タイトル:【DR・LA】独立戦争マスター:碧風凛音

シナリオ形態: イベント
難易度: 難しい
参加人数: 16 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/10 07:47

●オープニング本文


 バグアの侵入を抑えきれず、長く治安の悪化に悩まされてきた都市――ロサンゼルス。
 『ハリウッド奪還作戦』にて平和を取り戻したかに見えた後も、『極東ロシア戦線』『シェイド討伐戦』と大規模作戦が発令される度に戦場となり、頻繁に避難を強いられる一般市民の間では、厭戦感情が高まっていた。
 戦闘が起きる度に経済活動が停止し、産業は見る間に減衰。市民の生活が脅かされつつあるのだ。
 観光客を誘致し、産業を活性化させ、停滞したロサンゼルス経済を建て直さなくてはならない。

 だが、ユニヴァースナイト弐番艦とアーバイン橋頭堡の防衛能力に頼る現在のロサンゼルスでは、いつまた戦場と化しても不思議ではない。
 そんな不安が漂う中、市民感情を爆発寸前まで追い込んだのが、『シェイド討伐戦』後にステアーのパーツを巡って起きた、バグアとULT傭兵による市街戦である。
 市民からの陳情と現地の混乱を聞いた現アメリカ大統領ジョナサン・エメリッヒは、『五大湖解放戦』『極東ロシア戦線』『シェイド討伐戦』の総指揮を執ったUPC北中央軍中将ヴェレッタ・オリム(gz0162)に対し、ロサンゼルスの防衛機能向上を要求。
 市街に被害を出すことも覚悟で『シェイド討伐戦』を敢行した上、シェイドの撃墜に失敗したUPC軍の立場は悪い。軍上層部は渋々ながら大統領の要求を呑み、『ロサンゼルス要塞都市化計画』を承認したのであった。


●独立戦争 〜僕たちの望んだWoi〜

 War of Independence(独立戦争)はバグラムの新鋭機の登場でUPCは劣勢に立たされていた。
 各地の都市は陥落し、各地で軍が敗退していく。
 そんな中、ドラグナイツも光の竜で立ち向かっていたが敗退。其処で支配された各地を取り戻し独立させる為、皆で力を合わせて戦う事をジョナサン・エメリッヒ大統領が宣言した。

「このままでは駄目なのだ。バグラムの新鋭兵器を打ち倒すには奴をロサンゼルスにおびき寄せて戦うことが必要になってくる。だが諸君、臆してはいかん。この戦争こそが人類が真にバグラムから独立するための戦争『独立戦争』なのだから!」

 全米に向かってテレビで演説するジョナサン大統領。各地で沸き起こる歓声。元軍人で対バグラム戦争の英雄ジョナサン大統領の言葉に勇気付けられたものは多い。

「国防長官。私もフェニックスで前線に出るぞ!」
「閣下!」
「止めても無駄だぞ。私は決めたのだ。これが私の独立戦争なのだ」

 そして二日後、ロサンゼルスに集結したUPC軍とドラグナイツは決戦前夜を迎えていた。

●映画撮影
「カーット!」
 セルゲイ・グリューンはそう言って撮影をとめた。
「大統領閣下、お疲れ様です」
「何、遠慮は無用。無理を言って映画に出させてもらったのは私なのだからね。しかし、ここからが本番だな」
「はい。これからバグラム対UPCの最終決戦をロサンゼルスで行います。そこで傭兵の諸君に参加してもらって盛り上げることになるでしょう」
「ふむ。楽しみだな。現実のWoiは無様な結果に終ったが、だが、だからこそ映画の中だけでも我等の望んだ形にしなくてはならん。ドラグナイツは今やアメリカ市民の希望。だからこそ私が直々にオファーさせてもらったのだ」
「はい、ありがとうございます。必ずや成功させて御覧に入れます」
「うむ。期待しているぞ」
 こうしてジョナサン大統領とセルゲイの会話は終った。

●概要
 前回の苦心の結果となった大規模作戦、「シェイド討伐戦 War of Independence」を自分達の思い描く最高のエンドで終る様に作り変えると言うお話。
 北米大統領ジョナサン・エメリッヒからの直々のオファーで映画化が決まった。

−−−−−−−−−−大統領データ−−−−−−−−−

 ジョナサン・エメリッヒ:
 ダークファイター 男 44歳
 現在のアメリカ大統領(カナダを含む北米全体の大統領)であり、能力者として適性が認められ国のために戦うと決意した男。
 バグア戦争以前ほどアメリカ大統領としての権威はなく、バグアにとって支配されている国というイメージを払拭すべく独立戦争には力を惜しまず注ぐ。
 ここぞという時には熱い演説をしたり、自ら出撃することもある。前線に立っては側近をひやひやさせる様は、カプロ‥‥某有名メガコーポレーションの総帥を彷彿とさせる。 
 元軍人でもあったことから戦闘機なども操縦でき、現在の愛機はフェニックス。

