●リプレイ本文
●オープンコンバット
「さあ、傭兵諸君、私を楽しませてくれ。ちなみに私のフォース・フィールドはフェニックスほどではないが強固だぞ」
そう言うとフィッシャーマンは光線銃を構えた。
「オープン、コンバット!」
フィッシャーマンはまずは前衛に立っている6人から対処することにした。誰からにするか考え、ヒューイ・焔(
ga8434)に狙いを定める。容赦はしない。光線銃を5連射する。
「ぐあっ!」
5発の光状はヒューイを焼き、彼の意識を現実から乖離せしめる。
「ヒューイ!」
漸 王零(
ga2930)が叫ぶ。意識が飛ぶ瞬間をヒューイは確かに体験した。
「おのれ!」
王零が激昂して突撃する。
「‥‥‥‥」
それを見てUNKNOWN(
ga4276)が無言で援護をする。スコーピオンから発射された弾丸は、側面に回りこんで強力な一撃を放った王零の攻撃と合わさり、フィッシャーマンに大きなダメージを与えた。
「くっ! やるな、傭兵!」
フィッシャーマンが自分の傷を見て傭兵たちに賛辞の声を送る。まだ余裕だという証拠だろうか?
「落ち着くんだ王零、まずはヒューイの治療を‥‥」
UNKNOWNが落ち着くように呼びかけると王零は必死の思いで何とか自制し、救急セットでの応急処置を二度行う。王零の懸命な救護措置でヒューイは意識を取り戻すが、どうにか動けるような状況でしかなかった。
「ヒューイ、下がって治療を受けるんだ」
UNKNOWNがヒューイに後退を勧める。
「お前がブレーンか。ブレーンは先に叩いておくに限るな‥‥」
冷静に指示を出し続けるUNKNOWNをみてフィッシャーマンが標的をUNKNOWNにかえる。光線銃を撃ち放し、UNKNOWNの肩を焼く。
「ぐっ‥‥」
UNKNOWNは悲鳴を漏らすが、それでも咥えた煙草は落とさなかった。そしてUNKNOWNは制圧射撃でフィッシャーマンの行動を疎外することを試みる。それはかろうじて成功し、フィッシャーマンは身動きが取れなくなった。
ヒューイが後ろに下がると、前線で攻撃をする予定だった冴城 アスカ(
gb4188)が救急セットでヒューイを治療する。それからフィッシャーマンに二丁拳銃を放つがそれらは全て回避された。
「ククク、甘いな」
フィッシャーマンが余裕の笑みをこぼす。
それからアスカとコンビの優(
ga8480)も救急セットでヒューイを治療する。
「しっかりしてください。あなたに倒れられては困ります」
優がヒューイを励ましながら治療を続ける。それで何とかヒューイの生命力は4割前後まで回復した。
(「今回この場に来られなかったキムムの分も、こいつには一撃くれてやらないとな」)
ユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)がクルメタルP−38にペイント弾を仕込み、弓と持ち替えながらそう考えた。
ユーリは、キムム君(gb0512)の言葉を思い出す。
「奴は強敵です。少なくともKV戦では俺は歯が立ちませんでした。生きて帰りたいなら、奴を程々に楽しませることです。奴を倒したいなら、適当に戦い、逆上した所を叩いてください。無事帰ってきたら、カフェでココアでも奢りますよ」
キムムは、そう言っていた。
「依頼は暗殺だからな。逆上させて叩くとするか‥‥」
そう呟いてクルメタルP−38をからペイント弾を発射する。それはフィッシャーマンのサングラスに命中し、彼の視界を奪う。
「おのれ!」
フィッシャーマンは激昂し、汚れたサングラスを投げ捨てる。ユーリに反撃をしてやりたいところだがUNKNOWNの制圧射撃で身動きがとれず、それはかなわない。ユーリは続けてクルメタルP−38から銃弾を放つが、それは全てフィッシャーマンのフォース・フィールドの前に散った。
「くっ‥‥一人では無理‥‥か」
「ユーリ、あたしらに任せな」
鹿島 綾(
gb4549)がフィルト=リンク(
gb5706)と共に前に出る。綾の真デヴァステイターとフィルトのSMG「スコール」が火を噴く。火線は一本に集約され、フィッシャーマンにダメージを与える。
「どうですか!?」
フィルトが凄む。
「やるじゃないか、傭兵諸君。なかなかに楽しいよ」
