タイトル:【JTFM】チャーリーマスター:碧風凛音

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/17 05:20

●オープニング本文


2010年5月末 クルセイド・スウル基地
「ボリビアは国王としてはUPCにつくという意志を見せたようだな」
 ジャンゴ・コルテス大佐は報告書を眺めながら火のついていない葉巻を咥える。
 4月に起きたアスレードの急襲を受け、ボリビアの流れは変わろうとしていた。
 しかし、内部へスパイが潜入していたことがあったりとUPC軍にもバグアの魔手がジワリと忍び寄っている。
 ため息でもでようとしたとき、ドアがノックされた。
「入れ」
「どうも、大佐。ラストホープでULTに対してボリビア国民に対する能力者発掘の支援要請をしてきたわよ」
 敬礼をするまでもなく、長年の付き合いでもあるかのようにレオノーラ・ハンビー(gz0067)は部屋に入ってくるなり事務的な報告を行う。
「副官が丁度出払っていてな、昔のコネで付き合ってもらってすまないな」
 コルテス大佐のほうも気にした風でもなく、娘でも見るような顔でレオノーラに答えた。
「カミリア少尉‥‥いえ、大尉ともそこそこ交流もあったからね。ボリビアへの協力が少しでもできればね」
「まだ、中立国ということを守ろうとするマガロ一派や、どうやらバグアと繋がっているらしいオニール・トランスポーターなど火種は多い。内戦が起きてしばらくは荒れるだろうがここを乗り切りたいものだな」
「ええ、コロンビアほど簡単にはいかないわよ」
 コルテス大佐とレオノーラは南米の地図の中央にあたるボリビアをじっと眺める。
 この小さな国が今、混沌を迎えようとしていた。

「チャーリー、具合はどうや?」
 エイシャがゲリラのテントでひとりの軍人に声をかける。
「やあ、お陰さまで万全だよ。お嬢さんに万の感謝を」
 チャーリーと呼ばれた男は奇妙な十字を切るとラーメンと呟いた。
「そか。そろそろ軍に戻るか?」
「いや、軍の了承はとった。しばらくこのゲリラで世話になる。俺のサバイバル教官としての技能を活かしてくれってことだそうだ」
 チャーリーの言葉にエイシャはうーむ、と唸る。
「ま、ええか。そういうことならよろしく頼むで」
「ああ。よろしく頼むよ。それで、軍からの依頼‥‥に近い形なんだが、正式にはULTからだな。ボリビア国内で発見された能力者適正者を、教育して欲しいと言う話があった。
 ゲリラの戦術や、俺のサバイバル術、そしてすでに前線に立っている傭兵の教訓、そういったものを叩き込んで、ブートキャンプ的に一人前にして欲しいという話らしい」
 チャーリーがややためらったようにそう切り出す。
「んー、ええで。うちも能力者のみんなに戦い方を教えてもらったし、そういうのは必要やろう」
「なら話は早い。クルセイド・スウル基地でエミタ移植を行ったばかりの能力者を集めて、訓練を行う。
 訓練が終わったらSES付きの武器をボリビアに輸送し、ゾディアックの登場で萎縮しているボリビア国民の戦意高揚のための工作を行って欲しい。
 詳細は傭兵とお嬢さんに任せる。中立派の面目を壊さない程度に、反バグアへの工作をやって欲しい。
 ちなみに、訓練は三日間、その後高速移動艇でボリビアに移動し、三日間の工作と物資・食料の供与を行う。
 これは、能力者個人から民間人への寄付という形で行うのが好ましい。新米能力者も含めてな」
 そう言うとチャーリーは片目をつぶって笑ってみせた。
「神なんていない。悪魔もいない。居るのは努力する人間のみだ。すべては人間たちの手の中にある。それがこの世の真実ってもんさ」