募集キャスト
ドラグナイツ新規勢力
一般UPC軍人
バグラム軍
バグラムの新鋭機乗り

 前回のイベントシナリオ外伝に出た傭兵に関しては前回の役を踏襲しても良い。

 撮影シーンは決戦前夜から決戦当日。そして決戦後の大団円。
 人類の勝利と言う形でwoiを終らせる。それこそが 独立戦争 〜僕たちの望んだWoi〜 だ。

 なお、映画の主題歌は仲間の画策によりサラ・ディデュモイ(gz0210)が歌うことになった。

●参加者一覧

/ 漸 王零(ga2930) / 終夜・無月(ga3084) / 千道 月歌(ga4924) / ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751) / 瑞姫・イェーガー(ga9347) / イスル・イェーガー(gb0925) / 鬼道・麗那(gb1939) / チェスター・ハインツ(gb1950) / 嵐 一人(gb1968) / 月影・白夜(gb1971) / 烏丸 八咫(gb2661) / ドニー・レイド(gb4089) / ルーイ(gb4716) / ウレキサイト(gb4866) / キャプテン・エミター(gb5340) / 日野 竜彦(gb6596

●リプレイ本文

●開幕
 ハリウッドのロゴやグリューンムービーのロゴのあとにアメリカ大統領、ジョナサン・エメリッヒが登場する。
「アメリカ大統領ジョナサン・エメリッヒだ。このドラグナイツ・独立戦争の記録映像は軍規によって私的な撮影、複製は禁止されている。諸君らが規律を護る正しい戦士である事を切に願う」

 それから敵の新鋭機に敗北するUPC軍と大統領の演説が入る。
「国防長官。私もフェニックスで前線に出るぞ!」
「閣下!」
「止めても無駄だぞ。私は決めたのだ。これが私の独立戦争なのだ」
 そして、決戦当日――

●ステアー撃墜
 ロサンゼルス‥‥敵新鋭機との決戦の場となったこの都市にUPCとドラグナイツは集っていた。
『マスター、前方敵影多数デス』
 月影・白夜が乗るKVシュルテンに搭載されている開発途中のAIユニットが白夜に敵の接近を告げる。
「了解、ありがとう‥‥」
『白夜、敵の新鋭機はまだ来ていないようだ』
 ニュクス・アイオーンが通信で白夜に告げる。
『了解。カレンさん、ドラグナイツに指示をお願いします』
 藍・カレンがそれに答えて指示を出す。
『ドラグナイツ各機へ、今までの雪辱を晴らすときが来たわよ。目標は敵新鋭機のみ。確実に落としなさい!」
『了解!』
 新生ドラグナイツ各機が返答する。初期ドラグナイツより経験値が低い分能力は低いが、キャパシティは大きいはずであった。
『こちらレイブレス隊、ロニー、了解!』
 【Woi・DR】外伝の辺りから開発が進んでいて、本編終了後に正式に実用化されたAUKV乗りが返答する。量産性を前提に作られたのでドラグナイツの機体より性能が落ちてたり特殊能力がなかったりするのだが。
 そうして戦力がそろったころ、上空より彼らを見つめる影があった。
「あいつらが‥‥ドラグナイツ‥‥楽しめそうだな」
 ドロマイトのクローン、ドロミティはそう呟くと急降下を開始した。
『マスター、上空ヨリ不明機急速接近』
 チェスター・ハインツ機のAIがそう告げる。
「何っ!」
 慌てて計器をチェックし、回避行動を取るチェスター。
 カレン、白夜、ニュクス等古参のドラグナイツも回避行動をとる。しかし――
『何っ! うわああああ!』
『メーデー、メーデー!』
 まだ入って日が浅いメンバーはドロミティの先制攻撃により撃墜される。
「勝てると思ってるのかい? ヒヨッコちゃん達‥‥ふふふ」
『あれがステアー‥‥強い』
 新生ドラグナイツのメンバーがそう呟くと、カレンが
『あれを倒すのがあたしたちの目標よ。いまさら怖気づかないの!』
 と激を飛ばす。
『おお!』
 ドロミティは低空で様子を伺い、しばらくしてから急上昇して再び攻撃を仕掛けてくる。
 UPCのKVが落とされる。
「‥‥ふふっ‥‥手応えがないね‥‥」
 ゴスロリ風の黒い衣装で、人形のような無表情のドロミティが、少しだけ表情を見せる。
「この! 化け物が!」
 センドウが無茶な機動でステアーに食って掛かる。
「ふふ‥‥甘い甘い」
 それをあっさりと回避するドロミティ。しかし、そこに急に銃弾が雨のように降り注ぐ。
「援護します。一気に叩いてください!」
 チェスターが銃器での支援を行っていた。
 そこに白夜がホーミングミサイルを放つ。一気に200発以上のミサイルが複数の目標へ向かっていく様は壮観としか言いようがない。
 カレンがガトリングで弾幕を張る。
 ニュクスもスラスターライフルで弾幕を張る。
「くっ‥‥被弾したか」
 さすがにこの連携攻撃をかわす事はできなかった。
 そしてスラスターライフルで弾幕を張りながらステアーに近づいていく白夜。そして隙を見てソードウィングで切り込み、空中で変形し雪村でステアーを切り裂く。
「ドラグナイツを甘く見るな‥‥」
 撃墜されるステアー。
「これで‥‥楽に‥なれ‥‥る‥‥」
 呟きながら、爆発。
「ふん、新鋭兵器だと言うからどれ程の物かと思えば‥‥。それともパイロットが悪かったか?」
 ルーイは一人戦場でそう呟くのだった。ドロマイトのクローンへの、皮肉だろうか?

