タイトル:【AW】シベルト防衛戦マスター:青井えう

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/23 03:59

●オープニング本文


 インドネシア最西端にある西スマトラ州、ムンタワイ諸島。
 その中で一際大きいシベルト島には、隣のスマトラに存在するミナンカバウやテルク・バユールといった基地に先立ち、西海域の『目』となるレーダー基地が存在した。
 この基地でいち早く敵バグア勢力の正確な数、進路を捕捉する事によって、早期に対策を練る事が出来る為、重要な施設である。
 ゆえにこの拠点はUPC側にとっては手放したく無い場所であり――――、そこを、バグア側が狙わないはずも無かった。
 シベルト基地通信室に、南の海域を哨戒中だった巡洋艦から緊急通信が入る。
「メーデー、メーデー! こちら第三艦艇部隊所属フィジー1、通信室応答願います! 南東の方角に機影を複数発見! その数およそ十! UPC軍でこの海域を飛行予定の部隊はありましたか!?」
 その呼び声に、シベルト基地通信室に一瞬どよめきが走った。
 動揺しながらも、通信兵はすぐに言葉を返す。
「通信室からフィジー1へ、その海域で飛行予定のある部隊の情報は入ってきていない。――おそらく、バグアだ。フィジー1、作戦通り安全圏内まで撤退せよ!」
「く‥‥っ! ヘルメ‥‥‥‥だ、速‥‥! 追い‥‥れる‥‥!」
「フィジー1! 電波が乱れているぞ! どうした、応答せよ! フィジー1!」
「‥‥‥‥!! ‥‥‥‥!!」
「フィジー1! フィジー1! 応答しろ! ‥‥‥‥くそぉっ!!」

 バグア側勢力によりフィジー1撃沈。
 その知らせはテルク・バユール軍港、およびミナンカバウ航空基地にまで伝わった。
 それとほぼ同時に、シベルト基地の対空レーダーに敵の機影が映る。
「レーダーに敵ワームと思われる機影発見! 八時の方向に数は十二! 四体ずつの三編成で、トライアングル隊形を取ってこちらへ向かってきます!」
「十二体‥‥なかなかの規模だな‥‥。全部HWか?」
「分かりません! しかし、最初に襲われたフィジー1がジャミング中和装置を搭載しながら、途中で通信不能になった事を考えると‥‥」
「‥‥なるほど、何体かCWを引き連れてる可能性もあるな」
 シベルト基地の司令官が思案げに頷く。
「よし、すぐにテルク・バユールに連絡を取り、バグア勢力の進路を伝えろ! 哨戒中の艦艇に被害が出てはならん!」
「了解しました! テルク・バユールにバグア勢力の進路を伝えます!」
「それと、ミナンカバウへも回線を繋げ!」
「了解です!」
 オペレーターがミナンカバウへとマイクで呼びかける。
 一瞬の後、通信室に声が響き渡った。
「こちらミナンカバウ、どうした?」
「ミナンカバウ、こちらのレーダーで上空から飛来する敵バグア勢力を確認した! 方向から考えて、狙いはここシベルトへの攻撃だろう。数は十二で四体ずつの三編成、敵機種は不明、‥‥しかし、撃沈されたフィジー1からの通信によると、主戦力はHWだ。もしかするとCWも居る可能性がある」
「なるほど‥‥。しかしタイミングが悪いな。ここの正規兵達は別区域へ援軍に向かっている。仕方ない、傭兵でKV編隊を組み当たらせよう」
「了解、よろしく頼む」
「こちらテルク・バユール。話は聞かせてもらった。それならこちらは、傭兵部隊が包囲網を突破された場合を考えて対空艦隊をシベルトに集結させよう。幸運を祈る!」
「了解、協力感謝する」
 通信を終えるなり、シベルトの司令官はすぐさま深い息を吐いた。
 そうして、険しい表情でレーダーに目を向ける。
「敵機影数は十二、か‥‥。防衛ラインを抜けられた場合は、テルク・バユールの艦隊にもかなりの被害を覚悟せねばならんだろう‥‥。もしかするとこの基地も‥‥。頼むぞ、能力者達‥‥」
 司令長官は顔も知らない能力者達に向かって、願いを込めたのだった。

