タイトル:【Woi】ロス防衛会議マスター:碧風凛音

シナリオ形態: イベント
難易度: 難しい
参加人数: 21 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/18 18:23

●オープニング本文


●“第二次五大湖解放戦”
「‥‥以上を踏まえた上で、“第二次五大湖解放戦”を実施する」
 作戦会議室のテーブル上で、ヴェレッタ・オリム大将が宣言した。
 居並ぶメンバーはオリム大将の幕僚と、そして特殊作戦軍のハインリッヒ・ブラット少将である。
 スクリーンに映し出される北米大陸の地図には、重要ポイントとして強調されているのは五大湖周辺である。北米各地の拠点から五大湖周辺の戦力の集中。ヨーロッパからの援軍も五大湖へと配されており、太平洋方面からの援軍が手薄になった西海岸、とりわけロサンゼルスを穴埋めする形となっている。
 五大湖地域。それは言わずとしれた北米大陸でも屈指の工業地帯であり、2008年2月の大規模作戦において解放を目指した地域である。
 極東ロシアでの華々しい勝利は、バグア軍の戦略的意図の粉砕、重要兵器の鹵獲、豊富な地下資源の眠るシベリアの奪還などの成果を得た。だが、1つ目についてはあくまで防衛上の達成であり、2つ目、3つ目については目に見える効果があがるまでには、時間を要するであろう。
 極東ロシアでの勝利の勢いに乗って、より即効性のある戦果を求める声は当然であり、それが巨大な工業地帯を要する五大湖周辺の解放であるのは自然な流れであろう。
「バグア側への情報のリーク、感づかれるなよ?」
「むろん、その点はぬかりなくやってみせます」
 オリムが幕僚の一人に念を押すと、幕僚は自信ありげに答える。
「ブラット少将からは何か?」
「思い切った作戦だとは思います。が、やってくれると信じます。作戦名は決まっているのですか?」
 オリムに聞かれたハインリッヒは作戦の困難を指摘しつつも、それを克服する自信を見せる。
「The American Revolution(アメリカ独立革命)‥‥というのはさすがに身贔屓が過ぎるな。War of Independence(独立戦争)だ」
 大規模作戦の本格的な発令は6月末。作戦期間中、アメリカは233回目の独立記念日を迎える。

●「ロサンゼルス防衛作戦会議」
「それでは、UPC北中央軍の依頼によりお集まりいただいた傭兵の皆様、はじめまして。司会は私グレース・ナカジマ(gz0216)でお送りします」
 拍手。
「と言うわけで、資料にもあるようにロサンゼルス方面が手薄になります。これを見逃すほどバグアも馬鹿ではありませんので、当然ロサンゼルス方面にも攻撃を仕掛けてくるでしょう。ただ、敵の主要戦力はUPCに釣られて五大湖周辺に移動するでしょうから、ロスを襲ってくるのはシェイドやステアーなどの少数精鋭になると思われます。実際、先の大規模作戦中に手薄になったロサンゼルスへの襲撃がありました」
 そこまで言って息を吸う。
「太平洋方面からの援軍が到着するまでの間、ロサンゼルスの防衛は傭兵を主体とした編成で行います。それにともない、傭兵の皆さんにはそのための作戦の立案をしてもらいます。なお、ここで上がった内容は決定ではなく『上のほう』に持って行って正式に決定されます。皆さんに提案していただくのは以下の二つです」
 ペットボトルの水を含んでから言葉を続ける。
「まずは、『参戦場所』。すなわちロサンゼルス防衛作戦における戦力配置の決定です。それぞれの方面の基本的な戦略を提案することができます。もちろん、「参戦場所」という名称にとらわれない発想でもOKです」
 それから一息置く。
「次に『作戦』です。各参戦場所に付随する作戦の選択肢をあげてもらいます。過去の大規模作戦で【戦闘】などのように規定されていた内容ですね。ロサンゼルスは傭兵主体ということで軍の介入はほとんど入りませんが、だからこそ参戦場所と作戦が重要になってきます。どこにどれだけ兵力を配置しどのような手段で戦うか。ロサンゼルスの現状なども考えて話し合ってください。宜しくお願いします」

