●リプレイ本文
●突入
「キメラが見えた! 突入準備だ。能力者諸君、降車してくれ」
「了解。俺は後方で援護に入る‥‥」
地堂球基(
ga1094)はクールに答えると覚醒してリッジウェイから飛び降りる。
「私も後方から援護します‥‥」
淡々と答えて朧 幸乃(
ga3078)もリッジから飛び降りる。
「俺はリッジの護衛をするぜ!」
OZ(
ga4015)が乱暴な口調で言って飛び降りる。
「俺は突入するで。サポートよろしくな♪」
鮫島 流(
gb1867)は元気な調子でリッジから飛び降りる。
「基地に戻るまで救護室との連絡マイクを密かにOpenにするか、リッジにレコーダーがあれば、全機内の会話を全て録音しといてほしい。何か拾えるかもしれないんでな。翡焔・東雲(
gb2615)、突入班として出る!」
乱暴な口調でそう告げるとリッジから飛び出した。
「私はとりあえずはリッジの護衛ですね。出ます」
白岩 椛(
gb3059)が丁寧な物腰でそう言って、リッジから飛び降りる。
「僕は突入かな。邪魔になるキメラを排除するね!」
鷲羽・栗花落(
gb4249)が元気な口調で言って、リッジから飛び降りた。
「私は救護班ですけど、そのためにも突入ですね」
望月 美汐(
gb6693)は丁寧な口調でそういうと、AU−KVごと飛び出し、覚醒して装着した。
「俺もリッジの護衛をします。行きます!」
エル・ウッド(gz0207)が丁寧な口調で言う。リッジを飛び降りながら覚醒し、ネイティブアメリカンの神聖な獣、ジャガーに変身する。
幸乃は無線で連絡を取りながら突入組の後ろに追従し、突入組みが撃ち漏らしたキメラを屠っていた。
翡焔はキメラの足を狙い無力化させることを最優先にしていたが、倒しても倒してもキメラはあふれてくる。
「くそっ、キリがねえ!」
『進路上のキメラは確実に倒してください』
リッジウェイのパイロットからの要請が入る。
『了解!』
二刀小太刀「疾風迅雷」を振るい、キメラに確実に止めをさす。しかしそのおかげでキメラが翡焔に集中する形となった。
「援護するね!」
栗花落は疾風を使って翡焔に群がるキメラを排除すると、キメラの攻撃を華麗にかわしながら次々と二本の剣でキメラを倒していく。
「接近戦の魔術師を舐めないでもらいたいね!」
栗花落が叫ぶ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
獣の咆哮をあげながらエルがリッジウェイに接近するキメラを爪で両断する。
「お前達に罪は無いけど、呪うならキメラとして生まれた宿命を呪え!」
生物兵器として生まれたキメラは戦うことと殺すことしか知らないから、キメラを憎んでもしょうがない。
これはかつて訓練を受けたときに先輩の傭兵が教えてくれた言葉だった。
(「ある意味彼らも悲しい生き物です。か――」)
エルはその傭兵の言葉を思い出しながら、リッジウェイに近づくキメラを機械的に屠っていく。
『おい、武装勢力の連中、生きてるか? 俺は傭兵のOZ。助けに来てやったぜ!』
エルと一緒にリッジウェイに近づくキメラと戦いながら、OZは無線で武装勢力と連絡を取る。
『お前達が敵をひきつけてくれたおかげでこっちに来るキメラは減っている。だが重傷者が5人ほどいる。急いでくれ』
「了解! おい、球基。Mリッジに乗ってスタンバっとけ。ケダモノどもはこっちで何とかするからよ」
そしてOZはMリッジウェイに無線を入れる。すると乗降口が開いた。速度を落とすMリッジウェイ。
球基はMリッジに飛び乗ると、事前に教わったとおりに医療システムを起動させてスタンバイする。
椛はロッテ戦術の感覚でエルと組み、月詠とバックラーを駆使して確実にキメラを屠っていた。
