●リプレイ本文
傭兵たちが空域にたどり着くと、そこでは上半分がR−01で下半分がS−01といったつぎはぎのKVがガリーニンを護りながら戦っているところだった。
「助太刀に来た。アストレアプロジェクトとやらはよく知らんが、何やら到着を期待されている物資のようだ。バグアに邪魔されるのは気に入らん。きっちり基地に到着させてやる」
リュイン・カミーユ(
ga3871)が敵大型HWに向かいながらそう呟く。
「一秒でも早い方が良いわね、行くわよ!」
アズメリア・カンス(
ga8233)はガリーニンと大型HWの間に入るとKA−01試作型エネルギー集積砲で砲撃した。
「捉えた。まずは一発喰らっとけ」
同時にリュインも大型HWとガリーニンの間に入ると、スナイパーライフルを発射した。
ほぼ同時に発射されたそれは大型HWのフォース・フィールドを貫通すると大ダメージを与えた。HWの装甲が大きく抉られる。
「汝らに近づけはせん。安心して荷を運べ」
絶対的な確信を持ってリュインがそう言うと
『感謝する‥‥』
ガリーニンのパイロットがリュインの言葉に応答する。
「行くわよ!」
アズメリアがソードウィングで突撃を仕掛ける。
「くっ! 特攻ってのはあまり趣味じゃないんだけどね」
Gを受けながら突撃するアズメリアのそれがHWを切り裂くと、それを援護するようにリュインがAAMを発射する。
AMMは複雑な機動を描きながら回避を試みるHWを追尾し、命中する。
その攻撃は大ダメージを受けていた大型HWに止めを刺し、撃墜させる。
指揮を執っていた大型HWが撃墜されたことで中型と小型の動きが乱れる。
「アズメリア、汝はC班の援護に回れ。我はB班の援護に回る」
「了解!」
そうして大型HWの相手が任務だったA班の二人は解散し、機動を変更して小型と中型の相手をしているB班とC班の援護に回った。
だがそれよりも早く敵が行動した。まずB班が相手にしているHWが攻撃を仕掛けてくる。
佐渡川 歩(
gb4026)と桜庭 結希(
gb9405)がそれぞれ中型と小型に攻撃を受ける。
中型が歩にプロトン砲の三連射をかける。
「くっ!」
回避コースを削ぐように発射されたそれは歩の機体を掠めそうになるが何とか回避する。
「甘いですね!」
結希もぎりぎりで小型のプロトン砲の三連射を回避する。
口では甘いといいつつもぎりぎりでの回避だったので内心冷や汗をかいている結希だった。
次にC班が相手にしているHWが攻撃を仕掛けてくる。
だが、佐賀十蔵(
gb5442)とライン・ランドール(
gb9427)はB班の2機ほど回避力が高くないので、受動防御に回った。
十蔵は中型HWのプロトン砲を三発受け、装甲を削る。
「来た 来た 来たぁぁぁ 絶頂 絶頂 ジーーーク ジ――!」
初めての空戦と言うこともあって緊張している十蔵は、半ば混乱し半ば気合を入れるためにそんなことを叫ぶ。しかし、肝心な部分は周囲に響く戦闘音に掻き消されてしまった。
ラインも小型HWのプロトン砲を三発受ける。
「くっ! 通常の戦闘機は操縦したことがありますが‥‥やはり、KVは感覚が違うか」
だが中型より威力が低いのとラインのヘルヘブンのほうが十蔵のロジーナより装甲が厚いと言うこともあってダメージは少ない。
「今度はこちらから行くぞ!」
十蔵がそう言うと。
「よお、同輩‥‥いや‥‥元、だな。ケツ持ちは任された。こちらからもガリーニンに2機つく、基地指令殿にブツを早めにデリバリーして差し上げてくれ」
ラインがそう通信を入れつつ十蔵の攻撃に合わせる。
ラインがバルカンで、十蔵がスナイパーライフルで小型HWに攻撃を行う。
それは敵の装甲の半分を削り、
「このバグアどもがぁぁぁ いわしたるぅぅぅ」