制圧射撃を受け続けながらも、フィッシャーマンは余裕の口調で応じる。
「けひゃひゃ、我が輩がドクター・ウェストだ〜。私設研究グループのウェスト(異種生物対策)研究所所長にして分子生物学が専攻者。だが、フォースフィールドの分析、無効化研究中でね、悪いが君にはサンプルになってもらう。短い間だがお見知りおき願うよ」
「あいにくだが、諸君らにとってフォース・フィールドの解析は、原始人がパソコンを解析するのと似たようなレベルだ。無駄なことをするものだな」
フィッシャーマンの言葉に、ドクターは「あいにくだが‥‥」と返す。
「我輩の科学する心はそう簡単にはとめられないのだよ」
そう言うとドクターはヒューイに練成治療をかける。一回では足りない。二回、三回とかける。それでどうにかヒューイを軽症と呼べるレベルまで持っていくことが出来た。そしてドクターは自らに練成強化と電波増幅を施すとエネルギーガンを撃ち放した。
それにタイミングを合わせてファルロス(
ga3559)が
「貫け!」
神撫(
gb0167)が
「悪魔の力を身に纏い、天使の力を借り受け、参る!」
孫六 兼元(
gb5331)が
「今度は生身で勝負だ!!」
そう口々に叫びながら連携攻撃を仕掛ける。だが、ドクターの攻撃は命中したが、他の三人の攻撃は空振りに終わった。
「なかなかに、楽しませてくれる!」
フィッシャーマンはダメージを受けてもなお余裕の表情で、UNKNOWNの制圧射撃を受け続ける。
煌月・光燐(
gb3936)はロウ・ヒールで自らの傷を回復させると、弓に弾等矢を番えて解き放った。
「‥‥紅蓮の劫火を‥‥」
だがその攻撃はフィッシャーマンの回避力の前にむなしく炸裂する。
「まだまだ甘いな」
フィッシャーマンの寸評に光燐は怒りの表情を見せる。
フィッシャーマンは制圧射撃を受け続けながらもブレーンのUNKNOWNと回復役のドクターのどちらを先に始末すべきかを考え、標的をドクターに定めて光線銃の射撃を行った。行動を阻害されながらも放った4発の光線銃でドクターを倒すと、フィッシャーマンは満足げに頷いた。
UNKNOWNは救急セットでドクターに応急処置を行う。
「ドクター、しっかりしたまえ」
二回続けての応急処置だ。
「助かったのである」
意識を取り戻したドクターが礼を言う。それからUNKNOWNは制圧射撃を再開してフィッシャーマンの行動をまた阻害する。
「ええい、鬱陶しい!」
フィッシャーマンが叫ぶ。心底鬱陶しそうに。だがそれこそがUNKNOWNの狙いなので、制圧射撃の手を緩めることはない。
王零も攻撃の手を休め重症のドクターに救急セットによる治療を二度行う。
「テメェを倒して是が非でも生きて帰る」
ヒューイは先ほどのお返しにとばかりハミングバードとカミツレを振るい、フィッシャーマンを攻撃する。だがヒューイでは攻撃を当てても貫くことが出来ない。
アスカと優も連携するがアスカの攻撃は相変わらず命中せず、優の攻撃だけではダメージを与えるに至らない。
「くうう‥‥私の攻撃じゃ当たらないし、やっぱり当てられる面子で連携しかないわね」
アスカがぼやくとユーリに綾、フィルトが連携を行う。ユーリのクルメタルP-38と綾の真デヴァステイター、フィルとのSMG「スコール」から発射された銃弾が、一箇所に命中しフィッシャーマンにダメージを与える。
「くぅぅぅ! 痛いぞ。今のは痛かったぞ!」
「キムムの分は返したぞ!」
ユーリが堂々と宣言する。
「楽しませてやったぞ、どうだ!?」
綾が勝ち誇る。
「強いのは分かりますけど‥‥、こう囲まれて、さらに自分一人で戦うなんて、よっぽど戦うことが好きなのですね‥‥」
フィルトが哀れみをこめて言う。
「くっくっく‥‥楽しい、楽しいぞ。ここまで追い詰められたのは今回が初めてだ‥‥」
「あら、意外と経験不足なのね」
フィルトが更に哀れみをこめて言う。
「そうとも言うな‥‥」
フィッシャーマンが負け惜しみとも取れる発言を行うと、綾が
「どうだい、降参するかい?」
と挑発をかける。
「とんでもない。まだまだ戦いはこれからだ」
フィッシャーマンはまだまだ戦いを続けるようだった。
●反撃なるか?