●参加者一覧

御山・アキラ(ga0532
18歳・♀・PN
クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
伊藤 毅(ga2610
33歳・♂・JG
聖・綾乃(ga7770
16歳・♀・EL
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
フィオナ・フレーバー(gb0176
21歳・♀・ER
神浦 麗歌(gb0922
21歳・♂・JG
リヴァル・クロウ(gb2337
26歳・♂・GD

●リプレイ本文

「敵機12に対してこちらは8ですか‥厳しい戦いになりそうですね‥」
 その言葉とは裏腹に、格納庫への廊下を進みながらニコニコ笑っているのは神浦 麗歌(gb0922)。自身のワイバーンには今回が初搭乗で、その性能を見るのが楽しみらしい。
「うむ、自己の能力を測るには最適の条件だ」
 麗歌の隣で、まるで実戦テストでも受けに行くかのように言い放つリヴァル・クロウ(gb2337)。
「ん‥リヴァル、あまり無理しないようにね。空戦は勝手が違うんだから突っ込みすぎないでよ」
 リヴァルの友人であるフィオナ・フレーバー(gb0176)が諭すように話しかける。
「まっ、サポートはしてあげるから、ほどほどに頑張ってきなさいっ」
 フィオナは、軽くリヴァルの背中を叩いて請け負った。
「こちらの方が、数が少ないのは、少々きついですが、どうにかなるでしょう」
 みんなの話に頷きながら、伊藤 毅(ga2610)が少し詰まりながら言う。
 そうこうしている間に傭兵達は格納庫に着いた。
 各々が自分の機体へ搭乗し、出撃準備を整える。
「‥‥大丈夫だ、俺達ならやれるはずだ‥‥」
 KVの電子機器を起動させながら、リヴァルと同じく初めてKV依頼に参加するヒューイ・焔(ga8434)は呟く。
 そこへふいに、毅が全体へ向けて無線連絡を入れた。
「そういえば、この部隊には指揮官がいませんね。もしよろしければ、僭越ながら当機が作戦指揮を取らせていただく‥‥といっても、基本的にやることは決まっていますけどね」
 その毅の言葉には誰も異論を挟まず、同意を示した。
 各自で役割とその時々の対処法は頭に叩き込んでいるとはいえ、大局で統制の取れた動きが必要となる時があるからだ。

 出撃準備が整うと、傭兵戦隊は滑走路を加速し空へと飛び立った。
 V字型の編隊を組む能力者達。
 隊列は、
 左翼先鋒から 麗歌『ワイバーン』、焔『ハヤブサ』、毅『バイパー』
 右翼先鋒から クラリッサ・メディスン(ga0853)『ワイバーン』、聖・綾乃(ga7770)『アンジェリカ』、リヴァル『R−01改』
 中央前方 フィオナ『岩龍』
 中央後方 御山・アキラ(ga0532)『ウーフー』
 という風になっている。
 両翼先鋒のワイバーンニ機がCW班を担当。中央後方のウーフーも基本はCW班だが、敵勢力によっては班を変更する、隊の調整役だった。
 その編成で傭兵達は敵ワームを迎撃へ向かう。
「頼むぞ、傭兵達! 敵を通さないでくれ!」
 テルク・バーユ軍港から派遣された対空艦隊の上を通り過ぎる時、そんな無線連絡が舞い込んだ。
 その言葉に、綾乃が無線を開いて返事する。
「はーい、任せて下さいっ。私達がぱぱっとやっつけちゃいますからー!」
「頼んだ! 私達も後方で対空砲を構えて待機している! ‥‥グッドラック!」
 海兵達に見送られて飛び去っていく能力者達。
 それから異変は、数分と経たない内に起こった。
「無線、レーダー機器に異常。ジャミング、か。‥‥さて、何が出るかな?」
 アキラが呟きながら、ウーフーのジャミング中和装置を起動させる。
 そのはるか前方には――点のような複数の黒い影が見えた。
 編隊の右翼先鋒でそれを視認したメディスンは、ワイバーンの火器管制システムをオンにする。
「ここで基地に手を出される訳には行きませんわね。招かれざる客にはそうそうにお引き取り頂かなくては他に示しが付きませんモノ」
 敵ワーム隊と傭兵達は急速に接近。点だった黒いワームの機影は、徐々に輪郭を現し始め、太陽に反射されて色までが識別できる距離になり――。
 やがてシベルト島南の海域上空で、両隊が激突する――!

