タイトル:【AEE】バイク開発依頼マスター:碧風凛音

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 13 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/12/08 08:35

●オープニング本文


「所長、少しよろしいでしょうか?」
 アスポワーリュ・エスポワール・エタ・研究所フランス語で絶対的な希望の国を意味するこの研究所で兵器運用アドバイザーを務めるヨハン・アドラー(gz0199)は所長のジャンヌ・ライラックにそう切り出した。
「いいけど、どうしたの?」
「実は先日傭兵の方々と話しをする機会に恵まれたのですが、そのときに車両のラインナップにバイクがほしいと言う要望をいただきましてね。現在傭兵が使えるバイクと言えばAU−KVしかないわけですので、軍用バイクや民間のバイクをモデルにして数種類の傭兵用バイクをリリースしてはいかがかと思いまして」
 それを聞くとジャンヌはしばらくうなったあと「いいんじゃない?」と言った。
「そうね、まずはオフロード仕様のバイクね。後部に荷物を積載できる場所をつけてテントやエマージェンシーキットと言った生存に必要なものを積むとかすれば、南米戦線でも売れるわね。あとは二人乗り仕様のバイク。これは大規模作戦でドラグーンがやっているAU−KVの後ろに人を乗せて運ぶと言うものを意識して。それからファッション性を重視した街乗り用のバイクね。これも二人乗りで、デートとかに使えるようにすれば喜ばれるんじゃないかしら? 最後に、スポーツ仕様の高級バイク。バイクはマニアが多いから高級モデルも売れると思うわ。大体こんなところね」
「わかりました。実際に傭兵の方々の意見も聞きたいのですので、開発以来として依頼を提出してきてもよろしいですか?」
「ええ、いいわよ。売れないバイクじゃ意味がないし、思いっきり趣味に走ってもらってかまわないから実際に使いたい人たちに意見を聞いて頂戴」
「はい。では早速以来を提出します」
 ヨハンはそう言うと自分の端末の前に座り依頼用の文章を書き始めたのだった」

●参加者一覧

/ 白鐘剣一郎(ga0184) / 須佐 武流(ga1461) / 終夜・無月(ga3084) / UNKNOWN(ga4276) / アルヴァイム(ga5051) / 風羽・シン(ga8190) / 月代・千沙夜(ga8259) / α(ga8545) / 守原有希(ga8582) / ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751) / アーシュ・オブライエン(gb5460) / フォルテ・レーン(gb7364) / 丙 七基(gb8823