「この人数に勝てるとでも?」
ユーリがたずねる。
「ああ。まだ負けたわけではない。私はまだ戦える」
そう言うとフィッシャーマンは光線銃をUNKNOWNの頭上のHWめがけて撃った。爆発が起きてUNKNOWNの制圧射撃の手が止まる。
ファルロスと神撫と兼元と光燐が連携攻撃を行うが、それらは全て回避されてしまう。
「だからまだまだだと言った!」
UNKNOWNめがけて光線銃が打ち込まれる。6発の光条がUNKNOWNの急所を撃つ。
「ぐぅっ!」
UNKNOWNが倒れる。出血が激しい。
「UNKNOWN!」
ドクターが叫ぶ。まさかUNKNOWNまでやられるとは予想外だった。しかし攻撃で出来た隙を逃さず、王零とヒューイが連携攻撃を仕掛ける。
「ちぃっ!」
王零の国士無双とヒューイのハミングバードとカツミレによる攻撃で、決して浅くはないダメージを受ける。だがフィッシャーマンの闘志は揺らぎはしない。むしろ増しているようであった。
そしてアスカと優、ユーリと綾、そしてフィルトによる一大連携が行われる。
アスカの二丁拳銃が、優の月詠が、ユーリの魔創の弓が、綾の真デヴァステイターと脚甲「プトレマイオス」 が、フィルトの SMG「スコール」がフィッシャーマンのフォース・フィールドに集中し、打ち破る。
「ぐあああああああああああああああああああ!!」
絶叫を上げる。
「回復である」
瞬間、ドクターの練成治療がUNKNOWNに飛んだ。
「やるな傭兵諸君。だが、まだまだこれからだ!」
フィッシャーマンは叫ぶと大きく後方に下がる。これで後衛組の射程からは外れたことになる。だが、こちらは後衛組も射程に捕らえたままだ。前衛組の神撫と兼元が前に出るが相手にされなかった。
フィッシャーマンは立ち上がったばかりのUNKNOWNに光線銃を撃つ。また制圧射撃をやられては厄介だ。そしてUNKNOWNはもう一度意識を手放した。
それから傷が少ししか治っていないドクターに向けて光線銃を撃つ。そしてドクターも倒れる。
「よくも!」
綾が叫ぶ。
「女、邪魔だ」
光線銃が二発。綾の腹部に命中する。それで綾は倒れた。
「くっ‥‥しくじったよ」
「まずは‥‥ドクターからか」
王零は冷静な判断の元(と言っても心の奥底は怒りで煮えたぎっているのだが)ドクターに救急セットで応急処置を施す。ドクターを二度の応急処置で回復させると、綾の元へと移動した。
「ヒューイ、足止めを頼む」
「おうさ!」
王零の言葉に従い、ヒューイはダメージを通せないながらもフィッシャーマンに確実に攻撃を当て、フィッシャーマンの邪魔をする。
「女にまで手を出しやがって。テメェは絶対に許さねえ」
ヒューイが激昂して叫ぶ。
「女と言えども戦士。違うか?」
「ざっけんじゃねえ!」
ヒューイも相当に頭にきているようだ。怒りの声が響く。
アスカは後方に下がってUNKNOWNに救急セットでの治療を施す。
「大丈夫かいUNKNOWN? 散々だね」
「ああ‥‥少しばかり痛い目を見たが、これしきのことでやられはせんよ‥‥っく」
「まだ休んでな。応急処置しかしてないんだから」
「ああ、すまないな」
一方、優も綾に近づき救急セットで治療を行う。
「綾さん、しっかりしてください」
「ん‥‥ああ、優か‥‥ってことは俺はまだ生きてるんだな‥‥」
「当然です。そう簡単に死なせてたまりますか!」
「くそ、バグアめ‥‥っぅ」
綾は立ち上がろうとするがダメージでそれが出来ない。
「まだ休んでいてください。そのうちドクターの練成治療がきます」
「わかったよ‥‥」
綾は頷くと大人しく練成治療を待った。
ユーリとフィルトが連携攻撃を行う。火線は一点に集中し、わずかだがフィッシャーマンのフォース・フィールドを突破する。
「練力が危ないのである」
ドクターがそういいながらも練成治療をUNKNOWN、ドクター自身、綾に2回ずつ施す。それで三人は何とか立てる状況になった。
