タイトル:ザ・ビーストマスター:碧風凛音

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/11/05 03:22

●オープニング本文


●イントロ
 深夜。村人たちが寝静まった頃、其れはやって来る。其れは静かに静かに村に接近すると、狙いを定めて一気に獲物に飛び掛る。
 甲高い悲鳴が上がる。羊の叫び声だ。断末魔の叫びだ。だが、其れもほんの数秒のこと。羊はすぐに絶命し、『狩猟者』によって村の外へと連れて行かれる。そして朝、村人が羊小屋に入り羊の数を数える。二匹足りなくなっていた。この羊がいなくなったら次は自分たちの番か‥‥村人はそう考えてぶるぶるっと震え上がった。そして、村長の所に報告に行ったのだった。

●本文

 北米大陸。
 前線から少しだけ離れた戦略的価値のない場所にネイティブ・アメリカンの村がある。彼らは先祖代々伝えられた聖地だから離れられないと言い、安全圏への避難を拒んできた。幸いにも今までバグアの脅威に晒されてこなかったが、今は状況が変わっていた。2週間ほど前から夜な夜なキメラが現れては、羊を2匹ずつ連れ去っていくのだという。まだ村人には被害は出ていないが、それも時間の問題だろう。

「それでですね、今回の依頼はそのキメラをどうにかして欲しいというものです。私たちも避難勧告を出してはいるんですが、彼らはなかなか動いてくれません。まあ、伝統的な生活とか聖地とか言う以前に、ライフラインやコミュニティをゼロから作り直さなければならないというデメリットを彼らは非常に恐れているようです」

 そう言うとオペレーターは大きく溜息を吐いた。

「現場のUPCの調査結果を聞く限りでは、中型の肉食獣型キメラが複数匹で、常時2匹以上で行動しているというのが一番妥当な線だそうです。ただ、組織立った動きは見られないのでおそらく野良キメラだとのことです」

 また、キメラは殺した羊をその場で食べずに、どこかに運んでいるらしい。そのため、羊小屋に惨劇の跡はあるが羊の死体はない。

「作戦はお任せしますが、村人に被害が出ないように気を配ってください。それから、安全圏に移るように説得をお願いします。彼らの文化は貴重なものですので、失うわけにはまいりません。避難に関しては現地のUPCやラスト・ホープが最大限の援助をします」

 オペレーターは能力者たちを一通り見回すと言葉を続けた。

「以上です。現場までは高速移動艇で送りますので、しばらくは空の旅をお楽しみください。それから‥‥『ラスト・ホープ』の名に託された想いを忘れないでください」

●参加者一覧

リディス(ga0022
28歳・♀・PN
ロジー・ビィ(ga1031
24歳・♀・AA
比留間・イド(ga4664
22歳・♀・BM
瓜生 巴(ga5119
20歳・♀・DG
カルマ・シュタット(ga6302
24歳・♂・AA
アズメリア・カンス(ga8233
24歳・♀・AA
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG
ハイン・ヴィーグリーズ(gb3522
23歳・♂・SN