 一方、バグラム新基地。
 瞳は金色で猫耳と尻尾が有り黒く艶のある戦闘服に身を包む猫キメラと人の融合体であるダークキャットが、人間をこっそりと逃がしたりシルバー・クロウの協力者として影で情報を流したりしていた。
「アスカロン、コレが今回の場所にゃ‥‥それにしてもお前もその態度どうにかしたらどうなのにゃ」
 と、そこにイスル・イェーガーが現れる。
「何をしているんだ、ダークキャット?」
「あっ、イスル‥‥な、なんでもにゃいにゃ」
「‥‥僕は、報告しない‥‥君の好きにすればいい」
 冷たくそう言ってイスルは去っていく。
「あ、イスル、待つのにゃ!」
 バグラムに忠実に従っていたが在ることがきっかけで人の頃の記憶を多少思い出し自分の行動に疑問を持つようになったダークキャットこと、メイ(名前はそこまでしか思い出せない)は同じような境遇のイスルを気にかけているのだがなかなか気持ちが伝わらない。それでもあきらめない彼女だった。
「‥‥羨ましい、のか‥‥? 彼女のように自分の真意で動ける人が‥‥」
 イスルは適正が合わずドラグナイツになれなかった青年で、そこに目をつけバグラムが誘拐、強化人間にされてしまう。
 身体は人間以上の物にされたため、自分の意志を持ちつつも既に人間でないと自覚している。だが本心は人として生きたいとも思っており、今の自分がどうすべきか悩んでいるのだった。

●白の魔女&カレンの歌
 ステアーを撃墜し喜びに沸いている戦場に、一人の少女が立っていた。
 その名を吹雪レイナ。大型KVさえ吹き飛ばす念動力を持つ超能力者でバグラムの洗脳兵である。
「ふふ‥‥ステアーだけじゃ心配だったからね」
 ルーイはそう呟くとレイナに命令した。ドラグナイツを討て、と。
「空が‥‥空が落ちてくるよ」
 額につけられたサークレットがレイナの正気を奪っているのだ。レイナは苦痛と憎悪に燃えてUPCのKVを掌から打ち出す衝撃波で吹き飛ばす。
『あれはバグラムの強化人間に違いない。各機、あの少女を撃退せよ!』
 ジョナサン・エメリッヒ大統領が全軍に命令を出す。
 その命令を受けて動き出すUPCとドラグナイツ。
「貴様らドラグナイツ如き、何人かかって来ようと物の数ではない!」
 実際には全てがドラグナイツではないのだが、レイナにはその区別がつかない。とにかくKVを掌から打ち出す衝撃波で吹き飛ばす。
「貴様らがいるから‥‥私のこの痛みは続く」
 ドラグナイツは忌まわしき仇と洗脳されているために、彼女の憎悪がとまることはない。

 そこに、歌が流れ始め所々で本編の映像が使われる。

「兄さんを知らないかしら? 藍祥龍(ラン・シャンロン)って言うんだけど」

「藍中尉! バグラムの襲撃です。目的は『荷物』だと思われます」
 部下の一人が報告する。
「こんな街中で! 護衛部隊全隊へ、大型火器の使用を最大限禁止する。火急の場合のみ使用すること」
『了解!』
 部下が答えると祥龍は戦闘を指揮し始めた。

「力を!」
「この状況で、私に出来る事があるのなら。ためらう理由は、無い」
 ニュクスがそれを見て戸惑いもせず漆黒のバイクに跨る。
「力を!」
「兄さんのためなら地獄のはてまでも‥‥ってね」
 市民や軍人が倒れていく様を見ながらカレンは青いバイクに跨る。
「力を!」
「戦いたくなんか‥‥戦いたくなんかありませんよ。でも、僕だけ何もしないってわけにはいきません」
 チェスターは恐怖を押し殺すようにそう叫んで緑のバイクに跨る。
「力を!」

『エミタ移植‥‥完了。ドラグナイツ、覚醒セヨ。ドラグナイツ、覚醒セヨ』
 光が、満ちる。そして、だんだんと弱まっていく光の中で‥‥

 そしてテロップでキャストとスタッフが流れる。

 漸 王零(ga2930
 エミタ/終夜・無月(ga3084
 センドウ&月歌/千道 月歌(ga4924
 ユーリ/ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
 ダークキャット/柿原ミズキ(ga9347
 イスル・イェーガー(gb0925
 吹雪レイナ/鬼道・麗那(gb1939
 チェスター・ハインツ(gb1950
 アスカ&量産型アスカロン&OPギター/嵐 一人(gb1968
 月影・白夜(gb1971
 シルバー・クロウ&エオス・アイオーン/烏丸 八咫(gb2661
 藍・祥龍中尉&カイン/ドニー・レイド(gb4089
 ルーイ(gb4716
 ドロミティ/ウレキサイト(gb4866
 ニュクス・アイオーン/キャプテン・エミター(gb5340
 ロニー&アシュレイ・クロフォード/日野 竜彦(gb6596
 藍・カレン&OP歌唱/サラ・ディデュモイ(gz0210)
 特別出演 ジョナサン・エメリッヒ大統領

