●リプレイ本文
●シーン1 新生バグラム
視聴注意のテロップが流れる。それに合わせてバグラムの前線基地の様子がフェードイン。
深紅のマフラーの男とその部下と思しき黒いマフラーの集団が威風堂々と登場する。
そして、銀の甲冑の騎士を従えた素顔がわからないほどにフードを被った長髪の女が静かに入ってくる。
飄々として捕らえ所のない男が入ってくる。
洒落た衣裳を着た女がゆっくりと入ってくる
『‥‥お前達が本部からの増援か。報告は受けている。
我らが宿敵に前任者が破れた今‥‥諸君の様な精鋭が着任する事、嬉しく思う』
仮面の戦士カインが、バグラム本部から送られてきた精鋭部隊を前に演説を行う。
カインの横にはその腕に両腕でしがみついているビクトリアン調のメイド服の女――リシアの姿がある。
「カイン様ぁ、この人たちはいったいなんですの?」
値踏みするような視線で精鋭部隊を睨みつけながらリシアがカインに問う。
『本部からの応援だ。失礼のないようにな』
仮面の奥からくぐもった声でカインは言う。
「はぁい。カイン様だけで十分なのに‥‥」
一方のリシアは興味なさげに頷いた。
『ネクロマンサーにシュヴァルツメッサー‥‥皆、噂に違わぬ戦果を期待させて貰おう』
「ハッ! 存分に期待してもらおうか!」
赤いマフラーのシュトゥルムヴィントが自信ありげにそう告げる。
彼は武力を信奉し、かつ自身の武に絶対の自信をもつバグラム幹部である。
他の幹部と違い、部下を多く持たず、自分の眼鏡に適った精鋭のみを率いる。
深紅のマフラーが特徴で、内外を問わず知られ「紅いマフラーの死神」の異名を持つ。
その部下は全て黒いマフラーで統一され『シュヴァルツメッサー』と呼称されている。
謀略等を厭い、正面から武力で叩き潰す事を信条としている。
その為、他の幹部から一線を画す存在だが、本人の武力もまた栄え抜きであるため、容認されている。
常に強者を求め、弱者には一切目もくれない、弱肉強食を地で行く男であった。
「私が来たからには制圧は時間の問題ね。すぐにあの町の人間全員私の配下に加えてやるわ」
真深いフードの女ネクロマンサーがそう答える。
バグラム内部でも、本名はおろか、素顔を見た者さえ数える程しかいない謎の人物で、
バグラム幹部内において、個人の実力ではやや見劣りするが、独自に生みだしたアンデッド軍団を率いる。
その圧倒的な物量による蹂躙制圧を最も得意とする戦士である。
人間は自分の心血を注いで築き上げたアンデッド達への贄としか見ていない節がある。
「ナナシです。宜しくお願いします」
洒落た衣装の女がそう言う。
ナナシはバグラムに抵抗した勢力及び自らが所属した部隊の様々なデータを取ることを任務としている。
殆ど戦闘は行わず、所属した部隊が勝利しようが敗北しようが生き残り、本部にデータを届け評価を得てきていることから一部では卑怯者として知られている。
そのためかカインの返答も素っ気ない。
「よろしく頼む」
だが、ナナシ自体は任務を遂行することがバグラムの繁栄に繋がると信じており、自身についてどう思われようが気にしていない。
誰に対しても事務的で感情の起伏は少ないが、情報確認や情報交換の為に、嫌われ無視されていたとしても、部隊内のメンバーとコミュニケーションをする努力は欠かさない。
そして、シュトゥルムヴィント、ネクロマンサーという情報が少ないこの二者と同じ部隊に配属になったことを、内心喜んでいた。
『ん? クロッカはどうした?』
いつの間にか飄々とした姿の男が消えている。
「クロッカならドラグナイツの偵察に出かけましたよ」
ナナシがそう告げると、シュトゥルムヴィントが「またかよ、おい」とぼやいた。
そんな時、不意に通信スクリーンがオンになった。
『こちら着任したてのクロッカ。現場から失礼。大統領がお出ましらしいぜ?』
「確かなんだろうなぁオイ?」
『フリージャーナリストに変装して取材した。ソースは確かだ』
シュトゥルムヴィントの問に、変装したクロッカがそう答える。