●ロサンゼルスの現状
1ロサンゼルス国際空港
 ユニヴァースナイト弐番艦の駐屯している、ロサンゼルスにおけるUPC軍の最大拠点である。
元々の規模の大きさとUPC軍による軍事基地化により、かなりの航空兵力を運用可能になっている。
 作戦発動時にはユニヴァースナイト弐番艦をはじめ、正規軍部隊の多くが五大湖方面へ出撃する為、かなり戦力が手薄になる。傭兵のKVの整備などはラストホープ島からくる特殊作戦軍の後方支援部隊と傭兵の自助努力になる。

2アーバイン橋頭堡
 ロサンゼルスの東南、アーバイン地区に横たわる、長さ数十kmにわたる巨大な防衛施設。
 当初はロサンゼルス確保の為の橋頭堡として建設されたものであるが、ロサンゼルスを確保した現在ではロサンゼルス防衛の為の巨大陣地へとその役割を変えている。
 陣地近くにある旧米軍海兵隊の航空基地と民間空港による空路、ハイウェイなどの陸路での連絡(補給やら部隊の移動やら)が容易になっている。

3海側の防衛
 UPC太平洋軍の司令部はサンフランシスコにあり、そこを母港にする艦隊の一部がシフトを組んでロサンゼルス沿岸の防備にあたっている。これらの艦隊は地理的な条件から作戦発動後もロサンゼルスの防衛に留まる。
 また、ロセンゼルス近郊にもロングビーチなど、大型艦が停泊可能な港湾施設は存在している。
 ところどころに監視所が設けられ、軍用車両、軍用機での海岸の哨戒などが行われているが、海岸線すべてに陣地を構築することはできていない。

4ロサンゼルス東側の防衛
 ロサンゼルスの東側は山がちな地形となっている為、大がかりな進軍には向いていないとされている。
 当然ながら哨戒活動は行われており、小規模な監視所も設置されているが、橋頭保のような大規模な防衛施設は存在していない。

5ロサンゼルス一帯
 ロサンゼルス一帯には、民間空港はもちろん、旧米軍の航空基地などが各地に散らばっている。
 それもほとんどがUPC軍用に利用されているが、ハリウッド奪還作戦以後に映画制作が再開していることからもわかるように、民間人の出入りにも利用されている。
 もともと一大観光都市であったこともあり、陸路、空路、海路の便がよく、それゆえに軍事的にも重要性は高いといえる。
 また、富裕層の邸宅なども多い為、個人所有の小型機などが離着陸可能な滑走路なども少なくない。

6サンディエゴ
 UPC、バグア両軍が小競り合いを起こしている都市。
 バグア軍の勢力はメキシコ国境の南側にとどまっており、UPC側もアーバインの橋頭保を防衛ラインに据えている為、サイディエゴは競合地域と化している。

●参加者一覧

/ メアリー・エッセンバル(ga0194) / 藤田あやこ(ga0204) / 新条 拓那(ga1294) / 比留間・トナリノ(ga1355) / 叢雲(ga2494) / ファルル・キーリア(ga4815) / クラーク・エアハルト(ga4961) / ハンナ・ルーベンス(ga5138) / ラシード・アル・ラハル(ga6190) / フォル=アヴィン(ga6258) / レイン・シュトラウド(ga9279) / 米本 剛(gb0843) / 鹿嶋 悠(gb1333) / 鬼道・麗那(gb1939) / 赤崎羽矢子(gb2140) / 冴城 アスカ(gb4188) / ルーイ(gb4716) / 鷹谷 隼人(gb6184) / 流叶・デュノフガリオ(gb6275) / 月城 紗夜(gb6417) / フィー(gb6429