 劇中ではカレンが歌を歌っている。

「ね、姉さん‥‥頭が‥‥痛い」
 失われた記憶がうずく。
 カレンの口ずさむ歌に姉の面影を重ねるレイナ。
「うぅ‥‥」
 激痛の中、カレンとの交錯で額のサークレットが外れ落ちると見る見る穏やかな顔つきに。

「俺の命は‥‥ウルさん、貴女になら捧げても構わない。しかし、世界も、俺の心も、ドロマイト、貴様には渡せない」
 明確な拒絶な言葉。それを聞いたドロマイトは悲しそうに呟いた。
「そうか‥‥じゃあ、残念だけど、お別れだね」
 ドロマイトは祥龍の殺害を決意した。
 祥龍の目の前で小箱の中の指輪をはめ、彼の頭を抱きしめるようにキスをし、薬を飲ませる。
「Adieu une personne bien‐aimee.(さようなら、愛しき人よ)それは睡眠薬入りの毒薬さ。苦しまずに逝ける。あたいの、最後の愛だよ」
(「カレン‥みんな‥すまない」)
 祥龍は、妹とドラグナイツのメンバーのことを思いながら、静かに事切れる。
「さよなら祥龍、愛していたよ‥‥」
 ドロマイトは金色の瞳から涙を流しながら、彼の亡骸に再びキスをする。

「わ、私は‥何故こんな所に‥きゃぁあ」
 洗脳が解除され、衝撃で記憶も取り戻すが、爆風に巻き込まれ何処かへと消えるレイナ。

『‥‥もう皆分かっているな、君達の心次第で‥‥その力は強く翼を広げていく。ニュクス、チェスター、白夜‥‥そしてカレン。‥‥俺の魂は、何時でも君達と共に在る。その正しき心の力で‥‥この世界を護れ、ドラグナイツ‥‥!!』
「今‥‥祥龍さんの声が聞こえた‥‥私達を、信じている、と」
 ニュクスが涙を流す。
 ドロマイドと対峙し怒りや憎しみではなく、祥龍の説得や励ましを胸に、願いを継ぎ世界を守る為に光の龍を発動させるニュクス。
「祥龍さん‥‥」
 チェスターが光の竜を発動させる。
「この世界は‥‥」
 白夜が光の竜を発動させる。
「あたし達が守る!」
 カレンが光の竜を発動させる。
 其の姿は燦然と輝く光のドラゴン、其の光は何処か温かい。
 四人が一匹の竜になる。

 そしてOPテロップ。

ドラグナイツ劇場版 独立戦争 〜僕たちの望んだWoi〜

 暗転。

●決戦前夜
 決戦前夜、ニュクスは祥龍の墓に腰掛けて静かにハーモニカを吹いていた。
 それは、主題歌のメロディのアレンジ。
 祥龍との思い出がよみがえる――

「‥‥そうか。俺は君やカレン、そしてウルさん‥守るべき人達を護る為に戦っている。それが我々軍人‥戦う力を持った人間が存在を許される理由だ。死なせてしまった部下達もそうだったと、自分を騙して戦っている。では君は、君達の戦う理由は何だ?」
「――復讐、ではないです。一遍に何もかも失ったから、憎いとか悲しいより‥何で私一人だけ生き残ったんだろう、って。結局、私の様な思いをする人を無くす為に居るのだと、そう思うしかなかいです」
 ニュクスは俯いてそう答えたが、気持ちを切り替えるように頭を振ると、勤めて明るく話題を変えた。
「私が傷つくのは怖くないんです。ただ、守るべき人達を守れない事が怖いから、もっと強くならないと。そう思います。だから、退院したら精一杯特訓したいと思います」
「そうか‥‥君は強いな。だけど、君がもし死んだら、俺やウルさん、そしてドラグナイツの仲間が悲しむ。無茶だけはしないでくれよ」
「‥‥はい、はい! わかりました」

(「祥龍さん、そんなあなたが死んじゃったね。でも私は負けないよ。あの時あなたが励ましてくれたから‥‥」)
 ニュクスはハーモニカを吹き終えると、祥龍の墓に万感の思いを込めて「言ってくるよ」と一言だけ呟いた。そしてバイクに跨って走り去っていく。

 カレンは帰る人のいない家で写真立てに飾られた祥龍の写真を見ていた。
(「兄さん‥‥」)