「‥‥ふん、なら間違いないか」
「大統領が‥‥? ハハッ、最高じゃない! 大統領をゾンビにして、全人類に晒してやるわ!」
ネクロマンサーが笑う。
「行くわよシルベイン!」
そう言うと銀甲冑の騎士を引き連れて部屋を出ていった。
「行くぞ、クリュスタッロス。楽しい闘争の時間だ」
シュトゥルムヴィントは傍らに控える銀髪の寡黙な少女に命令した。
「はい。私の一切は、全て主が栄光のために」
シュヴァルツメッサーの隊長である黒マフラーの少女はそう言うと、部屋を出て言って部隊に出撃命令を出した。
「良いんですか、カインさま? 勝手やらしちゃって」
『構わん。それよりも茶が飲みたい。入れてくれ」
「はぁい」
カインの言葉にリシアは素直に答えると部屋を出ていった。
『クロッカよ、引き続き調査を頼む』
『了解です』
通信スクリーンがオフになった。
フェードアウト
●OP
『Blaze Dash』
作詞・作曲:シャンリークィ
歌:シャンリークィ
クレジットとともに、前口上から。
光の導き 闇の胎動
心通わす 鋼の身体
解き放ちし 竜の力は
闇を切り裂き 舞い上がる
悲しみの向こう 光差すその先へ
「機装戦隊ドラグナイツ!」
何度でも歩きだそう
幾度でも手を伸ばそう
大切なモノ 手にするまで
満天の星々に誓う
固き決意
水面に映る流星の影
咲き誇る 桜の向こうに
揺らめく 過去の幻影
あの日
胸に灯った 確かな炎
夜を越え 今走りだす
力の限り
たとえ傷付き 心折れそうになっても
止まれない 止まらない
哀しみのない世界 手に入れるまで
明日を夢見て 戦い抜こう
そこにはきっと 光に満ちた夜明け
僕らを待っている
朝焼けが染めあげる
幾千の花々
不意に過ぎる 微睡みの香り
一陣 風が吹きすさび
花吹雪と共に 消えてゆく
あの日
胸に誓った 切なる願い
何度でも また走りだす
想いの限り
幾度倒れ 思い砕けそうになっても
止まれない 止まらない
皆が笑える世界 取り戻すまで
希望を信じ 戦い続ける
そこにはきっと 希望に満ちた青空
僕らを待っている
闇に浮かぶ光の先
確かな未来
手を伸ばせば 届くと
そう思い 手を伸ばす
届かない まだ辿り着けない
だからこそ 今は走り続ける
いつの日か その光
この手に掴む そう信じて
何度傷付き 心砕けそうになっても
止まれない 止まらない
笑いあえる世界 手にするまで
その日を信じ 走り続ける
悲しみの向こう 光指す先 笑顔に満ちる場所
きっと僕らを待っている
フェイドアウトしてゆき暗転。
●シーン2 新人ドラグナイツ
「諸君、ニュースが二つある。良いニュースと悪いニュースだ」
そういったのはドラグナイツの影の司令官とでも呼ぶべき北米大統領、ジョナサン・エメリッヒである。
「大統領閣下、一体何が?」
UPCの新任仕官でドラグナイツでもあったニュクス・アイオーンが、現在では大統領警護官として大統領の側に仕えていた。その彼女が、大統領に尋ねる。
「良いニュースだが、ドラグナイツの適性のある人物が見つかった。しかも光の竜を使える可能性を秘めた強力な人材だ」
その言葉に周囲がざわめく。
光の竜を使えるのは古参のドラグナイツメンバーのみであり、そのうちチェスター・ハインツは外国に出ていてバグラムの情報を探っており不在。
もう一人のニュクスは黒竜騎兵とアロンダイト、二つの力を秘め暴走する危険性が有る為、現在ドラグナイツ化は制限されている。
現在はバグラムの活動も小康化しているが、戦力がかけた状態の現状には良いニュースだった。
「悪いニュースとは?」
そう尋ねたのは藍・カレン。新生ドラグナイツの隊長をやっている。
「そのニュースを送ってくれたチェスターがバグラムとの戦闘で死亡した」
「そんな‥‥」
月影・白夜が青ざめた顔で呟く。
『本当なの!?』
突然10センチ前後の少女が白夜のとなりに現れる。
「白夜、その娘は?」
「彼女はフェンリス、高知能AIと立体映像技術の結晶、SAIだよ‥‥」
驚く一同に白夜が説明する。
