タイトル:【NF】ベッセマーベンドマスター:青井えう

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/23 18:48

●オープニング本文


「ホークス1より全機へ。目標のベッセマーベンドを視認。高度を下げるな。地面へ引き摺り落ろされるぞ」
『『了解』』
 偵察部隊ホークスアイ各機の眼下に広がる赤土の荒野。
 その光景は、約一年前ナトロナ軍が優勢に戦闘を進めていた頃と何も変わっていなかった。
 だが各員は感傷に浸る暇も無いまま、緊張した面持ちで上空を散開。
 前方に小さく見えている廃墟『ベッセマーベンド前方基地』へ望遠レンズを向けた。
「‥‥情報通りだ。見ろ、所々にバグアが沸いてるぞ」
「工業用らしきワームに武装化されたワームも居ますねぇ。あれは‥‥人間?」
 副長が画像をリアルタイムで分析しながら、ふいに怪訝そうな声を上げる。
 遠すぎるために機体の望遠レンズでもハッキリとは分からないが、米粒のようにそれらしきシルエットが映っている。
「一箇所に集まってるようだな。強制労働者か?」
「それにしては全然動いてないですよ‥‥? 七‥‥いや六人かな」
 モニタの埃と間違えそうな小ささの物体を判別し、副長は俄かに表情を変える。
「‥‥六人? まさか、タロスの――」
「敵襲ッ!」
 別隊員が叫び、副長を始め各機は反射的に機首を翻す。
 偵察目標を後にして、隊長は最後に敵へ一瞥をくれる。
「来るのが遅いぐらいだな。偵察行動終了、全機撤収!」
 ベッセマーベンドの画像情報を十分に収集した十機は、一斉に加速。数体のHWとの速度差を埋めるために、逃げ切る為の距離を稼ぐ。
「‥‥不気味な――本当に人間?」
 副長は最後の最後まで人間らしき集団へ注意を払い、そして呟いた。
 人間と思わしきその六人は一箇所に固まったまま微動だにせず、まるでマネキンのようにただ立ち尽くしていた。


「おい‥聞いたか!」
 キャスパー基地食堂。そこでは鼻息を荒くした兵士達が、得意げに声を交し合っていた。
「建造中の敵基地を発見したってよ! バグアに一泡噴かせるチャンスってわけだ!」
「おいイカロス、クロウ! しっかり身体暖めとけよ!! 憎たらしい基地を叩き潰してやれ!」
 方々から期待の込められた声が、食堂の中心で食事する両隊へと掛かる。
「おうよ! お前ぇらはパーティーの準備でもして待っとくんだな!」
 クロウ隊長のバルトが椅子から立ち上がり、野次る兵士達へ機嫌良さそうに応える。
 向かいに座って食事していたライト少尉とヒータ大尉は目を見合わせ、小さく笑い合いながらまたサンドイッチを頬張った。
 そこへふと、ナトロナ軍戦車部隊長が真面目な顔で近付き、二人の間に身を屈める。
「‥‥実際、お前らには命を賭けてるからな。逃げ腰司令官じゃダメだ、お前等のお陰で安心して戦えるんだ。今回も頼むぜ」
 そう耳打ちして戦車部隊長は二人の肩を叩くと「傭兵もしっかり呼んでくれよ」と期待を込めた声で言って去って行った。
 ナトロナKV部隊と同じぐらい、傭兵部隊もナトロナ軍にとっての希望になっていたのだ。
 『業務連絡、イカロス隊、クロウ隊、ブルーバード隊パイロットは、一三○○時に第三作戦室へ‥‥』
 ふいに響く館内放送の出頭命令に、食堂の空気はまた沸いた。
「出頭は‥‥三十分後ですね」
「大尉、さっさと平らげましょう」
 ライトとヒータはサンドイッチを忙しく持ち上げると、片手にコーヒーを持って勢い良くかぶりついた。