「言って来るよカレン。学校遅れるなよ!」
「兄さん、朝ごはんは?」
「いらない、遅刻しちゃうからな」
「もーっ。そんなんだから体壊すのよ」
「いや、あれは正直すまなかった。じゃ、言って来るよカレン」
 祥龍は玄関で敬礼をする。
「行ってらっしゃい、中尉殿。ふふふっ‥‥」
 カレンも敬礼をしながらそう言うがおかしさに耐え切れず吹き出してしまう。
「ああ、行ってくる」

 それはドラグナイツに入る前のほんの日常の風景。
「兄さん、あたし行くよ‥‥。行って、戦ってくる」
 カレンは写真の中の祥龍に敬礼をすると、ガレージからバイクを引っ張り出してエンジンをかける。そして基地へと向かった。

 基地では白夜が皆のKVやAUKVのメンテナンスを行っていた。
「機械は壊れれば直せます、でも人の命はそうも行きません‥‥」
 そう言って徹底的なメンテナンスの指示を出す白夜。そこに、カレンがやってきた。
「カレンさん‥‥」
「白夜、ご苦労様」
「いえ、それより必ず無事に帰ってきましょう‥‥」
 白夜は余人には捕らえきれない思いを込めて呟く。
「そうね‥‥絶対帰って見せるわ」
 カレンも、同様だ。
 そのとき、研究員の一人が慌てながら入ってきた。
「大変です。敵の演説が‥‥」
 そう言ってテレビをつける。
 そこには銀髪の女が映っていた。
『私が与えるのは貴方達に必要な進化の為の絶望』
 ザザ‥‥
『是を糧に貴方達が更に躍進する事を私は望みます』
 ザッ‥‥
『這い上がりなさい、人類よ』
 ザーッ‥‥
『其れこそ貴方達のただ唯一の価値です』
 ザッザッザー‥‥
 顔の半分が左目の義眼を含めたデバイスで隠れている月歌博士が皆が演説を聞いている中、ドラグナイツ用のKVの調整を行っている。
「決戦には間に合わないのか」
 月歌は内心焦っていた。
「絶望? それならば僕達が希望に成るだけです‥‥」
 白夜は決意を込めて呟く。

 一方、バグラム基地。
「ルーイ、こんなものでよかったのですか?」
 銀髪の女、エミタがルーイにそう告げる。
「ああ、十分だ。バグラムのパイロット諸君、私は無能者が嫌いだ。この意味は分かるかね?」
 間。
「何がなんでも結果を出せという事だ。退く事は許さん。一機でも多くの敵を落として死ね。分かったな?」
『了解!』
 バグラムのパイロットたちが答える。
 そんな中で一人異色の男がいる。
 アシュレイ・クロフォード。
 バグラムの強化人間で歩兵部隊の指揮官だ。オールバックの髪に全身を黒でコーディネートし、バイザータイプのサングラスをしている。
 AUKVとは別の兵器として作られ、素手でドラグナイツと互角に戦えるだけの能力を有している。
 KVでの総攻撃の前に陸戦攻撃を仕掛け、ドラグナイツを倒そうとしていた。

基地内部
「あっ、イスル元気か、返事くらいしてほしいな‥‥無視するにゃ。確かに人間じゃないかも知れないけどそれがなんにゃ、命を粗末にしないで欲しいにゃ」
 ダークキャットがめげずにイスルに話しかけるが、イスルは取り合おうとしない。いや、あえて無視しているのだ。彼女がうらやましくなるから。
「確かにボクもこの姿でここを出ていけたとしてどうしたらにゃんて駄目なのかにゃ‥‥でもいつか‥‥もうバグラムに従わないのにゃ」
「‥‥‥‥」
「あ、イスル。無視するなにゃー」

???
「了解した‥‥あんたは馴染みのクライアントだ。どんな無茶な要求でも応えよう‥‥ただし報酬は余分に頂くぞ‥‥プレジデント」
 斬王零が電話で大統領と会話をしている。依頼主を選ばない傭兵として色々と暗躍していたりする彼は今回も依頼主(大統領閣下)のからの要請で激戦の舞台に参加することとなった。

