●リプレイ本文
●OP〜お約束
人気歌手の熱血ソングが流れる。かつてアメリカで××レンジャーシリーズの歌を手がけてきた実力派の男性歌手である。
前回のあらすじが流れ、バグラム兵とドラグナイツの戦闘シーン。そして漆黒の鎧のキャプテン・エミター(
gb5340)演じるニュクス・アイオーンがポーズをとりながらカメラ目線で叫ぶ。
「テレビは部屋を明るくして画面から離れてみる事、それが私たちドラグナイツと君たちとの約束だ」
●Aパート
ドニー・レイド(
gb4089)演じる藍・祥龍(ラン・シャンロン)中尉がUPCの施設内部をドラグナイツとなった面々とともに歩いていく。AUKVを整備している様子を見せたり各種施設を簡単に説明し、ルノア・アラバスター(
gb5133)演じる天才少女の博士が待つ研究室へとやってくる。
ルノア博士は諜報部の集めたドラグナイツメンバーの資料に目を通していたが、祥龍中尉がやってくると「やっときたか」と言って出迎える。
「なるほど、こんな施設があったんですね‥‥」
チェスター・ハインツ(
gb1950)が感心した様子でルノアに言う。
「そうだ。ここが人類の希望の砦だ」
「それで、僕たちを集めたのはなぜですか?」
月影・白夜(
gb1971)が不安げに尋ねる。
「まあ、大方想像はつくけどね」
サラ・ディデュモイ(gz0210)演じる藍・カレンが確信めいた口調で「私たちが学生なのが問題なんでしょう?」と兄である祥龍に尋ねる。
「そうだ。UPCが密かに開発してきた対バグラム用の新兵器‥‥それを民間人であり、何よりも子供である君たちに扱わせたことが問題となっていてね」
「まあ、それは解決したのだがな」
祥龍の言葉をルノアが引き継ぐ。
「AUKVは適性率が低くてな、登録予定だった軍人たちにも実は適性がないことが判明した。それからAUKVは登録後は変更が効かず各個人の専用機になる。したがって現状ではどうにも出来ん。そういう意味での解決だがな」
「そんないい加減な! 確かにあの時は仕方がありませんでしたが、これからも戦えと言うんですか!?」
反発するチェスターに、白夜が強い意思の篭った目で言う。
「僕は‥人が傷つくのを見たくなかった‥‥其れだけです」
「それは僕だって‥‥」
そこまで言ったチェスターをルノアが止めた。
「そうだな。これからも戦えというのは横暴だな。だから無理にとは言わん。これからも続けてくれる者はそこにある通信機を取ってくれ」
「そこまで言われたら引き下がれないですね」
ニュクスはそう言うと時計に擬装された小型通信機を受け取った。
「そうね、同感」
カレンが通信機を受け取った。
「ああ、もう。僕だけ何もしないというわけにもいかないでしょう」
チェスターが通信機を受け取った。
「僕も、受け取ります」
白夜が決意をこめて受け取った。
「すまないな、皆。それから、今後時間を見つけて戦闘訓練を行うから、通信機は常に身につけておいてくれ」
祥龍がそういって頭を下げる。
「仕方がないわよ。適性者が私たちしかいないんだもの。もっとこれを使いこなせるようにならないとね」
カレンがそういって整備中のAUKVを見る。
「博士、お願いがあります」
同じくAUKVを見ていた白夜がルノアに視線を向ける。
「あのAUKVを銀色に塗装してくれませんか?」
「わかった。ふむ月影白夜、か。‥‥似た境遇の者というのは居るものだな」
「何か?」
ルノアの呟きに白夜は何事かと尋ねるが、返ってきた返事は
「いや、なんでもない‥‥」
それだけだった。しかし白夜は「似た境遇」という言葉を聞き逃さなかった。