 先制を取ったのは長射程距離を持つ敵側ワーム。
 HWのプロトン砲が、一斉射撃により六本の光線をKV編隊に放つ。
 能力者達はすぐさま散開して回避行動。――しかし、運動性能に難がある岩龍が避けきれずに胴体を擦る。
「あうっ――!」
 激しい振動と共に、岩龍の装甲が削れた。
 それが撃ち終わるか終わらない内に、麗歌がマイクロブーストを発動。
 爆発的な機動を得てワイバーンが敵右翼隊に接敵する。
 敵の編成は、小型HW2CW2の四機で三編隊。
 CW班を担当していた麗歌は、2連ロケット弾ランチャーの照準をCWに合わせた。
「‥‥っ」
 CWに近付いた事で激しい頭痛が麗歌に襲う。しかしそれでも集中してCWを狙い、連続で発射。
 ロケット弾が計六発、CWに被弾した。しかし、惜しくもCWはギリギリ持ち堪え、撃墜には至らない。麗歌はそのまま離脱、敵右翼隊から距離を取る。
 さらに右翼のメディスン機も敵左翼隊に接近。
 麗歌と同じくロケット弾を六連射。しかし元の武器は同じでも、こちらの方が多く改造を施していた。CWは耐え切れずに爆発、撃墜する。
「ふふ、海の藻屑になると良いわ」
 次に左翼中央の焔が敵を射程距離に入れるなり、敵右翼隊HW二体に牽制射撃する。放たれたロケット弾が全命中、二体の装甲を破壊した。
 ――反撃する形で、右翼HW隊が前進しながらプロトン砲を砲撃。前方に居る毅、焔が狙われる。
「くっ、いてぇ!」
「‥‥左翼被弾」

 同時に敵左翼隊も攻撃していた。敵右翼隊と同様に、前進しながらのプロトン砲の連続砲撃。リヴァルと綾乃がターゲットとなる。
 リヴァルのR−01改が二つ被弾。
 しかし、CW一機撃墜で精神攻撃の影響が少なくなっていた為、綾乃のアンジェリカは連続砲撃を回避する。
「へへーん、当たりませんよー」
 リヴァルも計器類に目を移しながら復帰した。
「多少の損傷が見受けられるが任務に支障はない。戦闘を継続する」
 言うと同時に、敵左翼のHWへ突撃仕様ガドリングを発射。更にそれが命中する前に、副兵装の高分子レーザーを起動。同じ敵へ向けて放った。
 HWは突撃仕様ガドリング砲を激しく被弾しながら、レーザーだけは辛くも避ける。
「レーザーは避けられたか‥‥。命中精度的にも、ガドリングの方が効果的だな」
 リヴァルはそう結論付けた後、別方向からの敵の攻撃などを警戒してR−01改の態勢を整える。
 それと入れ替わるようにして、綾乃機アンジェリカが84mm8連装ロケット弾ランチャーを放った。
 HW二体へ計二十四発の小型ロケットが次々に衝突。小さな爆発と共に、HW達の機体が弾け飛ぶ。
 それと同時に反対側からも激しい銃撃音。
「エネミーガンレンジ、FOX3」
 毅の操るバイパーが敵右翼隊へ特攻しながら20mmバルカンを連射していた。
 十発ずつ、三十発の弾丸が二体のHWへ襲いかかる。十発は回避、残りがそれぞれ均等にHW達の機体へと食い込み、火花を散らす。

