タイトル:【E】戦乙女マスター:碧風凛音

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 9 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/29 04:12

●オープニング本文


 南米、反バグア武装勢力のアジトのひとつに、エイシャ(gz0282)は立ち寄っていた。
 もともとバグアの攻撃によって数が少なくなっていたところにメデジン基地からのゴーレムの攻撃により数を減らしたため、エイシャの所属する武装勢力とこの武装勢力の合流が図られたのだ。
「ほなら、これで協定は成立やな」
 エイシャがなまりの強い英語で言った。
「ああ。能力者が一人でもいるとこちらとしても心強い。頼りにしてるぜ、戦乙女」
 武装勢力の代表がエイシャの手を握る。握り返すエイシャ。
 エイシャにはいつの間にか戦乙女という愛称が定着していた。
 合流することによって総勢100名と言う大所帯になった反バグア武装勢力は、これを機にバグアの小規模な基地へと攻撃を仕掛けようとしていた。
「まあ、待ちや。他にも能力者はいたほうがええ。うちが南中央軍を通してラスト・ホープの傭兵たちに依頼をかけるから、しばらく準備に専念しよう」
「それもそうだな。じゃあ、能力者を9人雇うとして、戦乙女を入れて10人だな。丁度こっちも100人だ。10人ずつの小隊に分けて能力者と連携しながら戦っていこう。そうだな、能力者を小隊長にして指揮をとってもらう形がいいか」
「それでええと思う。ところで、今回襲撃する基地の詳細はわかっとるんか?」
「キメラが狼型が10匹前後。強化人間じゃない歩兵が100人前後。指揮官も強化人間ではないらしい。バグアに降りた裏切り者だよ」
 男は忌々しげに吐き捨てた。
「そうか。まあ、新バグア国家じゃそうでもしなきゃ生きていけんのはわかるけどな‥‥とりあえず、うちはこれから南中央軍に行って依頼を出してくる。準備のほうはよろしく頼むで」
「まかせとけ」
 男はそう言うと笑った。

●参加者一覧

御山・アキラ(ga0532
18歳・♀・PN
地堂球基(ga1094
25歳・♂・ER
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
水無月 魔諭邏(ga4928
20歳・♀・AA
結城加依理(ga9556
22歳・♂・SN
秋月 九蔵(gb1711
19歳・♂・JG
鷲羽・栗花落(gb4249
21歳・♀・PN
水無月 神楽(gb4304
22歳・♀・FC
九頭龍 剛蔵(gb6650
14歳・♂・GD