UPC基地
「チェスターはまだ戻らないの?」
 カレンが白夜に尋ねる。白夜はすまなそうに首を振る。
「まだ‥‥です‥‥」
「4人そろわなきゃ正しき光の竜は使えないのに‥‥」
 ニュクスも焦る。外国に行っているチェスターが戻らなければ、ドラグナイツはその真価を発揮できない。
 そんな中外からバイクの音が響く。
 もしやと思って外に出る三人。
 そこには自身のバイクの傍らに立つチェスターの姿があった。
「すいません。おまたせしましたか?」
「待ったわよ、馬鹿」
 カレンがチェスターの気障な台詞にむくれっ面で答える。
「すみません‥‥」
「いいのよ‥‥間に合ったんだから」
 チェスターにしがみつくカレン。チェスターは困ったような表情でカレンの頭に手を置いた。
 そんな瞬間――警告音が鳴り響きレッドランプが点滅する。
 敵接近の合図だった。敵の歩兵部隊が、基地に接近しつつあるのだという。
「ちょうどいい。揃ったドラグナイツで、撃退してやりましょう」
 チェスターがそう言うと、白夜も頷いた。
「そうですね。陸戦でAUKVに勝る者はいません」
「じゃあ、ドラグナイツ」
「出撃!」
 カレンとニュクスがそう言って自らのAUKVを纏う。
 そして出撃したドラグナイツは囮のバグラム兵に引き寄せられて包囲される。
「これがドラグナイツか、噂ほどではないな」
 アシュレイが気障な態度で攻撃命令を下す。そこには量産型アスカロンもいた。
 だが‥‥
「光の竜よ!」
「光の竜よ!」
「光の竜よ!」
「光の竜よ!」
 四人の心がひとつになり、そして祥龍の魂の声が響く。
 そして暖かな力、光の竜が現れた。
「やれ!」
 アシュレイが命令を下す。だが竜の鱗によってその攻撃は弾かれる。
 そして光弾を放つ竜の息によって歩兵部隊は壊滅する。
 最後に竜が咆哮を上げ、全身の光が急激に増大。光の塊となってアシュレイに突き進む。
「くっ‥‥これが‥‥ドラグ、ナイツ‥‥」
 アシュレイ・クロフォードの、それが最後だった。