●リプレイ本文

●ロサンゼルス防衛会議
「さて、そろそろ意見も出てきたようなので、半ば議長と化している新条 拓那(ga1294)殿に今までの纏めをお願いしようかしら?」
 グレース・ナカジマ(gz0216)が今まで見守ってきていた会議が煮詰ってきたので意見の纏めを求めた。
「俺達の意見を取り入れて下さるのは、昔から知ってると感慨深いものがありますね。今回はよろしくお願いしますよ」
「こちらこそ宜しくお願いするわ」
 マウル・ロベル(gz0244)少佐が拓那に答える。
「まず、次の事項に関しては我々の間でほぼ一致しました。詳細は皆が説明すると思うので、お聞き下さい」

作戦戦域として設定されたのは

【空港防衛】
【港湾(海岸線)防衛】
【アーバイン(橋頭堡)防衛】
【LA市街地防衛】
の4つだ。

それに対してマウルは「無難なところね。定石は有利だから定石になるわ」と一人呟く。

「ロス市街防衛に対しては違う意見も出ていますね。鷹谷 隼人(gb6184)さんがかなり独特な意見をお持ちです」
 そう言ったのはメアリー・エッセンバル(ga0194)で、資料を作成したりヒートアップしたら別の人に話を振るといったことで会議のスムーズな進行を補佐していた。
「それでは、隼人殿どうぞ」

「あ、はい。僕の思考の結果としては、ロス市街の防衛はいらないと判断しました」
 一度出た意見だが、それでも聞くものはざわめく。
「防衛拠点は

【アーバイン橋頭保】
【ロサンゼルス国際空港】
【ロングビーチ港】
【オーシャンサイド】

で良いと思います。
 それから、サンディエゴですが、サンディエゴの軍は抑え込みが困難と判断した時点で正規軍はアーバイン橋頭堡、傭兵はオーシャンサイドまで空路で撤退して、オーシャンサイドで敵の侵攻ルートを偵察し、次の防衛拠点に移動します。
 敵が山に行くようならコロナ空港を利用してコロナに陣地を展開、橋頭堡なら橋頭堡の防衛を支援、海ならロスの海岸の支援と言った形ですね。少ない兵力をいかに集中して迎撃できるかが大事だと思います」
 言い切って一息つくと着席した。
「よく調べてるわね。参考にさせてもらうわ」
 マウルが隼人を労う発言をする。
「失礼、補足よろしいでしょうか?」
 ファルル・キーリア(ga4815)が手を上げる。
「彼の意見も一理あるわ。勿論、市街防衛が必要じゃないと言うわけでもないんだけど」
「と、いいますと?」
 グレースの問いにファルルはよどみなく答えた。
「目標が明確じゃない作戦に勝利なんて得られるわけないわ。まずはそこから考えましょ。作戦目標は援軍の到来を待つこと。つまり、空港と港湾部が破壊されたら、作戦は失敗ね。もちろん、市街地も守りきりたいけど、優先順位は下がるわ。市街地を守った所で、空港とかが破壊されたら、絶望的な防衛戦が待つだけだからね。ってことで優先順位は

【港湾防衛】
【空港防衛】
【橋頭堡防衛】
【市街地防衛】

 この順番。市街地よりも、援軍の受け入れを重視して防衛するわけよ」
「なるほど。では市街地はあくまで優先順位としては最後と言うことですね」
「ええ。そうなるわね。でもこれは通常の防衛作戦よ。相手の攻撃に耐え、援軍が来るまで耐えるっていう面白くない作戦ね。で、方針もオーソドックスな迎撃とか、新鋭機対応、後方支援および陣地構築辺りがよさそうね」
「通常の、と言うことは何か別な案がありそうね?」
 マウル少佐がそうたずねると、「奇策だから本当にやばいんじゃなきゃお薦めしないわ」と前置きした上で持論を展開した。