●リプレイ本文

●高原の村
「おお、よく来てくださいました」
 早朝、能力者たちが村につくと、村長をはじめとした村の主だった面々が歓迎ムードで迎え入れてくれた。キメラの恐怖におびえる彼らを救いに来てくれたのだから当然のことだろう。村長は我が家で一休みされてはどうかと申し出たが、リディス(ga0022)がやんわりと断った。
「それよりも、キメラが襲ってくる夜になる前に、偵察と、できるようなら討伐も行ってしまいたいと考えています」
 そして討伐が無理なようなら夜を待って迎撃戦に移る。それが能力者一行の立てた大まかな作戦だった。
「あたしとハインとカルマが念のために村の護衛に残るよ。それと村長さん、UPCから来ている避難勧告の件で長老さんたちともお話をしたいので、少し時間をください」
 比留間・イド(ga4664)の言葉に村長は渋い顔をするが、「申し訳ありませんけれど、皆様の安全が第一ですわ」とロジー・ビィ(ga1031)がフォローを入れると、村長は渋々うなずいた。
「それじゃあ、早速行動に移りますか。それとイドさん、これ、UPCの疎開先の資料に私なりの補足入れておきましたんで。あと、他にも必要になりそうなものをいくつか」
 そう言って瓜生 巴(ga5119)が差し出したのは資料のほかに疎開先の住民代表の連絡先など村人の説得の材料になりそうなものだった。
「おっ、サンキュー。まあ、村のことはあたしたちに任せときな」
「そういえば、拓人はどこに行ったのかしら?」
 ロジーが蒼河 拓人(gb2873)の不在に気付いて周囲を見回すと、子供たちと遊んでいる拓人の姿が目に入った。
「拓人、出発だよ!」
 アズメリア・カンス(ga8233)が拓人に向かって叫ぶ。
「今行きまーす!」拓人は叫び返してから、「大丈夫、羊さん達の仇は絶対に取ってあげる。だからもうちょっとだけ頑張ってね」と子供たちに言うと駆け足で戻ってきた。
「お兄ちゃん、絶対だよー!」
 子供たちが拓人に叫ぶ。拓人は巧く子供たちに溶け込んでいたようだった。
「おまたせ。行こう!」
 偵察及び討伐組みの五人が出発すると、イドの隣に立っていた カルマ・シュタット(ga6302)が、「村人をどこか一箇所に集めておいた方が良いと思うんですけどね。昼間に襲撃が絶対ないとは限りませんし、説得のためにもその方が都合良いでしょうし」
 と提案する。それにハイン・ヴィーグリーズ(gb3522)が賛同する。
「私も同意見です。村長様、申し訳ありませんが村の人をどこか一箇所に集めてくれませんか? 皆様の前でお話をしたいので」
「わかりました‥‥ロングハウスに集めましょう」
 村長は村の若者に指示を出すと、能力者たちをロングハウス――彼らの集会場へと連れて行った。

●追跡行
 キメラの偵察と討伐に向かった一行は、まず村の回りに残っているキメラの足跡と殺された羊の運ばれた痕跡を探した。
「ふむ‥‥この足跡からすると、確かに情報のとおり二匹かそれ以上で行動しているわね。それから、大きさはそれほどでもないね。1mからせいぜい2m。種類は四足歩行の獣タイプキメラと言ったところかしら」
 そう分析したのはアズメリアである。
「ひょっとしたら戦ったことがあるタイプかもしれない。それも、それほど強くはないかも。むしろ問題は数かな‥‥」
「そうですか。じゃあ行きましょう。この足跡がどこまで続いているかわかりませんし、遠かったらまずいですから」
 巴の言葉に一向はうなずくと、追跡を始めた。追跡自体は容易であった。雨が降っていないこともあり、跡がしっかりと残っていたからだ。そして昼ごろになると追跡行は終わった。一行と並行し、高所から双眼鏡で周囲を警戒しながら歩みを進めていた拓人が、崖の上から無線通信を入れてきた。
「こちら拓人、キメラを発見したよ。距離約500。数は、えーっと、8匹だね。羊の死骸もあるから間違いないよ。キメラに動きは見られず。休んでいるのかな? どうぞ」
「こちらリディス。了解。奇襲はかけれそうかい? どうぞ」
 リディスの問いに少し間があいてから拓人は答えた。
「そっちから行くとちょうどキメラから距離約30ところにある岩が死角になっていて、そこからならいけるかな。キメラは崖のでっぱりがちょうど日傘の代わりになっているようなところで休んでいるよ。どうぞ」
「アズメリアよ。ちょっと偵察してくるわ。拓人はそこでそのまま敵の動きを見てて。どうぞ」
「了解。気をつけてね。どうぞ」
「ありがとう」
 アズメリアは無線機をしまうと死角になっている岩のところまで、慎重に移動していく。そして敵の正体を見極めると、元の場所に戻ってきた。
「敵の正体がわかったわ。アタックビーストと、ガードビーストね。名前の通り、アタックビーストは攻撃力が高くて、ガードビーストは防御力が高いの。前に戦ったことがあるわ」
「ああ、私も前にあったかも。たしか、アタックビーストを攻撃しようとすると、ガードビーストが割り込んでくるのよね。まさに盾と矛だったわ」
 アズメリアに言われてリディスも思い出したようだ。確かにあの連携は厄介だ。
「だったら簡単ね。先に集中攻撃でガードビーストを全部倒しちゃえばいいのよ。そのあと防御力の低いアタックビーストを倒しましょう」
 巴がそういうと、崖から降りてきた拓人が同意した。
「そうだね、それがいいよ」
「戻ってきたのね。お疲れ様」
 アズメリアが拓人を労う。
「そっちこそ偵察お疲れ様」
「さて、揃ったことだしそろそろ行きましょうか」
 リディスが提案する。異論はなかった。戦い方さえわかれば戦いやすい相手のはずだ。そして一行の任務は偵察からそのまま討伐へと移ったのである。
 