「させません!」
リッジウェイに取り付こうとするキメラを、エルの援護を受けながら切り落とす。
「キメラさん方、ちょっと退いてもらえんかな? ‥退けっていっとるやろっ!!」
流が竜の咆哮を使いながらキメラを押しのけ、リッジウェイが通るべき道をあける。
「ホントに数ばかり多いっ!」
美汐も流と一緒に竜の咆哮を使って道をあける。
そうして傭兵達が苦労してあけた道に、リッジウェイは突入していく。
●救護・誘導
リッジウェイ4機が強引に道を突破して武装勢力の近くまでたどり着く。
『よし。武装勢力の連中を誘導してくれ!』
リッジウェイのパイロットからの指示が飛ぶ。
『了解!』
「助けに来ました! もう大丈夫ですよ」
美汐がAU−KVのメットを外し、微笑みながらそういうと、武装勢力のメンバーは安心したようだった。
「動ける人は怪我人を運んで、あっちのリッジウェイに乗せてください」
美汐はそう言ってMリッジウェイを示す。
「重傷者はあっち、軽症者はあちらのほうです。怪我の無い人は、怪我人を運び終わったら軍のリッジウェイに乗ってください!」
幸乃が武装勢力のメンバーに指示をだす。かれらはそれに従って迅速に動いていく。民間の組織とは言っても訓練と統率はしっかりと取れているようだった。
「なんだこりゃ! リッジウェイにベッドが? それにこの機械は何だ?」
「説明している時間はありません。とにかく負傷者をベッドへ乗せてください!」
球基は練成治療の機械を取り出すと一番重症なものにMリッジウェイの特殊能力、練成治療を施す。重傷者の細胞が活性化され、傷口がふさがっていく。
「すげえ、傷が一瞬で‥‥」
武装勢力の男が感心するが、球基は取り合わず、「早く全員をリッジウェイに乗せて」と言った。そして機械を他の負傷者にも取り付ける。
「数が多すぎる!」
翡焔が次々と押し寄せてくるキメラに向かって毒づく。
「救護班、急げ‥‥って、なんだありゃ‥‥」
ふと空を見上げた翡焔は、紫色の航空機が地球製の燃料タンクをぶら下げたヘルメットワームから燃料の補給を受けているのを目撃する。
「あれが、敵の新型‥‥? でも今はそんな場合じゃないよ。武装勢力の人たちを助け出さないと!」
栗花落がそう言いながらアタックビーストの攻撃をかわし、味方を庇うガードビーストを切る。とにかく敵の注意をひきつける。それが栗花落の選択した戦術だった。
『リッジ、ほかに要救助者がいる場所とかある?』
『ない。今救護班が移動させている連中だけで全部だ』
『了解』
栗花落は安堵すると戦闘に集中した。
「おいおいおい、新型登場かよ。ここで攻撃しかけられたらひとたまりも無いぜ!」
OZがアサルトライフルで弾幕をはって救護班を護衛しながら叫ぶ。だがOZの心配は杞憂に終ったのか、紫の新型が仕掛けてくる様子はない。ただ移動しながら補給を受けているだけだった。
「くっ! 今です、エル君」
「はい!」
椛が盾で受けたところを、エルが爪で切り裂く。喉笛を欠き切られてキメラは絶命した。
そして今度はエルが爪で体当たりを受け止める。そこにすかさず椛が月詠で切りつける。
「これがコンビネーションですよ」
「はい!」
同年代でも傭兵としての経験は椛のほうが圧倒的に長い。ましてやエルにとってキメラとの命のやり取りははじめてである。頼りになる相手と組めたとエルは安堵していた。
傭兵はキメラを相手に善戦をしていると言えた。低レベルなキメラではあるが数が多い。だが、武装勢力を守りリッジウェイに誘導すると言う目的はなんとか果たしていた。そして武装勢力の誘導が終った。
「これで全員ですね。収容完了です! 撤退準備お願いします!」
「救護者を確保したようだ‥‥そろそろ退くぞ! 走れ!」