●メキシコ、サンディエゴ
「さっきの案に対して、こっちは攻勢防御。つまり敵拠点や補給物資を破壊する事によって、相手の攻撃能力を奪ってしまうっていう作戦ね。この状況なら、メキシコへの攻撃はありえないと油断してる可能性が高いわ。そこを付くわけ」
 そして提案されたのは

【LA防衛】
【海上交通路防衛】
【サンディエゴ陽動】
【メキシコ奇襲】の4つだった。

「LAとサンディエゴに敵を引きつけてる間に、迂回して突破、メキシコを一気に破壊するっていう作戦よ。成算が不明だけど、成功すれば相手は攻撃どころじゃなくなるわ。LAに影、つまりシェイドが来る可能性が高いから、それが怖いといえば怖いわね」
「なるほどね。奇策のほうも検討対象にさせてもらうわ。あんたがお勧めしないってのも含めてね」
「ありがとうございます。私の意見は以上です」
 そう言ってファルルは着席した。
「サンディエゴとメキシコについてだけど、僕は反対だね」
 そういって立ち上がったのはルーイ(gb4716)であった。
「一部戦力を攻勢に回すくらいならその戦力を他の防衛に回すべきだと思うよ?」
「確かにサンディエゴは無視できない場所ではあると思うけどそこに割ける戦力があるかどうか、疑問ね」
 ルーイに続いたのは冴城 アスカ(gb4188)であった。
「確かに防衛に回す戦力から割くのは難しいかもしれないけど、別件の依頼として傭兵を動かすのはどうかな? 陽動と後方撹乱を狙い、少数部隊による攻撃や破壊活動を実施して敵に心理的圧力を掛けると言うことで」
 そういって賛同の意見を示したのは鹿嶋 悠(gb1333)であった。といっても、別件でと言う条件付でではあったが。
「そうね。拓那殿、これについては結論は出ていないのよね?」
「そうですね。個人的には反対ですが、どうするかといった総意はでていません」
「そう‥‥じゃあ、これについては賛成反対の論議は交わさないで意見だけお願いできるかしら? そのほうがスムーズに行くでしょうし」
 グレースがそういうと、それでは、と言ってヨネモトタケシ(gb0843)が手を上げた。
「ロスと海上部隊迎撃で防衛を固めつつ、サンディエゴを確保してロスへの圧力を弱め、メキシコへ迂回して攻撃をかけることで、そもそもの原因取り除くって方法に一票です。参戦場所は次の通りです」

