タイトル:忍者鬼ゴッコマスター:青井えう

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/02/22 03:39

●オープニング本文


 忍者連合本部。
 それは全国で活動している忍者愛好者達の総本部であり、大阪の「OSAKA文化学術研究ミレニアム」、通称「エイジア学園都市」に大型娯楽施設として鎮座している。
 しかし、その知名度はお世辞にも高いとは言えない。
 今日も忍者幹部達は緊急会議と称して、会合を開くのであった――。

「なんかこう、鬼ごっことかしたいでござるな。なんとなく」
 ちゃぶ台を中心にして幹部の一人が言った。
「あー良いニンねー」
「それパネェでごわす」
 他の二人も大きく頷いて同意する。緊急会議は鬼ごっこの開催を決めた。
「それなら場所は裏の林とかが良いニン」
「身を隠せそうな岩場もあるでござるしな」
「なんなら池もありチョリーッスごわす」
 忍者連合本部という事だけあって、その施設は広大な敷地を有する。
 中には忍者専用の修行場所という事で滝があったり広場があったりと、ただの娯楽施設に留まらない機能を持っていた。
 そして、その内の一つである広い林に鬼ごっこ会場としての白羽の矢が立ったわけである。
「じゃあ三人でやるごわッスか?」
「‥‥‥‥いや」
「それはちょっと、寂しいニン」
 思案に暮れる三人。そもそも巨漢の忍者、一ノ関ごわすが鬼になった途端、鬼ごっこにはならない。逃げるのが簡単すぎる。
「そうだ、ちょっと下忍達に電話してみるでござる」
 仮にも彼らは幹部である。人が足りないなら部下を呼べば良いという事で、時代遅れの黒電話に拙者二の助は手を伸ばした。
 受話器を耳に押し当ててしばらく待つと、内線で下忍に繋がる。
「あ、もしもし? 今暇でござる? ちょっと拙者達と鬼ごっこ――」
「すいません忙しいので」
 電話が切られ、無機質な電子音だけが耳を叩く。
 他にも二、三の下忍達に掛けてはみたものの、誰一人最後まで話を聞いてくれる忍者は居なかった。
「あの、それならまたCMという事にして‥‥ニンニン」
「‥‥そう、でござるな。能力者を呼べば解決でござる」
「ウィィーッシュ」
 三人は意気消沈しながらそんな結論に行き着く。能力者を一体何と勘違いしているのだろうか。
 しかし三人は意気揚々とタンスからULTの依頼書を取り出すと、その空白を埋め始めた。
「あ、そういえばキャッチフレーズ決めるニン?」
「そうでござるな。では今回も一人一単語ずつという事で」
「ごわッス」
「よし、では我輩から‥‥『地獄』」
「鬼でござるからな。拙者は‥‥『迅れ』」
「『マジヤベェッス』」
 ごわすに他の二人は無感情な瞳をジッと向けた。
「え? 何でごわす? なんかサーセンww」
「‥‥楽しみでござるな」
「‥‥秘術の限りを尽くして逃げるニン」
 三人は頷きあった。

●参加者一覧

エクセレント秋那(ga0027
23歳・♀・GP
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
芹架・セロリ(ga8801
15歳・♀・AA
山崎・恵太郎(gb1902
20歳・♂・HD
蒼河 拓人(gb2873
16歳・♂・JG
戸隠 いづな(gb4131
18歳・♀・GP
ソフィリア・エクセル(gb4220
19歳・♀・SF
春野・若葉(gb4558
18歳・♀・FC

