●リプレイ本文
「ローザさん、会いたかったの♪」
いの一番に終夜・朔(
ga9003)が、ローザに抱きつく。
「ローザさん、お久しぶりです」
アクセル(
gc0052)がローザに挨拶をする。
「私はルキアだよ。よろしくね、音楽は好き‥‥綺麗な髪飾りだね。ずっと、君を見つめている、その花言葉を捧げた人には敵わないけれど」
そう言って、夢守 ルキア(
gb9436)は手品で赤い薔薇を出してローザにプレゼントをする。
「まあ‥‥ありがとうございます。さあ、皆さんラスト・ホープからの旅でお疲れでしょう。まずは中に入ってお茶でも飲んでください。そうしながら、自己紹介をしましょう?」
ローザがそう提案すると傭兵たちはローザの邸宅兼事務所の中へと入っていった。
「終夜・朔ですの。IMPで一度デビューした身ですけど、朔の夢の先にいるローザさんや皆さんと一緒に歌いたいと思って参加しましたの」
「朔さんの扱いについては、IMPとの話し合いを行いました。IMPとしての立場を前面に出さない、要するに『DIVA』のNoirという立場を押し出さずに、一人のアイドルとして参加するならばIMPとしては朔さんの今後の継続してのこちらへの参加も認めてくださるそうです。寛大な事務所で助かりました」
「それは良かったですの」
今後も一緒に活動できると聞いて至福の表情で猫耳をピコピコさせる朔。
「レイン・シュトラウド(
ga9279)です。歌で傷付いた人々の心を癒したいという気持ちで参加しました。全力で取り組みます。皆さんを感動させられるような歌が歌いたいですね」
「柳凪 蓮夢(
gb8883)、プロデューサーを勤めさせていただきます。『幸せな思い出』を作る手助けをしたいと想って参加しました。皆さんのメンタル面のケアはお任せください」
「神翠 ルコク(
gb9335)です。お友達に、アイドルの方がいるんです‥‥彼女のように、沢山の方を笑顔にしたい。例え、僕が影で涙を流すことになっても。そう言う想いで参加しました」
「そうですか。でもいけませんよルコクさん。あなた自身が幸せにならなければ、人を幸せにすることなどできませんわ。アイドルとは偶像。それだけに人々の目標となるような偶像でなくてはいけません。幸せなルコクさんを見て皆さんも幸せになりたいと思う。アイドルとはそう言うものです」
「紅蓮(
gb9407)だ。過去に歌手を目指して活動していたこともある。適正があると知って能力者の道を選んだが、今でも歌手をあきらめてはいない。その意味では今回の仕事は俺にとって最適と言えるな。ローザさんに感謝を」
「それは良かったですわね。是非、夢をかなえてくださいね」
「夢守 ルキアだ。芸名はリベリオンと名乗りたいと想っている」
「アクセルだ。前の依頼でローザさんに関わった縁で参加させてもらった。あと、ジラソール音楽事務所のモットーに共感してね。笑顔や希望を与える人達を支える事を目指していきたいと思っている。というわけで、プロデューサー業希望だ。身体面のケアと各方面への根回しや手続きを担当するよ」
「樹・籐子(
gc0214)よ。お姉ちゃんって呼んでね。芸名はウェステリア=ピークスって名前で行くよ」
「籐子さんが最年長ね。皆さんまだ10代の人が多いから、頼りにさせてもらいます」
「うん。頼りにして。ところでローザちゃんって何歳?」
「私ですか? 二十歳です。芸暦は5年ほどですが‥‥それがなにか?」
「ん、いや、なんでもないない。ちょっと気になっただけだから。それよりも、ユニット名とか決めちゃいましょうよ。デビュー目指して、ね」
籐子は両刀気味な年下好みで、ローザは丁度守備範囲内だったので気になっていたというのは内緒である。
「それでは、ユニット名を決めましょう。何かいい案がある方はいらっしゃいませんか?」
ローザの問いに、ルコクが手を上げた。