【LA防衛】
【海上部隊迎撃】
【サンディエゴ奪取】
【メキシコ奇襲】

「メキシコは完全にバグアの支配下だから、原因を取り除くのは難しいけど、敵の動揺を誘うには悪くないわね」
 とはマウル少佐の所感である。
「【sms】の隊長藤田あやこ(ga0204)です。サンディエゴに関連してですが、サンディエゴを睨むサンクレメンテ島の確保を提案します。初フェイズでは先遣隊の派遣、次段階で滑走路の奪取整備を行います。ここを抑えればサンタカタリナ湾の制海制空権を握りメキシコ方面からの敵迎撃の拠点や海上防衛の要となり、サンディエゴへの牽制など有利に働くと思います」
「サンクレメンテ島というのは面白いところに目をつけたわね。ほかに意見はあるかしら?」
 マウルが面白そうに頷くとレイン・シュトラウド(ga9279)が手を上げた。
「サンディエゴに関しては、敵勢力の動きを警戒して哨戒活動を行うことを提案します。メキシコに関しては、今回は見送り。ただし、今後のサンディエゴ・メキシコ奪還のことも考えて、サン・クレメント島に斥候を送る案を支持します」
「シャスール・ド・リス隊長、クラーク・エアハルト(ga4961)です。【サンディエゴ】、【メキシコ】への攻勢には条件付き反対です。増援到着前にサンディエゴ及びメキシコへの積極的な攻勢は危険が大きすぎると思います。攻勢を仕掛けるとするならば増援到着後でしょうね。ただ、事前偵察を行なう事には反対しません」
 クラークの提示した参戦場所は定石どおり【空港】【港湾】【橋頭堡】【市街地】の四箇所。ただし、サン・クレメントへの進軍には反対せず、積極的に制圧することを支持した。
「サンディエゴから海路を侵攻して来る敵に対しての牽制と早期発見の為にサン・クレメント島の海軍基地の制圧を推します。距離的には離れていますが、橋頭堡との連携も可能ではないでしょうか。そう言えばUK参番艦はまだ実戦投入は無理なのですか? 居てくれるとサン・クレメント島の確保とサンディエゴに対する牽制になりそうなんですが」
 後半はマウル少佐に向けての疑問である。それに対してマウル少佐は「参番艦はまだ時間がかかりそうね」と答えた。
「我は月城 紗夜(gb6417)。サンディエゴの奪還‥‥もしくは、次の布石としてサン・クレメント島の奪還を強く推す。余力があれば、精鋭でメキシコ奇襲。増援までに時間を稼げればいい。守りに徹することは確かに敗北の可能性も少ないが、バグア側も予測済みだと思う。‥‥バグアの意表をつければいいと思ったのだが」
「皇 流叶(gb6275)だ。援軍等を恙無く迎え入れる事が寛容であろうし、空港防衛と湾岸防衛を主格とし、山岳哨戒と海洋哨戒を両立する事が出来れば御の字だろうか、とも思うのだが‥此方から仕掛けてみるのはどうだろうか?」
 そこで流叶は一息置いた。
「此れは落とす為ではなく、相手の出方を見る、どれ位の戦力が居るかを見る、その戦力を使わせて二の足を踏ませる等、三種類の観点からサンディエゴ方面へ攻撃はそれなりに有効だと思う。但し、それに本腰を入れる程に戦力を傾ける事は此方の陣の手薄を招く。だから少数遊撃隊で一撃離脱をしつつ、相手の出足を挫き続けることが出来れば其方からの圧力を緩和する事が可能で有ると見ている」
「なるほどね。それもありと言えばありね」
 マウルが流叶の言葉にそう答える。
「ほかにメキシコ、サンディエゴ、クレメント島に関しての意見はあるかしら?」
 グレースが会議場を見回すが意見は無い様である。
「じゃあ、賛成反対双方の意見を、上に持っていって検討するわ。それでは次の議題に移ってくれる?」
 マウル少佐がそういうと、メアリーがあやこに情報網について話してはどうかと振った。

●情報網
「それでは。前回五大湖戦で私が提唱した情報網も今では随分普及していますが、それの構築や維持作業を支援等の項目で正式に行動選択肢に含めて欲しいのです」
「反対意見を述べさせていただいてもよろしいかしら?」
 鬼道・麗那(gb1939)が立ち上がってグレースに許可を求め、それに応じたので彼女は持論を述べることにした。
「敷居が高いと常に大規模作戦の各種会議には批判があるので、ミリタリー知識に造詣が深くない初心者の一助になればと思い防衛会議に参加しました。それで、情報網についてですが‥‥個人的意見としてですけれど、ジャミングとイタチゴッコになる広域情報網に拘るよりも小隊同士の事前連携強化を意識し、後ろを見て闘うのでなく、前を見て闘う方が良いのではないかと思ってます」
 そこまで麗那が言ったところで待ったがかかる。
「赤崎羽矢子(gb2140)です。情報網の見直しは確かに必要だと思うんだよね。でも廃止する必要はない。中心となる部隊をおいて複数ある情報網を束ねて一本化し、必要な情報のみ部隊や個人に配信したり、敵を撹乱する誤情報を流したりしてはどうかな?」
「そうなると責任者と言うものが必要になってくるけれどそれはどうお考えかしら?」
 グレースの質問に羽矢子は白瀬留実少尉にやってもらいたいと答えた。
「勿論彼女だけじゃ手に余るだろうし、有志の傭兵や各情報網の担当者を補佐に着ける形で。そんな感じでどうかな?」
「これも持ち帰って検討させてもらうわ。少尉、というか少尉の所属部隊の隊長なんかの同意も必要になってくるでしょうし、あちらでも似た様なことを計画してるから参考にしてくれると思うわ。それで、参戦場所についてほかに意見はあるかしら?」