●リプレイ本文

●始まりは唐突に
 日曜日の昼下がり。
 チャンネルを回す何組かの家族の目に、こんな文言が飛び込んだ。


『笑顔の敵は本能寺にあり! 爽やかに地獄へ迅れこのドサンピン!
 隙あらば狙う芸術的な右ストレート、マジヤベェッス!!』


 ‥‥。
 一体なにを伝えたいのだろうか。
 それは誰にも分からない。
 困惑の広がるお茶の間を置いて、死闘の幕は開けるのだった。


●遊戯開始
 天頂できらめく太陽。
 良く晴れた冬のその日は、まさに絶好の鬼ごっこ日和。
「ふむ、今回は張り切ってオニオニするでガンス」
 妙な語尾に目覚めた芹架・セロリ(ga8801)。もう全く忍者関係ない。
「んむっ、今回は忍者さんについて色々調べてきたよ。攻略法もバッチリさ!」
 少年雑誌の忍者漫画を片手に拳を握り締める蒼河 拓人(gb2873)。
 しかし、その資料選択は決定的に間違えてしまっていた。
「鬼ごっこねぇ‥‥。ま、たまにはこう、童心に戻るのも良いよねっ♪ 楽しんだ者がちでしょーっ!」
 春野・若葉(gb4558)は明るく言い放ち、ニッコリとカメラに向かってウインク。現役モデルのサービスは伊達では無い。
 そしてその他にも能力者達が各々集まり、約束の時刻を迎えた――。

 と、突然。
「ふっふっふ、よくぞ参ったでござる!」
「心の準備は良いニンニン!?」
「ごわッス!」
 積もった落ち葉の中から、保護色の布を取り払って、普通に弟子を連れて、三人の忍者が突如として現われた。
 その光景に驚愕するソフィリア・エクセル(gb4220)。
「何か変な所から色々と現れましたわっ‥‥!」
「い、いや! 忍者っぽいでござろう!」
 二の助は顔を真っ赤にして反論する。
「笑止ッ! 拙者こそが真のにんにんです」
 『忍者』という単語に反応して、ズズイッと前に進み出たのは戸隠れ流の忍者、戸隠 いづな(gb4131)。
「なるほど、相手に不足は無いニン。さて、それではそろそろ‥‥」
「あれ? でもまだ揃って無いんじゃ?」
 山崎・恵太郎(gb1902)は集まった能力者達を見回す。
 居るのは七人。
 確かもう一人能力者が参加していると聞いていたはずだが‥‥。
「いや、もう来ておるよ。――どうぞ先生、やっちゃって下さい!」
 忍者のものとは思えない掛け声と共に、カメラは一同の頭上に流れる。
 そこに映ったのは、一本の太い枝の上に立つ――人影。
「――俺は謎の忍び、夜七。
 ‥‥誰だ。今ヤシチと呼んだ奴は。ヨナナだぞ。それと夜十字でも無い」
 忍者装束に身を包んだ夜十字・信人(ga8235)だった。

 ‥‥なんという裏切り者。
 七人の胸の中で声にならない声が響く。
「ふっふっふ。ではルール説明を――」
「ああもう長い! すっこんでろドサンピン!」
「なっ‥‥!?」
 なかなかゲームが始まらない事に苛立っていたエクセレント秋那(ga0027)が、とうとうキレた。
「大体、ルールなんて簡単だろうさね! ――余計な事は考えずに真っ向勝負! パワー全開であの肉の山を崩し切ってやろうじゃないの!」
 ドドーンと腕を組み、ごわす軍団を睨む秋那。もう鬼ごっこのルールでは無くてプロレスのルールである。
「どすこぉい! 地獄を味わうが良いでごわッスゥ!!」
 しかし、ごわす軍団は異常な熱気を発散して迎え撃つらしい。
「う、うむ、まぁ良いか。では、――遊戯開始!」
 こうして全力を賭けた鬼ごっこの火蓋は、切られた。

●肉の力士達
 三十秒数えた後、既に三蔵、二の助、夜七の姿は煙のように消えてしまっていた。
 しかし――、ごわす達は一歩も動いていなかった。
「ふーん、よく逃げなかったね。そこは褒めてやろうじゃない」
「逃げるまでも無いごわすからな! いくごわす、木の葉の海!」
「どすこォーい!」
 周囲を固める力士からまず先頭の一人が秋那へ向かっていく。
 秋那は真正面から迎え撃った。張り手をはねのけて力士のマワシを掴みに行く。肩と肩のぶつかり合う音が大きく林に響いた。
「むぅ、どすこーい!」
 秋那を投げ飛ばそうとするがビクともしない。逆にマワシが強い力で浮き上がり、慌てて踏ん張ろうとしたが――。
「ウラァ! ジタバタすんじゃ、――ないよッ!」
 秋那、まさかの投げっぱなしジャーマン・スープレックス。
 巨体は放り投げられて地面に落ちると同時、積もった木の葉が爆発したように高く舞い踊った。
「な、なんでごわすか!?」
「まままさか木の葉の海がッ!」
「えぇい、怯むなでごわッス! 次、行くでごわすぅぅぅ!」
 ごわすの号令で、二番目の力士が秋那と激突する――。