 しかし、能力者達の回避、命中があまりかんばしく無い。
 やはり一番の原因はCWによる精神攻撃だろう。それによって能力者達の照準、回避行動は乱れ気味になっている。
 アキラはそんな状況を見て、CW撃墜に動いた。
 敵右翼、麗歌の攻撃によって瀕死になっていたCWへ向け、ウーフーの84mm8連装ロケット弾ランチャーが火を噴く。
 CWは一撃の下に堕ちる。更に照準を変えて、もう一体のCWへとロケット弾を二固まり撃ち放った。さすがにCWを相手に外す事は無かったが、仕留める事は出来ない。
「‥‥キューブワームに完全に対抗し得る対ジャミング手段が欲しいところだな」
 未だレーダーがほぼ映らないのを見ながらアキラは呟いた。
 一方、敵中央隊のHWが前方へ突進しながらプロトン砲を乱射する。真正面のフィオナが乗る岩龍へ二回、更には麗歌、メディスンのワイバーン組が砲撃される。
 直撃に合う四機。特に岩龍は先の攻撃とも合わせてかなり装甲を削られる。
「まずいわ、ちょっと逃げないと」
 ブースト移動で右翼方向へ離脱するフィオナ。ジャミングを中和し続ける為にも、岩龍は敵へ攻撃するよりとにかく生き残らなければならない。
「それにしても‥‥電子ジャミング全然晴れないな」
 後方から全体の戦況は把握できるのに、それを仲間に伝える術が無いのが歯痒かった。

 戦闘は激化しつつあった。
 敵味方入り乱れての至近ドッグ・ファイト。右翼ハヤブサが敵のHWへ向けて長距離バルカンを連射。狙われたHW二体は避けきれずに被弾する。特に弾丸を多くもらった方のHWが機体中枢部を損傷し、そのまま爆発した。
「よし、一機撃破だっ!」
 その焔の叫びに呼応するように、猛攻を開始する傭兵達。
 焔の反対側で、敵左翼HW二体へ向けてアンジェリカのロケット弾が大量に発射された。だが敵と著しく接近した為に、CWの重複した能力を受けて綾乃は上手く照準を合わせられない。
 それは、同じ右翼隊に位置するリヴァルも同様である。照準がままならず、敵を撃つ事が出来無い。
「‥‥いっけぇっ!」
 その時、突如後方から発射された岩龍のG−02とAAMの四発。
 時間差で放たれたそれが、HWの一体を追いかける。そのまま全弾命中、HWが大きく傾く。
「‥‥フィオナ、援護感謝する」
 呟いてリヴァルは態勢を崩したHWに高分子レーザー砲の照準を合わせる。
「これが結論だ」
 放たれた三本の光線がHWの機体を完全に貫き――爆破させた。
 右翼隊がHWを落としている間にも、アキラのウーフーが縦横無尽に活躍を見せていた。敵右翼隊最後のCWへ向けてロケット弾を発射。確かな手応えと共に、方向転換して敵左翼の方へ向く。同時にロケット弾は右翼CWに着弾、見事撃墜した。
「敵右翼CWは殲滅だ――次は敵左翼」
 言うと同時にアキラはウーフーを向かわせ、敵左翼CWへと攻撃した。CWの四角い機体へ大きな損傷を与える。
 しかし、傭兵達が激しく攻撃すると同時に、敵の反撃も熾烈さを増した。
 敵右翼HWが直線状に並んだヴァイパーとワイバーンにプロトン砲を二度発射。さらに、少し向きを変えてハヤブサにも砲撃する。
 その時既に右翼隊のCWが殲滅していた為、麗歌と焔は軽々とプロトン砲を回避。
 しかし、戦闘空域真っ只中に突っ込んでいた毅は、中央CWと敵左翼CWからも精神攻撃を受けていた。そのためプロトン砲の回避に専念出来無い。
 直撃――バイパーの機体が激しく削られる。
「被弾‥‥まだ、問題無い」
 同時に敵左翼のHW一体が、直線に並んだリヴァルとメディスン、同じく並んだリヴァルとフィオナ、綾乃単体へ向けてそれぞれ砲撃する。
 綾乃、リヴァル、メディスン、フィオナの全員が被弾。しかし、敵の攻撃に警戒していたリヴァルは、砲撃の一つを避ける。
 混戦状態。
 そんな言葉が相応しい状態で、麗歌が中央のCWの一体へロケット弾を六連発。一撃一撃にその脆い装甲を削り取られ、最後の一撃が中枢機能に到達、――撃墜した。
「CW一機撃破――残り二機」
 麗歌のその言葉が、激しいノイズと共に全員の無線に流れる。レーダーにも空域を飛ぶ機体が表示され始める。――ジャミングが消えつつあった。
「よし、HW班は引き続き足止め‥‥倒す気で牽制する」
 無線が回復した事で、部隊の臨時指揮官である毅が全機に方針を伝える。右翼から中央に向かってバルカン掃射。三体のHWにダメージを与えた。
 HWがその牽制攻撃に気を取られている隙に、メディスン機のワイバーンが左翼と中央CWへロケット弾を撃ち込む。左翼CW撃墜、中央CW損傷。
「さぁ、CW残り一機ですわっ――!」
 敵戦力は右、左翼共にHW一体、中央にHW二体とCW一体。
 傭兵側の優勢が――ほぼ明確に見え出した時。
 突然、敵中央HW隊が猛速力で包囲網の突破を試みた。
 高速で移動、傭兵隊の後方に居たアキラのウーフーに接敵。拡散フェザー砲で集中砲火を浴びせる。
「チッ、私を集中狙いか」
「――アキラさん、五時の方向へロール! 真横からも連続して砲撃が来ます!」
「了解」
 フィオナのサポートを受けながらアキラは緊急回避。全部を避けきる事は叶わないものの、機体を削られながら六つの内半分を回避する。

