タイトル:【AA】民間人救出αマスター:青井えう

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/02 22:33

●オープニング本文


 先の大規模作戦第一フェイズの激戦を経て、UPC軍部はとうとうアフリカ侵攻作戦を正式発令する。
 この決定が人類にとって吉と出るか凶と出るか――ただ一つ確実なのは、間違い無く激戦が予想される事だった。
 もちろんこの情報はバグア側にも即座に伝わり、敵は大きな動きを見せる。大量のワームが続々と予想される戦場へ移動を開始。おびただしい数のワームがアフリカ各地で蜂起したのだ。
 一方でUPC軍の特殊部隊は現地の反バグア武装勢力と接触し、その地にある民間人収容所の情報を偶然入手する。
 しかし、その収容所は――大量移動するワーム群の予測ルート上に位置していた。

『この度の参戦、感謝します。皆さんの双肩には190の民間人の命と約20の友軍兵士の命が乗っているとお考え下さい』
 暗い闇の中を、航行灯を点して地中海に浮かぶ軽空母の甲板上。
 幾数機のKVが出撃準備を整えながら、その機上で傭兵達がオペレーターの声に耳を傾けていた。
 開け放たれたキャノピーからは冷たい潮風が流れ込む。肌に絡みつくような風を受けて彼らは顔を上げる。
 闇に溶け込む境界線の海。
 ヨーロッパからその空間を隔てた向こう側は、まさに別世界と言って良い世界だった。
『ワーム群が収容所に到達するまでの猶予はほとんどありません。しかも敵の数は正確にはわかりませんが、ほぼ無数と言っても良いでしょう。まともに戦えば勝ち目は万に一つもありません』
 オペレーターの声が耳朶に響く。
 それと並行して各種計器チェック、整備員の声に合わせて一つ一つの出撃シークエンスをこなしていく。その度、KVが眠りから目覚めるのが分かった。
『しかし幸いにも今回の目的は敵撃破ではなく、幾らかの時間を稼ぐだけで事足ります。その間に別働隊が収容所の民間人を回収、撤退する手はずです。ワーム群は期間内に目標地点へ辿り着く事が最優先事項のはずですので、撹乱か陽動のKV部隊を執拗に追撃する事は無いでしょう。もちろん‥‥戦闘中の過激な反撃はあるでしょうが』
 電子装置起動完了、モニタに浮かぶ青い光り。
 各種装置、ECM、FCSチェック。即座に問題無い、と機体AIが告げる。「過激な反撃」とやらを大歓迎だと答えるように。
 機体に取り付いていた整備員達がノズルを外し、工具を持って駆け足で離れていく。機体甲板上に出撃警告の声が響き渡り、誘導員がにわかに動き出す。
 複数機体のエンジンが同時に吼えた。
 KVが完全に眠りから目を覚まし、臨戦態勢を整えていく。
『可能な限り遅延工作を行った後、自力で地中海の友軍勢力域まで撤退する必要があります。アフリカは完全に敵地ですが、‥‥必ず生きて帰って下さい。それでは――頑張って来て下さいね! 皆さんにご武運を! 以上、状況説明を終わりますっ!』
 その声と同時、傭兵達は一斉に加速する。
 激しく潮風を追い散らし、空へ舞い上がる幾数のKV。
 大空へ急上昇、星々の輝きに同化したかと思った刹那――流星の編隊はアフリカ大陸へと雲を切る。

 顔も知らない‥‥しかし赤い血の流れる同胞達を救うために。

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
鋼 蒼志(ga0165
27歳・♂・GD
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
聖・真琴(ga1622
19歳・♀・GP
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
乾 幸香(ga8460
22歳・♀・AA
鹿嶋 悠(gb1333
24歳・♂・AA
須磨井 礼二(gb2034
25歳・♂・HD
天原大地(gb5927
24歳・♂・AA