●参戦場所――その他
「それでは続けて発言してよろしいでしょうか?」
 あやこが挙手をして、マウル少佐が同意した。
「アーバイン橋頭堡で敵の進攻路と予想される偵察が手薄なロス東部山岳部の威力偵察を提案させてもらいます。一応これは総論で賛成となっているはずだけど、改めて。それから、アースクエイク狩りを行う地殻測定器搭載の専門の対潜哨戒チームを提案します。これは、提案者としてsmsが行います」
「自分たちで行うならば問題ないわ。むしろお願いしたいわね」
 マウル少佐があやこに賛同する。アースクエイクは厄介なワームだからだ。
「それに関連して意見がある。そして空港防衛の一環として、等間隔に地殻変化計測器の設置を提唱したい。滑走路に穴でも開けられた日には目も当てられないし、
何よりその変化を纏め、全体的な情報化とする事で簡易的なレーダーにもなり得ると思うのだ」
 流叶がそう言うと、マウル少佐は「なるほどね」と同意した。
「後、海洋哨戒には軍の正規海軍が当るとしているが、傭兵達少数で空から哨戒をかけ、二重哨戒、等も有効なのではないだろうか」
「海のほうももちろん手伝ってもらうわよ」
「了解した。さて、彼らの考えは如何に‥‥だな」
「さて、参戦場所については意見も出尽くしたようなので、『作戦』についての意見をお願いします」

●作戦
「今まで出た案では、それぞれの戦域に共通の指針として、「迎撃」「補給」を設定。これに加え、市街と空港では「対人戦(生身」、港湾では「水中戦」アーバインでは「山間部哨戒」を設定することになっています」
 拓那がまとめた案を抽出する。
「無難ね。ほかに意見は?」
「比留間・トナリノ(ga1355)です。補給に関してなのですが、自分の陣地構築や補強も含まれる、という風に提案したく思います。
援軍到着後にバリケードやコンクリートで補強した塹壕やトーチカなどがあれば、随分正規軍も戦いやすくなるのではないでしょうか?」
「無難なところね。特に反対はしないわ」
「ありがとうございます」
 マウル少佐が賛同するとトナリノが礼を言う。
「空戦部隊Simoon隊長ラシード・アル・ラハル(ga6190)です。ちょっと総論とは‥‥ちがうんだけど

【空港防衛】
陸上戦闘
制空権維持
生身戦闘
前線支援

【港湾防衛】
陸上戦闘
制空権維持
水中戦闘
前線支援

【アーバイン防衛】
陸上戦闘
制空権維持
山間部哨戒
サンディエゴ偵察
前線支援

【LA市街地防衛】
陸上戦闘
制空権維持
生身戦闘
前線支援

 のように‥【迎撃】を空戦と陸戦を‥あらかじめ分けておいたほうがいいと‥思う‥‥僕は、空戦部隊、やってるから‥最近の人手不足が、気になっていて‥」
「空戦よりも陸戦が得意って傭兵が多いのかしらね? でもまあ、陸空に分かれたほうがいいのか、迎撃で一本化しちゃったほうがいいのかは考えどころよね。これも持ち帰って検討してみるわ」
「よろしく‥‥おねがいします」
「空戦部隊Simoon 副長やってます。フォル=アヴィン(ga6258)です。よろしくお願いします。やってることは、主に他部隊との作戦すり合わせとか会議出席ですけどね」
 順番がまわってくるとフォルは一気に発言した。
「可能なら、防衛網は多重に敷きたいですね。サンディエゴなどの競合地域からこちらの勢力圏の間に幾つか簡単な砦のようなものを構築できれば少しは有利になるかな、と。もっとも、これは事前作戦の範疇かもしれませんが。