「ベッセマーベンドが要塞化されつつある」
 第三作戦室の演壇から、ナトロナ司令ポボス大佐が第一声を放った。
 イカロス隊二名、クロウ隊六名はその言葉だけで大体の事情を飲み込んだ。新しく配属されたブルーバードは手元の資料を捲り、それでようやく理解する。
 一年前、アルコヴァと対峙する形で前方基地として機能していたが、キャスパー陥落による極端な劣勢下でベッセマーベンドも陥落。
 ナトロナ軍はそのまま後方へ撤退を余儀なくされたのだった。 
「一年前に壊滅したベッセマーベンドにワーム部隊が集結、要塞化を進めているという情報が入った。偵察部隊の裏づけも取れた為に、その情報はほぼ間違いない」
 ポボスの合図で情報士官がコンソールを操作すると、ベッセマーベンド付近の地図が拡大される。
「そこで我々は要塞化が完了する前にここを急襲、破壊する。だが罠の可能性も拭いきれない為に急襲はイカロス隊だけで行い、ブルーバード隊及びクロウ隊は都市の警戒任務に――」
「‥‥何だと? 俺達が後方のお守りだって!?」
 不意にポボスの任務説明を遮り、クロウ隊長バルトが声を荒げた。狭い第三作戦室に野太い声が響き渡る。
「どういうつもりだ司令? 都市の守りにはブルーバードが居るじゃねぇか!?」
「こればっかりは隊長に同意です。幾らなんでも敵基地を攻めるのには戦力不足ですよ!」
「こんな事は言いたくないッスけど。司令はレッドバードの代わりにイカロス隊を‥‥なんて考えて無いスよね?」
 クロウ隊副長カスピ、隊員タローがそれぞれに声を上げる。
 それぞれが基地の司令官に対して侮辱罪に匹敵する発言をしていた。 ポボスの傍らに立っていた士官の表情は途端に憤怒に染まる。
 だが、当のポボス本人がそれを遮り――しかし頑なに首を振った。
「命令に変更は無い。この元々の情報源の人物が現在行方不明‥‥敵だった可能性もある。これが罠の場合、都市は危険に晒される」
「キャスパーが手薄になった所を? だがもしイカロスを誘き出す罠だったら‥‥取り返しがつかねぇぞ!!」
「イカロスなら、それでも戻って来るんじゃないのかね」
 さも当然のように呟いて、ポボス大佐はイカロス隊へ一瞥をくれる。
 それをライトとヒータは少し不思議な面持ちで聞いていた。
「‥‥ダメだ。イカロスを行かせるわけにゃいかねぇ。コイツら二人、それと肩を並べる傭兵達は希望だ‥‥! そんな捨て駒みたいな扱いをさせられるか!」
「‥‥良いか、もう一度言うぞ中尉。命令に変更は無い! 決定事項だッ!!」
 噛み付きそうな表情のバルトに対してポボスも声を張り上げて厳命する。
 緊迫した空気が第三作戦室を支配していた。
「ケッ、命令なんて知るか。‥‥イカロスが言うなら聞いてやるがよ」
 バルトはチラリとイカロスの二人を一瞥し、それでも不満そうに舌打ちして作戦室を後にする。
「司令。ご命令とあらば奴を独房にブチ込みますが」
「ふん‥構わん。この程度は作戦会議の延長だ」
 自嘲気味に鼻を鳴らし、ポボスは肩を竦めた。
 小さく息を吐いて部屋を見渡す。
「‥‥それではこれでブリーフィングを終了する。各員、全力で掛かれ!」
 波乱の会議を経て、その声で作戦は発令された――。


●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
月影・透夜(ga1806
22歳・♂・AA
ルナフィリア・天剣(ga8313
14歳・♀・HD
赤宮 リア(ga9958
22歳・♀・JG
リヴァル・クロウ(gb2337
26歳・♂・GD
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG
鳳覚羅(gb3095
20歳・♂・AA
ルノア・アラバスター(gb5133
14歳・♀・JG