「ユニット名には笑顔とか希望とか入れたいです‥‥シャンリークイとか。中国語で向日葵―――あ、馴染みがないかも知れないですね。故郷では中国語を使ってたので‥‥」
「なるほど、シャンリークイ(向日葵)か。良いかもね! このジラソール音楽事務所は向日葵と縁が深いから、ぴったりかも知れないし」
アクセルが頷く。
「語呂としてもいいよね。ただ、ローザ君と切り離せないって言うのかな‥‥付属物みたいにならないようにはしたいかな」
ルキアがそう言うと籐子が「それで良いんじゃないかしらね」と言った。
「ユニット名か、花言葉を基準にするのはいい案だな」
紅蓮がそう言って笑いながら賛同する。
「ん〜、俺はシャンリークイってのが良さそうに感じるぜ、向日葵って明るい印象があるからな!」
紅蓮は笑顔で、大声でそういった。
「シャンリークイ―――決定みたいでいいでしょうか?」
ルコクが問うと、朔が
「問題ないですの」
と言いながら猫耳をピコピコさせた。
蓮夢も
「それでいいんじゃないかな?」
という。レインも
「決定だね。どうですか、ローザさん」
賛同してローザに尋ねる。
「いいと思います。それに向日葵‥‥ありがとうございます、皆さん」
ローザは向日葵に思い入れが深い。みながユニット名にその花を取り入れてくれたことを嬉しく思った。
「それじゃあ早速レッスンに入りましょう。善は急げ。ローマは一日にしてならずと申します。歌番組に出ることを目標に、がんばっていきましょう」
ローザがそう言うと、皆は頷いてレッスンに取り掛かった。
レッスン場。
「それにしてもIMPの方に加わっていただけて、心強いです。よろしくお願いします、先輩」
「先輩!? 朔が‥‥」
レインの言葉に朔が赤面して猫耳をピコピコさせ尻尾をピンと立てる。
「そうですね、現役アイドルですし先輩でしょう。先輩としてレッスンではみんなに胸を貸してあげてくださいね」
「朔の胸なら幾らでも貸すの♪」
アクセルの言葉に背伸びしてお姉さん風を吹かせ様とするが‥‥
「でも、朔の胸ちっちゃいの」
視線を落とし胸に手を当ててしょんぼりとしてしまう。
「じゃあ、先輩に負けちゃわないように頑張らなくちゃね。色々教えてね、先輩!」
そう言ってルキアは手品でキャンディのネックレスを出すと、
「食べる? このメーカーのキャンディ美味しいよ」
と朔に聞く。
「食べるの!」
猫耳をピコピコさせてキャンディを食べる朔。
「おいしいの。みんなも食べてなの」
そう言ってみんなにキャンディーを回していく。
キャンディを食べたことでレッスン前のみなの緊張は取り除かれたようだった。そしてキャンディーを食べ終わると、レッスンが始まった。
幸い皆能力者で身体能力は常人の何倍もあるので体力トレーニングは不要。早速ローザがピアノの伴奏をしながらボイスレッスンに入ることになった。
「プロデューサーさんはレッスンの様子を見て教え方を覚えてください。最初のうちは私が指導しますが、私も仕事があるのでずっとレッスンに付き添っているわけには行きませんから」
「分かりました」
「了解です」
ローザの言葉に蓮夢とアクセルが頷く。
そして次はダンスレッスン。とくにレインとルキアはペアでダンスを踊るため練習には力を入れた。
レインは何度もつまづきながら、がんばって練習する。
「う〜ん、なかなか上手くいきませんね。何が悪いんでしょうか?」
そんなレインに朔やローザがアドバイスをする。プロデューサーの二人は欠点よりも長所を見つけ出し、アイドル候補生たちを成長へと導いていく。
「スポーツドリンクをどうぞ。練習はハードですからね」
アクセルが休憩に入ったアイドル候補生たちにスポーツドリンクを配る。
「やあ、プロデューサー、俺のギターどうだい?」
紅蓮がアクセルに尋ねると、アクセルは適切と思えるアドバイスをしてからローザにどうだろうかと尋ねる。
