、指揮車や情報解析車を中継して情報をやり取りしたほうがいいかなとおもいますよ」
 それに続く形でリトヴァクがそう言う。
「おっと、先に言われちゃったか。俺もみんなと同意見だよ」
 ミスリルがそう言うと、アドラーが答えた。
「そうですね。前回の報告書を覆す形になってしまいますが、アンテナはオプションにして別途開発を進めて行くという方向で問題ないでしょう。指揮車を中継する形での情報のやりとりはワームのいる戦場ではかなり非効率的ですが、実戦テストの段階ではキメラを主な相手にするのでいいでしょう。どうですか、所長?」
「問題ないわ。他にパラボラアンテナについて何かありますか?」
 発言が止まる。それを受けてアドラーが「他の軽量案があればお願いします」と言うと、綿貫が発言した。
「砲身の軽量化も必要でしょうね。砲身軽量化に関しては以下の案が思いつきますが同時にデメリットも感じます。まず砲身を更に短砲身化することです。これは砲身短縮による砲弾初速減とこれに伴う貫徹力の低下、有効射程の短縮等のデメリットがありますね。その分砲身寿命は伸びるかもしれませんが。
 次に砲身肉厚を薄くすることです。デメリットとしては砲撃時の砲腔内圧に対する耐久力の低下すなわち、暴発事故の誘発、砲身寿命の低下等があります。ただ、肉厚を薄くするのは使う側、傍にいる歩兵の側からは飲めません。自殺行為に等しいと思いますので。
 最後に、材料を見直し、軽量・強靭な素材で作り直すこと。これは開発期間とコストの増大がありますね。手っ取り早くやるなら短砲身化、現状の性能を追求するなら再開発を推します。関西UPC軍の第三世代戦車開発の際、採用された砲よりも国産の試作砲が良好な成績を修め調達価格に貢献したと聞きますが?」
 最後の方は如月を見ながら言った。如月が日本で戦車開発に携わってきたことを考えてのことだろう。
「そうですね、砲身をさらに短くする方向で行きたいと思います。綿貫さんの上げられているデメリットは、キメラを相手にする際には接近戦が主な戦い方になるので問題ないでしょう。むしろ砲身寿命が延びるメリットの方が高いと考えます。それに、アストレアの機動性ならばそれらのデメリットもカバーできるでしょう。一応再開発も視野に入れてはおきますが」
 如月は綿貫を手強いが頼もしい相手だと感じながら答えた。
「そうですか。それから、軽量化とは少し話がずれますが、今のアストレアの主砲は実弾砲ですが、M1粒子砲のようなものを装備した、そう、A型とB型で生産するくらいの余裕が欲しいですね」
「粒子砲に関してはすでに『自称ドローム社のドン・キホーテ』こと八之宮所長の研究所であるAC研、AirCraft研究別に開発を委託する形で話を進めています。AEEで並行して開発するよりもその方が早いでしょうし」
 綿貫の言葉に応えたのはライラックである。
「了解しました。楽しみにしています」
 綿貫が言葉を収めると、今度は水上が発言した。
「登場人員1名への変更を提案します。現在のM1が1人乗りで極端な弊害が報告されていない点と、2人乗りの場合単純に兵員が多く必要になる。つまりその分の重量増加のほか人的物的な兵站への負担、部隊予算の圧迫等、新MBTの運用思想に対して障害が大きくなる事を懸念しますので」
 それを聞いてアドラーが難しい顔をする。
「フロイライン水上の仰ることはもっともです。ただ、ヘル綿貫は前回のコンペにもいらっしゃったのでご存知かとは思いますが、現在は熟練の戦車乗りが少ないこと、これから新兵の補充が増えていくことから部隊の練度が下がることが予測されます。2人乗りにしたのは熟練の戦車長が新人を鍛える事ができるようにと言うことと、1人で戦車に乗る新兵の心理的な負担を考慮したからです。これは事前の説明が足りなかった当方に非がありますので謝罪いたします。申し訳ございませんでした。ただ、インターフェイス等はすでに一人でも戦闘可能なレベルになっていますので、重量増加意外のフロイラインが仰るデメリットは、訓練が進めば次第に解消できるものと考えています」
「そうですか‥‥」
 水上はやや納得できないといった口調でそう言ったが、それ以上の発言はしなかった。そして軽量化に対しての案が出揃ったようなので、副兵装についての案をアドラーが求めた。それに対して口火を切ったのは綿貫だった。
「そうですね、オーソドックスなら12〜13mm程度の機銃ですが、口径等の点からKVには適しないかと思いますし、逆転の発想で『KVでも使える装備』ではなく『KVの装備も使える』にするとかはどうでしょう? 発煙筒の規格をKV用の発煙弾と同じにするとかですね」