●リプレイ本文

●作戦会議
「じゃあ、まずは周知事項の徹底だ」
 地図を開きながら地堂球基(ga1094)がそう言った。
「まず、部隊を4組に分ける。それぞれ入り口A〜C担当と、隠し通路探索のDだ」
 異論は無い。球基は言葉を続ける。
「まず基地を包囲したあと突入するのが第1班。これはAが水無月 神楽(gb4304)、Bが鷲羽・栗花落(gb4249)、Cが御山・アキラ(ga0532)だ」
 頷く一同。
「突入を支援するする第3班、これはAが水無月 魔諭邏(ga4928)、Bがエイシャ(gz0282)、Cが結城加依理(ga9556)だ。これら三つの班は突入したあとは入り口の確保を行ってもらう」
「で、第1班が突入したあとに突入するのが第2班。これはAが秋月 九蔵(gb1711)、Bが地堂球基、Cが九頭龍 剛蔵(gb6650)だな」
 そう言ったのはDを担当する須佐 武流(ga1461)である。
「そんでもって俺の部隊はこの三つの入り口から最も遠いところにあるこのポイントを重点的に調べ、隠し通路を見つけ出し、挟撃、あるいは逃げ出してくるやつらへの対処ということだな。ところで、問題となるのは敵兵の扱いだ。無駄な殺生はしたくない。なるべくなら戦闘能力を奪うだけにとどめて捕虜にすべきだと思うが?」
「私はバグアに与する以上相手が人間であってもバグアだとみなす。バグア相手に容赦はしない」
 武流のことばにアキラが反論する。
「無論、敵指揮官と側近数名は情報を引き出すために捕縛を提案するがな」
「総大将の確保は異論無い。だが、バグア側の人間だからって皆殺しにする必要があるか?」
「逃げる者は殺してでも止めないとしょうがないとは思いますが。依頼がこの基地の戦力の殲滅ですしね‥‥」
 魔諭邏がそう述べると、「‥‥裏切り者かぁ‥‥」と加依理が呟いた。
「親バグア国家で生きる以上、こうする意外に生き残る術は無いんじゃないですか? ある意味では兵士の方々も犠牲者ではないかと思うのですが」
「それはそうかもしれないですがね、これは戦争です。味方に犠牲を出す危険性があるなら躊躇なく倒すべきだと思いますよ。もちろん、敵の指揮官の場所を吐かせるために、何人かは生け捕りにする必要があると思いますがね」
 加依理の言葉に九蔵が淡々と答える。
「でも、同じ人間同士じゃない!? できるだけ捕虜にした方がいいと思うよ。ねえ、結局人を殺すのは人、なのかな。そんなの悲しすぎるよ!!」
「努力はしよう。だが、俺たちゲリラに捕虜を食わせておくだけの余裕は無い。あんたら傭兵が責任を持って南中央軍につれてってくれるんなら、戦闘不能にさせる方向で行くよ」
 栗花落の言葉にゲリラのリーダーが答える。
「俺の考えは、捕虜になるな、捕虜を捕るな、だ。戦闘不能になって捕虜にされるくらいなら自決した方がいい。あんたらゲリラはアジトがばれたら終わりやろ? 捕虜を捕ったら捕虜奪還に敵が来ないとも限らない。どちらにしろリスクは減らすべきやと思うで」
 剛蔵がそう言うと、エイシャが反論した。
「うちはそうは思わん。リスクは覚悟のうちや。無理に捕虜にする必要も無いとは思うけど、死ななかった敵は捕虜にしてもいいとは思う。死にかけてる敵は、むしろ楽にさせてやった方がええ」
「平行線やな。捕虜にするかどうかは部隊ごとに決める、でどうや。こんなことで言い争って軋轢を生んでも無意味やろ」
「せやな。捕虜に関しては部隊ごとに方針を決めたらええと思う。うちの部隊はさっき言った通りや。軽症な敵だけ捕虜にする。戦闘はもちろん殺す気で行く。そうしないとこっちがやられてしまうからな」
「僕の部隊はできるだけ捕虜にするよ。エイシャさんがそう考えるのは悲しいけど、武装勢力の考えと傭兵の考えは違うもんね‥‥」
 若干落ち込んだ様子で栗花落が言う。
「師匠には悪いけど、うちらゲリラはバグアに対する憎しみでうごいとるんや。バグアに与する人間も、憎くないといったら嘘になる。せやから、かんにんな」
「さて、あとは部隊ごとにハンドシグナルを決めたり準備をしたら出撃だ。できるだけ多く、生きて帰るぞ」
『おお!』
 球基の言葉に武装勢力の兵士たちが唱和する。

●包囲・突入
 武装勢力の事前偵察の結果では、各入り口には二人の見張りが立っている。これを狙撃でどうにかするのは難しいので、敵に察知されるのを覚悟で突入を行うことになった。
 ジャングルに隠れながら進み、ぎりぎりまで接近する。そして、時間が来た。
「突入!」
 アキラが合図をかける。
 武装勢力兵の一人が閃光手榴弾を投擲し、入り口の兵士の視界を奪う。
『うおおおおおおおお!』
 すでに閃光手榴弾の炸裂音で敵に気づかれているだろうから、雄叫びを立てて突撃する。
 武装勢力兵の攻撃で入り口の見張りが倒れる。だがそれとほぼ同時にキメラが放たれた。また、敵の増援もやってくる。
 アキラは敵の攻撃から部下をかばうと瞬天速で狼型キメラに接近し貫通弾を仕込んだドロームSMGで狼型キメラを攻撃する。3連射を受けてキメラは血の海に沈み、アキラは再び瞬天速で部下と合流した。部下はアサルトライフルで4人の敵兵を倒す。
 また、加依理の班が支援を行い、8人の敵兵を倒す。加依理はスコーピオンと【OR】エレファントに貫通弾を仕込むと、手近なキメラに向かって両方の銃を発射した。それはキメラに重傷を負わせ、さらに続く攻撃で止めを刺す。キメラは勢い良く倒れた。