 あと、やはり、出来るだけ敵の勢力は早めに掴みたい。そういう意味では、ある程度の哨戒部隊はあったらいいなと。位置としては、やはり橋頭堡防衛から戦力を割く形になるのかな。

 加えて、個人的に生身で行動する戦力も重要だと考えてます。以前はなかったAUKVというものもありますし、KVではできない小回りの効いた行動が可能ですからね。例えば、空港への親バグア派の潜入工作や、小型キメラへの対応など水中も相変わらず戦力不足が予想されますので、軍ともうまく連携を図りたいですね。そんな訳で、よろしくですよ、マウル少佐」
「野戦陣地の構築ね。検討させてもらうわ」
 マウル少佐がそう言って一息つくと、レインが作戦について詳細に発言をした。
 空港防衛に関しては、キメラや強化人間が空港内部に潜り込んで破壊活動を行う可能性に触れ、それらに対し、AU−KVや生身の能力者部隊で警戒・排除に当たる案を提案する。
 市街地防衛に関してはKV部隊に街の外周や主要道路の防衛に当たらせ、AU−KVや生身の能力者部隊で街に潜り込んだキメラや強化人間の破壊工作を警戒・排除に当たる案を提案した。
「それから、市街地に残っている民間人の避難も必要だと思います。もし、民間人に多大な被害が出てしまった場合、UPCへの反発も強まるでしょうから‥‥」
「あ、それならすでにやっているわ。今月の初めの時点で、ロスの民間人には避難勧告を出しているわ。尤も、まだ市街地に残っている民間人がいるのなら改めて避難させないといけないでしょうね」
「そうですか。ボクからの意見は以上です」
「では俺から」
 そう言ったのは悠である。
「作戦の前段階になりますが、情報は現代戦の要‥‥ということで敵の動きを逸早く察知し、対応するために艦隊による哨戒網と移動式電探等各種センサーを山間部や山頂部に設置し、偵察部隊とは別に情報収集を実施します。
 コレにより絶対的な数が不足しているこちらの戦力を効率的に動かすきっかけになるともいます。また、それに関して橋頭堡、LA、港湾に関しては広域哨戒を特記事項とします。先に述べた通り敵動向を素早く察知する必要があるためです。BFによる逆上陸作戦の可能性もあるためこれを察知するためにも海側の哨戒網は重要になると考えます」
「索敵は大事ね。レーダーや監視所といったものは、戦力の引き抜きで要員のシフトがキツくなっているわね」
「そうですか。それから、作戦の選択肢として【新鋭機対応】を入れるべきと考えます。それから先ほど意見が出た迎撃を陸空に分けるものよりは、分けてしまうよりも立体的な連携や移動が出来ることを考慮し一つに纏める方がいいと提案します」
「うーん。頭が痛いわね。上に持ち帰って検討するわ」
 それからマウル少佐は更なる発言を促すが特に意見は無い様である。出尽くしたのだろう。
「それでは、そろそろ会議を閉会したいと思います。皆様に覚えていていただきたいのは、この会議はあくまでも意見提案の場であって、意思決定会議ではないことです。定石で多数が賛成した作戦案よりも、一人だけしか意見を出さなかった案が採用されることもありますし、まったく違う方針が軍から示されてくる可能性もあります。
 傭兵に戦略部分から意見を聞くようになったのは大きな進歩ではありますが、まだまだこれから変わっていくであろう事だけは忘れないでください。それでは皆様、お疲れ様でした」
 グレースのこの言葉を持って、会議は閉会となった。そしてマウル少佐が退場すると、会議に参加した傭兵たちも一人、また一人と退場していったのである。