●リプレイ本文

 出撃準備するイカロス各機を見て、クロウ隊は歯痒そうな表情を浮かべていた。
「お気持ちは解ります‥‥けど、私達に任せては戴けませんか? キャスパーを再び奪われる事だけは絶対に許されないのです」
 隊長バルトの前に立ち、真っ直ぐな瞳を向ける赤宮 リア(ga9958)。
 その真摯な態度に、流石のバルトも言葉が出なかった。
「‥堪えてくれ。今俺達まで命令反故すれば最悪誰も聞かなくなる。そうなったらナトロナ軍は自滅するだけだ」
「そう、君達には君達が為すべき事があると思うよ」
 機上からは月影・透夜(ga1806)が宥めるように声を掛け、続く鳳覚羅(gb3095)も微笑して待機の正しさを示す。
 信頼する傭兵達に言われて、諦めたようにクロウ隊は溜め息を吐いた。
 蒼河 拓人(gb2873)は忙しそうに動き回る整備員を眺めながら、機に描かれた片翼章へ目を落としていた。
「皆はやるべき事をやっただけさ。そして今回もね。クロウ隊の皆‥‥今回は背中、任せたよ?」
「恐らくポボス司令の考えが不透明なせいで、不信が強まっているんだと思います。彼の目指すものを知るためにも経歴、評定‥‥調べられますか?」
 拓人の言葉へ耳を傾けるカスピへ、水上・未早(ga0049)が囁く。
 上官の経歴や評定を必要以上に調べるのはリスクもある。だがカスピ少尉は背中を押されたように頷いた。
「では皆さん‥‥キャスパーをよろしくお願いしますっ!」
 イカロス隊ヒータ大尉が彼らへ声を掛け、タキシング。開放された扉をくぐる。
『頼むぞ。イカロスと傭兵達、幸運を祈る』
 管制塔からは珍しくポボスの声。
 しかし滑走路に出たリヴァル・クロウ(gb2337)は険しい目を向けた。
「一つ、貴殿等に問おう。‥‥恐れる事は悪なのか? 覚悟を掲示願いたい。少なくとも現場の我々は掲示したはずだ」
 クロウ隊待機は過剰反応と見たリヴァルが辛辣な言葉を吐く。
 通信回線に走る沈黙。
 そのまま答えは無いままかと思われたが、ふいにポボスの声は再び響いた。
『現場に不満があるのは承知だ。だが作戦はワシが全力で立案する。誰かの反対を押し切ってでも‥‥最善のな』
 最後の言葉は僅かに揺らぐ。ポボスにも完全な自信は無いのかもしれなかった。
「‥‥ポボス司令、なんだか少し変わりましたね。頼りがいが出てきた感じが致します」
 ポツリと呟いたのはリア。
 だがそれ以上の通信は無かった。作戦は既に決定している。
 ここから先は――彼らの仕事だった。

『目標捕捉。全機戦闘態勢へ。例え罠でも――無事生還しよう』
「全く、頭の痛い依頼だな‥‥。まぁいつもの事か。手が足りないのも問題山積みなのも」
 ライト・ブローウィン(gz0172)の通信に、ルナフィリア・天剣(ga8313)は眉をひそめて吐息した。
 前方にはベッセマーベンド。
 隊は二手に別れ、KV七機が荒野へ着陸する。
「さて、行くぞアクスディア。敵を滅し力を示す」
 漆黒に金装飾したペインプラッドに乗り、『悪ヲ戮ス魔帝』は黒い瘴気を纏う。
「鬼が出るか蛇が出るか、といった所かな‥?」
 漆黒の破曉の中から覚羅は眼前を見据える。目標の基地は、誘うように佇んでいた。
 前衛五機が展開するやや後方、M−181の巨砲を構えた施設破壊B班二機が基地を睨む。
「前線、基地が、落ちて、りっちゃんと、初めて、お会い、して、一年、近く、です、か‥‥」
 照準スコープを覗くルノア・アラバスター(gb5133)は感慨深そうに呟く。
 その隣でリヴァルも微かに表情を変えて頷いていた。
「状況を開始する。‥さて、payback timeと行こう」
 砲先を、ナトロナを守る為に初めて参加した場所へ。
 だが――それを押し留めるように地上を抉る閃光。KV各機は即座に散開した。
「敵機発見! 罠ってほど多くは無いか‥‥」
 基地手前の丘陵から躍り出たRC三体へ、即座に引鉄を絞る拓人機。銃撃を受けて100m向こうのRC達は血肉を噴いた。
 敵を囲むように走りだすA班各機。熱線を放射するルナフィリア機、射線を合わす拓人機、イカロスペア、火線を直交させる覚羅機らの五機が、光条を吐くRCを駆逐していく。
 さらに――敵拠点に落ちていく二つの榴弾。
「スキル、起動中‥‥着弾点、補正、します」
「了解だ。格納庫群に敵影が見える。俺はそちらを狙う」
 B班ルノア機は滑走路への視界を邪魔する施設へ、リヴァル機は格納庫へ砲撃。地面と空気が痺れ、基地から火柱が上がった。
 だが攻撃を阻むように各員を襲う――強烈な頭痛。
 周囲にCWの姿は無い。恐らくは、ヴィルト。
 同時、ベッセマーベンド施設屋上に四機のタロスが姿を現した。