 その激闘に力士達の気が取られている隙に、セロリはその小さい体を太い足の間に潜り込ませてキツそうに進んでいた。
「ふふふふふ‥まさに、忍法隠れ身の術って奴でガンス」
 ギュウギュウに押し込められながらも満足そうなセロリ。だけどなんか違う。
 時同じくして、木の影からふいに姿を現す女の子。
「あの‥‥力士の皆さん。これ、受け取って貰えませんか?」
 まだあどけなさの残る童顔をほんのり赤く上気させて、照れたように微笑む姿は天使のよう。
 そしてその両手が差し出すのは――バレンタイン・チョコレート。
 力士達の動きが止まる。
 だが、ふいにごわすが答えた。
「はっはっは、いや結構でごわす。夜七どんから貰ったガムを噛んでごわすからな」
 モグモグと口を動かしながら答えるごわす。
 ――だが、それが軍団の総意では無かった。
「「「ご、ごっつぁんでごわぁすッ!」」」
 突然、弟子力士達の半数以上が声を上げる。
 別にお腹が空いていたのでは無い。
 ただ彼らは強いて言うなら、――愛に飢えていた。
「な!? ま、待つでごわす!」
 ごわすが声を掛ける。
 しかし、一度放たれた水の流れを止める事など出来無い。弟子達は走り出して――、
「ぷっ、うげぇっ!」
 その足元から潰れたような悲鳴が響いた。
「あ。セロリちゃん、‥‥そんな所に?」
「さすが拓人、我が友だ。‥‥あっぱれ‥‥天国で‥チョコが‥待ってる‥‥ガクッ」
「セロリちゃーーーんっ!!」
 なんだかおかしな展開を見せる二人。
 そして力士達は、今さら女の子が女装した拓人だった事に気付いて呆然とする。
 士気は大いに下がり、三人の力士がいっぺんに秋那に投げられていた。

●罠だらけ
 一方、若葉と恵太郎が二の助と対峙する。
 ただし、十メートルほどの距離の間には『罠』と書かれた看板だらけ。
「ふっふっふ。夜七殿は全くの策士。どうでござる、簡単には近づけまい」
 その看板の量に二人は喉を鳴らしたが、――若葉は勇気を奮い起こした。
「ううん、なんのっ! 女は度胸だ‥‥それーっ!」
 勢いに任せて一歩を踏み出す若葉。‥‥すぐさま身構えたが、意外にも何の異変も無かった。
「なるほど‥‥。看板はフェイクかな?」
 恵太郎が地面を枝で叩きながら進む。だがやはり罠らしき物は無い。
「ふっふっふー、やっぱりねっ! よし、罠も見破ったし、覚悟ー!」
 と、更に若葉が一歩を踏み出した瞬間。
 ひゅるひゅるーっと足に縄紐が絡み付いて、――木の枝に逆吊りになった。
「若葉さん‥‥!?」
「ダメー! 見ちゃ嫌ー!!」
 制服を着てきたのが災いした。スカートはめくれ上がり、セーターも胸までずり上がって乙女の柔肌があらわになる。
 そして頬を赤らめながら両手で必死に服を直そうとする姿が逆に‥‥その、なんだ。二の助も下卑た笑みを浮かべるほどである。
「くっ、こうなったら早く勝負を付けないと! ――これでも、食らえ!」
 恵太郎が二の助へ何かを投げる。
 投擲された物はゆっくりと弧を描き、ぱさりと落ちてその正体を明らかにした。

