●リプレイ本文
●事前会議
「須佐 武流(
ga1461)だ。よろしく頼む」
事前会議。
傭兵と戦車部隊の隊員、ヨハン・アドラー(gz0199)が集まって打ち合わせをする場で、武流がまず最初に口を開いた。
「今回は戦車隊の訓練で俺たち傭兵はその護衛ということだが、キメラとの戦いは俺たちのほうがなれている。あれこれ口出しすることになるかもしれんがよろしく頼む」
「了解しました。はい」
ヨハンが武流の言葉にそう答える。
「寿 源次(
ga3427)だ。宜しく頼む。M1戦車とは随分と印象が結構違うんだな。サポートは任せてくれ」
「レヴィア ストレイカー(
ga5340)です。今後も自分達と共に戦う訳ですから、必ず訓練を成功させて心強い味方になって欲しいです」
「お二人ともよろしく頼みますよ。アストレアはM1より量産性はありませんがスリムで高性能です。戦果に期待していますよ」
源次とレヴィアにはそう返す。レヴィアは顔に迷彩のフェイスパターンを塗りながら兵士たちの様子を眺めていた。
不安そうな兵士がいたので「参考になるかは分からないけど」と前置きしながらKVでの戦闘経験を元にアドバイスを行う。
「大丈夫、あなた方の積んできた訓練や自分自身を信じて」
その言葉で兵士の緊張はほぐれたようだった。
「井出 一真(
ga6977)です。KVに限らず新しいメカを見るのは、わくわくしますねえ」
「虎牙 こうき(
ga8763)っす。よろしくお願いします。アストレアって兵器自体に興味あるんすよね、ばらしてみたい‥‥なんて欲望が湧く位っすよ♪ ってわけなんで今回アドラーさんには色々聞けるのかな? 機密事項もあるだろうけどやっぱ仮にもサイエンティストっすからね、機械を見ると調べてみたくなる欲望には勝てないっす!」
「そうですか。今回の作戦が終了したら基地で分解整備をやりますのでよろしかったらご参加しませんか? ブラックボックス以外はお見せできますよ」
「本当っすか? それならうれしいなあ。力の限り護衛の任、務めさせてもらうっす!」
ヨハンの言葉にこうきが大げさなくらいに喜ぶ。
「いやー、たのしみだなぁ」
こうきが心の底からそう言った。
「柿原ミズキ(
ga9347)です。今回はゴーレムを相手にするわけじゃないし、絶対に負けない心がけで行きます」
「御守 剣清(
gb6210)です。まー、フォローは任せてくださいな」
「頼もしいですね。お任せいたしますよ。はい」
ミズキと剣清の言葉に、ヨハンは信頼の色を見せながら言った。
「最後は自分ですね。湊 影明(
gb9566)と言います。歩兵と戦車の連携と言うのも面白いですね。連携についての答えを示せればと思っています」
「よろしくお願いしますよ。データリンクシステムはかつて米軍が使っていたランドウォーリアーシステムと似たようなものですね。あれは衛星が使えた時代の代物ですが、これは衛星がない現代でも使えるようにした代物です。まあ、連携がどのようになるか、データをお待ちしています」
ヨハンはそう言ってまとめると、打ち合わせの開始を促した。
●会敵
影明はAUKVに乗って先行偵察をし、周囲を警戒していた。
やがて、空を飛ぶ影と走り寄る影が見えてくる。無線で敵発見の報告を入れると、アーマー形態になって戦闘態勢をとった。
それからしばらくして、戦車に取り付いた傭兵たちが合流する。
「見晴らしが良い分狙い易いけど狙われやい‥‥アストレアの目の一つになって守らないと」
レヴィアが、草木がある場所に潜む為のギリースーツを生かして草原に身を隠しながら、周囲を警戒する。
「これは‥‥こう見えるのか」
源次がヘッドギアから見えるデータを確認しながら呟く。指揮車両の周囲50メートルの敵味方のデータが指揮車両を通じて送られてくる。