●リプレイ本文

「さて、傭兵の皆さん、本日はバイク開発依頼にお集まりいただきありがとうございました。私、司会を勤めさせていただきますヨハン・アドラー(gz0199)と申します。そしてこちらが所長のジャンヌ・ライラックと、副所長の如月・孝之です」
「よろしくね」
「よろしくおねがいします」
 ジャンヌと孝之が挨拶をし傭兵の自己紹介が始まるかと思ったところで、アドラーは思いがけないことを言った。
「自己紹介に入る前に、α(ga8545)さんから特別なお話があるようですので、そちらをお聞きしてからにしましょう」
 そう言うと金の髪と金の目をした女性が一歩前に出た。
「ご紹介に預かりましたαです。このたびは車両扱いのバイクの開発依頼とのことですが、過去から同様の要望は多くULTに出されており、出来ません、扱いません、作りませんと言った回答をULTより多く頂いているようです。途中で「実現可能性を検討する」と返答頂いた方も居られるようですが、それを否定され続けた方々は知らされておりません。ULTより「検討する事にしました」と以前の方々にも連絡を入れなくては大変に失礼だと存じます。突然依頼を出されても嫌な気持ちになる方々も居る事を忘れないよう願います」
 そう言うと一個言葉を区切った。
「武器や機体開発依頼でも同様の事があるようです。提案に対して出来ない、不可能だ、お前がやれ、と報告を出された後に、何も言わずに否定した提案そっくりをするという報告が散見されます。これらも一言きちんと言えば嫌な気持ちにさせません。どうか留意していただきたく思います」
 その言葉に対し、ジャンヌはこう答えた。
「貴重なご意見をありがとうございます。αさんの仰ることはもっともです。ただ、残念ながら私はULTの者ではないので、発売できると断言はいたしません。我々研究者が皆さんに開発依頼をお願いしたものに関しても、必ず採用になるとは限らないのです。私もその点は心を痛めておりますが、少なくとも、今回のように、広く皆さんに影響するような開発に関しては、ULTも、その時の状況に応じて慎重に判断していると思います。発売できるかできないか未定の状況では、安易にアナウンスはできないのです。可能である段階に至ったなら、そのときは必ず、これまで提案を下さった皆さんも含めて、正式にお知らせすることでしょう。私も可能な限りULTに検討するようにアクションをかけていきます。こからも出来ることはやって行きたいと思いますのでよろしくお願いします」
「分かりました。ありがとうございました」
 納得したかどうかはともかく、αはそれで引き下がった。
「では、今回のバイク開発依頼は意見を集めるためのものですので、実現可能か不可能かはこの際横においておきまして、皆様の意見を可能な限り拾い上げてULTに届けたいと思います。じゃあ、アドラー君、司会お願いね」
「はい。ではまず、今回皆様からお菓子やらなにやらの差し入れをいただきましたので、それをご紹介しながらはじめようと思います。まず風羽・シン(ga8190)さんから茶菓子をいただいております。それから守原有希(ga8582)さんよりホットサンドにポトフ、蜂蜜のタルトなどをいただいております。ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)さんからはコーヒーとお菓子を。君、人数分のカップとスープ皿、それから、食べ物を載せるお皿を用意してください」
 ヨハンは部下に指示を出すと話を続けた。
「皆様ありがとうございます。これらのものをつまみながら、ゆっくりと話し合いましょう。それからアルヴァイム(ga5051)さんが軍のトレンドや傭兵の嗜好を調査して会議用の資料を作ってきてくださいましたので配布いたいますね。では、一通りいきわたりましたか。それでは剣一郎さんからお願いします」
「白鐘剣一郎(ga0184)だ。今回はよろしく頼む。一般販売されるタイプのバイクでも恐らく需要はあると思うが、我々能力者が使う場合、ジーザリオなどに代表されるように任務での使用も往々にしてあり得る。任務で使うならAUKVに追随出来る性能を始め、多少の無理にも耐え得るタフさが必要になるだろうな」
「そうでしょうね。AEEとしてもその方向で考えてるわ」
 剣一郎の言葉にジャンヌが割り込む。
「能力者基準で考えると要求仕様も相当な物になると思うが、実現させる方向で是非とも検討して貰いたい。それで、俺からの要求は次のようになる」

