タイトル:【DR】銀の爪マスター:碧風凛音

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/30 03:55

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


「さて、今回は続き物だから前回の話との整合性を取らなければいけない」
 セルゲイ・グリューンは集まっているキャストとスタッフの前で前回の台本を見ながら言った。
「前回はシルバー・クロウが出てきたところで終わったのよね」
 キャストの一人サラ・ディデュモイ(gz0210)がカンパネラ学園の戦闘服に身を包みながら言った。
 この戦闘服はAU−KVの装着を補佐する装備で、全身を覆うスーツのようになっているのでボディラインがはっきりと出るのだが、サラが着ても別段いやらしさはなく、むしろ戦士としての彼女の凛々しさを強調していた。
「そうだな。それに関してだが『TOKUSATU』にはお約束が一つあってな、『物語の前半で変身してしまったヒーローは、一度敗北せねばならない』ってやつだ。だから、今回は戦闘は2回ある。まず、冒頭の戦闘でバグラムに苦戦するドラグナイツ。それから、後半になってから逆転するドラグナイツだ。だが、学校を攻められているのだから、バグラムは追い払わなくてはならない。難しい部分だな」
「戦闘を二回も? それじゃあ他のことに割いている時間がないわね。どうするの?」
「目安としては、今回はAパートを戦闘のみで終わらせ、Bパートでインターミッションと二回戦、あるいは特訓して次の話でシルバー・クロウに土をつけるか。まあ、ほかにもパターンはあるが、冒頭の戦闘は苦戦しつつもどうにか退けるということになるな。まあ、そこらへんはキャストの意見を聞きながらってことになるからこっちでは大きくしか決めないけどな」
 セルゲイはそういうと集まったキャストを見回したのだった。そしてこう言う。
「今回の話の肝は、苦戦しつつもバグラムを退けるときにいかにUPCを活用するかだ。ドラグナイツの面々は強力だが、設定上は素人学生。戦いに関してはまだまだ熟練兵に及ばないだろうからな。そこらへんのところをうまく練らないといかんな」
「スポンサー様だし仕方がないわね。まあ、あたしとしては演技してるだけで十分なんだけどね」
 サラがそういって話をまとめる。こうして第3話の打ち合わせが始まったのだった。

●参加者一覧

チェスター・ハインツ(gb1950
17歳・♂・HD
月影・白夜(gb1971
13歳・♂・HD
烏丸 八咫(gb2661
23歳・♀・EL
ドニー・レイド(gb4089
22歳・♂・JG
ルーイ(gb4716
26歳・♂・ST
ウレキサイト(gb4866
22歳・♀・DF
ルノア・アラバスター(gb5133
14歳・♀・JG
キャプテン・エミター(gb5340
14歳・♀・DG