「それでいいと思います。プロデューサーさん、上出来ですよ」
「お姉ちゃん一人がたりは得意だけど、やっぱりみんなと合わせるのはいまいち苦手なのよね。どうしたらいいかしら、プロデューサー」
籐子が蓮夢に尋ね、心理テクニックを駆使しながら蓮夢は籐子の不安を解いていく。
「ジラソール音楽事務所は良いプロデューサーに恵まれました。これからもよろしくお願いしますね」
そんなレッスンの様子を見ながらローザがこの二人にならば任せても良いと思えるようになって来たころ、皆で考えていたデビュー曲の歌詞が出来上がった。
「それでは、新曲の練習に入りましょうか?」
楽器の練習、歌唱の練習、ダンスの練習を重ね、海岸でPVを撮り事務所の中にあるスタジオで録音してマスターCDを作る。タイトルは『笑顔』カップリングは朔のソロ曲『はじまり〜夢の花〜』とローザの新曲『一握りの希望』だった。
「ご苦労様、お菓子とレモンティーだ」
アクセルがアイドル候補生たちの労をねぎらう。
そしてプロデューサーとローザによるプロモーション作業がかけられる。その結果、『笑顔』は初登場32位を記録し、ローカルTV局の歌番組からオファーが入る。
「やった! 歌番組から出演以来だ!」
蓮夢が珍しく興奮した様子で正式な通知を持ってスタジオに入ってきた。
「本当かい? お姉ちゃんうれしいねえ」
籐子が歓声を上げる。
「やりましたの」
朔が猫耳をピコピコさせる。
「ローザ君、僕たちがテレビ出演だって。信じられない!」
ルコクがローザにそう告げると、ローザは
「皆さんの実力ですよ」
と言った。
そして三日後、テレビ番組出演当日――
楽屋。
「さあみんな、ハーブティーを飲んで。練習どおりにすれば、問題ないよ」
アクセルがみなにお茶を出し、リラックスさせる。
「経験と努力は自分を裏切らない。大丈夫だ」
笑顔で、安心させるように。
「いよいよですね‥‥緊張します」
それでもレインが緊張していると、蓮夢が『おまじない』をした。
両手を軽く包み、レインの目をしっかり見据えて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「大丈夫‥‥君は、一人じゃない。一緒に頑張ってきた仲間が、傍にいる。舞台裏で、支えてくれる人達も居る。プロデューサーの、私達だって居る‥‥だから、きっと、大丈夫。さあ、せっかくのステージだ。思いっきり、楽しんできなよ」
そう言って微笑する。暗示と心理誘導の技術をフルに駆使して励ます。
「そうですね。行ってきます」
レインが微笑んで楽屋を出ると、蓮夢も微笑んで送り出した。
「さあ、初登場第32位、シャンリークイです!」
拍手。カメラの前に出る6人とローザ。
「さてシャンリークイはローザさんが新設されたジラソール音楽事務所の期待の新人ですが、ローザさんの評価はいかがでしょうか?」
司会に話を振られ、ローザは自信を持って答える。
「非常に高く評価しています。今回も傭兵の皆さんの支持を得てこの売り上げを達成することができました。『笑顔』は戦う人々に強く支持された曲です。それは、彼らが傭兵であることにも関わってくるのかもしれませんが、それだけではないと信じています」
「そうですか、ありがとうございます。それでは、シャンリークイの皆さんに歌っていただく前に、マキシCDのカップリング曲2曲のPVをお見せしたいと思います。『笑顔』に負けず劣らずいい曲ですよ。では、作詞・作曲、Noirで『はじまり〜夢の花〜』、作詞・作曲、ローザ・ギネ・エヴァンシスで『一握りの希望』です。2曲続けてどうぞ」
その言葉とともに黒いドレスを着た朔が、ピアノと一緒に白い部屋にいる映像が映る。そして、朔は歌いだした。
咲き乱れる花達よ
友情の花が咲き 愛の花が咲く
でもまだ咲かない花一輪
まだ私は咲けない どうして?