『皆のサポートも頑張るから宜しくね』
そう言って少女は頬笑むが、神妙なこの場には不釣合だった。
「残念ながら事実だ。カレン君、悲しんでいるところ悪いが、早速この適正者、蔵里 真由をスカウトしてきて欲しい。ドラグナイツの隊長としての任務だ。データはこちらのディスクに入っている」
「‥‥はい」
大統領の言葉に、静かに答えディスクを受け取るカレン。
そしてカレンは早速彼女の住所へと向かった。
「えっと、軍の方が何か御用でしょうか?」
その少女、真由は杖術の訓練を自宅の庭でしているところだった。護身術として習っているらしい。
「スカウトに来たの。UPCの特殊部隊、ドラグナイツの適性があなたにあることがわかったから」
「ドラグナイツ? その適正が私に、ですか?」
カレンの言葉に真由は首を傾げる。
「ええ。強制はしないけど、良ければついてきて欲しいわ。俸給は破格だから。もちろん、市民をバグラムからまもると言う危険な任務だからだけどね」
「‥‥わかりました。報酬に惹かれたわけではないですが、行くだけなら‥‥」
しばらく悩んでから真由が答えると、カレンは笑顔で言った。
「良かったわ。早速で悪いけど、あの車に乗り込んでくれる?」
そう言って示したのは黒塗りの高級車。この車が家の前に乗り付けたときは真由も驚いたものだ。
「身支度は?」
「しなくていいわ。まあ、せいぜい暇つぶしの道具くらいかしら?」
「では、本を何冊か持ってきます。私、読書が好きなので」
「オーケー。待ってるわ」
それから数分後、真由は鞄に本を詰めて家を出てくると、高級車に乗り込んだ。
――UPC基地
SPに警護されながら真由は廊下を歩み続ける。やがて扉をくぐると、大統領やドラグナイツのメンバーが待っていた。
「ようこそ、蔵里 真由君。はじめまして。大統領のジョナサン・エメリッヒだ」
「うそ‥‥大統領?」
突然の事に呆然とする真由。
「本物だとも。歓迎するよ、真由君。君もぜひ、正義のために戦って欲しい」
その言葉に、真由は笑を止める。
「正義?」
「どうしたね?」
「正義なんて、そんな曖昧な、都合よく変わってしまう理由なんかで戦えません! 失礼します!」
真由は激昂し、身を翻して部屋を出て行こうとする。
「まって!」
それをニュクスが止める。
「私達の戦いは、人々を護る為に。それが力を持つ者がそれを振るう事を許される理由。『正義』の言葉が嫌いなら、守りたい誰かの為でいい、力を貸してくれない?」
昔そう教えてくれた、大切な誰かを思い浮かべながらニュクスは言葉を紡ぐ。
「守りたい誰かの為に‥‥」
そう言って真由は遠い目をする。
「‥‥すみません、感情的になってしまって。分かりました、私で良ければ力にならせて貰います」
数秒の沈黙のあと、真由は決意したようにそう言った。
「よろしくね、真由さん」
カレンが差し出した手を握る真由。
「‥‥よろしく」
白夜が。
「ありがとう、真由さん」
ニュクスが。
そしてドラグナイツのメンバーが自己紹介しながら次々と握手を求める。
それが一段落したあと、大統領が握手を求めた。
「先程はすまなかったな。だが、引き受けてくれて嬉しいよ。よろしく頼む」
「はい」
ガッチリと握手を交わす。
●シーン3 喫茶店「fountain」
一般的には知られていないが、かつて半壊して経営者が変わった喫茶店「fountain」は反バグラム組織「ゴットホープ」の根拠地でもあった。
民間から志ある者をあつめ、力あるものがその中核を成す。そして、大統領が密かに資金援助していた。
「大統領閣下、現在のところバグラムに動きは見られません。しかし、これは嵐の前の静けさ。近い内にいずれ動き出すでしょう」
地下司令室。通信スクリーンでエオスは大統領と話していた。
「わかった。今後とも警戒をよろしく頼む」
「はい。‥‥っと、そろそろ本業の時間のようですので、これで失礼いたします」
「うむ。頑張ってくれたまえ」
そう言うと通信は切れた。