●リプレイ本文

●Aパート
 烏丸 八咫(gb2661)演じるシルバー・クロウの奇形剣がキャプテン・エミター(gb5340)演じるニュクス・アイオーンに迫る。
 避けきれずAUKVのメットが破損する。そして素顔がさらけ出される。奇形剣はニュクスの体に絡みつき、シルバー・クロウの眼前に引き寄せられる。
「どんなモノかと思えばただの小娘か。さぁ、おびえた顔を――」
 ニュクスの顔を見て動きが止まるシルバー・クロウ。
「ニュクスが、生きていた?」
 妖艶に微笑んでいたシルバー・クロウの表情が驚愕に変わる。
「何故、私の名前を」
 ニュクスは混乱しながらそう呟くが、シルバー・クロウが涙を流していることに気がつく。
「何を泣く! 敵に同情される覚えなんてない!」
「‥‥涙? 私が涙など流すはずがない。なんだ?」
 そして思わず奇形剣を全力で振るい、ニュクスを放り投げる。
 ニュクスは己の内に湧き上がる怒りに混じった奇妙な衝動に戸惑いながら、ふらふらとしながらもシルバー・クロウへ向かう。
「そんな怪我をして無茶だ!」
 チェスター・ハインツ(gb1950)がニュクスを庇いに入りながらガトリングガンを斉射する。
「くっ‥‥この敵は不味い!」
 シルバー・クロウに近づきながらもガトリングを撃ち続けるが、その攻撃はすべて異空間へと逸らされる。
「あの剣が‥‥それにあの能力」
 目の前の敵を片付けてシルバー・クロウの挙動に注目する月影・白夜(gb1971)。
「危ない!」
 サラ・ディデュモイ(gz0210)演じる藍・カレンが白夜に警告する。飛行キメラが迫っていたからだ。
「外すなよ。撃て!」
 ドニー・レイド(gb4089)演じる藍・祥龍(ラン・シャンロン)中尉が集中攻撃の指令を出す。それは正しく実行され、キメラたちは地に落ちる。
「兄さん!」
「カレン、地上の敵は大体片付けた。人質の確保も順次終了している。思いっきり戦え。ただし、無茶はするなよ!」
「了解!」
 カレンは答えると盾を利用しながら敵の攻撃を防ぎ、その隙に剣で切りつけるという戦法でキメラに向かっていった。
「祥龍さん‥‥助かります」
 間一髪といった所であった。白夜は祥龍に礼をいい、そして獲物を探して戦場に視線をめぐらせたところで、ルノア・アラバスター(gb5133)博士の乗る輸送車に襲いかかろうとするキメラを目にする。
「其の娘に手を出すな!」
 白夜は叫ぶとAUKVの脚部をスパークさせながら戦場を一気に駆け抜け、ルノア博士を庇うように立った。
(「似た境遇の者というのは居るものだな‥‥」)
 基地であったときのルノアの言葉を思い出しながら、白夜はキメラの攻撃をその身に受ける。
「ドラグナイツの相手は後回しだ! 先にUPCをやるぞ!」
 ルーイ(gb4716)は残った戦闘員をかき集めると、自ら率いてUPCに攻撃を仕掛ける。だがUPCの巧みな戦術の前に確実に戦闘員の数を減らされていく。それでもルーイは怪人としての力を発揮することによって少なくない被害をに与えた。そして、再び祥龍と出会う。
「祥龍、もう一度言うぞ。地球は負ける。だから俺と共に来い。友誼の証として、俺はお前をバグラムに誘う」
「断る!」
 祥龍はルーイが差し伸べたその手を振り払う。
「地球は負けない! 俺たちも負けない! 俺を、UPCをなめるな!」
「どうしてもか?」
「どうしてもだ。そしてこんな非道な行いをするお前を、俺はもはや友人とは思わない。バグラムとして、倒す!」
 その言葉を聴くとルーイは残念そうな顔をした。それからバグラムの超技術で電磁波を発生させ、祥龍に攻撃をしようとする。
「ならば、せめてこの手で楽にしてやろう、祥龍!」
 その瞬間カレンが祥龍とルーイの間に割り込む。
「きゃああ!」
 電磁波の直撃を受けるカレン。
「カレン!」
 祥龍はルーイに向かってアサルトライフルを発射する。
「くっ!」
 祥龍の妨害を受け電磁波をとめるルーイ。だが、それでもカレンはかなりのダメージを受けていた。
「祥龍、俺はあきらめないぞ!」
 ルーイはそういうとチェスターと戦っているシルバー・クロウに目を向けた。

「弾丸が尽きた‥‥!」
 シルバー・クロウの攻撃をガトリングの弾丸で弾きながら戦っていたチェスターだが、敵に有効打を与える前に弾丸が尽きてしまった。そして奇形剣の攻撃を何度も受けて、AUKVは破損していく。
「くっ!」
「あはは! 無力だな!」
 ニュクスを見て受けた戸惑いを振り払うかのように攻撃を続けるシルバー・クロウ。AUKVが破壊され、大きなダメージも受けて、チェスターは前のめりに倒れた。
「トドメ!」
「させない!」
 そこにニュクスが飛び出す。思わず攻撃をためらうシルバー・クロウ。そしてためらった事に再び戸惑いを覚える。
「どうしたのだ、わたしは」
 急に様子がおかしくなったシルバー・クロウを、ルーイが見咎める。
「どうなされたのですか、シルバークロウ様!? 早く止めを!」
「ルーイ、興が削がれました。撤退します」
 シルバークロウはそう言うと飛行型キメラにドラグナイツを攻撃するよう指示を残し、バグラムの超技術で空間跳躍し撤退した。
「ちっ! 撤退だ! 撤退するぞ! 後はキメラに任せておけ!」
 そういうとルーイは残った戦闘員を引き連れて空間跳躍をした。

 チェスターは動かないAUKVから敵が撤退するのを確認し、安心すると同時に、自分が安心してしまったことに対して悔しさと力不足を感じる。
「畜生‥‥僕は、こんなに弱いのか‥‥」
 そして緊張の糸が切れ、そのまま気を失ってしまった。

 白夜はキメラたちの攻撃を受けながらも、ルノアを庇い続けていた。
「やめないか、月影白夜。死んでしまう! 死んでしまう!」
 ルノアが、ありえないほどに取り乱して叫んだ。そして白夜の元に駆け寄ろうとするがUPCの兵士によって止められる。
 白夜は機体を破損させながらも槍斧でキメラを確実に屠り、最後の一体を倒したところで力尽きた。
「ドラグナイツを‥舐めないで‥下‥さい‥‥」
 そして気絶する。

