タイトル:【NF】ボアサークル群マスター:青井えう

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/05 21:28

●オープニング本文


 北米ワイオミング州ナトロナ郡。乾いた自然が広がる、赤い大地。
 今、その場所を舞台に嵐が吹き荒れようとしていた。
 20号線道路近くにあるバグアのボアサークル生産基地、ペトリーヒル。そこを防衛するために集うバグアのワーム群と、その基地を破壊するべく攻撃を仕掛ける人類部隊が動き出している。
 両者はそれほど時を待たずに激突する事になるだろう。
 だが生産基地の肝心の中身、自走自爆型ワーム『ボアサークル』(BC)は――既にそこには居なかった。

 ナトロナ軍の偵察部隊「ホークスアイ」が、キャスパー方面を飛行中の時。
 ふいに、それらは目に飛び込んできた。
『‥‥っ、ホークス1から各機へ。方位057にBC群を発見。このまま接近する‥‥敵の奇襲に注意せよ』
『『了解』』
 各員は全神経を索敵行動に注ぐ。通常戦闘機で偵察に当たるホークスアイは、HWと出会えば基本的に命は無い。出来るだけ射程圏外から捕捉し、全速で逃げなければならないのだ。
 地上からの砲撃でも一撃当たれば撃墜してしまう。
 だがそんなホークスアイにとってBCは唯一脅威ではない存在だった。
『大量に居ますね‥‥五、‥‥十、‥‥全部で十五体も』
 副長が眼下のBCを数えて暗い声で唸る。
 直接の脅威でないとはいえ、このワームがもし基地に突っ込めば自分達の帰る場所はなくなってしまう。攻撃してこないからと言って呑気にしていられる相手ではない。
 しかし幸いにしてBCは未だ本格的な走行を始めていなかった。
 そのワームが時速400km、一分で6.7kmという驚異的なスピードを叩き出すとはいえ、ここから基地までは45km近く離れている。
 どういう理由からかBCはまだ覚醒してもいないようなので、すぐさま引き返して報告すれば対処は間に合うはずだ。
『周囲に他の機影は無し、BCが15体だ。全機、全速で帰投を――』
『こちらホークス4、方位098より敵機! 複数のHWがこちらへ向かってきます!』
『ホークス1了解、こうなったらさっさと退散だ! 出来るだけHWの数を数えろ!』
 各機は機首を翻し、パウダーリバーへとスロットルを押し込む。
 重力制御で飛来するHWに比べれば月とすっぽんのスピード差だったが、それでも発見が早かった事で戦闘は回避できそうだった。
 ‥いや、HW群はBC達の頭上で一旦停止する。まるで見送るように‥‥ホークスアイを追いかけはしなかった。

 偵察部隊はパウダーリバー基地へと舞い戻る。ほぼそれと入れ替わる形で、通信を受けていた基地ではKVの出撃準備が整っていた。
「ったく、ペトリーヒルへ爆撃に向かった所を狙ってくるとはせこい事しやがるぜ」
「ヒータ大尉のシュテルンが無くなったのは痛いですよね」
 クロウ隊の隊長バルトと副長カスピが機上から通信を開いて頷きあった。
 さらに、もう一つ部隊用の回線が開く。
「まぁやらない訳にはいかないッスよ。俺はこの基地を‥‥命を賭けて守るつもりッスから」
 阿修羅に乗ったタローが、ポツリと呟く。
「まぁとにかく、今日から自分もクロウ隊なんで改めてよろしくッス」
「おうよっ!」
「よろしくねー」
 それぞれに返事するクロウ隊。しかしイカロス隊がペトリーヒルへ出撃している現在、正規軍KVは六機だけだった。
 その数で今回の任務をこなす事は厳しい。
 だがそんな彼らと戦線を共にするべく、タキシングする傭兵KVが格納庫から姿を見せる。
『よし、全機出撃準備が整ったようだな! 今回の任務はナトロナの命運を握るモノだ! 総員、心して掛かれ!』
 通信からポボス大佐のがなり立てる声が聞こえた。
 その鼓舞で士気が上がったかは別として、各員は神妙に頷いて出撃していく。言われるまでも無くこの方面の運命が掛かっている状況なのだ。
 複数のKVは、一斉に空へ飛び立っていった。
 ‥‥それを司令室から見やって、ポボスはふと不安に襲われる。
 基地の正規軍KVが全機迎撃に向かってしまったのだ。仕方ないとはいえ、もし今新手のワームが現れればひとたまりも無い。
(「くそっ、早く来い‥‥」)
 ボアサークルの発見報告と同時に正規軍KVを全機出撃させたポボスだったが、それと同時に近域の各部隊へと必死に援軍要請を出していた。
 そして、それに応じてくれた部隊が一つだけあったのである――。
 ‥‥まだ正規軍KVが出撃して十数秒だというのに、ポボスはイライラと部屋を歩き回った。