●依頼概要
20人ほどの新米能力者を三日間のブートキャンプで鍛えること。
傭兵の皆さんの担当は三日目の、すでに前線に立っている傭兵として教訓を与えたり訓練の監督などです。
その後ボリビアに移動し、ULTから支給された物資を能力者個人から民間人への寄付として民間人を味方につけるとともに、演説や有力者の説得工作などでボリビアの世論を(摂政のマガロを始めとする中立派の面目を壊さない程度に)誘導してください。


これは、国の実権を握る摂政のマガロが強固に中立を主張しており、UPCの介入をよしとしないからです。
したがって、軍事組織であるUPCからではなく、名目上はUPCの下部組織でも実質的には独立した民間企業として運営されているULTからの支援。さらにボリビアという国への介入という形を表面上避けるためにも、能力者の周知のためにも、能力者個人を介して物資を与えることが適当であると考えられています。
物資は、食料などの生活必需品、武器弾薬などの軍事必需品に大別されます。
これは、これから内乱が起こるであろうと予測されるボリビアの国民に自衛手段を与えるためでもあります。


訓練や工作の詳細は傭兵の皆さんに任せます。

●参加者一覧

綿貫 衛司(ga0056
30歳・♂・AA
地堂球基(ga1094
25歳・♂・ER
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
佐賀 剛鉄(gb6897
17歳・♀・PN
Kody(gc3498
30歳・♂・GP
犬彦・ハルトゼーカー(gc3817
18歳・♀・GD
海原環(gc3865
25歳・♀・JG

●リプレイ本文

「彼らに生き残る方法を教えたい」
 海原環(gc3865)は開口一番そう言った。
「そうですね。では戦場で生残るのに必要なものとは何か?
 精密な射撃技術? 否。
 巧緻な格闘技術? 否。
 高性能な兵器? 否。
 戦場、特に密林や都市部の戦場で生残るのに必要になる事はまず真っ先に【見つからない】事です。
 見つからなければ敵から先に撃たれる事も斬りかかられる事はなく、逆に敵を先に見つければ先手取る事ができるのですから」
 綿貫 衛司(ga0056)が自らの戦訓を頼りに答えを導き出す。
「あとは錬力の管理だね。体力と錬力の管理を怠らなければ、突破口は開けるさ」
 地堂球基(ga1094)がかつてエイシャ・アッシュフォード(gz0282)に教えたようにそう言った。
「時にエイシャ嬢、ボリビアでの内覧の発生の兆候の有無とそれに対する認知度をお聞きしたい」
 アルヴァイム(ga5051)がそう尋ねると、エイシャは
「漠然とした不安‥‥やな。まだ一触即発の雰囲気って訳やないけど、国民の中にまた騒乱の時代がくるのかという不安はある。その程度や」
 と答えた。
「軍の内乱の防止策などは?」
「ないな。だから今回うちらが自衛戦力を持たせようって運びになったわけや。
 強化人間やキメラが組するバグア側に、SESもついていない武器で立ち向かえるハズもないんやから」
「そうですか、ありがとうございます。それでは早速、訓練に入りましょう」

●ブートキャンプ 犬彦・ハルトゼーカー(gc3817)編
「おまえらー、気合いれろやー!」
 犬彦はとにかく基礎体力と精神面の訓練をモットーに新米達をしごいた。
 行軍10キロ、アスレチック、その他もろもろ。
 とにかく体力はついた。