まだ時が満ちてないから
まだ私は咲けない 何故?
まだ私は種だから
でも咲けば私は大輪の一番綺麗な姿を見せよう
そう 私は夢の花
スローテンポな綺麗な雰囲気のピアノ曲だった。
曲が終わると、映像が今度は崖の上で風を受けて立つ、白いドレスを着たローザに移り変わる。
一握りの希望を 握り締めて
私は旅に出ます
苦しいことも 悲しいこともあったけど
それでも残った 一握りの希望
胸を張って 風を受けて進みましょう
前を見て 振り返らずに進みましょう
たとえ涙が 零れ落ちても
一歩一歩 確実に歩いてきましょう
前を見て 振り返らずにいきましょう
もし思い出が 呼び止めようとも
拍手。
「いやー、素晴らしいですね。さて、それでは本番です。シャンリークイの皆様に歌っていただきましょう。『笑顔』です」
紅蓮のギターによる前奏から始まり、ルキアのベースがリズムを支える。そして籐子のアコースティックギターがリードする中、歌は始まった。オリエンタルな曲調の歌だった。
いつか、心が折れてた 無限に続く戦いの日々に
でも、君がいた 君は微笑んでいた
だから誓おう 夕日に染まるこの丘で
たとえこの翼が折れたとしても 僕らは目指す 希望の青空(そら)を
レインが向日葵のコサージュにワンピース、そして厚底ミュール、胸には中サイズのパットを入れて女装をし、ナチュラルメイクで中性的な顔立ちを生かしながら可愛らしさを演出する。そして、心をこめて自分のパートを静かに高らかに歌い上げる。
君が僕の希望、ずっと笑っていて、見つめるのは君だけだから
ルキアが金の龍の刺繍の入った黒のカンフーチャイナを着て男装し、テノールの歌声で自分のパートを歌い上げる。
その笑顔を何時までも守るから――
緑に紫の帯、金の竜の描かれた服装、裾は広げてカンフーショートパンツを着用したルコクがソプラノで歌い上げながら伸びやかに舞い踊り、自分のパートを歌い上げる。
ねえ聞いて僕は君を愛している 菫のように永遠の愛を誓おう
紅蓮が情熱的にギターをかき鳴らしながら、心をこめて自分のパートを歌い上げる。
だから誓おう 夕日に染まるこの丘で
世界に笑顔を取り戻すまで もう泣かないと
籐子がスイスの妹まで届けと熱唱する。こざっぱりとしたワイシャツと紺のロングパンツと言う服装だが、気迫では負けていない。
間奏
レインがハーモニカで主旋律を繰り返し奏でてから、ルキアとペアを組み、ルキアのリードでダンスする。
そして最後の合唱。
僕らは誓うよ 夕日に染まるこの丘で
世界を 君を 笑顔を守ると
何物にも変えがたい 明日を守り抜くと
曲が終わって、照明が変わる。拍手。
「ありがとうございました。シャンリークイの皆さんでした」
退場するシャンリークイとローザ。
「お疲れ様でした、皆さん。素晴らしい演奏でしたよ」
ローザが労いの言葉をかける。
「お疲れ様」
「お疲れさん」
蓮夢とアクセルも声をかける。
こうして、シャンリークイのデビューは無事終了した。皆笑顔で終えることができた。そして後に残ったのは未来への夢と希望。また同じメンバーで歌えるように願いながら、彼らは一時解散した。