●リプレイ本文
●休憩中
「戦闘訓練って受けてなかったから、丁度いい機会だな」
深墨(
gb4129) がそう言ってから、「とりあえず、皆で自己紹介をしておきましょうか。班分けとかの参考にもなるし」と提案し、そして自分の名を名乗る。
「俺は皐月 八日(
ga5334)です。よろしくおねがいします」
「まったく、10キロも歩いてから模擬戦か‥。年寄りにはちとしんどいぜ‥水無月 湧輝(
gb4056)だ。よろしく頼む」
「ボクは‥芹架・セロリ(
ga8801)‥‥よろしくお願いします〜」
「私はクロスエリア(
gb0356)です! よろしく!」
「仮染 勇輝(
gb1239)です。皆さん宜しくお願いします」
「僕は祠堂 晃弥(
gb3631)だ。よろしく」
「プリンセッサ・ルース(
gb5114)よ。よろしく。それにしても、訓練場が遠いのは百歩譲って許してあげるわ‥‥でもね、毎回何なのこの背嚢は! 私の荷物はもっと軽いはずよ」
口々に挨拶(?)をし、雑談とチーム分けを終えたところでフィッシャー先任軍曹が戻ってきた。
「それでは、早速1対1の訓練から始めましょう。1番手、前へ!」
そして訓練が始まった。
●1番手
第1戦は八日と湧輝だった。
「では、始め!」
合図と共に戦闘が開始される。
まず湧輝が弓に矢をつがえ、遮蔽物を利用しながら放物線を描くようにして矢を放つ。
「本来、こういう撃ち合いは弓が不利。だが、こういう攻撃方法もあるんだぜ」
だがそれは、戦争で矢襖を降らせる場合に有効な射方であって、個人を相手にするには有効ではない。事実目測を見誤りその矢は外れてしまう。
対して八日は銃の射程まで近付くと、危険を覚悟で身を乗り出して射撃をする。しかし湧輝も素早く遮蔽物に隠れて身を躱す。
八日はさらに接近して、丁度矢をつがえた瞬間の無防備な湧輝の下腹部を狙う。しかしペイント弾は肩に命中する。
湧輝は身を乗り出した八日に矢を放ち、今度は違わず命中させる。そして弓を捨てると刀を装備し皐月に接近する。
「スナイパーが接近戦をしちゃいけないと言う法は無いよな!」
「たしかにそうですね。でも、無防備ですよ!」
八日は身を乗り出したまま接近する湧輝に向かって銃を撃つ。一発目は足に命中。二発目は躱され、三発目は胸に命中する。
「そこまで! 勝者、皐月!」
胸に命中した点を考慮したのだろう。先任軍曹が勝負を止める。
「まだまだ、精進が足りない‥か」
湧輝が残念そうに言う。
「スナイパーが接近戦をしては駄目という訳ではありませんが、相手によりけりですね。それから皐月さんは危険を覚悟で飛び出していったようですが、これが実戦でしたら初手で死亡していた可能性があります。その点を注意すべきでしょう」
先任軍曹が簡単にコメントをすると、二人は頷いて観戦していた仲間のところに戻っていった。
●2番手
「お手柔らかにね♪」
エリアがそう言うと、瞳の色が黒から青に変わる。そこでセロリが慌ててエリアを止めた。
「‥今回は覚醒、スキルの使用は無しですよ‥」
「あ‥‥」
どうやらすっかりすっかり失念していたようである。
彼女は最初にGooDLuckを使おうとしていたのだが、スキルは覚醒していなければ使用できない。従って自然に覚醒してしまったのである。また、覚醒を解くと持続時間が1時間のGooDLuckでも効果は途中で切れてしまうので注意が必要だとセロリは説明した。
「それでは、始め!」
改めて開始の合図が出ると、セロリがまず拳銃を撃った。エリアは慌てて隠れる。
次いでエリアが攻撃をしようと遮蔽物から体を出した所を、セロリが容赦なく狙い撃つ。連続で4発。エリアはそれを躱すことが出来ずに全弾を頭や胸などの急所に受けてしまう。
「そこまで! 勝者芹沢。とは言え、これでは一方的ですね。ここは少し、お二人の残り時間をお借りして簡単な戦闘のレクチャーをしましょうか」
「是非お願いします!」
先任軍曹の言葉に、エリアが大きく反応する。そして自分に戦闘を教えてくれた兄貴分が先任軍曹に負けたと聞いていたセロリも、それを説明した上でアドバイスを請う。
「では、今回は銃撃戦です。クロスエリアさん、その銃に実弾を込めて訓練用遮蔽物を破壊してみてください。覚醒して構いません」
エリアは言われた通りに覚醒し、実弾を込めた小銃を引金を引く。
飛び出した弾丸は厚さ数十センチの鉄板で出来た遮蔽物をあっさりと破壊してしまう。