 1:防弾装備の一部標準化
 特に前輪を護るフェンダーカバーや搭乗者をある程度保護出来るフェアリングの標準装備を検討。

 2:AUKVとのパーツ共有
 性能確保とコストダウンを目指し各種パーツの流用を積極的に進めてみては?(特にタイヤなどの消耗品)。

 3:ブースト機構
 能力者用の四輪車と同じく、支障無ければブースト機構を採用。

「妥当な要求という気もしますが車両に対する要求がないですね。これからですか?」
 ヨハンの言葉に剣一郎は「ああ」と答える。
「提案としてはオン/オフ両用可変型バイクだな。基本はオンロードだが、システムの切り替えにより足回りつまり、サス設定や最低地上高などが変更され、ある程度のオフロード走行にも対応可能となるタイプ。パッセンジャーシート有で、フロントは『ミカエル』でも採用されているハブステア機構を希望する。それから高速クルーザーも希望する。ビッグスクーターの発展型で高速走行時の安定性維持を想定して前1後2輪のトライク形式。フルカウルも装備、だな。俺からの意見はこんなものか」
 剣一郎の意見を、アルヴァイムは付箋に書き出す。後でみなの意見をまとめて、共通項を導き出すつもりなのだ。
「俺もクルーザーを希望するな」
 そう言って手を上げたのはフォルテ・レーン(gb7364)だった。
「ではフォルテさんどうぞ」
「ああ。クルーザー、アメリカンとも言うが、長距離移動が出来そうな大トルク、大積載量の大型バイクを希望する。直進性能重視のやつだな。高速クルーザーとはちょっと違うかもしれないが同じクルーザーってことで範疇に入れておいてくれ。それからビッグスクーターってんなら某ジャパニメーションのアレだな。いわゆる「座る」乗車姿勢・大口径タイヤの大型スクーターで、AUKVにも適用できるデザインを希望する。白鐘さんと意見がかぶったが、こんな感じだな」
「私もアメリカンを推すね。いわゆる大型アメリカン。町乗りに良し、遠出に良し、速さもタンデムも楽しめる。搭載も悪くは無い、という事で本命はコレ。よろしくね、ヨハンさん」
 そう言ったのは月代・千沙夜(ga8259)だった。
「了解です。では、次は須佐 武流(ga1461)さんお願いします」
「俺が考えているのは‥‥車種はオフロード。軽量で取回しがいいこと。エンジンの出力は250〜600cc程度の排気量。速度よりも小回りや使いやすさを重視する。構造はシンプルで堅牢に。無駄な装飾や機能は極力省く。マシンに余裕を作って拡張性をあげたい。そんなところか」
「ずいぶんとシンプルね? 理由は当然おありなのよね?」
 ジャンヌの言葉に部流はその理由を答える。
「まずは取回しのいいほうが柔軟性がでる。戦闘中に使うとなると速度よりも細かな動作が出来たほうがいいし、舗装されていない道路で使うことも考慮すると自然とそうなる。速いマシンというのも悪くはないが‥‥レースで使うんじゃないんだから速けりゃ良いというものでもない。
 エンジンは‥‥大体そういう目的で使う最小〜最大の大きさのつもりで選んだ。シンプルで堅牢な構造にして欲しいのは、荒い使い方をすることも多くなるだろうからだ。簡単に壊れて欲しくない。シンプルな構造なら、整備性も上がるから、緊急時の修理も楽になるだろう。それと、無駄な装飾や機能を省いたのは‥‥あとで、用途に応じてオプションやカスタムをしやすくするためだ。オフロードだって‥‥オンロードのタイヤを履かせれば舗装路を高速で走れる。荷物用のケースだって積もうと思えば積める。それが理由だな」
「なるほどね。だそうよ、アドラー君。どうおもう?」
「実に理にかなっていると思いますね。では、似たような意見の提案のある方がいらっしゃればどうぞ」
 そのヨハンの言葉にアルヴァイムが手を上げた。
「個人的には依頼への利便性を勘案してオフロード仕様を推奨します。アクセサリは防弾性や走破性の向上といった利便性の増加を狙った実用性重視の物を推奨ですね。可能な限り妥協は避け、明確なコンセプトを打ち出せるようにしたいと思います」
「私からもよろしいでしょうか?」
 そう尋ねたのはアーシュ・オブライエン(gb5460)であった。
「どうぞ、アーシュ嬢」
「正規軍向け、伝令や偵察用途を想定し、ある程度の速度性能と非常に高い機械的信頼性・不整地走破性能が必要で、その代わりに荒い使用にも耐え得るのが目標です。出来れば値段も抑えて‥‥目指すはポスト・ジーザリオを。また、少し毛色を変えて‥‥馬力を増強、車体を拡張して追加装備を施してみるのも良いかも知れません。通信機材等の車載装備を用意出来れば、大規模作戦での正規軍によるバックアップがより効果的になる事でしょう。副次的には、AUKVの追加装備開発に繋がるかも知れませんしね。オフロードに関してはこんなところです」