(「同じくらいの年かな‥‥あの年で軍の科学者なんだから、色々と辛い思いもしたのかもしれない」)
白夜はそう考える。
「さて、私は作業に入る。皆はもう行って良いぞ」
白衣を翻し白夜のAUKVに向かうルノア。それを受けて祥龍が学生たちを誘導し、研究所から出て行く。
その後祥龍とドラグナイツのメンバーは、ウレキサイト(
gb4866)演じるウルが経営する喫茶店にて親睦会を開いていた。相変わらずニュクスはウェイトレスとして給仕をしながらだったが。
「はい、コーヒーです‥‥あっ‥‥」
ウルが祥龍にコーヒーを出したときに手がふれあい、頬を染める。
ニュクスはそんな二人をもやもやとした気持ちで見ている。
「兄さんのニブチン‥‥」
そんな様子を見て、カレンはどうしたものかと悩んだ。
「学校は楽しい?」
いつの間に側に来ていたのか、ウルがチェスターに聞く。
「まあ、概ね楽しいですよ」
「そういえば皆は同じ学校なのかしら? 制服は一緒よねえ‥‥」
「同じですよ。そこの白夜君は飛び級で入ってきたみたいだけど‥‥そのせいかしらね? 馴染んでないの」
カレンの言葉に、一人静かにコーヒーを飲んでいる白夜が「そんな感じです」と答える。
そしてウルが白夜の隣に移動し椅子に腰掛ける。
「そうなの。悩み事があるのでしたら、お姉さんに話してみて?」
優しく尋ねられた白夜は照れたのか頬が高潮し、感情が昂ぶり無意識に覚醒する。銀色の狼の耳と尻尾が生えるが本人は気がつかない。
「あら? かわいいお耳ね。これがそのー、エミ何とかのせいかしら?」
「確かエミタとか言っていたかな。おっと、そろそろ学校に行ったほうがいい時間かな? 今からなら午後の授業には間に合いそうだし」
チェスターが時計を見ながらそう言う。
「みんなも早く学校行った方がいいんじゃないですか? なんたって学生の本分は学業ですからね」
チェスターは代金を置いて本を取り出し、読みながら店を出て行く。
「はい、コーヒーおかわりです」
ニュクスが祥龍にコーヒーを差し出すと、祥龍は「がんばってるね」とニュクスの頭を撫でる。なぜか顔が赤くなるニュクス。
「あ‥その‥‥ウルさんが見てますから‥‥怖い顔で‥‥」
ニュクスが指差したその先に祥龍が視線を移すと、ウルと祥龍の視線が合う。そのとたんにウルは視線を外し、慌てたように食器洗いを始めた。
「怖い顔、ねえ‥‥」
(「ああもう、この二人は‥‥」)
祥龍の呟きにニュクスは頭を抱える。
「ドロマイト‥‥こちらドロマイト‥‥」
暗い部屋に光るモニターが1つ。
その部屋にいる人物の姿は見て取れない。声のみである。
そしてそこには烏丸 八咫(
gb2661)演じるバグラムの幹部シルバー・クロウとルーイ(
gb4716)演じる怪人がいる。
「よう、今日はルーイもいるのか。奴らの事だがな、軍でのコードネームはドラグナイツ。メンバーは全員同じ学校の生徒らしいぜ」
声だけのドロマイトが、幹部であるシルバー・クロウを恐れる様子もなく仕入れた情報を乱暴な口調で報告する。
「やはり同じ学校か。そういえば近く学校があったはずだが、そこで合っているか?」
ルーイの質問にドロマイトは合っていると答えた。
「さてルーイ、敵の居場所が分かりました。根拠地を襲撃しこれ以上の脅威にならないうちに消し去ってしまいましょう。それから、今回は私も行かせてもらうとしましょう。あなただけではどうやら無理のようですから」
氷のような冷たい視線でルーイを睨み付けるが、ルーイはなぜか嬉々とした表情でうなずいた。
「いいでしょう。期待させてもらいますよ、シルバー・クロウ様」
シルバー・クロウはその言葉に不快感を表すが極力気にせずにドロマイトに尋ねた。