「滑走路にCW装置一基、施設屋上にタロス四機を視認。ですが後の二機は‥? っ、ヴィルトが不快ですね‥‥」
 高空から基地を見下ろし、制空C班のリアは頭を小さく振る。
「罠のパターンとしては基地内に入った処でドカン‥‥とかな」
 同じく上空を旋回する透夜が、笑えない言葉を吐く。
「KVの分析可能範囲で今の所異常はありませんね。――敵が上がって来たぐらいでしょうか」
 未早は言い放って特殊装置を押し込む。
 三機へと次々に浮かんで来る――HW群、およそ十二体。
「熾天姫、戦闘態勢」
「同じく。Holger、交戦に移ります」
「こういうミサイルパーティはあまりしないんだがな‥持って行け!」
 リア機が機銃を構え、未早機は加速。
 最後尾で透夜機が――ロヴィアタルを全弾開放した。
 九百発の小型弾頭が空に放射され、敵ワーム全機へ炎の牙を向く。爆炎が上がり、HW装甲を喰い千切った。
 二体が火を噴き、今出てきた場所へ再び戻っていく。
 さらにMブーストで切り込んだ未早機がAAEMを吐き、弾丸を敵群へ撒き散らした。
「初撃が効いてますね。‥二体撃破」
 正面付近に展開していたHWが破孔から炎を噴き上げ大破。地上へ墜ちていく。
「‥‥効いてる。貴方の力を振るいなさい、熾天姫!!」
 苛烈な熱線。中枢を溶かされたHW四体は力を失い落下していく。
 リアは現状のヴィルト影響下でも機銃よりレーザー砲の威力が高い事を確認した。
 あっという間に残HWは四体。その敵が砲撃を発するが――三機は高機動で回避。
 性能の高さ故にほとんど相手にならない。
「――よし、このまま押し切って制空権を確保するぞ!!」
 むしろその敵は、消耗品の如く――弱かった。
「いえ、第二波来ます‥‥! HW、十五!!」
 眼下から再び舞い上がる第二波。やや機動の鋭さの増したHW群が一斉に――赤色の砲撃を閃かせた。
 空を抉るような弾幕。
 その幾条かが、かわしきれなかった三機の翼を――大きく揺らした。