 アキラもやられてばかりでは居ない。すぐさま態勢を立て直し、HW後方のCWへ向けて残っていたロケット弾を全弾発射。最後のCWは脆くも崩れ去った。
 更に主兵装の高分子レーザーを突破しようとするHWへ命中。
「らあああああっ!」
 左翼からブースト使用のハヤブサが、弾丸の如く飛来する。
 同時にCW殲滅まで温存していた8式螺旋弾頭ミサイルのアームロックを解除。包囲網を抜けようとするHWへロックオン、――発射した。
 三発のドリル状ミサイルがHWに着弾、轟音と共に一機が大破、もう一機も大ダメージを受ける。
「そろそろ終了にさせてもらう」
 右翼から、R−01改のアグレッシヴ・ファングを使用したホーミングミサイルが飛来する。超高速で飛来するミサイルが中央HWへ直撃。空気を揺るがすような音の振動が聞こえ、HWの装甲が吹き飛ぶ。
 中央へ援護を出しつつ、R−01改は目の前の敵左翼HWへもガドリングの砲撃を加える。
 反対側で毅が敵右翼HWをG−01ミサイルを全弾発射で撃墜。
 すぐに方向転換すると、今度は中央HWへホーミングミサイルを撃ち込み――命中させる。
 しかし、傭兵達の猛攻で瀕死になったそのHWはまだ動き続け、高速移動で傭兵達の包囲網を抜けると、――シベルト基地方面へと向かった。
「――ダメだ、速い。対空艦隊に期待するしかないな。左翼HWの撃墜に専念する」
 毅は追撃を諦めて部隊に指示を出す。
 麗歌が左翼HWへ向かってスナイパーライフルを射撃、弾を充填、もう一撃。
 さらに間髪を置かずフィオナのミサイル群がHWに直撃する。
 ほぼ瀕死のHWは、しかしそれでも、目の前の綾乃のアンジェリカへと砲撃しながら突破を試みる。
「甘いですっ」
 綾乃は追加補助スラスターを全開にして、垂直にHWのプロトン砲を回避した。すぐさま半ロールしHWへ狙いを付けると――。
 至近距離の高分子レーザーとホーミングミサイルで――、HWは跡形も無く爆散した。

「敵残存勢力0‥‥。任務完了です、帰還しましょう!」
 全員の無線にフィオナの声が流れる。
「一機に抜かれたか‥‥。まあいい、空域内敵影発見できず、ミッションオーバー、RTB」
 毅も帰投を宣言し、傭兵達はゆっくりと帰還し始める。
 しばらく飛ぶと、無線通信が入った。
「傭兵諸君、よくやってくれた! シベルト基地は無傷、艦隊にも被害は無い。作戦は成功だ!」
「こちらが逃がしたHWは落とせたのか?」
 通信にリヴァルが質問を返す。
「ああ、砲弾に掠っただけで落ちたよ。よっぽど弱ってたらしいな!」
「はぁー良かったぁー‥‥。無事に作戦が成功して何よりですね!」
 綾乃がニッコリと笑いながら司令官に言った。
「ああ、まさか抜けてきたワームがあんな瀕死のヤツだけだとはな。海軍も拍子抜けしたらしい。‥‥傭兵諸君、感謝する」
 無線越しの敬礼を向けられながら、傭兵達は夕暮れの海を帰投した。