「ありがとうございます。他には‥‥」
 そこでフォルテが手を上げた。
「任務で使うなら安価な中型モトクロスがほしいな。最高速はなくてもいいから最低限未舗装地区でも平気で走れるトルクと旋回性が欲しいところだ」
「なるほど‥‥他にオフロード系統は何かありますか?」
「うちもいいかな?」
 そう言ったのは有希であった。
「どうぞ、有希さん」
「オフロードベースのデュアルパーパスなら路面を選ばない車種で、任務地も選ばないのでよいと思います」
「なるほど、デュアルパーパスね。いい目の付け所ね。これは是非うちで出したいわね」
 売れそうだと見てジャンヌは喜色をあらわにする。
「では他には‥‥ないですね。では終夜・無月(ga3084)さん、お願いします」
 指名されると、無月は熱の篭った口調で語り始めた。
「コンセプトは史上最速と最機動力を兼ね備えた変形バイクです。機動力を兼ね備えた史上最強のネイキッド『KING』を主体に外装フレーム等のイメージはそのままに参考しつつ、雰囲気は崩さずに防御面強化と風の抵抗減化の為の各部のカウルを多少増強、ミラーは風の抵抗減化に可能な限り小型且つ車体と一体化、前後輪はヘルヘブンの高速二輪モードの様にし前後其々二輪化しますが、其々タイヤを合せた結果で前後輪が大き過ぎて逆に小回りが効き難くなる様にはせずに大きさをギリギリの所迄高速力と機動力両立化します。そして以上を基本とし、それに付属する変形機構案ですがA案とB案の二つがあります」
 そう言うと無月は小さく咳払いをした。
「A案は、基本の形を機動力も備えた両立型とするなら、変形により車体が多少低くなり前後輪が前後に突出、同時に各部カウルも更に増強され更に風の抵抗を減化させる事からより最高速に特出した形態に変形となるようにします。
 B案ですが基本の形を地上高速移動型とするなら、変形により四輪が其々四方に分かれて地上に平行な形を取り各タイヤからブーストとホバーの原理で高速高密度の気流を噴出する事で車体を超低空ではあるが浮かせ、悪路、雪路、水上等と数多の状況に一切関係なく走行可能となる形態に変形します。姿勢制御や前後移動等は各タイヤが必要方向に傾く事で実現させます。燃費を喰う形態ですが、ブーストよりは燃費が軽い様に実現させてほしいですね。以上のどちらか、可能ならば両方を備えた変形機構を持つバイクを提案します」
「うーん。そう言うのはカプロイア向きねえ。まあ、ミユ社長の許可をもらった上で、他のメガコーポにも今回のバイクのアイデアを持っていくつもりだったから、カプロイアなら喜んで開発しそうだけど、ずいぶんと値が張りそうなバイクよね」
「値段の高騰? ‥‥良いモノには当たり前の対価です‥‥」
 ジャンヌの言葉に無月はそう言ってくすくすと笑った。
「まあ、そうね。如月君はどう思う?」
 たずねられた孝之は、「まあ、確かにわが社では難しいバイクかもしれません。カプロイアかカンパネラでの開発が適当かと思います」
 と答えた。
「ではアルヴァイムさん、どうぞ」
 ヨハンにそういわれたアルヴァイムは少し考えてからこう言った。
「オフロード仕様を推奨は先ほど言ったとおりですが、加えてバイクの水上や雪上対応アクセサリについては。【バイク限定】と銘打ったアクセサリの販売を推奨します」
「それに関連して意見があるんだが」
 とはフォルテ。
「AUKVバイク形態と共通規格のアクセサリなんてどうだろう? まず、「モービルアタッチメント」スキー板とキャタピラを装着し雪上移動力を上げる。それから「マリンアタッチメント」スクリューとポンプジェットユニットで水上移動を円滑に行えるという感じでね」
「まさにバイクの走破性を上げるアクセサリね。AUKVとの共通規格なら実現しやすいかもしれないけど」
 ジャンヌの言葉にフォルテは笑った。
「アルヴァイムさんは他に何かありますでしょうか?」
「そうですね、私は議事録をまとめるのを今回のメインにしようと思っていましたので、これ以上の提案は特にないです。ありがとうございました」
「そうですか。では風羽・シン(ga8190)さんお願いします」
「さて、俺の案としては、サイドカー付きのバイクを提案するかね。利点としては、通常の二輪では搭載すら難しい重火器を側車に乗った者によって運用が可能ってトコかね? おまけに砲手が側車にいるなら、ライダーは運転に専念できるしな。欠点としては、戦場での運用も考えるなら、速度重視のスポーツタイプは除外確実だろうな、と。よって、商品化するなら、オフロードタイプにある程度防弾用のカウルを装着したモノって事になるか。後は、火器の反動に対応できる高出力エンジンの搭載。コーナーリングでの安定を増やす為に、バイクと側車を繋ぐジョイントをフレキシブルなモノにする、だな」
「サイドカーについては俺にも意見がある」