それからファルロスと神撫と兼元と光燐が連携攻撃を仕掛ける。その攻撃はかわされ続けるが、少なくともフィッシャーマンの足止めの役には立っている。
そしてUNKNOWNと王零とヒューイによる連携攻撃が行われ――
「ぐああああああああ!!!!」
フィッシャーマンは生命力が1/4になるほどの大ダメージを受け、絶叫を上げる。
「ほら、どうしたの? 神戸で戦ったバグアの方がもっと強かったわよ?」
アスカが挑発する。
「あなたにも、安らぎを与えましょう」
優が慈愛をこめているかのように言う。
「まだまだだ‥‥」
その言葉を聞いて呆れたように優が言う。
「あなたは限度というものをしらないのですか?」
「知っているさ」
「クス‥‥死に掛けそうなのにワクワクしてるなんて‥‥アンタと私、案外似た者同士ね」
アスカが笑う。
「――チェックメイト。私たちの勝ちだ」
UNKNOWNがチェスの駒を進めたかのように言う。
「テメエが何をしようが俺たちが勝つ!」
ヒューイの言葉にフィッシャーマンが笑う。
「くっくっく‥‥それはどうかな?」
「まさか、ピンチになってあれに乗るとかいわねぇよな?」
神撫がフェニックスを指しながら言う。
「ふっ‥‥その手があったか」
フィッシャーマンがにやりと笑うと、急に姿を消した。
それを受けてあるものは死角を庇いあい、あるものは移動スキルでその場から動く。そしてフィッシャーマンが移動したその先は‥‥
――フェニックスのコクピット――
●不死鳥再臨
「くそっ! やられた!」
神撫が罵声を上げる。
重々しい音を立てて、フェニックスが起動する。
『ハンガーオープン。全HW発進。基地を攻撃しているKVを迎撃せよ』
フィッシャーマンはHWを発進させてスペースを確保すると、フェニックスを人型に変形させて傭兵たちに向き直った。
「最悪だ! あれに搭乗されるなんて!」
神撫が叫ぶ。予測しうる事態だった。それに対処できなかった自分が恨めしい。神撫の表情はそう告げていた。
フィッシャーマンはまずUNKNOWNにバルカン砲を発射する。
次いで王零に。
そしてヒューイに。
更にアスカに。
次が優で‥‥
最後がユーリ。
皆それぞれに大きなダメージを受ける。
だが活動に支障はない。
ドクターが自分も含めた負傷者に練成治療を施す。
「どうする‥‥ドクターの練成治療だけじゃ追いつかんぞ。このままじゃジリ貧だ‥‥」
ファルロスが淡々と言う。
「VKを取りに戻るしかなかろうな。幸い、ハンガーは開いておるしKVは目の前だ。もっとも、KVに戻ってもあのフォース・フィールドが待っておるがのう」
兼元がそう言うと、光燐が反対した。
「もう一度瞬間移動できるとは思えないですし。むしろキメラや強化人間もさげられている今のうちに、基地の内部に入ったほうがいいかもしれないです」
そうしゃべっている間にも攻撃は繰り広げられているが、フェニックスの防御力と機動性の前に全ての攻撃が無効化されていた。
絶望感が傭兵たちの間に広がる。
「おのれ、勝負を挑んでおきながら不利になったら機体を持ち出すとは。フィッシャーマン、見損なったぞ!」
兼元が叫ぶ。
「そうかもしれんな。だが、基地司令という立場上おいそれとやられるわけにもいかんのだ。遊びは終わりだ。本気で行くぞ!」
フィッシャーマンが本気を宣言する。だが、宣言をされるまでもなく傭兵たちは圧倒的に不利だった。
仕方がないので傭兵達は光燐の提言どおり基地内部に入り込む。フィッシャーマンはなぜか追ってこなかった。その間にドクターが練成治療を行う。
「うむ。これで体勢はほぼ万全だな。後は我輩の傷だけなのである」
そして更にフィッシャーマンの追撃を待つがいつまでたっても追いかけてこないので練成治療でほぼ全員の傷を回復させる。更に救急セットでも治療を行って、全員の傷が完璧に回復した。そこでドクターの練力が覚醒維持分を除いて品切れとなる。
そして――フィッシャーマンがやってくる前に、基地の奥から強化人間たちが光線銃を持ってやってきた。
「くっ、やるしかないかね‥‥」