「‥‥それで、ドラグナイツの顔はわかっているのですか?」
「ん? 顔が判らん? ハッ、学校丸ごと潰しちまえば済むことじゃねぇか。幹部様ともあろうお方が自信のない発言だねぇ?」
「それを調べるのがあなたの仕事でしょう、ドロマイト」
「ふん。細かいことは気にしないこった。ま、せいぜい頑張りなよ? か・ん・ぶ・さ・まっ! ハハハッ!!」
そう言ってドロマイトは一方的に通信を切る。
「まったく。あの者は‥‥」
「まあ、われらの駒はドロマイトだけではありません。学校の中にも我等の工作員がいますので、そやつに正体を探っておくように指示しましょう」
「わかりました。では、委細は任せますよ、ルーイ」
「ははっ!」
シルバー・クロウが去っていくと、ルーイは「ふん。口先だけなら何とでもいえるんですよ、シルバー・クロウ様。ルノア・アラバスター、また姿を見せるかな?」そう言って笑いながら姿を消した。
シルバー・クロウと怪人に変化したルーイの上に番組ロゴのアイキャッチが入り、ドロームの様々な商品のCMと、UPCの兵士募集のCMが流れる。そして再びアイキャッチが入りBパートへ。
●Bパート
真面目に授業を受けているチェスターの様子、窓際で校庭を眺めているカレンの様子、物思いに耽っているニュクスの様子が流され、最後に転校初日ということで午後に臨時に設けられたホーム・ルームで挨拶をする白夜の様子が流れる。
教師が白夜をイギリスにて飛び級で博士課程を修了していることを告げるとざわめきが起きる。感心するもの、反発するもの、興味を引かれたものなど様々だが、白夜はそのざわめきから周囲の環境がこちらでもイギリスと一緒なのかな‥‥と考えていた。
そして白夜が着席した刹那、爆発音が響いた。
「真逆バグラム!?」
チェスターが敵の襲撃を察知する。
「まずいな‥‥AUKVは持ってきていないのに‥‥」
それから通信機を見て仲間が校内にいることを思い出す。
「とりあえず、他の仲間と合流しといた方が良さそうか‥‥」
チェスターはそう言って護身用の短剣を取るとこっそりと教室を抜け出した。そしてUPCに敵襲を告げる。
「それにしてもカレン達の学校が? ‥‥真逆、敵に彼らの素性が割れている?」
祥龍はもっともいやな可能性を想像した。
「――バグラムめ‥‥悪辣なことを‥‥!」
そう呟くのもつかの間。祥龍はルノアに通信を入れ事情を説明する。
「幸い整備は終わっている。すぐにでも行けるぞ」
「助かります!」
そしてAUKVを積んだ装甲輸送車と、兵士を乗せた兵員輸送車が基地から出発する。
「クックック‥‥顔が判らないなら学校ごとつぶしてしまえか。ドロマイトも案外面白いことを言うものだなぁ」
ルーイは、笑いながら戦闘員に命令を下す。
「全校の生徒と職員を校庭へと集めろ」と。
指示は迅速に実行された。しかし、事前に抜け出していたチェスターは隠れてバグラムの手を逃れ、またニュクスも偶然バグラムの魔手から免れ、それぞれに連絡を取り合いながら校舎内を移動していた。
一方カレンと白夜は教室に侵入して来たバグラムにクラスメイトと共に校庭に連れて行かれる。そして――
「まずは、我等に抵抗するとどうなるか教えてやろう」
ルーイはそう言って一人の男性教諭を連れてくる。
「こいつは我等の工作員でな、この学校にいるドラグナイツとかいう連中の正体を探らせていたんだが、まったく成果が上がらない。仕方がないので見せしめにすることにした!」
ルーイはそう叫んで戦闘員に指示を出した。
銃声。
驚く生徒や職員たちの様子が写され、倒れる音。
「ドラグナイツに告げる。お前たちが名乗り出ない場合は、5分おきに死体が生産されることになる。こいつのようになぁ!」