●ブートキャンプ 衛司編
「‥‥このようにカモフラージュすれば発見されにくいです。メイクは肌の露出部全体に行い、凸状部(鼻等)は暗色、凹状部(眼窩等)は明色で塗ります。
 偽装は季節や場所の植生に合わせ、人間の輪郭は特徴的なのでソレを暈して、背景に溶け込む様にするのが基本です。
 ところで、この中に軍人の人はいますか?」
 数人が手を上げた。
「では、他の人達にドーランの塗り方を教えてあげてください」
「はい」
 そして綿貫の訓練は次に攻撃と運動の連携に移っていく。
「銃を撃てば自分の位置はバレます。そこで、撃ったらすぐに移動してください。
 1mでも2mでもいいから移動しましょう。極力音を立てずに、隠密に、です。では、訓練開始」
 遮蔽物の置かれたフィールドで1000発に1発実弾が入った銃を撃ちあいながら、新米能力者達は真剣に訓練をした。
 撃って、避けて、隠れて、移動し、また撃つ。
 1000発に1発とはいえ実弾が入っていることは能力者に取って良い訓練となった。
 そして食べられる野草類と毒草類の判別、飲料水の確保の仕方、罠の張り方、ロープワーク等、サバイバル技術に関しても指導していく。
「そうだな、キメラにも食える奴はいる。それにこいつは有毒の植物だが、薬としても利用できる。よく覚えておきな」
 チャーリーも口を出して綿貫の講義にちょっとした色を添える。
「とにかく食えるものと食えないものの見分けがつけられるようになること、これが一番だ」
「了解です」
 新米能力者達は素直にチャーリーの言葉に従った。

●ブートキャンプ球基編
「能力者として稼動するならば、やはりスキルを行使する為の練力であり、常に残余を把握し作戦内では余裕をもって行動する事。
 体力も同様では有るが、救急セットである程度は回復できるので携えるのを忘れない様に。
 回復スキルの持ち手は常に仲間の消耗に気を配り、作戦が維持出来る程度に癒す。
 対象優先は自力回復スキル皆無者から。周囲を省みて仲間の殆どへ届く様位置取りに注意して立ち回るように。
 座学は以上だあとは実践だ。さっきの訓練で怪我した奴もいるだろう? そいつらへの治療を行え」
 そして新米能力者達は救急セットを使ったりスキルを使いながら傷を癒していく。
「そうだ。包帯の巻き方は‥‥」
 球基も手をかしながら実際の応急処置の仕方を教え込んでいく。
「添え木がなかったら木の枝でも瓦礫でもいい。何か使えるものはある。包帯がなかったら服をやぶけばいい。
 消毒薬がなかったら酒をぶっかけろ。ある者で代用しろ。生き延びるには、周りにあるものが使えるか使えないか見分ける目も必要になってくるぞ」
 チャーリーは道具がない場合の応急処置の方法を教える。
 実際に怪我人にウォッカを口に含んで傷に吹きつけて見せる。
「これで消毒できた。あとは布でおさえるだけだ」
 そしてガーゼで押さえて包帯を巻く。乱暴だがこれが生存術と言うものだ。

●ブートキャンプ ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)編
「互いに隠蔽状況で、敵の位置をどう先に掴むか‥‥要は生きていくために、どう工夫を積み重ねるかだ」
 そう言ってホアキンは訓練中の能力者達に大声で告げる。
「撃たれたと思われる場所に応射し、敵兵の所在を探る。敵がいたら攻める。いなければこちらも移動して自分の位置を教えない、これが肝心だよ」
 そして5人ずつ4班に分けて待ち伏せ作戦の訓練を行う。
「分隊支援には、弾幕効果を利用した支援射撃が有効だ。下手な鉄砲数撃ちゃ当たると言うが、まさにその通りだ。とにかく、撃って、撃って、撃ちまくれ」
 弾幕を形成させて敵の出方を防ぐ。
「そして囮に発砲させて敵兵の有無を確かめ、所在を見つける。と言う方法がある。敵が応射してきたら、敵はそこにいると言うことになる。
 とにかく見つけられずに見つけることが重要だ」
 ホアキンの言葉に新米能力者達は頷く。
「ほいなら、うちらのゲリラ100人と、そっち20人で勝負しよか。集団戦や。
 能力者は新米でも一般人の二倍か三倍は早く動ける。それを利用してこの戦力差を埋めてみせや」
 そしてゲリラと能力者とで砲火が交わされ、能力者が二人生き残って能力者側の勝ちとなった。
 