「被害がひどいな‥‥全部隊へ! 残る敵は飛行型キメラのみだ。確実に火力を集中させて落とせ!!」
 祥龍は自らも傷を負いながらも必死になってキメラと戦闘していた。人質を解放し合流してきた各部隊の援護を受けながら、巧みな戦術指揮でキメラを倒して行った。だが、部隊の消耗も激しかった。

 まだ立っているカレンとニュクスがキメラとの戦闘を続け、UPCの部隊に近づいていく。そしてUPCと連携をとってキメラをすべて倒すと、二人も気を失った。
 こうしてなんとか敵を撃退したUPCとドラグナイツだったが、その被害はけして小さくはなかったのである。

●Bパート
 ドラグナイツの面々と負傷したUPCの兵たちは軍病院で治療を受けていた。ドラグナイツの面々も祥龍も命に別状はないが、検査のために一泊だけ入院ということになった。

 男部屋。チェスターは頭に包帯を巻いて、自分がこれから何をすべきかを考えていた。
 といっても容易に結論がでるものではないのでずっと悩んでいるようであった。と、突然、病室の扉が開かれ、看護士官に連れられてウレキサイト(gb4866)演じる喫茶店のマスター、ウルが入ってきた。
「ウルさん」
 同室の祥龍が驚いて体を起こす。
「こんにちわ。お見舞いに参りました」
 ウルはそういうと祥龍のところに駆け寄った。
「ウルさん、見舞いに来てくれたのはありがたいのですが、ここは軍病院ですよ。一般人のあなたがどうやって入り込んだんです?」
 祥龍は疑問に思ったことをまっすぐに尋ねてみる。するとウルは真っ赤になり、両手を頬に当てながら、「祥龍さんの婚約者と言って入れて頂きました♪」と答えた。
 それを聞いて祥龍も真っ赤になる。
「こ、婚約ですか‥‥」
 言葉が出ないようだ。
 しばらく甘い空気が流れる。
「それはそれとして、皆さん大丈夫ですか?」
 気を切り替えてウルがチェスターと白夜にたずねる。
「なんとか、軽症で済みました。それよりもウルさん、学校が襲われたんですけど、学校のことは一部の人間しか知らなかったはずなんですが‥‥おかしいと思いませんか?」
 チェスターがウルを疑い探りを入れるが、すぐに思い直す。もともとチェスターはウルの喫茶店の常連だ。だから「いえ、なんでもありません‥‥」と言ってすぐに言葉の矛先を納めた。
「僕も、怪我自体はたいしたことはなかったようです。エミタの使いすぎで肉体が疲弊したのではないかと言われました」
 白夜はノートパソコンに何かを打ち込みながらそう答えた。
「そう‥なの‥‥。ねえ、バグラムに勝てるの? このままで」
 ウルが不安げに問いかける。それに対して祥龍がこれから特訓を行うから大丈夫だと告げた。
「そう。あまり無理しないで、早く良くなってね。喫茶店、寂しくなっちゃったわ」
「そうですね。早めに顔を出しますよ。ところでウルさん、近いうちにお時間をいただけますか? 少しお話したいことがあるんです」
 祥龍がそういうと、ウルは頷いて、「私も祥龍さんにお話がありましたし、丁度良いですわね」と答えた。
「それじゃあ、あまり長居してもお体に触るでしょうから、私は失礼しますね。では‥‥」
 そういって病室を出て行くウルを見送った後、祥龍はベッドから起き上がり部屋を出て行った。そしてそれと入れ違うように、ルノアが病室に入ってくる。
「月影白夜‥‥無事なようだな」
「ええ‥博士が作ったAUKVが頑丈で」
「一応礼だけは言っておく。あの時は助かった」
 照れているのだろう、ややぶっきらぼうな言葉だった。
「ふふ‥」
 白夜は口に手を当てて微笑む。
「どうした、何がおかしい?」
「いえ‥僕があの様にしたかっただけですから‥‥」
 それから白夜は真剣な顔になって、ノートパソコンからMOを抜き出した。
「AUKVの強化プランと、ドラグナイツの強化アイデアをまとめてみました。奴等に対抗するための希望の欠片です‥‥よろしくお願いします」
「‥‥お前の頼みだ。考えておいてやる」
 白夜に言われるまでもなく強化案は密かに進行中だったのでやや曖昧な返事を返してしまったが、白夜に頼まれたことが、ルノアには嬉しかった。
「では、これで失礼する。さっそくAUKVの強化に入りたいのでな」
 照れを隠すようにそそくさと退室するルノア。
「AUKVの強化と特訓か‥‥確かに、それしかないのかもしれないな‥‥」
 一連の会話を黙って見ていたチェスターが呟く。