倒れた工作員の腹を蹴る。
顔を背けるカレン。
「おっと、いいことを思いついた。殺すのはやめだ。人間素体キメラの実験用につれて帰ることにしよう」
そのときドラグナイツたちの通信機にメッセージが表示される。『閃光弾と同時にAUKV突入』と。
同時に通信機に注目したカレンと白夜にルーイは目を向け、話しかけようとする――
「それにしても、僕たちがここの学生だとどこから知ったんだ?」
チェスターは懐の短剣を見て覚悟を決める。
「とにかく、できる限りのことをするしかありませんね」
そう言って校庭に飛び出そうとする――
「くっ! 見つかった!」
ニュクスは自分と同様に逃げた生徒と行動を共にしていたが、隠れていた教室にバグラムが入ってきた。
そして連行されようとする生徒を庇って怪我をするニュクス――
UPCは学校の周辺に部隊を展開させ、タイミングを見計らっていた。
『各分隊、配置は良いか』
祥龍の問いに分隊長が問題なしと答える。
『よし、各隊は手筈通りに人質を確保しろ。今度は俺達が彼らを助ける番だ。軍人として、人間として、意地を見せろ』
『了解!』
『博士、準備完了しました。閃光弾投擲と同時に突入してください!』
『わかった。こちらも準備は出来ている。いつでもいいぞ』
祥龍は覚悟を決めると命令を下した。
『‥‥今だ! 総員閃光・音響防御、投擲しろ!』
そして――
学校の各所で閃光と大音響。
フェンスを突き破り校庭に突入する装甲輸送車。
「GO! GO! GO!」
分隊長の号令と共にアサルトライフルを手にしながらUPC兵士が突入する。
銃声。
倒れるバグラムの戦闘員。
『待たせたなドラグナイツ、君達の鎧は其処にある!』
祥龍の声が響く。
「お前たち今の内だ、とっとと走れ!!」
装甲輸送車の扉が開きルノアの声がする。
飛び出す白夜とカレン。
混乱の中を駆け抜けるチェスター。
そしてUPCに救出されるニュクスと生徒。
大丈夫かとたずねるUPCに、「この子達と違って、私に何かあっても‥悲しむ人はもう居ないから」といって意味ありげに微笑むニュクス。そしてAUKVへと走る。
「くっ! 装備と戦術が前回とは違う。やるな祥龍。だが‥‥反撃だ、反撃しろ!」
各所で人質を確保しつつ奮戦するUPC。そこにドラグナイツが加勢する。
状況は一気に逆転したかに思えた。
しかし突如、どこからともなく矢が飛んできてドラグナイツの前をかすめる。
ふとチェスターが校舎を見上げると屋上にはハーピーなどの飛行型キメラと共に、妖艶な、黒いオーラを纏った女いた。
「ここから、形勢逆転です。これ以上好き勝手させる訳にはいかないのですよ」
鋭い銀眼が見下す。
「見たことがない怪人‥‥新手?」
呟くと、チェスターは武器を構えなおし屋上の女めがけてガトリングを発射する。
だが攻撃は直撃したはずなのに女はダメージを受けた様子がなかった。
「残念ですが、私には効きませんよ‥‥全ての攻撃は別の空間に行ってしまうのですから」
女が、シルバー・クロウが余裕の笑みで言い放つ。
「かかれ!」
空からの攻撃が、UPCを、ドラグナイツを襲う。そしてシルバー・クロウの鞭のような奇形剣がニュクスに迫るそして――
続く。とテロップが流れて番組はEDへ。
●撮影終了。
「カーット!」
セルゲイ・グリューンが撮影の終了を告げる。
「お疲れ様です〜」
ウレキサイトがスタッフやキャストに飲み物を配る。
「よし。おかげでいいものが撮れた。これでUPCも満足するだろう。ご苦労さん」
セルゲイが監督として皆を労う。そして撤収後、打ち上げが行われたのであった。