●ブートキャンプ アルヴァイム編
 アルヴァイムの訓練は主に座学になった。
「準備段階で大事なのは以下の3点です。
 各自が持つ個性(能力、性格、ノウハウ)を把握すること。それらを組み合わせることで何が出来るかを常に考えること。
 それでも出来ないことがあるならば、その解決を目標として日頃の訓練を行うこと。
 何かあった場合に大事なのは以下の3点です。
 早急でない限りは皆と相談しあう、時間がない場合は味方を“信頼”すること。
 相反する意見は組み合わせでの活用を思案すること。
 余程のことがない限り、“ただ1つの手法”でもってあたる必要はありません。他にも手段はあります。
 部隊を分けて複数でアプローチしてもいい。ひとつの方法に拘る必要はないのです」
 その言葉は、彼らに届いたのだろうか? だが真剣な目でアルヴァイムの話を聞く彼らの耳に届いたと信じたかった。

●ブートキャンプ 佐賀 剛鉄(gb6897)編
「新人の諸君 うちが佐賀 鋼鉄や。
 これから格闘技の基礎を教えるで、何事も基礎が大切や。
 基礎が出来んと技を教えても意味ないんや」
 剛鉄はそう言って図で今までに戦ったキメラや人間の急所の位置等を座学で教える。
「頭と関節と腹、ここは動やっても鍛えられん。形があるキメラなら戦い方はさほど変わらへん。
 よっしゃ。次は蹴り技と打撃技の実戦訓練や」
 型を教え型通りに攻撃することを教える。そして時には剛鉄が相手になって返し技を教えたりしながら実地訓練を行った。
 そして剛鉄は覚醒して見せる。
 髪の毛が逆立ち、身体が黄金色に輝き、背中に絶頂の文字が浮かびあがる。
「覚醒するとこう言うふうに見た目が大きく変る奴もいる。変わらん奴もいるけどな。
 覚醒することで能力が使えるようになるけど、姿が変わって目立ってしまう場合もあるから、覚醒せずに隠密行動と言うのも重要やで」
「はい」
 そして能力者達も覚醒してみる。様々な変化をするものがいる。20人20色と言う感じだった。

●ブートキャンプ Kody(gc3498)編
 Kodyは格闘・近接戦闘での実技をメインに行っていた。
 主に乱戦での立ち回りを主として、少数チーム分けしての模擬戦をおこなう。
「いいか、特に軽装近接系の連中は、動き回って相手に目標を定めさせるな」
「了解」
 フェンサー系のクラスの能力者達は動き回りヒットアンドアウェイを繰り返しながら相手チームと戦っていく。
 逆にスナイパー系は狙いを定めてしっかりと一発一発当てていった。
「今の動きは悪くない、そこから余裕がありゃ一撃加えてやれ!」
「どうや、あいつらは?」
 エイシャが近づいてくる。
「だんだん様になってるな。これなら行けるかもしれん」
「そか」
「常に動き続け自分とチームに有利な位置取りを行え。まわれ、囲め。後ろを取れ!」
 Kodyの指示に従って能力者達は動きまわる。
「よし、終了。これよりディスカッションに入る」
 そうして良かった点と悪かった点を洗い出させ、次の訓練に生かさせる。
 模擬戦とディスカッションを数度繰り返し、能力者達の熟練度を上げていった。

●ブートキャンプ 須佐 武流(ga1461)編
「俺の訓練は至って簡単だ。俺と戦うこと。
 人数は1対1でもいいし全員で徒党を組んできても構わん。
 そのかわり、俺もそこそこ全力で行かせてもらう。
 ちなみに、俺はゾディアックのアスレードと並ぶゼオン・ジハイドとも闘ったことがある。舐めてかからないことだ」
 そう言われては能力者達もこれまでの訓練の成果を思い出して必死にフォーメーションを組み連携を仕掛けてくる。
 それに対し武流は拳で牽制し、キックでトドメを刺す。
「甘い! 行軍10キロだ!」
 負けたものには訓練を追加する。そしてボロボロになった能力者達は、なんとか錬力切れまで武流を追い込んで、勝を取ったのであった。