「前衛、準備はどうだ? 前に出るらしいが油断すんなよ、こうちゃん? フフ」
友人のこうきに向かって言う。
「分かってるよ、ゲンちゃん」
こうきは源次と傭兵に成り立ての頃からの付き合いで、サイエンティストにおいての先生と思っている。
「こちら武流。準備はオーケーだ」
「それじゃ、始めよう」
ミズキのその言葉を合図に戦闘が始まった。
「前に出すぎるな。味方が攻撃を受けたら空いてる奴がインターセプトしろ」
そう言う武流が最前線で戦っているのだが、本人は気にした様子もない。
「こいつは固そうだから知覚がいいか‥‥」
ハイ・チャージの前に立つハイ・ガードに機械巻物「雷遁」で電磁波を発生させてダメージを与える。
結果、2匹のハイ・チャージに重傷を負わせ、1匹は勢いあまって倒した。
「敵が庇ったところに砲撃したらまとめて倒せませんか?」
一真は戦車部隊の直衛をしながら、M−121ガトリング砲でハイ・チャージを攻撃する。
狙ったとおりにハイ・ガードが庇いに入り、もともと重症だったハイ・ガードの生命力はわずかになる。
「いまだ。あいつを狙ってください」
一真の見たハイ・ガードのデータが画像データと位置データとしてデータリンクシステムを通して指揮車両に送られる。そこから指揮車両がデータを解析し、滑空砲を装備したアストレアに主砲の発射を命じる。
轟音と共に主砲が一斉に発射され、武流と一真の攻撃で重症になったハイ・ガードに命中する。
それはハイ・ガードのフォース・フィールドを貫き肉片へと変える。
そして更にハイ・チャージを攻撃するとやはりハイ・ガードが庇う。
「もう一度です」
そしてハイ・ガードにもう一度砲撃が集まり、ハイ・ガードを屠る。
「よし、もう一丁」
一真は更にガトリングでハイチャージを狙い、庇いに入ったハイ・ガードに三連斉射を放つ。
「M3砲発射願います」
そして今度は指揮車両からM3帯電子粒子加速砲を主砲として装備したアストレアに指令が送られ、M3粒子砲が一斉に放たれる。
それはハイ・ガードの肉を焼き消し炭へと変える。
剣清は一連の攻撃でハイ・ガードが・ハイチャージを庇いに入った隙をついて迅雷で間に割って入り、ハイ・チャージを攻撃する。
4連撃でハイ・チャージの生命力を削ると、自走砲に援護射撃の依頼をする。
「皆さんがトドメって感じですね〜。ま、焦らずしっかりお願いしますね」
そしてハイ・チャージの画像データと位置データがデータリンクシステムを通して指揮車両に送られ、自走砲に指示が出される。
自走砲はデータを元に射角を調整し、一斉に榴弾を発射する。
放物線を描いて飛翔した榴弾はハイ・チャージに命中して炸裂し、ハイ・チャージを肉片に変える。
ミズキはソニックブームでロイヤル・ハーピー3匹を狙い撃つと、自走対空砲に射撃をするよう指示した。
ミズキのソニックブームの命中データからロイヤル・ハーピーの位置を逆算し、指揮車両は自走対空砲に射角を指示する。
そして一斉に放たれた自走対空砲の砲弾が2連射され、1匹のロイヤル・ハーピーを撃墜する。回復する気配はない。
更に生き残ったロイヤル・ハーピーにソニックブーム2発を食らわせ、重傷を負わせる。
「またハーピーか、つくづく縁がある」
次に源次が超機械ζでロイヤル・ハーピー1匹に攻撃を行い重傷を負わせると、各車両の機銃による一斉対空射撃を指示した。
「対空射撃、焦るな。じっくり狙って一気に墜とすんだ」
指揮車両と医療後送車が上空を迫り来るロイヤル・ハーピーに機銃で狙いをつけ、一斉に発射する。
ロイヤル・ハーピー2匹は蜂の巣にされ地面に落下する。回復する気配はない。どうやら完全に倒したようだ。
源次はハーピーが全滅したのを確認すると、残り一匹となっていたハイ・ガードに電磁波を送る。
2撃でハイ・ガードに重傷を負わせると、M3砲を装備したアストレアに攻撃指示を出す。