「‥‥ようやく動き出したか、人間ども」
 ナトロナのバグア本拠地『アルコヴァ』。その町の中心に建つ監視塔の玉座に、――アイアスは収まっていた。
 小さく唇を歪め、空中に投影させた幾つものモニタの一つに目を向ける。
「‥‥こんなモノも止められず、我を失望させるなよ。――例え、今日明日の命だったとしても」
 アイアスが腕を浮かし、小さく振る。同時、特定のワームに向けての信号が監視塔から放たれた。

 ――ナトロナの荒野で待機していたBCとHWが、覚醒。
 40km離れたパウダーリバー基地へ――進路を取った。

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
叢雲(ga2494
25歳・♂・JG
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280
17歳・♂・PN
シフォン・ノワール(gb1531
16歳・♀・JG
雪代 蛍(gb3625
15歳・♀・ER
鷲羽・栗花落(gb4249
21歳・♀・PN
ゼンラー(gb8572
27歳・♂・ER

●リプレイ本文

 雲を切り、ナトロナの空をKV隊が疾駆する。
「イカロス隊だけにカッコつけさせる訳にはいきません。彼らがその翼を休める場所、なんとしてでも守り抜きますよ」
 モニタを睨む水上・未早(ga0049)。そこに敵の情報と状況が羅列される。
 それを確認しながらシフォン・ノワール(gb1531)も眉をひそめた。
「‥厄介な兵器‥一機も抜かせない‥」
 地上を超高速で駆けて自爆するBC。それを一体でも逃せば被害は計り知れない。
「‥真っ直ぐに猪突猛進してくるのがこれほど厄介なんてね。だけど抜かせない。いくよ――アジュール!」
 鮮やかな青のロングボウ、鷲羽・栗花落(gb4249)がその愛機を加速させた。
「レイヴン。兵装に合わせてFCSの調整を」
『Yes.Mymaster』
 叢雲(ga2494)の指示に機体AIが応答、シュテルンは各種センサーを微調整する。
 間もなく全機は作戦戦闘区域へと突入。レーダーに敵光点が浮かび上がる。
「むむ、ナナハンの能力をフルに発揮できるのは‥‥ここだねぃっ」
 ゼンラー(gb8572)は上空から現地を見て、地上の走行ルートを絞り込んだ。
『‥クロウ隊も任務開始だ。おし、いっちょおっぱじめようぜ傭兵達!』
 バルト隊長が朗らかに放つ声。
 それに応えるようにハヤブサ機の前方へ、六堂源治(ga8154)の黒いバイパーが躍り出た。
「クロウ隊かぁ‥‥俺もTACは【Crows】で鴉なんだ。仲良く行こうぜ〜」
『どうぞよろしくお願いしますー!』
 源治機の前方で副長カスピが翼を振る。
 そんなクロウ隊へ、ふと未早が声を掛けた。
「‥イカロス隊の成果次第では『次』が見えてきます。皆さん、ご無事で。‥特にタロー軍曹」
『え、はい。なんスか?』
「少佐の魂をキャスパーまで連れて帰るのは――貴方の仕事ですからね。‥なんて。すみません、生意気でした」
 慌てて謝る未早に、タロー軍曹は思わず笑みを浮かべて頷いた。
『‥いや、大丈夫ッス。元々そのつもりッスから』
 断言するタロー。全機、基地から40km地点に到達する。
 そのまま栗花落機と源治機以外の傭兵各機が降下を開始。
 前方、荒野の果てから――空陸のワーム群が迫った。

「あたしには失う物なんて‥もうないんだから」
 猛速で迫るBC12体、相対距離1900m。
 それを目前にして雪代 蛍(gb3625)はポツリと呟き、操縦桿を強く引く。
 KV六機は変形し、敵の進路を挟撃するように配置に着く。
「一次防衛ラインに着いた。目標捕捉」
 ヴァレス・デュノフガリオ(ga8280)が報告し、高速で減っていく距離計を凝視する。
 そのまま全機が配置に着いた時には――BC群は交戦距離の手前にまで来ていた。