 ――女性用花柄下着。

「ふ‥‥、むふふ‥‥」
 これは、クリーンヒットか。
 二の助もまんざらでは無さそうだ。
 ただ、なぜ恵太郎がこんな物を持ち歩いていたのかがどうしても分からないが。
「女性下着は小判と同等‥‥」
 だがそこまで言うと、二の助はカッと顔を上げて怒鳴る。
「――しかし、男が触れた物などゴミ屑以下でござるぅッ!!」
 変態だ。
 恵太郎と若葉だけでなく全国浦々の視聴者が思った。二の助の親は泣いた。
「お、お願い、頑張ってー!」
 変態に見られて涙目になった若葉から、恵太郎へ声援が飛ぶ。
「まずい、このままでは若葉さんが‥‥。くそ――これでどうだ!?」
 追い詰められた恵太郎が放つ切り札。
 ビシィッと突き出したのは、フィアナ・ローデン(gz0020)のCDアルバム『ピース・ザ・ワールド』だった。
「はっはっは、甘い甘すぎるでござる! フィアナたんのCDならもう三枚も持って――」
 だが、そのジャケットを見て二の助は目を見開く。
「そそそそそれは、直筆サイン入りヴァージョ‥‥!!」
 つんのめるようにして駆け出す、二の助。
 しかし、両者の間には沢山の罠があるわけで。
「お? おおおおう不覚ううううう!!」
 自分の仕掛けた罠に見事掛かる二の助。
 逆吊りになった後はカゴの中の鳥同然だった――。

 策士策に溺れる。
 ――二の助、リタイア。


●忍術(?)合戦
 ――ニンニンは、逃げていた。 
「‥‥またニン、また、また歌が聞こえるニン‥‥!」
 息を切らせて破裂しそうになる胸。しかし、足を止める事は出来無い。なぜなら――、
「あなあぁぁぁああたぁああぁぁぁぁにぃぃぃ〜♪」
「まだ聞こえる! うああああ、誰か助けてニィィィン!!」
 背後に、『何か』が迫っていた。
 そう、木の間を縫うように追ってくるのは――。
「煌く汗☆輝く、え・が・お♪」
 カメラが向いた瞬間、キラキラッと輝く笑顔を浮かべるソフィリアだった。
 美声ではあるがやや音痴、という少し惜しい彼女。
 だが、意外に怖がりなニンニンはすっかり錯乱状態である。
「ニンニン、覚悟!」
 突然、前方の樹上から声が掛かる。
 反射的に顔を上げると、そこにはいづなの姿。ホッとするニンニン。
「よ、良かった‥‥幽霊じゃないニン」
「何をたわけた事を。戸隠れ流忍者、いづな参る!」
 そう言っていづなは木に括り付けた荒縄を握り、ニンニンへ向かって振り子のように飛びかかる。
「甘いニン! ニンニン流、豆弾乱舞!」
 ニンニンが回転を駆使して投げた豆が、あらゆる方向からいづなを襲った。もしこれに当たれば五秒間動けなくなってしまう――!
 だが、いづなにも秘術があった。
「戸隠れ流、火遁玉!」
 火薬の詰まった無数の袋がいづなの周りで小爆発する。その爆風がペイント豆を押し流し、一粒の豆もいづなを掠らせない――!
「なっ‥‥!」
 驚愕するニンニン。そこへ――迫るいづな。
「――ニンニン、その首取っぁぁぁー‥‥!?」
「きゃあっ!?」
「‥‥ニン?」
 いづなはニンニンの頭上を通り過ぎて後方のソフィリアに抱きついた。
 もんどり打って倒れ込む二人。
 振り返り、唖然とするニンニン。
「く‥‥ふっふっふ。はっはっは! 忍者に勝とうなんて十年早いニンよ! これでも食らうニーン!」
 ニンニンは調子に乗ってペイント豆をばら撒く。悲鳴と共に赤、青、緑と様々な色彩に染まる二人。
 しかし、――その途中で異変は起こった。
「あ! よ‥‥よくもソフィリアの髪を‥‥!」
「え、な、何ニン?」
 突然、ソフィリアの態度が豹変したのに気付いたニンニン。
 そのまま逃げれば良かったのに‥‥謝る方を取ってしまった。
「ご、ゴメンニン。でもわざとじゃ――」
「‥‥1、0。地獄に‥‥――落ちると良いですわ」
 ソフィリアは一気に間合いを詰めた、後。
 7HIT!