M3砲が発射され、ハイ・ガードを消し炭に変える。しかしこれでM3砲は発射できなくなってしまった。残りの練力は作戦行動にまわす必要があるためだ。それでも、1発撃てば作戦行動に支障が出るようなM1戦車とは違い、かなり改善されたといえるだろう。
残るはハイ・チャージが5匹だけである。レヴィアとこうき、影明は連携してハイ・チャージへの攻撃を行った。
「影明殿、こうき殿、援護しますゆえ、ハイ・チャージへの対処を願います」
「俺に任せな!」
「了解!」
レヴィアのアンチマテリアルライフルの援護を受けながら、こうきが天剣「ウラノス」影明が名刀「飛天」 でハイ・チャージの急所を狙う。
まず1撃目銃弾が脳天を貫き二本の剣が動脈を断ち切る。派手に血を吹いて倒れるハイ・チャージ。
そして2撃目。同じ要領でハイ・チャージを打ち倒し、レヴィアとこうきの前に真っ赤に染まった骸が転がる。そして影明の最後の攻撃はハイ・チャージの右前足を切り裂いて転倒させる。
そしてハイ・チャージの群れがこうきを狙う。四方から突撃を受けて中高く舞うこうき。こうきは意識を失った。
「こうき!」
友人の源治が叫ぶ。だがその悲鳴はこうきに届かない。
ハイ・チャージは次に武流を狙って一斉に突撃するが武流はすばやい身のこなしでそれを避けきると、反撃に転じた。
「よくもこうきを!」
武流が叫びながら 脚爪「オセ」でフェイントを主体とした攻撃で翻弄しながらハイ・チャージを攻撃する。
蹴りを3発決めるとハイ・チャージが1匹倒れる。
「戦車隊、一斉射撃。M3装備のほうは副兵装を使え。自走砲も一斉射撃だ」
武流が残った3匹のハイ・チャージに蹴りを叩き込んでから射撃の指示を出す。
「前衛、一事解散!」
武流はこうきを抱きかかえながら副兵装の射撃に巻き込まれないように退避すると、他の前衛も同様に退避する。
そして滑空砲と榴弾砲、スラッグ弾、グレネード、多弾頭ミサイルが密集するハイ・チャージを狙う。
それらは確実に3匹のハイ・チャージを肉片に変え、ここにキメラ討伐の任務と慣熟訓練は終了した。
その後源治が練成治療でこうきを回復し、欠員なく作戦全体が終了を迎えた。
●作戦終了
「まあ、歩兵との連携ならこんな感じですかね」
影明がそう告げる。
「頼もしい味方が増えて嬉しいわ、他の戦場で会ったら宜しくね」
戦車兵をねぎらい、アドバイスも交えながらレヴィアはそう言った。
「どうか、今後も無事に戦い抜いてね‥‥見知った人の死に顔を見るのは両親の時だけで十分だから」
「アイアイマム!」
レヴィアの心からの言葉に、戦車兵がそう答える。
「クルマはいい性能じゃないか。こいつらを生かすも殺すもあんた達次第って事だ。自分達傭兵を逆に使ってやる、位の意気込みを頼むぞ?」
「はい!」
まだ幼さが残る若い兵士が源次の言葉に意気込んで答える。
「データリンクシステムか‥‥俺たちが欲しいくらいだな、コイツ」
武流はそう呟いた。
基地に帰ると、こうきと一真は車両の分解整備に立ち会う。
「あの、この戦車に使われてるデータリンク装置は持ち運びは出来ないんすか? もし、戦車の入れない場所でも持ち運びが出来れば、そこで指揮が出来て役に立つと思うんすけど‥‥」
こうきの質問に、アドラーは難しい顔をしながら答える。
「それは厳しいですね。データリンクシステムは指揮車両に登載した大型のコンピュータとデータを解析し、伝達するためのオペレータがいてはじめて役に立つ代物ですからね。コンピュータの小型化は正直難しいです」
「そうっすか。残念っす」
こうきは心底残念そうにそう言った。
一方、ミズキは持ち込んだレーションや食材で作った料理で戦車兵の労をねぎらい、談笑していた。
そうして基地で作戦後のひと時を過ごし、傭兵たちはラスト・ホープへと帰っていったのだった。
了