 そう言ったのはユーリだった。
「サイドカー付きのバイク。これは結構色々な用途があると思う。まずは荷物を乗せる場合。後部に積むよりは積載量は多いだろうし‥‥尤も、バギーの牽引力には負けるけれどな。救急セット乗せて救護用にしたり、弾薬積んで簡易補給用とか出来そうだな。怪我人の運搬も出来るし。
人を乗せて偵察用、という使い方もできるか。後は個人的に‥‥オフの日にうちの子乗せて遠出ができるな、と。あと、これに関しては‥‥サイドカー部分だけオプションとして作る、という方法も有りかな」
「そうですね。サイドカーとセットのものを作るか、サイドカーをオプション化するか。それによって色々と違ってきそうですね。強度で言えばサイドカーとセットのもののほうがいいのでしょうが、オプションだと街乗り用にもつけられますからね」
 孝之がそう言う。
「そうだな、オプションありもいいかも知れないな。俺からは以上だ」
 シンがそう言う。
「では千沙夜さん、お願いできますか?」
「ああ。要望提出という事で依頼での実用性よりも生活重視で選んでみた。本命の大型アメリカンはさっき意見出したから、後は対抗としてスーパースポーツとネタとして立ち乗りスクーターを無駄に高出力にしたようなやつがほしい」
「スーパースポーツと立ち乗りスクーターですか。これに関して何か意見のある人は?」
 ヨハンが問うと、有希が手を上げた。
「順番的に次はうちの番だろうから割り込んで話させてもらうけどんも、スーパースポーツはネイキッドもフルカウルもいいですね。実用面からはフルカウルですが‥‥とくにスーパースポーツは高速キメラに速度で対抗出来ますので任務用軽量防弾フルカウルと風防が標準装備。それが無理ならオプションにあると良いとおもうとです」
「私もスーパースポーツについてはこだわりが」
 そう言って手を上げたのはアーシュだった。
「速度性能と運動性を高いレベルで両立した、やや大型のフルカウルマシンで、舗装路面の走行を想定したスーパースポーツで、全般的に性能は高め。それと個人的な趣味では、値段が高騰してでも最高の性能を追求したい所です。これは所謂ハイエンドモデルとよばれるやつですね」
「なるほど。皆さんそれぞれこだわりがありますねえ。ただ、バイクはKVと違って任務で持ち込んでも修理代は自腹になるでしょうから、高級モデルを買うと万が一のときが怖いですね」
 孝之がそう言うとアーシュが一瞬息を詰まらせた。
「まあまあ副所長、あまり脅かしてもしょうがないでしょう。スーパースポーツについては意見が出尽くしたようなので次に行きましょうか。立ち乗りスクーターについて何かご意見は?」
 これに対してはあれば面白いという意見は散見されたが、取り立ててこだわりを持っているという傭兵はいないようであった。
「それでは有希さんお願いします」
「はい。4輪駆動ATVを提案します。4輪で自立し高い安定性とトラクションで不整地踏破任務や、前後をフラットにしキャリアを付ければ可也の積載が見込めるので、橋頭堡建設等の運搬作業や舗装もまだ復興中の国々の一般の方向けに適すると思います。うちはインドの大規模後復興任務へ赴いた事があります。エルドラドでお世話になったAEEの方々もそういう場で二輪と車の間を埋める小型車両の重要性をご理解頂けるかと思いますが、どうでしょうか?」
「あー。確かにあると便利ですねえ。大変貴重なご意見ありがとうございます」
 ヨハンがそう答えると、有希は言葉を続けた。
「それでオプションですが、先ずはATV用のキャリア。パイプを組み合わせたルーフキャリアの様な奴ですね。それから2輪用のトランクケース。是はATV用キャリアと接続できるように規格を合せればケースが使い回せて便利かとおもいます。それと別にATVサイズの大きなトランクや小さなトレーラー、そう、農業とか作業用の篭ですね。そう言うのがあるともっと利便性が広がると思います」
「なるほど。復興国には安価で作業に適したATVは売れるでしょうねえ。これはぜひともうちで出したいところですね、所長」
「アドラー君もいつの間にか商売っ気が出てきたわね。まあ、他メガコーポとのコンペではこれの開発権を優先的にもらってくるようにするわ」
「うちからは以上です。ULTのほうによろしくお願いします」
「了解。出来る限りのことはするわ」
「次は俺だな。サイドカーはさっき話したからスクータータイプについて話そうか」
 そう言ったのはユーリだった。
「大型でも小型でもどちらも街のりに使えそうかな、と。一番は乗り易い形状だって事かな。女性能力者がスカートでも乗れるし、着物の人もOK。デザイン的にもお洒落に作り易いし。大型にするなら前を2輪にした方が安定するし、スピードも出易いか。小型にするならとにかくお洒落なやつだ。性能より見た目重視になるだろうからな。あ、コーヒーお代わり‥‥ん。俺からは以上だ」