●悪夢再び
 元に戻って決戦最中――
 ステアーを倒して喜びに沸き返る人類に、水を差すものがいた。ルーイである。
「まさかステアーを落とすとは。ドラグナイツの活躍もそうだが、優秀な指揮官あっての事かな、ジョナサン・エメリッヒ」
 通信網に消えた科学者、ルーイが現れる。
「ルーイ! やはり生きていたか!」
 ルーイの行方を追って世界中を飛び回っていたチェスターが真っ先に反応する。
「だが、私が連れて来たのがステアーだけとは思わないで欲しいな。出でよ、絶望の闇、シェイドよ」
 黒い影が超高速で飛来し、人類軍の真っ只中を突っ切っていく。そして終点で向きを変えるシェイド。
 刹那、爆発。
 シェイドの通ったあとが一面爆発した。
「くそ、よくもミックを」
 レイブレスのロニーが怒りと共にミサイルを発射する。
 空中で人型に変形し、ミサイルを片手で受け止めるシェイド。
「無駄ですよ‥‥」
 爆発。するが無傷。
 飛来するミサイルの群れ・群れ・群れ。
 しかし無傷。
「そう、それでいいのです。もっと強くなりなさい」
 シェイドから拡散粒子砲が発射される。
「散れ!」
 瞬間、命令する大統領。
 一瞬の差で救われる命もあれば、失われる命もある。
「ドラグナイツ、ば・ん・ざ・い‥‥」
 センドウがシェイドに特攻を行う。
「無意味な‥‥」
 粒子剣で引き裂かれるセンドウ機。
「うおおおおおおおお!」
 ミサイルを発射しつつシェイドに突撃するロニー。
「甘いのです‥‥」
 超高出力粒子砲で跡形もなく消し去られるロニー。
「なんてこった。これがシェイド‥‥」
 皆がシェイドの性能に戦慄する。そんな中、声が響く。
「其は絶望すら飲み込む聖闇の雷‥‥総てを断ち斬る為に有れ‥‥闇天雷!!!」
 それは斬王零の闇天雷。
 雷と共に登場し、シェイドに果敢に向かっていく。
「くぅ! やりますね」
 エミタ‥‥シェイドのパイロットが始めて驚愕する。
「今までとは比べ物にならない‥‥なんて圧力だ」
 チェスターがシェイドに驚愕しながら言う。
 KVはステアーやレイナとの戦闘もあり後方のドックで修理している最中だった。ドラグナイツには成す術がない。
「このままでは‥‥いずれ」
 エオス・アイオーンが呟く。
(「しかし、諦めはしないこの命燃え尽きようとも」)
「この情報は今回あの子が送ってきたものですか‥‥これは」
 ダークキャットから送られてきた情報を目にして驚愕するエオス。
「アスカロン私もでます。あなたはあなたのしたいように動いて構いません」
「応よ!」
 現在ではアスカと名乗っているアスカロンが答える。
「いでよ、我が白銀の翼」
 白銀の塗装のフェニックスを呼び出しシェイドの前に向かうエオス。
「私が時間を稼ぎますですからその間に形成を立て直して下さい」
 白夜に通信が入る。
「こんなもので終わりはしないだろう。前までの俺を倒した、お前たちの力はこんなものじゃないハズだ」
 アスカロンもヘルヘブン750でバグラムを銃撃から敵前に飛び込み、レーザー剣で切り伏せる。そうやってバグラムの軍勢をねじ伏せながらドラグナイツに通信を入れる。
『‥‥僕はすでに人じゃない‥‥遠慮なく殺しに来い。出ないと‥‥逆に落とすよ』
 軍の通信に混じって、敵のパイロットから通信が入る。
「あなたは誰!?」
 カレンが尋ねる。
「僕はイスル・イェーガー。ドラグナイツの適性がなかったが故に、強化人間になりしもの。殺しに来い。さもないと落とすぞ」
「ちょっとまって。何よそれ。そんな理不尽な理由でバグラムに従って、何かいいことでもあるの?」
「そんなものはない。でも、僕はすでに人じゃないから‥‥」
「話し合えるじゃない。だったら分かり合えるかもしれないじゃない。少しくらい強化されたからって何よ。ドラグナイツだって似たようなものよ!」
 イスルの言葉にカレンは懸命に答える。
「そう‥‥だろうか?」
「そうよ。あなたは人じゃない者として生きたいの!?」
「違う! ‥‥僕は、ただ‥‥人として生きたい‥‥んだと‥‥思う‥‥」
「じゃあ人として生きなさいよ。人として暮らしなさいよ! それができないほど世の中の懐は狭くないわよ!」
「そうか‥‥では今から僕は友軍だ‥‥援護します‥‥行って‥‥」
「わかったわ。行くわ!」
 カレンが予備のKVで出撃する。そして‥‥
「お前のフォースフィールドが、光の龍に耐えるほど強力なのは解っている、だが、超至近距離ならば!!」
 予備のKVで出撃したニュクスがKVにあるまじき巧緻な機体捌きによる、ダブルリボルバーでの超近接ガンファイトをシェイド相手に挑み、損傷しつつFF発生装置に一撃を加える。
『こちらドラグナイツ。光の竜で敵を攻撃する!』
 白夜の声が通信に響く。
『了解! 援護する!』
 UPCの軍人ユーリが援護を申し出る。
 AUKVに乗ってシェイドの元までたどり着くドラグナイツ。ニュクスもKVから降りてシェイドの足元に舞い降りる。
「顕現せよ、我等が力‥‥光の竜よっ!」
 四人の心がひとつになり、そして祥龍の魂の声が響く。
 そして暖かな力、光の竜が現れた。
 そして光の竜は各種の能力を駆使しながらシェイドに戦いを挑む。しかし敵の能力を無効化する竜の尾を打ち込んで攻撃してもなおシェイドは健在であった。
「つまらないですね‥‥」
「くっ!」
 白夜が絶望にとらわれる。
「くっ‥‥化け物め‥‥!」
 もう勝てないかもしれない、そういう考えがチェスターの頭をよぎる。
「諦めるな。諦めたら‥‥投げ出したら、そこで全て終わりだ」
 ユーリが励ます。
「諦めない、絶対に、諦めない‥‥来てっ‥‥僕達は負ける訳には‥‥諦める訳にいか無いんだっ!」
 白夜の呼びかけに答え、KVがオートパイロットで発進する。
 その間にもエオスが、アスカが、王零が、そしてジョナサン・エメリッヒ大統領がシェイドを相手に渡り合う。
「大統領あなたは今までの方達と違うと感じていましたが、あなたには骨がありますね。側近達は気苦労が多いでしょうが」
 エオスがくすくすと笑う。
「そのとおりだ、よ!」
 大統領が人型に変形したフェニックスでシェイドに斬撃を仕掛け、すぐに空戦形態に戻る。
「行きましょう! 僕たちが諦めてはいけない!」
「そうだ。世界は私たちが護るって!」
「兄さんに誓ったんだから!」
 彼らの希望にこたえるかのように、シュルテンが、ロビンが、ロジーナが、フェニックスが彼らの元に訪れる。
 最初は通常兵器でシェイドに相対するドラグナイツ。奮闘するがシェイドの力の前にはもはやこれまでとなったとき、彼らの脳裏に新しい詩が流れる。
『求めよ、吼えよ、去れば新たな力与えられん』
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
 吼える。吼えるドラグナイツたち。
 そうするとKVが発光し三対の翼を纏う光の竜になる。
「僕達は負けないっ!」
 白夜が。
「僕たちの光は影に負けることはない!」
 チェスターが。
「絶対に負けない!」
 ニュクスが。
「ドラグナイツの名にかけて!」
 カレンが叫ぶ。
 そして、次第に崩壊していくシェイド。
「おお、KVが、KVが覚醒した!」
 KVの覚醒を目の当りにして歓喜に打ちしがれる月歌。
「ようやく、新しい力を出したようですね。貴方達人類には進化して頂かねば困るのですよ‥‥しかし、これほど楽しいと思える戦いは久しぶりです」
 崩壊していくシェイドの中で、エミタは笑う。
「其れで良い‥‥進化し続けるのです‥‥そうすれば‥‥」
 機体が爆散。満足げに散っていくエミタ。
「く、まさかシェイドまで‥‥!」
 勝利に沸く人類軍。
 辛酸を噛み締めるルーイ。だが‥‥
「君たちは何か勘違いをしてるようだ。私は何時、ここに来るのはステアーとシェイドだけと言ったのかね?」
 負け惜しみではない、確信に満ちた声。そして、稲妻のごとく降臨する紫色の機体。
 その名はユダ。
 其れは絶望。
 其れは圧倒的な力で人類を圧倒する。
 王零も深刻なダメージを受ける。
 しかし――
「みんな戦ってる‥‥なのに僕だけ終わるわけにはいかない!」
 KVの中のAUKVはすでに大破して血が流れている。それでもロビンを駆るチェスター。
「諦めるわけには行かない!」
 吼える白夜。
「人間の力はこんなものではない。諸君、諦めるな。諦めたときこそが、希望を捨てたときこそが人間の本当の死だ。希望を捨てない限り、道はある。明日はある。可能性は、無限大だ!」
 大統領が全チャンネルを使って全軍に叫ぶ。
「そうだ。こんなところで諦めたら祥龍さんに申し訳が立たない!」
「兄さんが見守っていてくれる限り!」
『光よ! 竜よ!』
 光の竜が発動する。
 ドラグナイツの新たな奥義の発動を感じ、王零が時間稼ぎを行う。
「これも‥‥仕事のうちさ」
 奥義必中の為に機爪を腕ごとユダの体内に打ち込み動きを止める。
「光の竜に私の力を注ぎ込みます貴方たちならばこの力を使いこなすことが出来るはずです」
 エオスが言う。
「兵士諸君! ロサンゼルスの市民諸君! 吾らの希望が、ドラグナイツが戦っている。私たちの力も彼らに注ぐのだ。さあ、恐れることはない。全てを注ぐのだ!」
 大統領が光の竜に力を注ぐ。
 そして市民が、市民の一人ひとりが歓声を上げながら祈りを込める。
「市民諸君! 君たち一人ひとりが希望だ。吾らの希望だ。君たち自身がドラグナイツなのだ!」
「光の龍は、正しき心の力‥‥そして心に光を持つ者は、ドラグナイツだけじゃない!」
 ニュクスが叫ぶ。
「我ごと討つんだ‥‥ドラグナイツ!」
 ユダに取り付いている王零が叫ぶ。
 そして三頭の光の竜が発動し、ユダを直撃する。
 ユダのコクピットが割れ、ヘルメットがひび割れて素顔をさらけ出す。
「‥‥人の力か‥‥見事な物だ。だが、お前達の言う真の独立戦争はこれからだ。‥‥我らバグラムの力‥‥未だ潰えていない‥‥!」
 ユダが空間転移で消える。
「待て! 私は退く事は認めないと言ったはずだぞ!?」
 ルーイが慌てる。
(「KVにあれほどの力があったとはいえ、あの三機を同時には相手にできなかったはず。認めたくはないが、今回の敗因は三機を同時に投入しなかったこと‥‥。敵の戦力を甘く見て勝機を逃した私こそが無能だったということか‥‥」)
 ルーイはそう考える暇も有らばこそ、煙幕を炊いてその瞬間に空間転移で逃げる。
 ダークキャットは着陸したウーフーのコクピットの中からイスルを運び出す。
「イスル‥‥そんなまだ言えてないことが‥‥」
 そんなダークキャットの頭を、撫でる手があった。
「勝手に‥‥殺すなよ‥‥。‥‥僕は君が羨ましかったんじゃない‥‥きっと、君と一緒に居たかったんだと‥‥思う‥‥」
 イスルは少し頬を赤くしつつダークキャットの手を借りながら立ち上がる。
 そこにエオスのフェニックスが舞い降りる。
「ダークキャット。あなたも来ていましたか‥‥」
「ご主人さま‥‥イスルも無事ですにゃ!」
「そうですか‥‥それはよかった」
「それはそうと、メイたちもうバグラムに入れませんにゃ。だからご主人様の喫茶店で働かせてくださいにゃ」
 それを聞いて絶句するエオス。
「なっ‥‥ま、まあ、いいでしょう。ただし、ちゃんと人の姿でいるのですよ」
「はいです!」