 雲を切り裂き、十ニ体のHWが飛来。
 長距離からのプロトン砲は放たれず、まず戦端を切ったのは――栗花落機だった。
「全能力起動! いくよ、全弾叩き込めぇッ!」
 蒼のロングボウが計千発の小型ミサイルを射出する。
 標的にされたHW五体が迎撃装置を起動。しかし圧倒的物量にすぐ弾切れを起こし――その上からミサイル群が覆い被さった。
 直撃に次ぐ直撃。HW五体は盛大な炎を噴いて全機落下していく。
『ナイスキル!』
「残り七体‥‥残敵を掃討するっスよ!」
 編隊から突出する源治機。
 煙を抜けて来たHWに漆黒のバイパーは接敵、スタビライザーを起動して機銃を連射する。
 しかし、敵撃墜の一歩手前でリロード。
 咄嗟の隙に、HWはフェザー砲で全力反撃する、が――。
「その程度、このバイパーにはぁ!」
 被弾にも構わず、源治は再装填と同時にトリガーを絞った。
 響く銃声、敵内部を噛み砕く弾丸。
 直後、派手な爆発を起こしてHWは落ちていった。
『ッ、敵が後ろへ抜けました! こっちが眼中に無いのか!?』
 他方でカスピ少尉が声を張り上げる。
 残りのHW群はクロウ隊を強引に突破、――後方へと抜けていた。

 ほぼ同時、地上展開するKV部隊眼前にBC群が高速走行する。
「‥ロックオン。敵を薙ぎ倒すぞ、レイヴン!」
『Yes,sir』
 火蓋を切ったのは叢雲機のDR−2砲。
 極大光条が地上を迸り、疾駆する先頭BCに直撃する。一瞬で溶解したBCが、――しかし速度を落とさずに光の中から抜け出た。
 だがそれをゼンラー機と未早機の機銃砲火が待ち受ける。
「拙僧の出番だねぃ!」
「迎撃開始します!」
「走るよ‥シュヴァルツキューレ‥ッ!」
 迎撃の銃火を放つ二機の隣から、シフォン機が駆け出していく。直後、アハトを換装した叢雲機も光条を発射した。
 先頭BC被弾。突如爆炎が上がり、BCは減速しながら横へ転倒する。
 その後方から高速で駆けてくるBC群。転倒したBCに巻き込まれるかに見えた、が。
 その黒円を踏み潰して、――駆け抜けた。
「タイヤ如き障害にもならない、という事か」
 ヴァレスは呟くと同時、大量のミサイルをBCへ発射。C−200の弾幕の餌食になった一体が転倒、激しく地面を滑った。
 さらに敵の両翼へ駆ける二機。左から蛍機、右からシフォン機が走り――敵へ喰らい付く。
「‥一気に倒す‥‥ブチ抜けぇッ!」
 シフォン機が神天速を使用して放つ『エグツ・タルディ』。
 拳と共に射出された機杭がBC側面を貫き、激しい火花と轟音を上げて――黒円を叩き伏せた。
 その反対方向では蛍機が練機刀でBCを斬り裂き、返す刀で内蔵雪村を叩き込んだ。
 しかし、――BCは止まらない。
「そんな‥‥!?」
 そのまま土煙を巻き上げて高速通過するタイヤの群れ。
 物理攻撃より衝撃の少ない知覚攻撃では、敵の態勢を容易に崩せなかった。
 だが、黒円の先へさらに『J』機章のワイバーンが駆ける。
「そう簡単にはッ!」
 BCへ縋りついた未早機が、その側面へ全速吶喊。
 突進から放った機刀の一撃で――BCを穿ち、激しく転倒させた。
 その後ろを通り過ぎるゼンラー機『Milestone』。‥BCへ適正なルートと加速によって距離を詰めて、迫った。
「服を脱いで考えた甲斐があったねぃ‥ありがたやありがたや!」
 感謝の言葉を吐きながら追いつき、さらにブーストで追い越すゼンラー機。直後、機体を横に捻りながら最高速の機槍を『虚空』へ突き出す。
 だがその穂先へ吸い込まれるように、BCが飛び込み。
 放たれた激烈な一撃は、――その側面を貫通した。
 ゼンラー機は即座に機槍を引き抜き、再び加速。
 その後ろで倒れ込んだBCには――駆け寄った未早機が機刀を突き立てた。
「皆さん、ここは任せて第二防衛線へ!」
「無力化できたのは‥五体」
 蛍機も成果を確認しながら、倒れ込んだBCを仕留めていく。
「あと‥何機?」
 変形しながら呟くシフォン。
 レーダーに点る光点は、10。
 BC群の基地到達まで――6分を切った。