●リプレイ本文

『‥‥こちらβ班。今から拠点へ向かうが‥‥やはり間に合いそうに無い』
「α班、了解しました。作戦領域へ侵入、これより状況を開始します」
 別働班からの連絡に水上・未早(ga0049)が応じ、無線を切った。
「俺達は囮か‥‥。作戦としては遅延攻撃が適切だな」
 殲滅戦では無い事を意識して、時任 絃也(ga0983)はレーダーに目を落とす。
「やれやれ‥‥この数をこれで相手しろとは、中々無茶な事ですよね」
 鋼 蒼志(ga0165)が浮かべる苦笑。
 レーダーは光点に光点が重なり、太長い筋が出来ている。
 全てが、敵だ。
「でもこれをどうにかしないと200人以上の命が消える、と。‥相変わらずハードっすね〜」
 絶望的戦力差に肩を竦め、――六堂源治(ga8154)は挑戦的な笑みさえ浮かべる。
「一人でも多くの命を救う為に、私達がやらなければいけないというのなら‥‥限界まで頑張りませんとね」
 恐怖心を抑え、乾 幸香(ga8460)は決意を固める。
「幾らこんな状態とはいえ‥‥戦う術すら知らない人達を背中に背負ってますからね」
 血の滲む包帯を服の下に巻き付け、鹿嶋 悠(gb1333)は苦痛を押し殺した顔で戦場へ臨む。
「多勢に無勢‥‥上等だ。間に合わせてやる、意地でもなッ!」
 荒々しい口調の裏の決して曲げぬ信念。天原大地(gb5927)が真っ先に降下していった。
 そのまま十機は夜の敵地、孤独な砂漠へと降り立ち――人型形態で展開。
「スマイル、スマイラー、スマイレージ♪ お呼びとあらば即参上〜」
 緊迫した空気に響く声。須磨井 礼二(gb2034)は、生死を分かつこの状況でも曇りない笑顔を浮かべる。
「‥ああ、頭使うのは苦手だっ! 来るなら弾き返すっ! それにアタシが命乗せるのは他にある‥‥生きて帰るさ♪ ――絶対にね」
 一つ大きく身悶えしたかと思うと、聖・真琴(ga1622)は吹っ切れたように顔を上げた。
「さて、短い時間ですがお付き合い頂きましょうか。まずは出迎えの挨拶をお見舞いしてやりましょう」
 冷静さを増し、静かな自信すら感じさせる新居・やすかず(ga1891)。
 その前方に――ワームの先頭集団が月明かりに照らされて姿を現した。

 青暗い闇に沈む砂漠。
 その黒い沈黙が突如として、光の洪水に切り裂かれる。
「ッ、さぁ‥始まりましたねっ!」
 鳴り止まぬアラートの中、それでも笑顔で手を動かす礼二。
「相当な数だな‥‥やれやれ、これを引き付けるのは骨が折れそうだ」
 弦也は淡々と呟きながら陣形を整えていく。
 KV部隊はA班右翼とB班左翼に分かれていた。
 A班は未早、真琴、やすかず、悠、礼二。
 B班は蒼志、弦也、幸香、源治、大地。
 前後二列になったA班とB班は一部分だけ重複させて一列になり、重複部分に重傷の悠機を入れる。
 全機、敵を射程に入れるなり砲撃を開始。
 Mブーストを起動した未早機がアハト狙撃、それを潜り抜けた敵へやすかず機がマルコキアスの弾幕を張る。次いで真琴、源治、幸香、大地のショルダーキャノンが一斉に轟音を噴き上げた。
 やがて全機が射程に入り、壮絶な火線の嵐を敵と交換する。
 しかし居並ぶ敵は広がり、膨らみ、一個の塊として相対した。
 さらに照準の粗かった敵の弾幕も近付くにつれ命中し始め、KV被弾の火花が夜闇に上がり始める。
「足を止めずにまだちぃっとばかし付き合って貰うよ‥‥待ち合わせに間に合われると困るンでね♪」
 肩砲を敵陣突出部に打ち込み、真琴機が反転。
「A班、後退する!」
 その言葉と同時に右翼全機が機体を翻す。

