タイトル:第五駐屯地の部族の村マスター:青井えう

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/26 23:40

●オープニング本文


『第14歩兵小隊長キャンリルより、本部へ! たった今村がキメラ群の襲撃を受け自小隊と交戦中! 村人を守りながらでは戦闘に専念できない! 基地から避難部隊を派遣してくれ!』
『こちら司令部了解、第8密林部隊を派遣する。装備は足りているか?』
『十分だ! それじゃ密林部隊の到着を‥‥ッ!? 敵が撤退していく‥‥?』
『‥‥どうした、キャンリル?』
『敵が撤退している。あぁ‥‥どうやら部下の一人が敵リーダーにロケット弾をブチ込んだらしい。やれやれ、助かったな‥‥。とりあえず戦闘は終了のようだ‥‥』


 世界最大規模を誇る熱帯雨林の南米アマゾン。荒々しい自然が目隠しとなって、バグアと人間が泥沼化した戦闘を続ける競合地帯である。
 そんな過酷な戦場にある「南米UPC軍第5野営駐屯地」では、日常的な小競り合いや慢性的な物資不足など各種問題に加えて更に新しいトラブルに直面していた。
「‥‥今回村を襲撃したキメラの集団は、約二ヶ月ほど前からこの周辺で活動しているキメラ集団と一致する可能性が高いです。‥‥というか、情報部長官のレーナはもう断定しているようですネ」
「あぁ、既に聞いている。親バグア派では無い原住民の村を攻撃して回っているそうだな?」
「えぇ、壊滅した村もあります」
「‥‥捨て置けん問題だ」
 第五駐屯地司令官のギルドール・ホフマン少佐と副司令官アイリス・マーム中尉が先日の事件について話し合っていた。
 アイリス中尉は思案げに首を傾げながら呟く。
「やはり‥‥キメラ達は再度の襲撃を試みるのでしょうか?」
「来るだろう。群のリーダーの傷が癒えればな」
 ギルドール少佐が答える。この集団の統率されたこれまでの活動から言ってそれは恐らく間違いないように思われた。
 現在、この村には第14歩兵小隊が駐留している。32人からなるこの部隊だが、現在は先の戦闘で6名が負傷して基地に戻っていた。後の残りの兵士で村に警戒態勢を敷いている。
 一方、村人は全員が基地に避難済みだったが、家畜までは連れていけなかった為にその世話は第14歩兵小隊がしている。兵士達は慣れない仕事でだいぶ苦労しているらしい。豚に押し倒されたり、鶏を誤って蹴り飛ばしたりしているとの事。
「敵がどのぐらいで傷を癒すか分からんが‥‥後ニ、三日は見ておいた方が良さそうだな」
「ですねぇ‥‥。でも実は村への補給物資、主に食糧なんですけど、その輸送が難航しているんです。輸送進路上にキメラが頻出するとかで‥‥」
「ふむ、それは難儀だな。村の部隊が携行している食糧は一日分か?」
「えぇ。ですからただでさえピリピリしている所へ、家畜の世話もやらされて食事も無いとなったら‥‥たぶん、その」
 アイリス中尉は苦笑いを浮かべる。
「‥‥村の豚や鶏を失敬する者も出てくるんじゃないでしょうか。何気にご馳走ですし」
「‥‥確かにそうかもしれん。ウチが採用している戦闘糧食は不満の声が大きいからな‥‥。ふむ‥‥」
 ギルドール少佐は少しだけ考える素振りをしたが、すぐに顔を上げた。
「兵士達に悪魔の囁きを聞かせるわけにはいかん。食欲に負ける前にキメラの迎撃は傭兵に任せる事にしよう。アイリス中尉、LHに打診して傭兵の派遣を。入れ替わりで第14歩兵小隊を撤退させろ」
「はい。了解です」
 アイリス中尉は敬礼すると、司令テントを出た――。

●参加者一覧

リディス(ga0022
28歳・♀・PN
水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
里見・さやか(ga0153
19歳・♀・ST
白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
獄門・Y・グナイゼナウ(ga1166
15歳・♀・ST
水円・一(gb0495
25歳・♂・EP
ロゼア・ヴァラナウト(gb1055
18歳・♀・JG
耀(gb2990
13歳・♀・GP

●リプレイ本文

●一日目 傭兵到着
「‥‥クソッ。なあオイ、この一匹ぐらい減っても分からねぇんじゃないか?」
「やめろ。交替時に数えるんだ、どうせバレる」
「チッ。ああ、‥‥クソッ!」
 村の中央、家畜柵の中でなされる軍服二人の不穏な会話。
 その背中へ新たな声が掛かった。
「クートン! マルコ!」
「ハッ! 何でありますか軍曹!」
 呼ばれた二人は振り返り不動の敬礼。
 しかし、やましい心があったクートンは思わず質問していた。口の中で舌打ちするマルコ。
「ほほー、俺様に質問か? 良い度胸だクートン、キャンプに帰ったらKポイントのキメラ掃討任務に推薦してやる。お前もだ、マルコ」
「サー! イエッサー!」
「よし、分かったら装備を持って村長宅前に三分で集合。交替の傭兵部隊が到着だ。帰還するぞ」
 言い捨てて軍曹は歩き去っていく。
 二人は蒼白な顔で敬礼を解く。首を巡らすと、確かにそれらしき八人が村長宅前に来ていた。