「このように、能力者の攻撃はこの程度の物など簡単に破壊してしまいます。皆さんが最終的に戦うバグア幹部も同様です。したがって、相手の視線や銃口を見て『撃たれる前に避ける』これが重要になってきます。まあ、これができるのは達人やあなた方能力者等に限られてきますがね」
それから二人は先任軍曹の銃撃を『撃たれる前に避ける』を実践して躱す訓練を受け、持ち時間が過ぎて終了となった。
●3番手
「よろしくお願いします」
勇輝が挨拶をすると晃弥もあいさつを返す。
先の2戦とは逆に刀同士の戦いである為、遮蔽物のないフィールドである。
勇輝は抜刀術の基本姿勢のまま晃弥の動きから視線を逸らさない。対する晃弥も剣術者、軽くその誘いに乗ろうとはしない。
仕方がないので勇輝はすり足で間合を詰める。晃弥も同じく間合を詰めていく。
「いくぞ‥」
間合に入ったため勇輝が仕掛けようとするが、一瞬早く晃弥が攻撃を仕掛けた。
「無為」
しかし勇輝は紙一重でその剣を躱すが、返す刀が脇腹に命中する。
三閃目――
これは苦痛に顔を歪めながらも体を捌いた勇輝に躱される。
今度は勇輝の番だ。抜刀しあばらを狙う。
「乱剣!」
しかし晃弥は上体を反らしてそれを躱す。
二撃目も躱される。しかしそれはフェイント。
「天明流奥儀・瞬閃」
渾身の一撃が命中する。しかし晃弥は臆することなく剣を振るってきた。
「生憎と、無痛症でしてね」
技が決まって無防備な状態の勇輝を、晃弥の剣が襲う。
躱しきれない。
痛みが勇輝を襲う。
「これは油断した。久しぶりに正道の剣術に戻るか」
かつて剣術などを学んでいた勇輝だが今は我流。だが晃弥は手強い。肉体に染みこんだ記憶を頼りに正統派の剣術の動きをトレースする。
「その体捌き、見事だね。学ばせて貰う」
晃弥は慎重に間合を外しながら勇輝の体捌きを見る。そこから打ち合い、鍔迫り合い、躱し合い‥‥様々な技術を駆使しての接戦が行なわれたが時間が来た。
「引き分け!」
二人の息が落着いてから先任軍曹は寸評をする。
「後半の仮染さんの正統な動きは素晴しかったですね。祠堂さんの動きも、我流ですが理にかなった動きでした。お二人とも、お互いの良いところを学ばれると良ろしいでしょう。以上です」
●最終戦
「よろしくお願いします‥負けませんよ?」
深墨がそう言うと、「誰と戦っても最後に勝つのはこの私だから」とルースが強気の反応を見せる。
(「訓練だからって負けは許されないわよ」)ルースはそう意気込むと、二丁の銃を構えた。
「それでは始め!」
合図と共に戦闘が始まる。
先行は深墨。矢をつがえ、放つ。
ルースは戦闘開始と同時に遮蔽物も利用し、ジグザグに移動しながら回避行動を試みていたが、深墨の読みの方が強かったようだ。
その矢はルースの腕に命中し、運命の女神の名を冠した銃を彼女の手から落とす。
「しまった!」
ルースは拾うかどうか迷うが、無防備になることを怖れてそのまま遮蔽物に隠れ、その隙に深墨も遮蔽物に隠れた。
対する深墨も、狙われないように動き回りながら狙いをつけるという、ルースと同じ行動をしていたため、この戦いも千日手となるかと思われた。
二人はフィールドを遮蔽物を利用しながら移動しては狙い、狙っては移動を繰り返すがなかなか攻撃するチャンスが訪れない。
だが、接近を狙うルースに対して距離をとろうと後退していたルースがフィールドの外に出てしまう。そのため遮るものが一切ない状況になった。しかしルースも身を乗り出したため、お互いにとってまたとない好機となった。
先手をとれたのはルースだった。小銃の引金を引く。しかし排莢不良をおこしてしまう。
「ジャムった!? ちょっと待って! タ、タイム!」
ルースは先任軍曹に視線を向けるが、彼は「実戦では敵は待ってくれません。続行してください」と言った。
いきなりこんな事態に出くわすとは思っていなかったのか、軽いパニックを起こし、慌てて排莢するルース。だが遮蔽物に隠れることすら忘れていた。その隙に深墨はつがえていた矢を放った。
それはルースの胸に命中する。
「そこまで! 勝者深墨!」
先任軍曹が勝負を止めると、「実力がほぼ同じでしたので、今回は運の要素が強かったですね。めげずに頑張ってください。お二人とも戦術的には間違っていませんでしたので、あとは技を磨くだけです」と寸評した。
●集団戦
「ではまずグループに分かれてください」
そう言われて能力者達は二つに分かれる。今回は集団戦用の、適度に遮蔽物のあるフィールドだ。
A班は皐月 八日、芹架・セロリ、水無月 湧輝、クロスエリアの4名。
B班は仮染 勇輝、祠堂 晃弥、深墨、プリンセッサ・ルースの4名。