 祥龍はニュクスとカレンが入っている部屋の扉をノックして入室の許可を得ると、まずカレンに怪我の様子を尋ねた。カレンはそれに短く大丈夫と答える。
「そうか‥‥お前に何かあったら、父さん達に顔向け出来ない。退院したら特訓があるが、あまり無茶はするなよ」
 その言葉にカレンは頷くと、「私よりニュクスさんを心配したほうがいいわよ」と言った。そして、「お邪魔虫になりそうだからちょっと部屋を出ているわ」と言うとベッドから降りて部屋を出て行った。
「ニュクスちゃん、少し、良いかな? 君のご家族のことで、少し聞きたいことがある。学校で、君は自分に何かあっても悲しむ人はいないと、そう言ったけど、もしかしてきみの家族は‥‥」
「そうです。数年前にバグラムの破壊活動で‥両親も、優しくて美人だった姉も‥‥」
「‥‥そうか。俺は君やカレン、そしてウルさん‥守るべき人達を護る為に戦っている。それが我々軍人‥戦う力を持った人間が存在を許される理由だ。死なせてしまった部下達もそうだったと、自分を騙して戦っている。では君は、君達の戦う理由は何だ?」
「――復讐、ではないです。一遍に何もかも失ったから、憎いとか悲しいより‥何で私一人だけ生き残ったんだろう、って。結局、私の様な思いをする人を無くす為に居るのだと、そう思うしかなかいです」
 ニュクスは俯いてそう答えたが、気持ちを切り替えるように頭を振ると、勤めて明るく話題を変えた。
「私が傷つくのは怖くないんです。ただ、守るべき人達を守れない事が怖いから、もっと強くならないと。そう思います。だから、退院したら精一杯特訓したいと思います」
「そうか‥‥君は強いな。だけど、君がもし死んだら、俺やウルさん、そしてドラグナイツの仲間が悲しむ。無茶だけはしないでくれよ」
「‥‥はい、はい! わかりました」
 ニュクスは何かを見つけたような、そんな気がした。

 そして翌日病院を退院し、特訓が始まった。祥龍の部下がドラグナイツの面々を厳しく指導する。
「今のままじゃだめなんです。僕には力も覚悟も足りていなかった」
 チェスターがそう叫びながら厳しい特訓を乗り越えていく。
 ニュクスは力任せの攻撃では通用しないと考え、趣味で始めた合気道の技を磨く特訓を合間に行う。
 カレンは新たな技の習得に力を入れ、白夜は訓練の合間に槍斧の型の訓練をしたり、ふと居なくなって、帰ってきたら硝煙の臭いをさせていることがあった。
 そしてある日、白夜はロンドンに国際電話をかけ、師に門外不出の槍斧を送ってくれるよう頼んだ。その銘をドライグと言う。
 その訓練の光景を、完治していない傷を隠して退院した祥龍が、別の場所からルノアが見守っている。ルノアは強化プランと特訓のデータを元にAUKVに手を加え、謎の訓練メニューをドラグナイツたちに追加した。
「‥‥バグラムめが、天才様の本気を舐めるなよ」
 改造を施しながらルノアはそう呟く。

 一方、バグラム。
 シルバー・クロウは困惑していた。
(「何故私は仕留め損ねた。それに何故ニュクス、いやあの小娘の名前を知っていた? 落ち着け、私は‥エオス・アイオーン‥‥違う! 私はシルバー・クロウ」)
 目眩がした。
「ルーイ後のことは任せました。あれ以来調子が優れない様なので‥‥」
 そう言って退室するが頭痛に襲われ扉にもたれかかる。その途端ドロマイトからの通信が入ってきてドラグナイツが特訓を始めたことを報告する。そしてそれを一笑に付すルーイ。それらの会話をシルバー・クロウは扉越しに聞いていた。
「そもそも、あの女が奴らをキチンと仕留めておけば今回の作戦目的は達成したのだ。それだというのに肝心な所であのざまだ。しかも、洗脳が解け掛けかかっているようでな‥‥」
「所詮、洗脳人間は操り人形に過ぎない‥ってことか」
 愚痴るルーイにドロマイトが同意する。
(「やはりそう言うことですか。ならば今までの事に合点がいく。だが、だからといって裏切る事は出来ない。操り人形なのだから‥‥だがこのままでは済まさせはしない。ニュクス‥‥生きていて良かった。なんとしてでもニュクスと地球を守らねば‥‥」)
 シルバー・クロウ、いや、エオスは歯噛みしそう決意する。そして音を立てないように気をつけながら立ち上がると、自分の部屋へと向かった。
 歩き去るエオスと強化されたAUKVのシルエットがクロスする。そしてエンディングへ‥‥