エオスは階段を上がっていく。そこで目にした景色とは‥‥
どんがらがっしゃーん。
店員兼構成員の須藤 ツバメが転んでお皿を落としているところだった。
「ツバメ、またですか‥‥、熱意があるのはいいですがそれでは困りますよ」
(「あの子が、居ないのが‥‥人の所為にしても仕方有りませんね」)
「えへへ、すみません店長」
「お給料から引いててお来ますからね」
「そんなご無体な」
そんなやりとりを見て喫茶店の客が笑う。
市民感情を探るべく、喫茶店に入ったクロッカと、10歳の少女でありながら「ゴッドホープ」の研究部門の責任者であるシリウス・ブレイダー博士だった。
彼はブルーマウンテンを頼み、じっくりと味わっていた。
「美味しいね‥‥気に入った。また寄らせてもらおう」
クロッカは何も気付かずに店を出ていった。
「ありがとうございましたー」
ツバメがあいさつをするとクロッカは片手をあげて出ていった。
「やっぱり甘いものは美味しいね」
「博士、糖分の摂取も良いですがあまり食べ過ぎては‥‥」
エオスがそんな事を言うと、博士は「良いじゃないですか。好きに食べさせてください」と言う。
そして、クロッカと入れ替わりでニュクスがやってくる。
「こんにちわー」
「いらっしゃい、ニュクス」
「いらっしゃーい」
それからしばらく姉妹の会話を行い、ふとこんな話題が出た。
「でも、もうお姉ちゃんも年頃なんだから、良い人は居ないの? 最近バグラムも大人しいし」
「あいにくと、そのような人は今せんね。それよりニュクス、ドラグナイツ化を制限されていると聞きましたが?」
「ああ‥‥うん。アロンダイトの件があるからね。暴走しないかどうか‥‥」
「ニュクス、やはり制御仕切れませんか。私の場合は、私の思いと彼女の怒りが一致したから出来ただけですしね。時間の短さが苦しめてしまうとは‥‥不憫なものです」
「まあ、最近は生身での戦闘も‥‥って、招集だ。なんだろ? 行ってくるね、姉さん」
「ニュクス、行ってらっしゃい」
そうしてニュクスが出て行ってゴットホープのメンバーだけになると、ツバメが報告をした。
「‥‥どうやら、遂にバグラムが動き出すようです」
「やはりバグラムが‥‥ではツバメ、私たちゴッドホープも動きますよ」
●シーン3−2 星河 メイ
ボクは、記憶を探すため長い休暇を貰って旅に出かけた。
きっと知りたくないことも思い出すかも知れないけど。
荒野をバイクが走り抜ける。そしてたどり着いた南米の旧バグラム施設。その廃墟で捜し物をするメイことダークキャット。
人とキメラとの融合体の彼女は、人の姿に変身することもできたが今は融合体の姿のままでいた。
「何だろう、コレどこかで見たこと有るにゃ」
そうだ、お父さんが大切にしてたグランパから貰ったプレゼント。
懐中時計を手に取る。
あのときもこれを‥‥
そして、記憶の一部を取り戻す。
そう、だからボクは、こんな姿に‥‥そして手に掛けた。自慢だった父さんを躊躇無く‥‥
ポトリ。液体が床を濡らした。
なんにゃ、これ?
「涙‥‥? ボクは泣いているのかにゃ」
父さん‥‥
「泣いてても仕方が無いにゃ‥‥これからどうするか‥‥」
?‥‥
なにかここ変な気がするにゃ。
そう考えてメイはあたりの壁を調べる。と、隠し通路を発見した。その奥にはKV。
「父さん、この機体でボクは、バグラムを滅ぼしてみせるからね」
そして、バーナーをふかしてロスまで飛び立つ。
メイの復讐はこうして始まった。
アイキャッチが入り、ドロームとUPCのCM。
そして後半へ。
●4UPC決起集会
大統領を始め、UPCの重鎮が集まり、反バグラム決起集会を開いていた。
「諸君、これは人類の生存戦争だ! 敵を倒さぬ限り、我らに平和は訪れない。そのためにも、全精力を傾けて敵を打ち倒すのだ! おお神よご照覧あれ! 我々は全力で戦って見せる!」
大統領のその言葉に、真由は一人呟く。
「神様なんてどこにも居ない。だから私達が自分達の力で大切な物を守らないといけないんです。私は知ってる‥‥人の弱さも醜さも。でも、だからこそ人は強く、優しくなれるから」