 後に残った左翼B班が一際激しい砲火を噴き上げた。
「俺達が相手してやるぜ‥‥掛かって来いッ!」
 大地機がキャノンで右翼の敵を牽制し、意識をひきつける。
 A班が抜けた分、B班五機へ叩き込まれる火線と光条が激化。避け切れない苛烈な弾幕が全機の装甲を焼き抉る。
 さらに数体のゴーレムと大群のキメラが接近した。
「っ、蛾が群がって来ましたわね‥! 殺虫剤、散布しますわ!」
 特殊ボタンを押し込む幸香。愛機『バロール』がロックキャンセラーを発動し、範囲内のワーム群の照準を鈍らせる。
 和らいだ砲火の中から、弦也機が熾烈に弾丸をばら撒いた。キメラの足が穿たれて何体かが崩れ落ちたかと思うと、障害物と化した敵は味方の射撃に貫かれて絶命。同士討ちを誘う。
 だが一部を遮断したものの、他の方向から易々とワームは接近した。
「殲滅してもよいのだろう‥‥とはさすがに言えんな」
 蒼の雷電『Bicorn』が機銃を持ち替え、Gグレネードを抜き放つ。即座にキメラの固まる場所へ二連射。キメラ四体が爆炎に吹き飛び、息絶えた。
「しっかし‥‥撃っても撃ってもキリが無いッス!」
 源治は肩砲のリロードの暇も惜しんで、ライフルに持ち替えて敵を無力化していく。一番手前のゴーレムが倒れ、その背中を乗り越えて次のゴーレムが接近。
 しかもその後方からはTWとRCが援護砲撃を発している。
 B班はみるみるワーム群に包囲され、飲み込まれそうになり――。
 その包囲側面へ、大量の火線が走った。
「お待たせしましたッ! もう大丈夫です!」
 未早の呼びかけ。その言葉を裏付けるように――A班の砲撃がワーム群中を駆け巡る。
「よし、後退だ!」
 援護を受けたB班が即座に身を翻した。

「タッチだ!」
 両班がすれ違い、砲撃しながら追いかけてきていたワーム群へA班が立ち塞がった。
 未早機がMブースト起動、最前列のキメラへと確実に機銃を当てていく。一斉に闇に輝く赤いFF。
 だがその中から、FFを発動せずに接近する影を――赤外線モニタが捉えていた。
「っ――」
 砲を構えて躍り出るゴーレム。未早機は咄嗟に構えた盾で光条を受け止める。
「潰すっ! 援護頼ンだ!」
 真琴がブースト、やすかず機の射撃援護を受けながらゴーレムに接敵――急制動で側面を取る。
 槍を振ろうとした相手より早く、ソードウイングで肘を両断。態勢を崩した相手の軸足へ――ライフル射撃を叩き込む。
「無力化を確認! 聖さん、戻って下さい!」
 やすかず機が敵本隊の更なる接近を確認し、マルコキアスを連射しながら叫ぶ。
 敵大群は熱線を吐きながらジリジリ前進。A班を取り囲むように広がっていった。
 やや後方から悪魔的弾幕で援護に回っていたやすかず機ですら、鈍重になった事もあって被弾は免れない。
「近付いてきましたね‥‥!」
 悠の視界を飛び回るターゲットボックス。紺色に紅肩の『帝虎』が弾丸をばら撒く。ファランクスも稼動し、広範の敵を抑え込んだ。
 その重傷の悠を庇い、礼二機がバルカンで彼を狙う敵を引き付けていく。
 だが溢れ出るワームは百鬼夜行のように底が無い。僅かでも射線が開けば迸る紫や紅の光条。
「ッ――!」
 突如大きく開いた射線から大口径プロトン砲撃が悠機に直撃。コックピット前に構えた盾が熔解し、冷や汗を噴き出させる。

「やらせませんよ、皆がスマイルで帰るためにね♪」
 金髪を揺らし、礼二はニッコリと『煌星』のPRM起動。
 バルカン連射をTW砲台のただ一点に叩き込む。弾丸が砲台を穿ち、引き裂き、――完全に破壊した。
 他のTWはまだ後方。大口径砲の脅威はなくなったが――複数のRCがその代わりを務めて砲撃、他ワームを前進させる。
 KV各機の熾烈な迎撃で次々とキメラが擱座する中、ゴーレム二体は反撃を放ちながら近付いて来た。
「意地でも来るつもりですね‥‥!」
 礼二機が再びPRM起動。ファランクスが最後の弾丸を吐きおえ、構わずバルカンをゴーレムに叩き込む。
 一体が両足を打ち抜かれ擱座。もう一体が構わず突っ込んでくるのを――金曜日の悪夢で轟音を立てて切り刻んだ。
 同時、後方B班からの援護砲撃が敵陣を穿ち始める。
「礼二機、許容練力以下‥‥離脱します!」
「了解!」
 僚機の返事を聞いて礼二機は煙幕を射出すると、垂直離陸して上空へ離脱。
 A班他四機は後退を開始する。