 空中で繰り広げられる追走劇。逃げるHWとそれを追うKVが猛速の中で砲火を交える。
「どーせ陸側にチョッカイ出そうとしてんだろ? そうは問屋が卸さねぇッスよ!」
 源治機がピアッシングキャノンを連射。相手の速度の鈍った所に追いつき、苛烈に機銃を浴びせた。
 さらに別のHWへはロングボウがブーストを掛ける。
「眼下のBCもある、できるだけ迅速に数を減らさないと!」
 栗花落機はツングースカを放ちながらHWに吶喊、剣翼で敵を切り裂く。それを受けながらも、辛うじて耐えるHW。
 そこへ、――突如ミサイルが飛来した。
『行け、こぼれたのは拾っていく!』
 クロウ隊が最大射程の兵装で弾幕を張る。
 源治機と交戦していたHWも援護射撃で撃破。
「協力感謝、残り五体ッス!」
「この調子で殲滅するよ!」
 気炎を吐いて加速する二機。
 しかし先を飛ぶHW五体も――負けじと前進を続けた。

 ‥地上、基地から25km地点。
 設定した第二防衛ライン上空にシフォン機、叢雲機、ヴァレス機が到達する。
「足並みは揃えなくて良い、とにかく一体でも多く止める!」
 叢雲が言い放って自ら降下を開始。
 その視界の果てには、狂ったように疾走するBCが現れていた。
「もうこんな距離を‥拙僧はここまでだねぃ!」
 高速二輪でどうにかBCと並走し、少しずつ全体を掃射していたゼンラー機が最後の掃射を放ちながら失速。
 そのたすきを受け取り、KV三機が続々と迎撃地点へ着陸した。
 黒赤のヴァレス機がVTOL降下、C−200の残弾を全力発射。同時に、迫るBCへと駆け出す。
「‥ここから先は通行止めだ」
 タイミングを合わせ、爆走する敵側面へ放つ――右腕。装填された機杭が圧縮射出され、黒円の側面部を撃ち抜いた。
 衝撃に耐え切れず――BC転倒。
 さらに後方でも神天速を使用した黒白のアヌビスが短距離着陸、次いで漆黒のシュテルンが着陸する。
 二機は即座に変形、迎撃態勢に移った。
 突っ込んでくるBC群のほぼ正面。叢雲機が先頭BCへ――巨大光条を連続で迸らせた。
「レイヴン、戦果確認を」
『Yes.敵機一体撃破』
 応えるAI、その目前で炎を噴いてBC一体が倒れ込んだ。
 直後にシフォン機もBC群へ吶喊する。
「せめて‥‥もう一体‥ッ!」
 機杭ラスト一発。腕の振りに合わせて高速射出する、渾身の一撃。直撃したBCは大きく火花を噴き上げて――。
 しかし、そのまま走り続けた。
「っ‥届かない‥」
 第二防衛網を抜けるBC群。
 その上空を未早機と蛍機がフライパスする。
「BC八体が第二防衛網を抜けました。‥‥半分以上ですね」
「止めないと、無茶してでも‥‥。あたしこれ以上、消えるのを見たくない‥!」
 全速で空を翔ける二機。
 そのままBC対応班全機は――最終防衛ラインへ。

 HW群は空戦班に追われながら一心不乱に基地へと直進する。
 基地までもう――数kmの距離だった。
『こいつら‥‥なんかおかしいッスよ!』
「‥‥システム起動。螺旋ミサイル、発射ッ!」
 タロー軍曹の声に被せるように栗花落機がミサイルを四連射。
 最後尾のHWは迎撃装置を発動させるも被弾――ミサイルの炸薬『以上』の盛大な炎を噴き上げて墜落した。
「うん‥‥やっぱり、敵本命はどっちかじゃない。――両方そうなんだよっ!」
『HWも爆弾だってか!?』
 バルトが声を荒げて眼下の基地に目を落とした。
 しかも、前方のHW群は次第に高度を下げ始める。
「そうと分かればさせねぇッスよ! 吼えろバイパーッ!!」
 源治機がブースト加速、HW群へとK−02を全弾発射。
 空を埋める大量の小型ミサイルが、直撃手前から迎撃弾によって炎を上げ始める。HW群は降下を中止して必死の散開機動を取った。
 そこへ、源治機が高速接近。
「これで――どうだッ!!」
 機銃の火線がHW上部を貫き、疾風のように通り過ぎた剣翼が敵中枢を切り裂いていく。
 直後、空に撒き散る閃光と炎。
 さらにクロウ隊各機も加わり、敵を降下させないように必死の弾幕を張った。
 だがHWもフェザー砲の乱射で反撃。さらに二機を囮にして一機が降下するという、無人機と思えぬ機動で強引に活路を開く。
「行かせるかぁッ!」
 高速吶喊した黒いバイパーが、HW後部を叩き斬ってそのまま通過。
 態勢を崩して錐揉みするHWへさらに飛来する、機影。
「ボク達が――護りきる!」
 青のロングボウが放つ剣翼の一撃。
 HWは両断され、基地の手前上空で――爆炎を噴き上げた。
 残ったHW二体にはクロウ隊があたり、ほぼ空の脅威は消滅。
 だがその眼下には――BC群が迫っていた。