「それは問題ないでしょう他には何か?」
「主砲が大火力、長射程である以上、副兵装はそれを補完するモノであるべきであり、主砲の主敵が大型キメラであると考えると、副兵装は小型キメラを掃討するのに適したモノが望ましいと考えられますわ。KVとの共用との事であるので、機銃系乃至グレネードランチャーが現実的ではないかとおもいますわ。ただ、新規に開発を考えるのならば、小型で軽量な知覚兵器を搭載する事も視野に入れるべきとかとおもいます。そうですね、たとえばKV用ガトリングレーザーの小型化とかですわね」
 ここで今まで黙っていたメディスンが一気に案を出した。
「そうね、基本コンセプトはそれでいいと思うわ。素敵な案をありがとうございます。KVの兵装のうち、飛行形態のみ使用可能な実弾系の兵装はOKです。ただ、知覚兵器はSESエンジンからの練力供給が必要なものも多いので、現時点ではNGと言うのが回答になります」
「そうですか。では、グレネードランチャーには何らかの改良を加えることで射程なり威力なりを上げていただくようにお願いしたいですわね」
「検討しておきます」
 ライラックの言葉に、今度は新居が発言する。
「重量やコスト、用途の広さなどを考えると、やはり機銃系の兵装は良いと思います。ですが、KV用の機銃類はどれも銃器なのでそれが問題ですね。それ以外では、広範囲をまとめて攻撃するための兵器や低空から攻撃してくる飛行キメラ用の対空兵器、それからロケット弾やミサイルでしょうか。あとはミサイルやグレネードランチャー版のGプラズマ弾のようなものも考えたんですが、今のお話からするとNGのようですね」
「ええ、NGね。それ以外はいいと思うわ」
「う〜ん。頭が痛いよ‥‥範囲攻撃の出来る非物理兵器とか欲しいところだけどNGなのよね〜。でも、今の段階ではって事は、そのうち可能になるかもしれないのよね?」
 戌亥の言葉に、ライラックが「技術が進歩すれば可能でしょうね」と答えると、彼女はまた頭が痛いと唸りだした。そして代りにシュタットが発言した。
「俺も非物理系の武装を推したいんだが、NGか。それから話がずれるが複合装甲の間にKV用のミラーフレームをってのもNGかな? まあ、皆が言っているが、機銃系はやはりあった方がいいと思う。それ以外ではフェザー砲に対抗するためのチャフ弾とかはどうだろうか?」
「機銃系の開発は視野に入れておくわ。あと、チャフ弾もちょっと難しいわね。最初の方にも言ったけどミラーフレームもKV用のアクセサリだからNGね。それからどうも皆さんはKV運用の視点で戦車を見ている用に感じられるのですけれども、アストレアは能力者向けの戦車ではなく一般人用の戦車として開発していると言うことを前提にしていただきたいと思います」
「なるほど。確かに能力者側の視点に傾いていたかもしれないな」
「チャフはNGですけど煙幕はどうでしょう? 綿貫さんが言っていたみたいな感じで。武器もいいけど支援兵装も作れないかな?」
「KVの発煙弾を搭載することは可能だと考えます。支援兵装については次回のコンペで意見を求めたいと思いますわ」
 リトヴァクにライラックがそう答える。そして今度はミスリルが尋ねた。
「ロケットを発射後、目標に近づいたら多数の小型爆弾が降り注ぐタイプってのは可能かな?」
「可能です。私の方でも多弾頭式ミサイルというものを考えていたし、ミスリルさんのクラスター型ロケット弾というのも面白いわね。それから‥‥」
「さて、そろそろ時間の方も迫ってきましたし、最後にその他の御意見を求めたいと思います」
 ライラックが技術的な発言で熱くなりそうだったので、慌ててアドラーが話を進める。
「そうだな、共通化させるなら柔軟性の高いフレームがいいと思う。耐久性に問題かも出てくるかもしれないけど」
「俺も共通化するなら拡張性と搭載量が高いフレームがいいと思うな」
 ミスリルの言葉に続き、リトヴァクがそう発言する。
「そうですね。お二方の意見は開発が進めば可能になってくるでしょう。それ以外に何かありますか?」
 如月の言葉に、能力者達は特にないと首を振る。
「では、これにてお開きとしたいと思います。能力者の皆様、ありがとうございました」
 アドラーがそう締めて、コンペは終了となった。
 その後、戦車に加えて自走砲、自走対空砲、指揮車両の設計も終わり、M1のラインを間借りする形で1両ずつの試作車両が作られはじめた事が能力者達に報告されたのであった。