●エピローグ
(「あの子を雇うことは良かったのですが、皿などの備品を破壊するなどが悩みの種です。が‥‥彼女目当てのお客様も居ますからね」)
「ご主‥‥店長人の姿で居るの体力凄く減るにゃだからつまみ食いくら‥‥」
「今なんと言いました‥‥一ヶ月ただ働きで良いですね反論は認めませんよ」
「‥‥ゴッゴメンにゃさーい」
(「やれやれ、まあ今の間はコレで良いのかも知れませんね‥‥次の戦いまでは」)

 月歌は今日もいそいそとKVをいじっていて勝手な改造を行ったため、白夜に追い掛け回されたりしている。
 
「また行くのね?」
「ええ。まだ僕の目的が全部達せられたわけではありませんから」
 カレンの問いに、そう答えるチェスター。彼はまた、外国へ飛び立とうとしていた。
 走り去る彼のバイクは明らかに新品で、その大きさから見てもAUKVであった。

 UPC訓練生として訓練するニュクス。そんな合間に空を見上げ、割れたヘルメットの下から一瞬見えた素顔を思い浮かべる。
「まさかね‥‥」
 そっと呟く。

 そして‥‥

 ユダに乗るカインの傍らに闇天雷に乗っている斬王零がいた。
 そしてそのカインの素顔は、生前の藍・祥龍そのものであった‥‥‥‥

ドラグナイツ劇場版 独立戦争〜僕たちの望んだWoi〜
END