「では次は私ですね。オフロードモデルとスーパースポーツについては先ほど話しましたね」
 そう言ったのはアーシュだった。
「比較的条件の良い路面を走行する為のネイキッドモデル、最大乗員は二名。整備性に優れ扱い易く、乗員への負担が少ない事が理想ですね。しなやかで、特に都市部の移動等に使い易い車種を目指します。所長の仰る街乗りモデルに近いかと」
「なるほどね。確かにデートによさそうね。アーシュさんはいるの? そう言う人」
「なっ、なっ、なっ‥‥‥‥」
 ジャンヌの問いにアーシュは僅かに身を硬直させ、動揺の姿勢を示すのが精一杯であった。
「あー、お楽しみのところ悪いけど、俺からいい? 偽装や潜入捜査用の自転車ってほしかったんだよね。モーターバイクは分かるけど、何でこれまでだめだったんだろう?」
 そう言ったのはフォルテで、ジャンヌはアーシュをからかうのをやめて彼の疑問に答えた。
「正直言ってULTの意図はこちらでも不明なんだけど、自転車を車両と同じ扱いで発売するのは微妙かもしれないわね。傭兵向けの特別な自転車、って発想は面白いんだけど」
「なるほど。じゃあ最後に、AUKVとの性能面―剛性・エンジン出力―の違いも聞きたい」
「そうね、まずはSESエンジンの搭載? 小型のKVっていうのがAUKVだから、一般車両とのエンジン出力は桁違いね。それと剛性についてもドラグーンが装着して戦闘使う以上装着車の安全を確保するだけの強度が求められるわ。そう言う意味では、これからバイクが開発されて発売されたとしても、AUKVとは一線を画したものになるわね」
「なるほど。良く分かった。俺からはこれで終わりだ。次は誰の番だ?」
 そう問われて、ヨハンは最後になってしまった能力者の名前を呼んだ。
「丙 七基(gb8823)さん、お待たせしました。今までの意見に絡まなかったところを見ると、かなり独自の案をお持ちとお見受けしますが‥‥」
「そうだな、俺個人としては、色はガンブラックでリッタークラス、フルカウルだったら、テストライダーやるぜ。それに乗って宣伝する。傭兵が乗るのは一番の広告になるだろ? まあそれはともかくだ、俺の提案するバイクはこうだ」
 そう言って提案したのは次のようなものだった。
 フレームは共通だが、大排気量と中排気量、小排気量のエンジンを換えたオートバイ。価格帯が排気量で選べる。出来る限り価格は抑える。
 カウルは一般向けも考え、オプションで、フルカウル、ビキニカウル、ハーフカウルが選べる。素材もカーボン、FRP、防弾などのオプション多彩な車両。
 基本はネイキッドバイクだが、オプションでレーサーレプリカのようになる物。
 一般向けのカラーは明るい物だが、用途によって色を変える。
「まあ、おたくの戦車と似たようなもんかねえ‥‥」
 七基はそう言うと話を続けた。
 HIDライト、前後6ポットディスクブレーキ、倒立サス、タンデムシート、2本だしマフラー。4ストのエンジンであるが、ピストンを楕円にする事で出力を上げているもの。
 内燃機関を用いると同時にモーターも組み込み、ハイブリッド化。出力の安定を図る。エンジンも、内燃機関のみ、ハイブリッド、モーターのみの3パッケージにする。
「ようするにあれだ、カスタマイズ性とバリエーションを増やして売り上げをあげようってことだな。宣伝にはカンパネラの学生を使い、ドラグーンのみならず一般にもアピール。メディアにも積極的に呼びかけ番組とタイアップして使用させ、購買欲を高める。特にヒーローショーなどにコンセプトモデルを持ちかけ子どもを通して一般に浸透させる。あとはあれだ、バイクのプラモデルなんかもいいな。変形機構があるならそれを忠実に再現させるくらいの気合の入れ方はほしい」
「なるほど、プラモデルですか。いいですね。所長、AEEでもアストレアのプラモデルを出してみましょうか? バリエーション車両とセットで」
 ヨハンの言葉にジャンヌは同意した。
「いいんじゃない? 機密に触れない範囲で忠実に再現しましょう。それで一般への浸透を図るわけね。七基さん、いいアイデアをありがとうございます」
「なに、バイクが出るかもしれないことに比べたらたいしたことじゃないよ。それより、バイクの発売、実現させてくれよ」
「はい。私どものほうでもULTと掛け合ってレースへの導入も含めたバイクの発売を実現させていきたいと思います。本日は皆様、ありがとうございました。これで依頼は終了となるわけですが、まだ食べ物や飲み物が余っていますのでそれらを消費し終えるまで、バイクについて語りながらゆっくりしていってください」
 これは喜ばれた。
 かくてバイクマニアたちは心行くまでバイクについて話し合うことになったのである。