 栗花落も同様の手法で突撃を開始すると迅雷で狼型キメラに接近し、刹那で目にも留まらぬ一撃を放つ。そこに武装勢力兵の支援射撃が集中しキメラを一撃で倒す。だがその代償として敵の銃撃を受け3人の部下が戦闘不能に陥った。
「みんな!」
 栗花落が悲鳴を上げる。
「こちらはかまわず、もう一匹のキメラを!」
 部下が叫ぶ。栗花落は涙を飲み込んで迅雷でもう一匹のキメラのところに行くと、刹那を使ってキメラを攻撃する。二撃。二撃でキメラを仕留めると、再び迅雷を使って部下のところに戻った。
 エイシャの班の支援攻撃は、9人の敵兵を戦闘不能に陥らせる。
「姉さん、援護を頼みます。A1突入!」
 神楽は魔諭邏の支援を受け、突入を開始する。
「あちらをお願いしますね。わたくしもお手伝いしまうから」
 魔諭邏は部下に牽制を命じると自らもスコーピオンで攻撃を行った。
 神楽は迅雷でキメラの元へ向かうとツインブレイドで、突く、切る、突くを繰り返しキメラを屠る。
 そして神楽と魔諭邏の部隊の攻撃で12人の敵兵を倒すと入り口へと到着した。だが、その間に1人の兵士が戦闘不能になる。
「A1よりA2。突入して下さい」
 神楽からの連絡を受け九蔵が突入を開始する。
「奴らの傀儡か‥‥ハン、よってたかって良い的が100人もいるじゃないか、これなら余分に弾持ってこなくてもいい」
 九蔵は事前に決めておいた副隊長に部隊の指揮判断をゆだねると、部隊の移動速度にあわせながら移動した。そして部隊には二人一組を徹底させ左右に展開させながら自身はP38とブラッディーローズを駆使して敵を倒し、部下には制圧射撃をさせる。
 二人の兵士に銃撃が行くが九蔵は己の身をもって部下を庇う。そして3人の敵兵を倒し入り口に到達した。
「B1よりB2へ、突入お願いします」
 栗花落の要請を受け球基が前進する。途中まだ息のあった栗花落の部下一人を練成治療で治療すると後方に下がらせる。
 球基の部隊は閃光手榴弾を用いて犠牲なしに8人の敵兵を捕縛すると入り口にたどり着いた。
「C1よりC2へ。突入せよ」
 アキラの要請を受け剛蔵が突入を開始する。
「俺は誰一人、置いて行かんぞ。皆で帰るんだ」
『おお!』
 剛蔵は捕虜になるなとは言いながらも部下を全て生きて帰らせるつもりでいた。
 ハンドシグナルを送ると突入を開始し、3人1組の編成にして余った一人を直衛につかせ、閃光手榴弾を投擲して編隊の火力集中で敵を殲滅する。
「バグアに組した己の国家を呪え、呪うがいい」
 敵兵士に向かってそう叫ぶとスコーピオンから銃弾を発射する。
 火力の集中で5人の敵兵を倒すと、部下の一人に飛んできた銃弾を盾ではじいて庇う。
 そうして入り口までたどり着くと、1班と2班が交互に突入と支援を繰り返しながら奥へ進み、基地を制圧していく。