 敵の砲撃を受けながらA班はB班と交差、前衛と後衛をスイッチする。
 月明かりの砂漠をワームの大群は一個の怪物のようにKV部隊へ迫った。小刻みに後退する為に、移動と旋回に行動を食って弾幕を最大限に発揮できない。
「止まれ止まれ止まれって‥‥ッ!」
 キャノンとライフルを撒き散らす源治機。B班全機が必死に弾幕を張る。
 だが次から次へと新しいワームが現れ、砲撃を放ち、接近してきた。
(「‥まだだ‥! もってくれ、『残空』‥!!」)
 大地が祈るように愛機へ念じる。敵の攻撃が装甲を貫き、機体各部から黒煙が上がっていた。
「殺虫剤、散布しますわ!」
 幸香機がキャンセラー発動。同じくボロボロの機体を駆り、砲火を縫って反撃を放つ。
 敵の照準は鈍るものの、圧倒的弾幕がB班五機次々に被弾、闇に火花を散らす――。

 さらに敵陣後方にTWが追いつく。
 大口径プロトン砲の強力な援護を受けてRCが切り込み、至近距離から一斉砲撃した。
 被弾。レッドアラートを響かせる幸香機へ、TWは更なる大光条を発射する。
「っ――!」
 だが一瞬早く割り込んだ大地機が――それを受け止めていた。
「ちっ‥‥! これで限界を超えちまったぜ!」
 幸香機とはほぼ同じ程度の損傷度。それならばと、当然のように大地は相手を庇っていた。
「行け!」
 弦也機がスキル発動で撃ち込むガトリングナックル。腕を向けた方向へ無造作に放たれる弾丸に、接近するゴーレムの装甲が弾ける。
 B班各機は大地機の撤退を支援。
 同時、‥‥後方からの援護射撃が始まった。

 A班とB班がスイッチ。
 しかし、撤退者が出たA班の弾幕はやや薄かった。弾幕を張る四機へワーム群は際どく接近。それをスキル全力発動の未早機、やすかず機、悠機が必死で牽制する。
 精度の高い弾雨がワーム群の足元をピンポイントに貫き、支えきれず倒れ伏していくワーム群。だが数を頼みに大型キメラの一体が接敵する。
 直後、その厚い胸に剣が突き立った。
「死にてぇ奴から――掛かってこぃや♪」
 敵を屠った真琴機『ナイトメア―悪夢―』が剣を抜き払う。咄嗟に危険を感知したキメラは僅かに逡巡した。
 だがその後方からワームの砲撃援護が苛烈に奔る。急きたてられるように、キメラは突撃した。
「一気に焼きます!」
 やすかず機が構えるグレネード。密集部へ二連射、10mの砂岩が炎に包まれる。
 だがその身に炎を点しながら――緑色のRCはその爆炎を抜けた。
「‥‥っ!」
 やすかず機へと二体のRCが喰らい付く。装甲の砕ける嫌な音が響いた。
「大丈夫ですかッ‥!?」
 悠機が魔王の赤剣を振るい、強引に緑のRCを両断。
 だがその下のやすかず機は――動くのがやっとだった。
「‥‥く、撤退します‥‥!」
 騙し騙し機体にいう事を聞かせ、やすかず機は煙幕を射出して撤退。
 三機になったA班はさらに混戦状態に陥る。
 接近した何体かを押し返したかと思うと、すぐにまた新手が飛び込んで来る。息継ぎも出来無い激戦に全員が徒労感を覚え始める。
「‥もう少しです、全力で耐えましょう!」
 だが自衛用の建御雷を振るいながら、未早が折れそうな全員の心を鼓舞した。