1体1の戦闘で戦ったものとチームを組むという少々変わった組み方である。
「芹架ちゃん、がんばろうね♪」
エリアがそう言うとセロリは軽く頷く。
「皆さん、よろしくお願いします」
勇輝が全員を相手に礼をする。
「‥‥絶対、勝ちましょうね」
深墨がそう言うとルースが「当然よ。さっきのは運が悪かっただけって先任軍曹も言っていたじゃない」と答える。それから
「深墨は無茶はしないでよ? それと頼りしてるわよ、前衛コンビ」
と言った。
「では、始め!」
開始の合図と共にルースと湧輝が同時に動く。
二人とも己の武器で敵前衛に牽制をかける。
A班前衛のセロリとエリア、B班前衛の勇輝と晃弥がそれぞれ遮蔽物に隠れる。
射撃が止んだ隙を見て、セロリが前に出て勇輝に接近し、小太刀で斬りつける。
躱せない。
顔に傷を受ける。
対する勇輝も負けてはいない。晃弥とコンビネーションをとれる位置に移りつつ剣を振るう。
セロリはその攻撃を余裕で躱す。
「瞬閃!」
だが、返す刀がセロリの肩に当る。
「あいたたた‥‥」
思わず涙目になるセロリだが、B班の前衛二人を後衛の射程と重なるように誘導して援護射撃を妨害することには成功した。
その次はエリアがセロリをサポートする位置に立ち、勇輝を狙う。
「そこっ!」
ペイント弾は勇輝の腕に命中する。
「‥‥あ、パンツ見えてるぞ」
勇輝が不意に放ったその言葉はセロリとエリアを一瞬驚かせるが、なんでもないことが確認されると、二人の怒りが勇輝へと向かった。
その隙に勇輝は後衛の八日を目指し駆けていく。
『まてーっ!』
セロリとエリアの声がハモる。
そしてさらにその隙に、深墨がセロリを狙い矢を放つが、かすった程度であった。
「スナイパーから狙いに来るなんて予想外ですよ!」
八日が叫んで、弾幕を張って牽制する。だが勇輝は遮蔽物を利用しながら、そして『撃たれる前に避ける』を実戦しながら八日に近付いていく。
しかし完全に躱せるはずもなく、何発かペイント弾が命中する。だが勇輝に死亡判定は出ない。先任軍曹の答えは続行だった。
最後に晃弥が勇輝を追いかけるセロリとエリアに対して追撃をかける。
晃弥の振るった剣がセロリの背中に命中する。
傷は負わないがかなり痛かったようである。
「‥‥閃光手榴弾くらい支給してくれればなぁ。まだやりようがあるというのに」
そうぼやきながら湧輝は勇輝に向かって、つがえた矢を放つ。それは胸に命中し、先任軍曹が死亡判定を出す。
「ここまでか‥‥」
勇輝は悔しがりながら退場する。
これでA班が若干有利になったところだが、深墨とルースが同時にセロリを狙って射撃する。
本来はセロリではなくエリアを狙いたかったのだが、エリアがセロリの影に隠れているため狙えなかったのだ。
その同時射撃は見事にセロリの急所に命中する。そしてセロリに死亡判定が出る。
「もへー、キメラになった気分だぜ♪」
セロリがその場に崩れ落ちながら言う。
それで八日に余裕が出来た。八日は前衛の晃弥を狙い撃つ。それは八日の狙い通り晃弥の胸に命中する。
晃弥に死亡判定が出る。これでB班は後衛のみとなってしまった。
エリアはB班後衛に一気に接近すると、小銃で深墨を撃った。それは見事に急所に命中し死亡判定が出る。
「そこまで! 勝者A班」
ルース一人では残りを倒せないと判断したのだろう。先任軍曹はそこでストップをかける。
「ん〜、これなら次の任務は大丈夫かな? いい勉強にもなったしね♪」
エリアが伸びをしながらそう言うと、「俺も色々と勉強になりました」と八日が言う。
「‥作戦通りには行かなかったね〜」
セロリがそう呟くと、「まあ、この程度で終るかよ。もっと強くなってみせる」と湧輝が独り言のように言った。
「仮染、あとでお前が学んだ剣術を教えてくれ。やはり俺に必用なのは正統派の剣術の型のようだ」
晃弥がそう言うと勇輝は、「俺もきみの動きには見るべきものがあったと思っている。師の天明流の道場がまだあったら、そこでもう一度剣の技を磨き直すのも良いかも知れない」と答えた。
(「‥‥2戦して2戦とも敗北するなんて、私はこの程度だったというの? いえ、違う。違うわ。まだもっと伸びるはずよ!」)
ルースは心の中で決意を新たにすると、新たなる機会を狙う様になった。
「さて、今回は能力を使わないでの戦闘訓練だったのでこのような結果になりましたが、次回は能力を使った真剣勝負になりますので、また今回とは違った結果になるでしょう。是非、次回の参加もお待ちしておりますよ」
先任軍曹がそう言って締めると、今日の訓練はお開きになった。