白夜がそんな彼女の方に手を置く。驚いて振るかえる真由に、白夜は頷いてみせた。
「それでいいんですよ」
と。
「それでは諸君に新しいメンバーを紹介しよう。蔵里 真由君と、シリウス・ブレイダー博士だ」
真由とシリウスが前に出る。
「真由君はドラグナイツの新メンバーとして、ブレイダー博士は研究部門のリーダーとして迎え入れる。皆、よろしく頼むぞ」
「了解!」
カレンが返事をする。
「それでは、自己紹介をしてもらおうか」
大統領のその言葉に、真由がまず自己紹介を始める。
「蔵里 真由です。嫌いな言葉は正義。でも、ひとのために何かできるなら‥‥頑張ります」
「シリウス・ブレイダーだよ。シーちゃんって呼んでね。試しにそこの人、呼んでみて」
そう言って白夜を指す。
「シー‥‥」
「どうしたの、聞こえないよ?」
心のなかで恥ずかしさとの攻防があったようだが、結局は折れる。
「シー‥‥ちゃん‥‥」
そっぽを向く。
『白夜、可愛い』
フェンリスが出てきて茶々を入れる。フェンリスにお小言を言って引っ込ませる。
そして決起集会も終わりになった頃、基地に爆音がとどろいた。
●バグラム襲撃
「何事だ!」
「バグラムの襲撃のようです。ただ、今までとは違います。これは、アンデットです!」
「アンデットだと!?それは作り話の中だけの存在だ!」
「ですが、事実です!」
「うむ。仕方がない。UPC、ドラグナイツ、出撃せよ!」
『了解!』
一斉に行動に入る。
そして出撃した頃にはゴットホープのメンバーが少数で応戦していた。
「この、配下はネクロマンサーの」
私にすら、素顔を晒さなかった死霊使い。この力なら抑えきれるはず。
エオスはシルバー・クロウとなると奇形剣を使いながらアンデットの群れを掃討して行く。
ヘルメットで顔を隠したツバメが装備した爪でアンデットを切り裂く。
「数が多いですね‥‥」
「UPCが来るまではなんとか私たちで抑えるのです」
「はい。ゼロブレイカー!」
必殺技を発動させるツバメ。アンデット数隊が一気に消し飛んだ。
UPCの参戦と同時にシュヴァルツメッサーも参戦し、彼らは主のために道を開く。
「全ては主が為に。散っ!」
クリュスタッロスが命じると、シュヴァルツメッサーはUPCの兵と対峙する。
クリュスタッロスだけは主の側をはなれずに、主に近づく敵を片付けて行った。
「大統領、モニターを!」
オペレーターが驚きの表情で告げる。そこには上空から写されたバグラムとUPCの姿が放映されていた。
ナナシのしわざである。彼女は基地から出撃せずに小型偵察機を飛ばしデータの収集とバグラムの恐怖を伝えるためにその姿を全世界に放映していたのである。
『ナナシか‥‥』
「はい」
『まあいい。俺は出る』
「了解です」
ミーティングルームへ向かうカインにリシアはすがりつき、
「カインさまも出撃されるのですか?」
と尋ねる。
『ああ。精鋭部隊にはドラグナイツの相手に専念させてやらねばな』
そしてミーティングルームで部下とのミーティングを終えたあと、リシアがカインを涙目で見上げながら
「必ず帰ってきてくださいね」
と訴える。
カインはカメラに背を向けると仮面を外し、リシアの頭をなでる。
『‥‥無論だ、帰当時刻には戻る。基地の者の面倒を増やさぬよう、部屋で大人しく待っている事だ』
「はぁい」
リシアは面白くなさそうに頷くと、自分の部屋へと戻っていった。
『では、出撃だ』
そう告げて空間転移する。そしてバグラム対UPCの戦いが本格的に始まった。
「よぉ、お前らがドラグナイツだろ? 実力。見せてくれよ」
「あなたは?」
「俺はシュトゥルムヴィントよろしくな、嬢ちゃん?」
「っく! 僕は男です!」
白夜の前に旋風のように現れたシュトゥルムヴィントに、白夜が攻撃しながら訂正をする。
「おっと失礼‥‥」
白銀の肩当部分が竜の翼の形をしているパイドロスを装着した白夜は、シュトゥルムヴィントの攻撃を竜の翼で瞬時に其の場から消えて背後へと移動し回避する。