ラインのショルダーキャノンと十蔵の90mm連装機関砲による第二撃で止めを刺す。
「さて‥‥ガリーニンは逃げおおせてるか‥‥? ‥‥気にする前に目の前の敵‥‥だな」
ラインは状況を確認すると目標を次の敵に移す。
「先に仕掛けます。続きをお願いします」
フィルト=リンク(
gb5706)がブーストしながらB班が相手をしている小型HWへと向かっていく。
「了解!」
フィルトと共にD班としてB班C班の援護に入るリィリア・エスティード(
gb9395)がフィルトに続く。
フィルトがドゥオーモで攻撃したところに、
「続けて行くわっ!」
リィリアのAAMが決まる。
それは力の集中の理屈で小型HWのフォース・フィールドを貫き大ダメージを与える。
「落ちなさいよ、このっ!」
「オメガレイで!」
リィリアのAMMとフィルトのオメガレイが被弾した小型HWに止めを刺す。白煙を噴きながら墜落していくHW。
「副兵装の輸送機、墜ちたら戦いが苦しくなりますし、無事に守りきらないとないといけませんね。とはいえ、残るは中型だけです。いきますよ」
歩がロケットランチャーを発射すると、結希がツングースカで同時攻撃する。
「あったれー!」
それは中型HWのフォース・フィールドを貫き、装甲の半分以上を削る大ダメージを与える。
「これで!」
「とどめです!」
再びロケットランチャーとツングースカの攻撃がHWに命中し、HWは大破した。
残り一機になった中型HWは、不利を悟ったのかガリーニンとの間の道も傭兵たちに阻まれていることもあって、逃走を開始した。
「待て!」
リュインが追おうとするが、アズメリアがとめる。
「無理に追う必要もないさ。目的は敵の全滅じゃなくてガリーニンの護衛だし」
「それもそうだね。こちらChardon。ガリーニンへ。敵は追っ払った。後は快適な空路を楽しんでくれ。オーバー」
『感謝する。オーバー』
こうして敵を撃退した傭兵たちは基地までの道もガリーニンを護衛しながら進んだ。
そして基地にガリーニンが到着する。満載にしていた物資が降ろされていく。
「ふう。なんとか無事に到着したようですね」
ヨハン・アドラー(gz0199)が安堵の溜息を漏らす。
「指令、副兵装の目録はこちらです」
今回、南中央軍向けに製造、輸送された中身は以下のようなものだった。
KV用煙幕弾との仕様共通化発煙装置。
グレネードランチャー(装弾数1):威力=10
クラスター型ロケット(装弾数4):威力=10
多弾頭式ミサイル(装弾数2):威力=10
スラッグガン(装弾数5):威力=50
ショット・ジェル(装弾数10):命中した標的の回避−30
ラージフレア射出装置。
星女神の盾:防御+50 抵抗+30
そしてヨハンは傭兵たちのほうを振り返る。
「傭兵の皆さん、お疲れ様でした」
ヨハンは一人ひとりに握手をして回る。
「うっ、空戦って‥‥気持ちわるぅぅぅ」
基地に到着してから、十蔵は初の空戦ということもあって空戦酔いし、基地の片隅で一人吐いていた。
「あぁ疲れた‥‥ホント、冗談じゃないわ」
リィリアは一人そう呟き、ストレッチでコックピットでの凝りをほぐす。
「いやー、何とかなりましたね。あたし初めての実戦で心配だったんですけど、意外とどうにかなるものですね」
結希がわわりと気楽そうにそう言う。
「そうだな。何とかなるものだ」
リュインがそう答える。
こうして傭兵たちの仕事は終わった。だが、コロンビアの攻略をはじめとした、南米戦線はまだまだこれからである。
今回の副兵装の輸送で南中央軍の武装ははるかにましになった。とは言え実際に慣熟運用していけるのはこれからである。
まだまだ、先は遠いと言わざるを得ない。そして副兵装が届いた丁度このころ、レティシアのバグア軍基地で鹵獲フェニックスとの戦いが始まろうとしていた。