「Holger、絶対防衛ラインに着きました。敵群捕捉――距離1350」
「これまでの皆の努力を、あたしが無駄にしちゃいけない‥‥止めないと」
 未早機と蛍機の二機が基地を背に武器を構える。その後方に他の各機が続々と着陸。
 だが態勢が整うのを待たずに――BC八体は交戦距離へ突入した。
「迎撃、開始しますッ!」
「止まれぇッ!!」
 迎撃ライン上から二機が浴びせかける砲火。火線が奔り、弾幕に耐え切れないBC一体が爆炎を上げて転倒した。
「くッ――!」
 だが二機だけでは火力不足の感があった。BC群は被弾しながらも迎撃網を強行突破。
 二機は即座に反転、数百キロの速度差がありながら追走を開始する。
「背中には幾千の命と希望‥決して諦められないよぅ!」
 ゼンラー機も機銃連射。さらにシフォン機、叢雲機、ヴァレス機も迎撃開始、初撃一掃射で――BC三体が一斉に転倒した。
 度重なるダメージでBCも弱っているのだ。
 それでも残るBC四体は止まらない。
 ――ならばKVもまた止まれない。
 叢雲機が全力疾走。Pリボルバーを一射し、練機刀を抜き放つ。
「空戦の三次元高速戦闘に比べれば‥‥遅いッ!」
 タイミングを合わせて一閃する――月光。
 BCが爆炎を上げ、一体脱落した。
 ほぼ同時、違う個体へシフォン機が接敵、砲撃する。
「行かせない‥。これが私の‥意地ッ!」
 弾切れ機杭の代わり――BC側面へ振り下ろすルプス。猛烈な火花と衝撃が双方から上がり、両者は弾かれた。
 それでも走り続けようとするBCに――漆黒紅線のシュテルンが交差する。
「眠れ‥。ここから先は通さない」
 ヴァレス機の剣翼が閃き、黒円の内部中枢に刃を貫き通した。
 力尽きるBC、二体目脱落。
 だがその絶対防衛線すら他のBC二体が、抜けた。
 基地までの距離1100m、――残り十秒。
 その一瞬に等しい時間でただ一直線に激走する、二機。
 Wブースト、ワイバーンが辛うじて機銃の射程にBCを入れる。
「一掃射が限界。‥‥ですが、それでもッ!」
 未早が渾身の思いで絞るトリガー。
 弾着、敵は大きく揺らぐが、倒れない。BCは減速しながらも走行を継続する。
 だがそれ故に、――もう一機が追いついた。
「お母さんお父さん‥守って!!」
 体当たりと同時、練剣を突き立てる蛍機。
 甲高い金属音が響いた後――激しい爆炎が吹き上がった。
 BC14体目を撃破。
 そして最後の一体は、基地のほんの目と鼻の先に突入。
 しかしその高速の黒円を、一機のKVが超高速で追走する。
 ヘルヘブン750。
 そのコックピットに乗るゼンラーはいつになく神妙に操縦桿を繰る。基地の人々を救う為に、こうして全力で暴威を行使する醜さを自覚して。
「拙僧はまだまだ未熟。‥‥だから今は、こんな方法しか見つからないんだねぃっ!」
 ゼンラー機が苦悩を穿ち砕くように放つグングニル。大きく振るわれた機槍が、敵の中心を刺し貫く。
 同時、盛大な爆発が――荒野に吹き上がった。

「はぁ‥‥、本当によくやってくれたぜ」
 駐機したコックピットから顔を出し、バルト中尉が傭兵達全員を労う。
 砲撃や黒円の走行に巻き込まれた彼らの機体は、際立って損傷が酷かったのだ。
 ‥ふとその時、全機へ通信が入る。
『こちらイカロス隊ヒータです。同部隊はペトリーヒル攻略に成功、スタインベック大隊も敵を撃退しました。どうやら今回は――私達の大勝利ですね』
 その吉報に、思わず各員が歓声を上げた。
 ようやく基地を守り切った事を確信して、傭兵達も笑みを浮かべて機体を降り始める。
 ふと目を転じれば荒野は夕陽に染まっていた。

 彼らはいつか掴み取る平和を願いながら、ただ今日を守り切った事に――胸を張るのだった。

NFNo.023