「はああ!」
すぐに斬撃を返し同時に竜の咆哮を発動させて吹き飛ばす。
「やるじゃないかドラグナイツ!」
賞賛の声をあげるシュトゥルムヴィント。
クリュスタッロスは迅雷で戦場を次々と移動しながら、主と同じ鎌で彼女にとっては雑魚にしか過ぎないと感じる敵を切り倒して行く。
「私にかなわないのならば、潔く散るが良い!」
「やらせないわよ、バグラム!」
真由の槍がクリュスタッロスの肩に深々と刺さる。
「くっ‥‥」
うめくクリュスタッロス。
深紅のバハムートをまとった真由は一歩引いて槍を構え直す。
「赤竜騎兵、参ります」
突いて、引いて、突いて、引いてを繰り返し、クリュスタッロスを追い詰める。
クリュスタッロスも鎌から剣と盾に持ち替え刺突を防ぐ。
その後抜刀・瞬で次々と武器を持ち替えながら攻撃を繰り出し真由を追い詰めて行く。
「くっ、強い‥‥」
「サポートするよ」
ツバメが割って入る。
「スカウトされたかどうかは知らない。正義が嫌だと言うならそれも構わないよ。けど、目の前に助けを呼ぶ者を守るぐらいはして欲しいね。例え、それがあなたが嫌がってる正義というものであってもね」
経緯を聞いたのだろう。ツバメが真由に向かってそう言う。
「わかっています。全力で任務にあたります」
「心強いね。任せたよ」
「はい!」
「第1から第3小隊は大統領と非戦闘員の護衛を! 第4から第6小隊はゾンビの相手を。第7小隊は私に続け!」
ニュクスがUPCの士官として部隊を率いる。そこにカインが現れる。
『かかれ‥‥』
カインが命令をするとカインの部隊はニュクスの率いる小隊と激突した。
「――あれは――」
あの仮面の戦士は‥‥
「カイン! 私が相手だ!」
ニュクスは小銃から十手刀に持ち変えると、カインと戦闘を始めた。
お互いに『何か』を感じ取り、引きあっているかの様な印象を受けながら、二人の戦士はぶつかっていく。
「‥‥なんだろう‥何か‥懐かしい‥? ダメ、今は戦わなければっ!」
『お前は――』
「あなたは――」
『「誰だ!」』
感じる『何か』は戦うごとにいや増して行く。
「ふふ、見なさいシルベイン。無様よね」
ネクロマンサーは騎士を連れて高みの見物をしていた。
だがゾンビの攻撃がカレンに向かおうとしたとき、思いもよらぬ闖入者が現れた。
マントを纏った漆黒のパイドロスが現れたのだ。
「‥‥」
それは無言のまま装着式超機械でゾンビの群れを吹き飛ばす。
「なっ!? 何々、何なのアイツ!」
そして黒いパイドロスはネクロマンサーに接近する。
「こっちに来た!? くっ、シルベイン!」
甲冑騎士が前に出るも数合の打ち合いのあとに倒されてしまう。
そしてそのままネクロマンサーに竜の角で攻撃を仕掛ける。
個体戦闘能力が低いネクロマンサーはパイドロスにかなわず大きなダメージを受ける。
「あぁ‥‥私のシルベイン‥‥。‥‥覚えてろ。必ず‥‥必ず復讐してやる!」
ネクロマンサーは閃光手榴弾を地面に叩きつけると姿を消した。
ドラグナイツ達が黒いパイドロスに声をかけるがそれを一切無視し、パイドロスも撤退する。
「‥‥フン、潮時か。ま、挨拶には十分か」
シュトゥルムヴィントがそう言うと、クリュスタッロスが部下を集める。
「集! ‥‥主、ご命令を」
「帰還するぞ。タロス、来い!」
超高高度から黒いタロスが高速で侵入してくる。
両方の手のひらに全員がのり、再び高速で離脱。
「次を楽しみにしてるぜ! あばよ!」
最後にそう言い残してタロスは消えていった。
『ここまでか。帰還する‥‥』
カインはそう言うと部下ごと空間転移した。
「待て‥‥!」
ニュクスが手を伸ばすがすでに遅かった。
「全小隊ゾンビの群れを駆逐! 急げ!」
だが判断は誤らず即座に命令を下す。
「イレギュラーな敵‥‥詳しく調べてみるか」
密かに戦場を観察していたクロッカはそう呟くと姿を消した。
そして、戦闘は次第に終焉へと向かう。
●シーン6 エピローグ