●ブートキャンプ 海原環編
 環はまず武器を捨てずに逃げる訓練を徹底させた。
 武器も命も大事。従って環が追いかけ能力者達が逃げる。
 環に捕まったら負けだ。
 そして次に密林や山岳での生存術を伝授した。
 拠点とも成り得るし退避場所にも成り得る。これにはチャーリーも一枚噛んだ。
 そして救急キット、エマージェンシーキットの使い方を改めて伝授。
 敵より怖いのは病気と怪我。その言葉にチャーリーは
「お嬢ちゃん、よくわかってるねえ。戦闘で脱落する兵は少ない。戦場に着くまでに脱落する兵の方が多いんだ」
 と解説。
 ついで双眼鏡での偵察、ミラーによる伝達、無線コールサインと符牒、ナイフの使い方、方位磁石の使い方と地図判読を伝授。
 厳しい訓練に不満が出るが、
「私は貴方達を死なせるためにここに来たんじゃない」
 と怒鳴られれば不満も引っ込んだ。
「卒業試験として山中で鬼ごっこを実施します。ルールは簡単。時間内に逃げまわる私を捕まえられれば皆さんの勝ちです。制限時間は一時間。では、はじめ」
 そう言うと環は一気に走り出す。覚醒しているのでその速度は速い。
 一方の能力者達も覚醒して追いかけるがなかなか追いつけない。そして時間ギリギリになって環は追い詰められ、捕まった。
「おめでとう、貴方達はこれで卒業です!」
「おめでとう。みんなは一足先にボリビアにかえってな。うちらも後でそっちに行くさかい」
 環の言葉にエイシャが付け足す。
 こうして能力者達はULTからの物資を受け取り、一足先にボリビア国内で貧しい人達に食料などを配布しまわっていた。
 それから数日後、傭兵たちもボリビアに入国する。
 迎えたのは温かい眼差しと冷たい眼差しとが半々。傭兵に対する物の見方がそのまま現れているようだった。

●市街地にて
「皆さん、食料や生活必需品を配布します。一列に並んでください。必要十分な量はあります」
 衛司が市民の誘導整理をする。
「やあ、オニールってどんな会社だい?」
 球基の問に市民は時間にも正確な優良な運送会社だと答える。
「オニールの他の運送会社はどうかな? 物流を支えるのはやっぱり彼らだからねえ」
「物流は問題ないねえ‥‥どこかの会社と手を組むってんなら、おすすめは幾つかあるが‥‥」
 そんな市民の言葉に耳を傾けて球基は新米能力者達に役場でオニール・トランスポーターに対する調査をするように指示した。
 だが表向きは優良で信頼されている企業であり、立ち入った調査をしなければ裏の動きはつかめなかった。
「関東平野規模も有るウユニ塩湖付近は今どうなんだろうなあ?
 確か雨季だった筈だけど、あそこは露天掘りで蓄電新素材のリチウムが取れるんだよなあ」
 そう市民に尋ねると、資源採掘は現在行われてないのでボリビア軍が封鎖の上防衛している形だとの答えが帰ってきた。
「我々はULTに雇われてきました。ULTより傭兵に配布された物資を、個人の善意として民衆に配布します。
 タダでの物資の提供に対するこちらの求める対価はボリビアの安定と自立です。
 軍からの介入ではなく、民間企業の善意という形になりますのでどうぞご安心ください」
「ボリビアの自立と安定、か。どうすりゃいいんだねお若いの?」
 老人が尋ねる。
「一人でも多く能力者の適性試験を受けて欲しい。そして中立を守れるだけの自衛力を身につけるんだ」
「なるほどのう‥‥」
 老人はそう頷くとどこかへと去っていった。