美汐と翡焔が叫ぶ。それを受けて各人は撤退準備に入る。
●撤退戦
「ほらきみ、腹が減っているだろう? レーションですまないがこいつでも食べて体力を取り戻してくれ」
球基は重傷者を治療してどうにか軽症まで戻した後、負傷者にレーションを与える。長時間何も食べていなかった武装勢力の人々は、喜んでそれを受け取ると食事を始めた。
「サイエンティストでなくても練成治療が出来る機能、ですか。便利ですね」
「コストパフォーマンスは悪いけどな!」
美汐の言葉にMリッジウェイのパイロットが答える。美汐は軽症者を乗せたMリッジウェイに乗り込み負傷者の手当てをしていた。
その合間にもリッジウェイはゆっくりと走り出して、その周りを能力者たちが取り囲む。
往路と違い武装勢力に誤爆する可能性がなくなったために4機のリッジウェイが砲撃で前方を塞ぐキメラを排除する。
「お土産‥‥あげるわね‥‥」
幸乃は閃光手榴弾のピンを抜くと、爆発を待たずに足元に転がす。
「タイミング確認。爆発前に目をつぶらないとね」
栗花落はそれを確認しつつも殿を勤めて敵の注意を自分に集める。
「フェンサーじゃ弾除けにはならねえなぁ!」
OZは栗花落にそう言うと、前に出てアサルトライフルをフルオートで発射する。
「俺なら盾になるぜ、OZ!」
流はリンドヴルムの装甲で突撃を受け止めると、グラファイトソードでガードビーストを一刀両断にする。
「もうお前達に用は無いんだよ、とっとと消えな!」
翡焔は最後尾のリッジウェイの屋根に上がると武器を銃に持ち替え追いかけてくる敵を狙撃する。
「退いて、ください!」
椛は逆に先頭のリッジウェイの屋根に乗り、飛び乗ってきたキメラを叩き落す。
「近寄るな!」
エルはリッジウェイの脇で近づいてくるキメラの脚を狙い、リッジウェイの周囲から敵を減らすことだけを考える。
そうして戦いながら後退し続け、閃光手榴弾の炸裂するタイミングに合わせて殿を勤めていた4人も撤退する。
能力者たちの移動速度に合わせながらリッジウェイは後退して行き、完全に敵を振り切ったところで一時停車し能力者たちを収容する。そして最寄の基地までたどり着いたあと――
●適格者
「なあ、ウチらに能力者の適性検査受けさせてくれや」
訛りの強い英語で、一人の少女が能力者たちに詰め寄ってきた。特にエルに向かって。
「力が欲しいんや。キメラと、バグアと対等に戦える力が」
その少女はリッジウェイの中で会話していた人物の一人で、武装勢力の仲でも腕利きの戦士、名をエイシャ・アッシュフォードと言う。
「それであんたが訓練受けたって言う施設で、訓練を受けたい。ウチは銃もつこえるけど剣はもっと得意や。エミタさえあればあんたらにも負けない自身はある」
エイシャがそういうと、栗花落が「じゃあ、僕が一戦お相手しようか? もし能力者の適性があったらね。こう見えても、接近戦の魔術師、フェンサーだから」と言った。
「ほお、なら、決まりや。早速適性検査を受けさして」
エイシャがそういうがリッジウェイのパイロットがここの基地では規模が小さすぎて適性検査はできないと言う。
「じゃあ、どこに言ったらええのん」
エイシャの言葉にパイロットは適切な場所をあげ、彼女達は本気で適性検査を受けた。そして――
「やった、やったで。フェンサーの適性があるそうや」
結果が出るとエイシャは物好きにもついてきたエルに言った。
「それで、エミタの移植手術は行うんですか?」
エルが尋ねる。
「もちろんや。組織のためにも自分のためにも、これは避けて通れない」
そして、栗花落に果たし状が送られてきたのだった。無論、受けるかどうかは栗花落の自由ではあるが‥‥‥‥
こうして、また一人の能力者が新たに誕生し、サンフランシスコの傭兵実務訓練センターの門を叩いたのであった。