「地殻変化計測器を設置。ヴィルトの位置は分からんか‥‥異変があれば通信する!」
 基地全域が入る距離まで接近したリヴァル機が、地面に二本計測器を打ち込み各機へ声を掛ける。
「標的が見えた‥‥あそこだ!」
 直近の丘陵に隠れながら、拓人は滑走路上のCW装置を捕捉。同時、施設を飛び降りて急接近するタロス四機へと機銃弾幕を張る。
 さらに影から飛び出すRC八体、高台に乗ったTW三体が巨砲をKV群へ向けた。
「ゾロゾロと‥‥けどね。――そう簡単に抜けると思わないで欲しいかな?」
 地面を抉る敵砲撃、無防備なほど激しいワーム群の突進。だが覚羅機はツングースカを僚機の火線に合わせて連射し、敵の勢いを削ぎ殺す。
「スキル、起動。照準、完了。CW装置、攻撃、します‥!」
 味方が奮闘する間に、『Rote Empress』が映す指示に従ってルノアが発射スイッチを握り込む。
 真紅の機体はさらに赤く輝き、榴弾を滑走路上のCW装置へ降らした。
 炎が閃き、レーダー上からCW装置、反応消失。
 ――だが。
『‥‥ジャミングが消えてない‥!?』
 ヒータが叫ぶ。
 各員の不快な気分は薄らいだものの、依然として手元を狂わせる怪音波は健在だった。
 そんな七機へ、容赦無く叩き込まれる敵砲撃。激しい光条と火線が装甲を激しく吹き飛ばす。
「くっ‥‥全機射界に入るなよ‥。敵をなぎ払ってやるッ!」
 ルナフィリアは全機に警告と同時――ブラックハーツ起動。
 固有スキル、フォトニック・クラスターを敵の密集する空間へ三連射。高熱の眩い光が黒金のペインブラッドから放たれ――RCとタロスの表皮を焼け爛らせた。
 怯むRC、しかしその横からヴィルトの効果もあってほぼダメージを受けていないタロスが接近。走りざまルナフィリア機に剣を突き立てる。
 援護に入ろうとしたKV達も銃撃を浴びせられ、他タロス三機がKV群へ雪崩れ込む。
 覚羅機は盾で受けて立ち塞がり、拓人機が緋色の機刀を振るって接近戦へ。さらにイカロス二体も連携して一体に当たる。
「格納庫群へ砲撃する。他に目立った施設は無い」
「そう、ですね。私は、向かって、左、から、‥砲撃します」
 リヴァルの通達にルノアが頷き、二機は榴弾砲の照準を施設群へ。
 だがそこへ――前衛を抜けて疾走する、RC三体。
 咄嗟にリヴァルは機剣で、ルノアは機盾で攻撃を受け止めた。
「貴様等に構っている――暇は無いッ!」
 強引にリヴァル機は施設を砲撃。轟音の後、爆発が基地に広がった。
 続くルノアも敵を押し返し、砲撃を再開する。

 空に噴き上がる炎。
 HWを両断した銀片翼章の剣翼は、炎を纏ったまま態勢を立て直す。
 透夜はHWを屠りながら眼下の格納庫群に砲撃が始まったのに気付いた。
「以前のヴィルトに比べれば小規模なのは間違い無い‥‥何処だ?」
 HWと交戦しながらも眼下へと視線を投げる。
 再び地上で爆発が起こり――ふいにその中に、赤く輝く施設が見えた。
「っ! 地上班へ! 同座標へ砲撃を、――FF付きの施設ですっ!」
 リアが即座に地上へと報告する。
 だがその背後へ三体のHWが接近、赤い閃光と実弾頭が吹き荒れた。
「‥‥ッ!」
 後尾に衝撃を受けながらリアは加速、HWが追う。
 だがそこへ高速飛来したAAEMが着弾、青い電爆にHW達を巻き込んだ。揺らぐHWを掠めるのは――『J』章を付けたワイバーン。
「ちょっと手を出し過ぎましたかね‥?」
 未早は首を巡らし、唾を付けた獲物を数える。追ってくるのは‥HW七体。
 だが未早は動じずにMブースト起動。テーバイで向かって来るミサイルを撃ち落し、フェザー砲のシャワーを強引に潜り抜けて敵を引き離していった。
 その熾烈な空戦の間に再び榴弾が炸裂し、閃光が地上を走る。
 同時――能力者達の体調が瞬時に回復した。
「ヴィルトを破壊できたようですね‥!」
 本領発揮とばかりに操縦桿を倒すリア。
 しかし同時に通信に走ったのは――リヴァルの焦燥の声だった。
『何だ、コレは‥‥? 各機、異常反応だ』

 地殻変化計測器から送られてくる情報を見つめて、リヴァルの背中に怖気が走る。
「巨大ワームか‥‥。いや、これは単なる――」
『敵の様子がおかしい! いやに接近してくるぞ‥!?』
 機盾で攻撃を受けながらライトが叫ぶ。
「やはりアレは‥‥。イカロスへ、撤退を強く提言する! ここに居ては最悪、我々は全滅するッ!」
 リヴァルが叩きつけるように言い放った。
 状況の異変を読み取ったヒータは、即座にその案を容れる。
『全機、作戦行動中止!! 全速撤退!!』
 指示が出され、各機が撤退に移ろうとする。拓人が煙幕を発動し覚羅も続こうとするが、空戦用兵装のため発動されなかった。
 ――――そして各機を、敵は執拗に押し留める。
 タロスは煙幕を潜り抜け各機へ接近、身体ごと当てるように機剣を振るう。さらにRCも装甲へ牙を立て、食い付いて離れない。
「この場に、留まらせ、ようと、してる‥?」
 ルノアは機盾で攻撃を防ぎながら敵の意図を感じとった。