 Kodyは<瞬天速>と<瞬即撃>を織り交ぜての演舞をデモンストレーションとして行い市民を集めた。
「バグアには人間の理屈は通用しない。なぜなら奴らは侵略者で異星人だからだ。
 そして中立を否定しないがSESの技術を持たないままでは自分で自分の身を守ることすらおぼつかない。
 アスレードの時のように結局UPCに頼ることになる。
 そして、UPCはボリビアの独立を最大限尊重するはずだ。
 それに、能力者には、戦争の被害者だったヤツらも多いんだ。おまえらの気持ちも充分解るぜ」
 わかってくれる。受け入れてくれる。そう思ったボリビアの市民たちの間で能力者の評判は高まった。

 ホアキンが縦笛【OR】Quenaを吹きながら店を巡り、国外でバグアと戦った話をする。
「アスレードのタロスとKVで一度、ロッキー山中で戦った。辛うじて仲間と撃退したが‥‥強く残忍な奴だ」
 バグアの脅威を目の当たりにした市民たちはホアキンの話を真剣に聞いていた。
「バグアにとって人類は虫けらだ。この国が生きていくためには、中立が維持できぬ場合への備えも必要だよ」
「そうだ! UPCに助けを求めないと!」
 市民からそんな声が上がてくる。
「俺はULTの能力者だ。この国の生まれでね。寄付したいんだが‥‥良い人は居ないかな?」
「あー‥‥それなら‥‥」
 幾つかの情報が入ってくる。

「親UPC派や反バグア派のレジスタンス組織や活動家っていないかなぁ?」
 犬彦はクーデターを繰り返してきた歴史から見て、このような組織は必ず存在すると予想して情報屋やマスコミを活用して情報を集めていた。
 もちろん見返りはいろいろ用意している。
「それならあいつが‥‥」
 情報屋からうまく情報を買うことができた。そしてホアキンと犬彦はそれぞれ独自に接触する。

「この国は近いうちに内乱に襲われる可能性がある。だからアンタらみたいな心ある人達に物資を提供しておきたいんだ」
 犬彦はそう言って反バグア活動家と接触。SES付きの武器や弾薬の類を提供した。
 平和を望む国民に、過剰な軍事品は内乱を後押しするように見える。犬彦はそう考えていた。
 だから水面下で接触し、こうした活動家に武装を提供していったのだ。
「あとさ、お願いがあるんだけどアンタらの組織の力で反バグア的な風潮を作る噂を流せない? 今も仲間がいろいろやってるけど、個人の力には限界があるからさ」
「了解。そういうのは任せといてくれ。組織力なら自信はある。これまで通り時間はかかるが、全力を尽くそう」
 活動家はそう言って物資提供の見返りとしての国内世論の誘導を行ってくれることを約束した。

 環は新米能力者達とともに労働者や子供に食料や医薬品、特に大人には煙草を配り、とにかく能力者に親しみを持たせる活動に専念していた。
 農村に行けば娯楽映画を上映し、その後で物資を配る。
 こう言った草の根的な活動は概ね好意的に迎えられ、少なくとも彼らが訪れた地域に限れば、
 能力者に対するある種化物じみた見方は薄れていったと言えるだろう。
 そして環は都市部で部隊を率いてULTからの援助物資を配っている軍人を見つけた。
 それは、かつての訓練生だった。
「こんにちわ。もう私なんかよりずっと立派な指揮官ですね」
 そう言われて兵士は相格を崩した。
「いや、あんたの訓練は厳しかったけど、たしかに身になってますよ」
「そっか、よかった‥‥」
 環は安堵する。
 そして、兵士はそう言えば‥‥とつぶやいた。
「俺達を見送る時、アンタは確かに泣いていたな」
 そう言われ環は赤くなる。
「泣いてなんかいないですってば!」
「いやいや、確かに泣いていた」
 反論虚しく撃沈。
 あたりには活力に満ちた笑いが響いた。
「貴方も軍人ならバグアの脅威は目の当たりにしたはずです。兵士たちの間からも世論を変えて行ってください」
 衛司がそう言って模範的な敬礼をする。
「はっ!」
 兵士もこれまた模範的な敬礼を返す。
「バグアは脅威です。それは身にしみてわかりました。だから、軍の内部からも反バグア派を作っていきますよ」
 UPC派といわないところが摂政らに配慮した発言と言えるだろう。