UNKNOWNがそう呟いたが、強化人間たちは脅すだけで攻撃はしてこず、ハンガーに行くように促した。
「行けとさ。まったく、あのバグアはどこまで人間を舐めれば気が済むんだ」
王零が憤慨して言う。
「バグアとはそう言うものさ。我々人間はやつらにとってはおもちゃか道具でしかない」
UNKNOWNが煙草を燻らせながら呟く。
「そんなの認められるかよ!」
綾が怒鳴る。
「でも事実だろうね〜。バグアたちの演説がそれを裏付けているし」
ドクターが半分投げやりに言う。
「考えてもしょうがない。問題はやつをどうするかです」
神撫がそう言うと、兼元が
「倒すしかなかろう。強化人間どもがワシらをこうして追いたてているってことは、やつは少なくとも強化人間どもでワシらを殺すつもりはないらしい」
と言う。そして強化人間に押されながらたどり着いたハンガーでは、フェニックスに乗ったフィッシャーマンが待ち受けていた。
「さあ、傭兵諸君。前回は空のバトルだったから、今回は陸のバトルと行こう。諸君のKVをとってきたまえ」
「くっ‥‥KV戦か。ワシらにはさらに不利な状況じゃのう」
兼元が言う。
「とは言え、断る権利はないようですよ」
フィルトがフィッシャーマンの様子を見ながら言う。
「どうやら、そのようだな」
綾が覚悟を決めたように言う。
「あんたって最低ね。生身だと不利だからKVってわけ?」
「楽しむのにも限度があると言うことだ。負けることだけは出来ないのでね」
アスカの問いにフィッシャーマンは笑って答える。
「でも、ドクターの練力も限界だし、生身で行けばジリ貧なのはこっちですよ」
光燐が言う。確かにこちらの傷も完全に回復したが、再び生身戦を挑まれれば回復できないこちらが全滅している可能性が高い。
「しかし、もう少し早く俺がフェニックスに対処できていたら、こんな事態にはならずにすんだのに‥‥」
神撫が嘆くとユーリがフォローを入れた。
「仕方がない。バグアが瞬間移動してフェニックスのコクピットに座るなど、予想も出来なかったことだから」
「とにかく、誰一人かけていない現状をまずは喜ぶべきでしょう。これからのことはこれから考えましょう」
優がそう言うと、ヒューイが
「そうだな。とにかくやつを倒すためにはやつのフィールドに上がるしかない」
と答える。
「まさか背中を撃つ様な無粋な真似はするまいな?」
UNKNOWNが問いかけるとフィッシャーマンはそれはないと答えた。
「人間相手にそんなことをして倒しても、自慢にもならんのでな」
「俺たちは下等生物か?」
「その通りだ。その中で傭兵と呼ばれる連中は少しはましだと思っているがね」
「そうかい、そいつはありがとうよ!」
ファルロスがフィッシャーマンの言葉に怒りを見せる。面と向かって下等生物呼ばわりされれば誰でもそうなるだろうが。
「もう一戦できるようになってうれしいよ。我は漸王零‥‥この名前、しかと覚えておけ!」
「覚えておこう。さて、そろそろKVに移動してくれないかな?」
王零の言葉を噛み締めるように確かめた後、フィッシャーマンは傭兵たちを促す。
「ふん! 言われなくても移動してやるさ〜。生身対鹵獲KVじゃ、明らかに不利だからね〜」
ドクターがそう言って駆け出す。そして傭兵たちがハンガーを出ると白皇院・聖(gb2044)が待っていた。
「皆さん、怪我は?」
練成治療や救急セットで処置してあるが正直言って包帯だらけのひどい有様だった。
「救急セットで治療した人は私の練成治療を受けてください。傷跡が残ります」
そう言って聖は包帯をはずして練成治療をかける。
「それで、バグアは倒したのですか?」
「まだだ。これからKV戦になる」
聖の問いにファルロスが事情をかいつまんで説明する。
「なるほど‥‥ずいぶんと不遜なバグアですね。皆さん、負けないでください」
「ああ、今度こそ負けないさ」
綾が気合を入れる。
そしてKVに乗り込んで起動させると、フィッシャーマンのフェニックスがやってきた――
続く