●聖地との別離
 一方村に残った三人は、ちょうどロングハウスで演説中だった。UPC北中央軍が物資・ライフラインその他を提供してくれる。だから生活には困らないと伝えた直後だった。
「だが、ここは先祖代々伝えられた聖地なんじゃ。その聖地を手放すなど考えられん」
 一人の老人がそういうと、周りから賛同の声が上がる。
「確かに聖地は大切です。祖先の思いも大切です。ですが今、この村はキメラに狙われています。羊がいなくなったらその次に狙われるのは皆さんです。今回のキメラは私たちが倒します。それはお約束します。でも、また同じことが起きないとも限りません。それに、もしあなたたちが死んでしまったら、誰があなたたちの祖先の思いを伝えていくんですか? 命あってこそですよ」
 ハインの言葉に動揺が起きる。彼の言う事ももっともだと、若者たちから声が上がる。しかし老人方の重い腰はなかなか動かない。それを見たハインは「後は、皆様でお考えください」と言い残すと、その場を去ろうとする。
「ハイン、どこ行くんだこんなときに」
 イドがハインを制止しようとするが、ハインは万が一の夜戦に備えて罠を設置すると告げてロングハウスを出て行った。
「じゃあこんどは俺が話をしましょう。確かに皆さんが歴史的にも差別を受けてきたということがあります。ですから新しい土地のことを心配するのは仕方がないと思いますが、でも、だからと言って過去と同じ目に遭うとは限らないと思います。世界も当時とは違ってきていますしね」
 そのカルマの言葉には、老人たちも動揺した。彼らは苦しい定めを受けて生きてきた。そして未だに他の人間を信じられない一部の長老たちが、聖地を手放すわけには行かないと繰り返す。カルマはそれを一通り聞いてから、まず彼らの言葉を肯定した上で言った。
「でも、先ほどハインが言ったように、やはり命あっての物種って感じはしますよ。聖地というのは崇める人がいるから聖地なんです。もしも皆さんがキメラに襲われて崇める人がいなくなれば聖地は聖地じゃなくなる。でも、たとえ別の場所からでも生きて聖地を崇めることができるなら、聖地は聖地のままだと思うんです」
「じゃが、だからとて伝統的な生活は捨てられぬ。いまさら都会では暮らせぬし、羊たちのこともある」
 老人のその言葉を聴いて、待ってましたとばかりにイドが言葉を紡ぎだす。
「そのことなんだけどね、UPCも皆さん全員に即時退去しろとか言うつもりはないんです。まず、皆さんの中から代表を募り、避難先の視察を行うというのはどうです? UPCから受け取った資料だと、羊の放牧も可能な土地だということだし、いったんここら辺で妥協してはどうでしょう?」
 その言葉に村長が「う〜む」とうなったと、発言を求めた。
「わかりました。それなら妥協できます。決めました。これは決めたことです。長老の皆さんもよろしいですね?」
 村長が村人たちを見渡す。渋い顔の老人もいるが、決まったものはしょうがないとでも言うような顔の老人がおおい。そして若者たちはこれに乗り気になっていた。
「やれやれ、説得成功かな?」
 カルマがため息を漏らすと、イドは豪快に笑って「名演説だったなぁ」とカルマに言った。
「それほどでもないですよ。それより、ハインさんの罠の設置を手伝いましょう。あと、地形の確認も」
「そうだな」
 夜戦に備えて、付け焼刃とは言え土地勘をつけておく必要がある。
「それじゃあ、皆さん。今日一日は、できるだけこのロングハウスにいてください。そして何かあったらすぐに私たちに連絡をしてください」
 カルマの言葉に村人たちはうなずく。そして、トラップを設置すべくイドとカルマはロングハウスを出て行った。