 ふいに敵達の背後――基地の地面が、割れる。
 その中から橙色の巨大なオブジェがゆっくりとせり上がってきた。
『基地から異常熱量!? マズイぞ!』
 上空、透夜機が焦ったように叫ぶ。
「正念場か‥黒焔凰の鬼札――見せてあげるよ?」
 覚羅はカバーで守られたスイッチを押し込み、スキル起動。
 漆黒の破曉が――黒い陽炎を纏った。
 機剣を持って身体ごとぶつかって来るタロスへ光刃を振るい、しがみ付こうとした片腕を切り飛ばす。
 さらに別の場所、Oブーストを掛けた拓人機『BARRAGE』が撤退方向へ回り込んだタロス二体へ、強引に加速する。
「邪魔だ、道を明けてもらうぞ――」
 右手に装填した金属筒を握り込み、振るう光柱の刃。練剣「雪村」を両側のタロスへと叩きつけ、拓人機は駆け抜けた。
 上空からは撃墜されたHWが次々に荒野へ落ちる。
「燃える片翼章は伊達ではありませんっ!!」
 スキル発動で生じる燐光を浴びて、リア機の片翼章は燃え盛るように輝く。その機が発するレーザー、光翼がHWを切り裂いた。
 さらに地上へ向けて、透夜機が急降下――低空からRC群へ機銃掃射する。
 だがそのディアブロの機首へ、練力を消費したタロスが高く跳び――機剣を突き立ててしがみ付いた。
「なっ‥、放せ――!」
 何度も剣を振るおうとしたタロスを、透夜機『月洸弐型』は振り払うと――KA−01の巨砲で横腹へ風穴を空けた。
 血を噴きながらも留まるタロスを――高空から飛来した未早機が剣翼で袈裟切りにする。
「もう限界です! 撤退を‥!!」
 未早は各機へ声を掛け、タロスには目もくれずベッセマーベンドから離脱。
 地上各機も次々にブーストを掛け、基地から距離を取る――。
『くっ‥‥どきなさい! 少尉、援護を!!』
『了解!』
 再生しながら撤退を妨害するタロスへ、ライトが機剣を薙いで斬り伏せる。その間にヒータが機銃掃射して走り出す。
「取っておきだ‥‥受けてみろ」
 銃撃を受けながら踏み止まるタロスへ、ルナフィリア機は疾駆しながらスキル付与の練鎌を構え――三連撃。
 切り裂かれ、膝を付いた敵を尻目にルナフィリア機はブースト。ワーム群を後ろに突き放した。
「異常熱量増大‥‥! くるぞ、全機爆発に備えろ!!」
 リヴァルが叫び、全速退避する各機が伏せる――。

 直後――空が白く輝き、地面が戦慄するように大きく揺れた。

 激しい業火が地空のワームを一斉に焼き払い、伏せるKV群の足元に迫る。
「ベッセマーベンドが‥‥」
 上空でも乱気流が発生し、破片が降り注ぐ中を未早は後方に目を向ける。
 基地はキノコ雲の中に呑み込まれ――黒く煤けた灰塵に還っていた。

「‥‥各機、生きていますか?」
 ヒータの問いかけに、バラ付きながらも全員分の応答があった。
「大尉‥‥損傷が酷いですよ。俺もですが」
 退避が僅かに遅れたイカロス二機は、戦闘機動は少し無理そうだった。
 その他、各機もまばらな損傷を受けている。大破一歩手前から、一部機関や重要部位にダメージを受けている機もあった。
 それでも彼らは一機も欠ける事無く――合流を果たす。
 全員に浮かぶ勝利の安堵。そうして振り返った先で。
「‥‥、キャスパーが‥?」

 ――再び危機に晒されるナトロナを、遠く見た。

NFNo.031