「ってことで、これだけの物資の配送の手配を行ってくれないかい? オニールに差をつける良いチャンスだぜ」
 球基は幾つかの運送会社に接触してULTからの物資を地方に配送するように依頼した。
 物流は安定しているからそこに新たな流れを作れば大きな儲けになる。そう意識させたのだ。

●地方にて
 剛鉄は地方に赴いてケチュア語、アイマラ語、グラアニー語を用いて現地人との交流や子供達と遊んだりして自然に受け入れられるようになっていた。
 食事も現地の人達が食べている物と同じ物を食する。これもまた彼らに深く迎え入れられた要因でもある。
 現地の人達と一体化する感じで過ごす様にする。それが剛鉄のやり方であった。
「困った事があったら、うちら傭兵に言うてんか、うちら傭兵は直ぐに駆けつけるよ。
 困っている人を助けるのは当たり前の事やからな」
 そう言って剛鉄は笑みを浮かべた。

●有力者と
「‥‥ということで、これはULTからの支援物資です。有効に活用いただきたい」
 ホアキンは街で集めた評判の良い有力者のところに行き、支援物資を手渡した。そしてそこに傭兵たちが集う。
「‥‥我が故国ボリビア、か‥‥」
 それはホアキンのものだった。
「かつて、一人の貧しい闘牛士がこの高原の国を飛び出し、エミタを埋めて傭兵となった。
 バグアを憎んだからではない。闘牛と対峙し、生死の交錯する【真実の瞬間】を見た者が、
 生きていくには戦うしかないと、肌身に染みて感じたまでだ。
 ボリビアにも、生きていくために戦って欲しいと願う。そのために必要ならば、喜んで手を貸そう。
 一人の国民として、ボリビアに自衛力をつけて欲しい。UPCの介入を招かないくらいの、ね」
「君はボリビアの国民だったか‥‥どう思うね、実際?」
「まるでこの国は赤子のようだ。バグアに取ってはアリを踏みつぶすのと同じくらい容易く征服できる」
「‥‥そうか。我が国は弱国ゆえに無視されてきたに過ぎないと言うことか」
 有力者が悔しそうに言葉を紡ぐ。傭兵達や諸外国から見れば当然とも言えるその事実すら、この国の民間人は認識していなかったのだろう。
「エルドラド、と言う国がある。かつてバグアとUPCの戦場になった国だが
 いまは自治政府が機能してUPCにもバグアにも属さない、ある意味理想的な国家運営をしているよ。
 UPCが介入して復興の協力は行ったが、自分の足で立てるようになったら介入はやめた。
 そんなやり方もありなのではないかと私は思うよ」
 それはアルヴァイムの言葉だった。実際にエルドラドに関わってきたものとしての実感があるセリフだった。
「ふむ‥‥エルドラドか。代表が以前コロンビアに訪れたと聞く。私は政治に携わる身ではないのでなんともいえないが、我が国にも一度訪れて欲しいものだ」
「確約はできないが、努力はしましょう」
 有力者は考え込んだ。
「もしまたバグアに襲われたらUPCに助けを求めるといい。俺たちは千の誓いと万の盟約を持って助力に訪れるだろう」
 チャーリーが、そう言って奇妙な十字を切った。
「それは、中央政府次第だがな‥‥」
 有力者はそう言って口をつぐんだ。
 そしてその支援物資はULTからという情報はそのままに有力者から市民に配られていった。
 バグアの脅威や傭兵の噂とともに。
「工作は順調なようですね」
「アルヴァイムか‥‥」
「ああ、なんとかうまく行っている。これなら、良い風が吹きそうだ‥‥」
 ホアキンはそう言って故郷の空を見上げた。
「‥‥時は移れど、アンデスの空は、高く青い‥‥」
 一羽の鳥が、舞う。
 青空に、翼を広げて。