●ビースト×ビースト
 完全に休んでいたキメラたちは不意を突かれる形になった。
 岩陰から躍り出た能力者たちは次々に覚醒しその体を変化させる。
「さて、狩りといこうか‥‥」
 そこには肉食獣のような獰猛なキメラがいた。数は拓人の報告どおり八匹。そのうち 半分はアタックビースト、そして残り半分がガードビーストで、そのうちの一匹が傷ついていた。
「なるほど。こいつのために餌を持ち帰っていたのか。キメラごときが友情ごっことはな!」
 リディスの口調は覚醒のせいで乱暴になっていた。一気に接敵し、四色に輝く拳を目の前のガードビーストに命中させ、その背中を破壊した。だが、まだ微妙なラインで ガードビーストは生きている。だからもう一度拳を振るう。それは違うことなく急所に命中し、ガードビーストは息絶えた。
「‥‥‥‥」
 覚醒で無口無表情になったロジーが、蒼い闘気を纏ながら刀を振るう。それは舞いのように綺麗だったが、キメラにとっては無慈悲な死の女神の舞踏である。ロジーはガードビーストを二回の攻撃で倒すと、傷ついたガードビーストに向かって移動した。
「羊狩りは終わり。今度は狩られる番よ」
 覚醒のため左腕を中心に炎のような黒色の模様が全身に浮かび上がったアズメリアが、目にも止まらぬ速さでガードビーストの側面に回りこみ、渾身の一撃を打ち込んだ。それはまさに一刀両断にガードビーストの体を切り裂いて絶命させた。
 巴はそんな戦闘の様を冷静に観察しながら攻撃態勢をとっていた。どれを狙うかを考えて、アタックビーストを狙うことにした。味方からは離れているが体当たりなら埋まる距離だったからだ。
 巴が覚醒すると両手表面に光の漏出する亀裂が現れる。それから、精神を集中してエネルギーガンを構える。そして一瞬の間をおいて閃光が迸る。その閃光が命中したアタックビーストは苦痛のあまりに叫んだ。そしてもう一発、閃光が走る。それは確実にアタックビーストの息の根を止めた。それからさらに二発の閃光が飛び、もう一匹のアタックビーストを倒した。
 そして最後に拓人がカトリング砲で掃射をする。面制圧をするには残っている敵が少なかったが、それでも降り注ぐ銃弾の雨はキメラの動きをけん制するのには役立った。
 二匹のアタックビーストが跳ねた。猛烈な勢いをつけての体当たりで一匹がロジーに、もう一匹がアズメリアに向かうが、二人とも余裕を持ってこれを回避した。
「さて、そろそろ終わりだぜ」
 走りながら四色に光る拳を叩き付ける。防御力の低いアタックビーストは一撃でその活動を停止した。
「‥‥‥‥」
 ロジーは傷ついているガードビーストの前に立つと一瞬哀れみのような表情を見せたが、次の瞬間には赤いオーラを纏っていた。そして引き上げた覚醒状態の力を込めて、ガードビーストの首をはねる。
 最後の一匹はアズメリアが仕留めた。先ほどと同じように一刀両断にしたのである。
 戦闘は、圧倒的な勝利によって幕を閉じた。そして‥‥

●小さな一歩
 その日の夜、能力者一行は打ち漏らしや、あるいは別の野良キメラを警戒するために見張りをローテーションで立てたが、結局ハインが仕掛けたトラップが作動することもなく、無事に朝を迎えることができた。
「皆様、本当にありがとうございました。なんとお礼を申し上げてよいのやら」
 そして昼、迎えの高速移動艇がやってきて、村長が能力者一行に感謝の言葉と別れの言葉を述べた。
「あのさ、先祖から受け継ぎ、そして子孫に伝えるいちばんの財産は生命じゃないかなって思うんだ」
 巴がふと、そんな言葉を漏らす。
「そうですな。我々はそれを忘れていた。実に恥ずかしいことです」
「ねえ村長さん、たとえどんなところに行こうとも、貴方たちの気高き魂が失われることはないと思うんです。あの子達は、ちゃんとわかってますよ」
 拓人はこちらに手を振る子供たちに微笑みかけながら言った。
「それじゃあ、失礼します。何か縁があったら、また会いましょう。できれば平和になってから」
 カルマが別れの挨拶を告げる。
「結局私の仕掛けたトラップは不発だったのですが、村が襲われなかったので良しとしましょう」
 ハインがUPCから借りた、罠に使った道具をまとめて運びながらそう言った。そしてリディスやロジー、アズメリアたちもそれぞれの言葉で別れを告げて高速移動低に乗り込む。
「それじゃあ村長さん、あんたたちの引越し先がいい土地であることを祈ってるぜ」
ガハハと笑いながらイドは高速艇に乗り込んだ。そして、高速移動艇が飛び立つ。
 村人たちはそれを見送りながら新たなる地へ思いをはせた。そして、平和になったら必ずここに帰ってこようと決意したのであった。