「さて、敵も精鋭を繰り出してきたみたいだから、こっちもパワーアップが必要だね」
シリウス博士は戦闘の映像を見ながらそう呟き、右手に持ったディスクを目の前にかざしている。
黒いパイドロスが路地裏で装着を解除すると、中からは黒い髪にサングラスをした少年が現れた。
「ん? あれは‥‥」
少年は倒れている少女を見つけると、介抱するためにバイクに乗せて走り去った。
それは変身を解除したネクロマンサーなのだが、少年に知る由はなく。
「たっだいまー、ダークキャット帰って来たにゃ‥‥そっち誰?」
帰還したメイをエオスとツバメが迎える。
「ふむふむ、後輩って事かにゃ、ツバメよろしく頼むにゃ」
「よろしくお願いします」
こうして記憶を取り戻したメイは再び戦うために帰ってきた。
ドンガラガッシャーン。
「ツバメ‥‥またやりましたね?」
「ツバメ、ドジにゃんだ。先輩の‥‥」
「メイは、言えないですよね‥‥あなたもそう変わらないですから」
先輩風を吹かせようとして釘を刺されるメイ。
(「しかし、今回は安心できそうにもありませんね‥‥彼らも本腰を入れてきたようですから」)
カインが基地へと帰還するとリシアが真っ先に出迎えた。
「カイン様ぁ、お帰りなさ〜い」
カインの胸へと飛び込む。
カインはリシアの頭を撫でながら部下に解散を命じた。
カインはリシアを伴い格納庫へと向かう。
そこには薄暗く照らされたユダの姿があった‥‥
●ED
『軌跡』
作詞・作曲:シャンリークィ
歌:サラ・ディデュモイ
スタッフクレジットとともにキャストクレジットが流れる。
夜の帳の中
粉雪が空から
優しく降りてくる
クロッカ/ホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)
シュトゥルムヴィント/ゼラス(
ga2924)
ふわりふわりと舞い踊る妖精たちは
白いキャンパスに描かれた悲しみの記憶を
ゆっくりと覆い隠してく
ナナシ/優(
ga8480)
星河 メイ(ダークキャット)/柿原ミズキ(
ga9347)
咲き誇る雪桜が
これはただの夢だと囁いた
ハイン・リーヴェル/チェスター・ハインツ(
gb1950)
月影・白夜/月影・白夜(
gb1971)
けれども ほら
心に宿る氷の楔が
その悪夢が現実(リアル)だと告げている
エオス・アイオーン(シルバー・クロウ)/烏丸 八咫(
gb2661)
カイン/ドニー・レイド(
gb4089)
足が竦む 顔が俯く
今いる場所から動けなくなる
クリュスタッロス/クラリア・レスタント(
gb4258)
シリウス・ブレイダー/アーク・ウイング(
gb4432)
そっと振り返り 見つめるのは
自分が歩んできた
足跡(みちしるべ)
リシア/ウレキサイト(
gb4866)
ニュクス・アイオーン/キャプテン・エミター(
gb5340)
そして ふと気付く
自分が胸に抱いていたモノ‥‥
望み守り抜いた 光
平凡な日常と言う 掛け替え無き宝物に
須藤 ツバメ/安藤ツバメ(
gb6657)
蔵里 真由/望月 美汐(
gb6693)
瞳を閉じ
その温もりを感じ
体が熱を取り戻す
戒めの楔そっと抱きしめ
ゆっくり溶かしてく
ネクロマンサー/ファタ・モルガナ(
gc0598)
藍・カレン/サラ・ディデュモイ(gz0210)
ふと顔を上げれば
感じる仄かな温もり
差し込む朝日に溶けてゆく
白き幻影
どんな夜に 夢に
囚われたとしても
必ず‥‥夜明けは訪れる
どんなに冷たい氷でも
いつかは溶けて消える
今 強き羽ばたきに舞い上がる
軽やかな白銀の煌き
透き通る青空に
太陽が輝き
駆け抜ける風が翼誘う
粉雪は白き花弁へと
姿変え幸せな安らぎを歌う
咲き誇る桜の向こう側
揺らめいた過去の幻想
一陣の風が吹き荒び
花吹雪と共に消えてゆく
新緑の風が告げる命の芽吹き
今 この胸に輝くは大輪の花
一歩ずつゆっくりと 歩んでゆこう
現在(いま)を見据えて前へ
機装戦隊ドラグナイツ 第1話 「再会の竜騎兵」
END
制作・著作 グリューン・ムービー