●隠し通路
 武流は部隊を率いて隠し通路を探っていると、部下の一人が微妙に色の違う壁を発見した。
「これをみてください。壁の色が違います!」
「ふむ‥‥これが隠し通路かな? ちょっとぶっ壊してみる。離れてろ」
 武流はそう言うと覚醒して機械剣で壁を攻撃する。すると壁はもろくも崩れ、その奥に通路が見つかった。
「やはりあったか。よし、突入するぞ。だがその前にいっておくことがある。俺のチームは基本的に俺以外は戦わないようにしたい。なので、俺が前に出て敵を蹴散らす。君らはそこから逃げた奴らを撃つ‥‥という流れにする。はっきり言って、コレが無駄な犠牲が出ない一番の方法だからな。危なくなったら助けに行くから安心しろ。キメラが出たらすぐに俺に言って、退くこと。君らじゃ絶対に勝てない。分かったか?」
『サー、イエッサー!』
「よし。じゃあ、突入だ」
 そうして隠し通路から突入した武流の部隊は途中敵に出会うこともなくひとつの扉の前にたどり着く。
「よし、俺が扉を開けたら閃光手榴弾を投げろ。そのあと突入だ」
「了解!」
 そして扉が開けられ閃光手榴弾が投擲され、再び扉が閉められる。
 爆音。
 悲鳴。
 それから再び扉を開けて室内に突入すると4人の兵士と階級章が違う士官らしきものが3人ほどいた。武流は素早く行動してそれら全員の腕を折り戦闘能力を奪うと、投降するように呼びかけた。
「私はこの基地の司令官だ。名誉ある待遇を求める」
「ふざけるな。情報を引き出すために命はとらないが、俺たち反バグア武装勢力の恨みを、貴様は一身に背負っていることを忘れるなよ!」
「ひい!」
 兵士の一人が激昂して叫ぶ。対して基地司令は情けない悲鳴を上げるだけだった。
「まあまて。基地司令、この部屋に放送設備はあるか? 投降を呼びかけたいのでね。それから、お前さんの身柄はUPC南中央軍に引き渡される。バグアの粛清にはあわないだろうさ」
 武流がそう言うと、基地司令は「そこにマイクがあるだろう。その隣の赤いボタンを押せば基地中に放送が行われる」と答えた。
 武流は部下に監視を命じると放送設備に向かい、赤いボタンを押した。
『こちらはULTの傭兵、須佐 武流だ。諸君らの司令官は俺の部隊が確保した。武器を捨てておとなしく投降せよ。繰り返す、武器を捨てておとなしく投降せよ。投降すれば諸君の安全は保障しよう。諸君らの身柄はUPC南中央軍に引き渡される。繰り返す、武器を捨てておとなしく投降せよ‥‥』
 その放送は基地全体に流れた。30人を切っていた基地の兵士たちは武器を捨てて投降した。だが、5匹残っている狼型キメラにはその言葉は届かなかった。そしてそのうちの一匹が司令室に侵入してくる。
 武流は刹那の爪でキメラに蹴りを入れると回し蹴りからかかと落しを打ち込み、体勢が崩れたところで機械剣でキメラを切り裂く。
 主戦力であったはずのキメラがあっさり倒されるのを見て驚く基地司令たち。

 一方、基地内部。残った4匹のキメラは、合流した傭兵たちによって仕留められようとしていた。
「餌が近くにいて腹が減ってるんだろう? ‥‥大丈夫だ、鉛弾を100発くらい食わせてやる」
 神楽と九蔵の銃が火を吹き、キメラを血の海に沈める。
「ご馳走様は? ‥‥お行儀の悪い奴だな、今度はちゃんとママの教育を受けな」
 九蔵の皮肉もキメラには届かない。

「逃がさない!」
 栗花落のエアスマッシュと、球基の超機械がキメラを引き裂く。
「やれやれ。半分は兵士の監視。残り半分は基地内部の資料の押収を行ってくれ」
「了解!」
 球基は部下に命じると怪我人の治療を行った。

「九頭龍、合わせろ!」
「了解!」
 アキラの指示に従い剛蔵がスコーピオンを放つ。アキラはエネルギーガンを放ち、キメラの息の根を止める。

 そして、残りの一匹は歩兵部隊の集中攻撃によって足止めされているところを、魔諭邏の刀で切り倒される。
「やれやれ、厄介ですね」
 魔諭邏は溜息をついた。
 そして入り口を確保していた3班が基地内部に進入し突入組と合流するころには、敵兵の捕縛はほぼ終わっていた。
 傭兵たちは敵兵を一ヶ所にあつめ監視を行い、その間にゲリラのリーダーが最寄の南中央軍の基地まで事態の報告に行った。
「くぅ、風呂に入りたいぜ、まったく」
 剛蔵がそう言うとエイシャが同意した。
「まったくや。南米は暑くてかなわんわ」
 それから半日ほどして南中央軍の輸送車両がやってきて投降した兵士たちを乗せて基地へと運ぶ。
 そして基地司令から周辺の基地の戦力の詳細情報を聞きだした南中央軍は、早速攻略のための作戦を立て始めたのだった。