 ――血しぶきと共に、ニンニンは枯葉の上に崩れ落ちた。
 ニンニン――リタイア。


●裏切りの忍び
 十九人目の力士を投げ飛ばした秋那。しかし、さすがに疲労の色が見えていた。
「‥‥登る山が高い方があたしは燃えるんだ。この肉山を登りきって見せるよ!」
 気合いを込めて最後の力士と激突。
 長い押し問答の末、秋那は――相手を放り投げた。
 まさかの二十人切り――。愛弟子全員が完敗した事に、ごわすは首を振った。
「負けた‥‥でごわす」
「‥‥あぁ、あんたの弟子も強かった。なかなか良い勝負だったよ」
 そう言って、秋那はごわすの肩に手を置く。

 ごわす――リタイア。

 しかし、戦いはまだ終わっていなかった。
「ふ‥‥、全員捕まったか。ふがいない」
 いつの間にか樹上に現われた夜七。
 それを見据えるは――拓人とセロリ。
「夜七‥‥君が誰であろうと、超えさせて貰うよ!」
 キューピットアローに模擬矢を番えて一射。
 夜七はかわして樹上から飛び降りる。拓人はその夜七に‥‥キューピットアロー自体をも投げる。
「むっ!」
 予想外の攻撃ながら辛くもかわす夜七。そこへハリセンに持ち替えた拓人が迫り、――それを大きく振りかぶると。
「よろしく、セロリちゃん‥‥!」
「あいよ、これで終わりだ! よ、よるなな‥‥!」
 微妙に名前を忘れつつ、拓人が投げたハリセンを受け取るセロリ。
「くっ、後ろか――!」
 気付いた時にはもう遅い。
 セロリの渾身の一撃が――、スパコーンッと夜七の頭を叩いた。
「見事‥!」
 言い捨ててグラリと倒れる夜七。
 こうして、ゲームは――能力者達の勝利に終わった。


●終幕後
 静かな水面をたたえる池。そこをふと若葉が通りかかった時。
「タッチですっ!」
 ざぶーんと出てきたいづなが抱きついた。
「いづなちゃん。‥‥もうゲームは、終わってるよ?」
 それで初めてゲーム終了を知ったいづな。
 そして自分が抱きついたのが若葉で、しかも自分のせいでビショ濡れなのにも、気付いた。
「その、知らなくて‥‥。あ、あはは」
「逃げろ! いづなさん!」
 ふと声がしてそちらを見ると、若葉の後ろに――なぜかグルグルに縛られた恵太郎の姿が。
「‥‥え、あの?」
 ニッコリと微笑む若葉は、口を開く。
「良いのよ。――さあ、どう縛って欲しい?」
 罠に掛かったショックからか、縛りの女王の血に目覚めていた若葉。
 林にもう一人の被害者の悲鳴が響いた――。

「お疲れ様です♪ 皆様にもチョコを上げますわね♪」
 ゲームも終わり、能力者達と忍者達の和やかな時間が流れる。
 全員のチョコを集めて打ち上げをやっている時、ソフィリアは立ち上がり忍者達に手作りチョコを渡す。
「ありがとうニーン」
「かたじけのうござる」
「ごわす! ごわす!」
 良い汗をかいて疲れたのか、各々それを嬉しそうに受け取って口に運ぶ。
 しかし「ぶっち義理」と書かれた『髑髏』型のチョコは、どう見ても怪しさ満点だったのだが。
 そして案の定、それを一口かじった瞬間。

「「「ギャアアアアアアアアアアス!!」」」

 三人達は「激辛チョコ」という世にも稀な珍味に悲鳴を上げた。
 ――こうして今回の遊戯は。
「捻じ曲がった考えをそのチョコで修正ですわ♪」
 ソフィリアの黒い笑顔で――幕を閉じたのだった。