 β救出隊からの連絡はまだ、無い。
 ならばいかに危険な状況でも、可能な限り留まるしか無かった。
「‥‥機体損傷率が撤退ライン割りました‥! ここまでですか‥‥後退します!」
 胸を血に滲ませ、脂汗を浮かべた悠が荒い呼吸で通達。
 煙幕を敵の砲撃部隊へ射出すると、魔剣で後ろの敵を両断して退路を開けた。
 A班残り二機‥‥ほぼ壊滅状態。
 もはや敵を押し留める術は無かった。刻一刻と、二機は魔物の群れに飲み込まれていく。
「ダメだ、撤退する!」
 最前線で前衛として剣を振るう真琴機。今や機体損傷率八割を切っていた。幸い、まだ煙幕は残っている。
 ならば真琴の僚機、未早の判断は早かった。
「‥‥ワイバーンは足が自慢ですからね。先に行って下さい――殿は私が!」
 当然のように、最も危険な役目を引き受ける。
「ごめん‥‥頼ンだ、Holger!」
 声を掛けて真琴機、ブースト。
 体当たりするように剣翼でゴーレムを切り裂いて後方へ。
 その背中を追撃しようとした敵を未早機が一機だけで牽制した。鳴り続けるレッドアラート。衝撃が度々コックピットを揺らす。
 その中で未早は真琴機の撤退を――確認する。
 同時に『J』エンブレムのワイバーンがWブースト。敵の砲撃を強引に振り切って撤退した。

 A班は撤退。
 残ったB班四機が迫る敵へ砲撃を浴びせ、それをものともしないワーム群が大挙して前進する。
「ここは絶対通さねぇ‥‥!」
 接近するゴーレムを源治機が機杭で吹き飛ばしていく。全弾射出後、盾を構えて即座にリロード。闇に溶けるバイパーが再び戦場を翔ける。
 既にスキルを出し惜しみする余裕は無い。スタビライザーで高速機動し、蒼志機は機体を発光させてドリルを薙ぎ、弦也機は剣を赤熱させて近付く敵を叩き斬る。
 さらに幸香機のキャンセラーが敵の照準を鈍らせて、どうにか絶望的な状況を持ち堪えていた。
 だが、傷付き疲れ果てる程に――敵の勢いはただ増していく。それは余りにも一方的な後退戦だった。
「これが‥‥最後の支援ですわっ!」
 幸香機がヒートディフェンダーでRCの砲台を焼き切り、同時にキャンセラーを起動。
 ダメージを負ったイビルアイズは火花を上げて、スキル稼動。しかし、同時に放たれたキメラの体当たりを受けて――機体は危険状態に陥った。
「こんなつまらない所で死ねませんもの、撤退しますわねっ‥‥!」
「了解だ、そっちの敵は引き受けてやろう」
 幸香機の撤退を蒼志機が煙幕を撃ち込んで支援。機盾アイギスで敵を真正面から止め、幸香機の盾となる。
「そろそろ潮時か‥‥撤退の準備だ」
 弦也機はRCの砲を剣で潰しながら、全機へ通達。幸香機が後方で空へと舞い上がるのと同時だった。
「鋼散りオイル流れようと‥‥人の血が流れるよりは良いってな。だから俺達は倒れはせんさ」
 蒼色の蒼志機は今や月明かりの下で不気味に形を歪ませていた。Bicornエンブレムも砲撃に晒されて焦げ溶けている。
「とっととズラかるっすよ〜!」
 煙幕を射出する源治機。黒いバイパーがギリギリまで弾幕を張る。
 三機は全弾撃ち尽くすのと同時、ブーストでそのままワームの進路上から離脱した。

 ワーム群はしばらくは追いかけたものの、途中から反転。進路上に戻って行軍を優先した。
 上空へ舞い上がった三機は、時計に目をやる。無限のように思えた足止め時間は――たった七分間。
 果たして間に合ったのか。一抹の不安を覚えながらアフリカ大陸を抜けて海へ。
 先に撤退した各機を収容した空母の輝きに誘われるように――夜の闇を三機は降りていった。
 全機帰投。
 安堵と喜びを分かち合う各員へさらに遠距離通信が届く。

『‥β班、民間人‥救出成功‥。繰り返す――救出成功』


 ――甲板に盛大な歓声が上がったのは、言うまでも無かった。