「駐留任務を引き継ぎます、傭兵の水上です。危険な中、慣れない作業お疲れ様でした。後はお任せください」
 豚や鶏の騒がしい鳴き声に水上・未早(ga0049)が微苦笑を浮かべる。小隊長キャンリルも苦笑で応じた。
「ああ、ご苦労‥‥全く、弱ってたんだ。食料も届かないし兵達の士気は下がるし‥‥っと、揃ったか」
 二人の兵士が部隊に合流し、分隊長が報告に近づいてくる。第14歩兵小隊員はそれで最後だった。
「往路に遭遇したキメラは排除しておいた。少しは帰りが楽になるだろ」
 水円・一(gb0495)が小隊長に軽くギュイターを掲げて見せる。
 その隣ではロゼア・ヴァラナウト(gb1055)と松葉杖を突いた白鐘剣一郎(ga0184)が敵と至近で交戦していた軍曹に敵詳細を聞いていた。
「‥‥ん、怪我人も居るのか?」
「うう、全く恥ずかしい限りだよー。といっても一度は受けた依頼、投げるわけにもいかないしねェー」
 剣一郎と同じく片手に松葉杖を突く獄門・Y・グナイゼナウ(ga1166)。
 その痛ましい姿を見、意識せずキャンリルは渋面を浮かべた。
「そうか。俺達はキャンプに戻るが‥‥無理するなよ。ココで死んでも誰も墓参りには来てくれないぜ」
 キャンリルは鬱蒼とした森を指差しながら軽口を叩く。
 それから自部隊に向き直ると一転、大声で出発の号令を掛けた。
「あ、それとキャンプに戻られましたら‥‥、村の方にあなた方の日常と財産は必ず守ると伝えて頂けますか?」
 最後に呼び止める未早。
 一瞬キョトンとしたキャンリルは、すぐに微笑んで頷く。
「了解だ。しっかり伝える」
 小隊長は背中を向ける。
 そうして進行の遅い自隊へ叱咤の声を上げながら、傭兵達に大きく手を振った。


●同日 一○四五時、ローテーション開始
「ふぅ。何とか敵襲撃の前に準備できましたかね?」
 里見・さやか(ga0153)がテントの中に鳴子を仕掛け終わって外に出る。
「村の周囲にも仕掛け終わりましたしね。後、一瞬相手の機動を削ぐ程度ですが、簡単なトラップも仕掛けておきました。後で地図に描いておきます」
 リディス(ga0022)が煙草をくゆらせながら答える。
 さやかが入っていたのと別のテントからは耀(gb2990)が二枚の紙を手に出て来た。
「高所監視所の選定もできたし‥‥、だいたいの準備は完了ですね」
 言いながら手に持った紙をテントに張り出す。外には全員が集まっており、これから四班に分かれての本格的な活動の開始だった。
――
A班:耀、未早
B班:剣一郎、ロゼア
C班:一、獄門
D班:リディス、さやか
――
ABCD班/時間
●●◎△/07−10・19−22
△◎●●/10−13・22−01
●●△◎/13−16・01−04
◎△●●/16−19・04−07

●:見張
◎:休憩
△:家畜
――
「それではまず‥‥C班とD班が見張り、A班が家畜のお世話、B班が休憩です」
 テントに張った班構成とローテ時間を見ながら、耀が指示を出す。それは簡略でありながら非常に分かりやすい表になっていた。
「あ、獄門さん‥‥見張り交替しましょうか‥‥?」
「んーいやいや、大丈夫だよありがとうー。ただ、良ければ夜間の見張りは変わって欲しいかなー」
「は、はい‥‥。じゃ、じゃあ夜は‥代わりますから」
 少し顔を赤くしながら頷くロゼア。その申し出に感謝しながら、獄門は松葉杖を片手に一と二人で歩き出す。
 そのC班とは反対方向へ、D班のリディスとさやかが見張りに向かった。
 高所監視所は四箇所。村の南東、お互いの顔が見える程度の距離に二箇所、その反対の北西にも同じように二箇所だ。
 B班の剣一郎とロゼアは別テントに分かれて休憩。
 残るA班は家畜の世話だった。未早と耀は家畜柵に近付きながら、キメラを相手する時とは違う変な緊張を覚える。
「水は‥‥井戸があるみたいですね」
「じゃあ餌はコレ‥‥なのかな」
 柵の隣にどっさりと置かれた麻袋と掘られた井戸。二人は餌袋を担ぎ木桶に水を汲むと、おっかなビックリ柵の中に入っていく。
 しかしその途端、豚達は怯えるようにブーブーと鼻を鳴らして騒ぎ回った。
「えと、ぶ、豚って噛みませんよね?」
「あ、噛まないですよ。‥‥‥‥たぶん」
 即答した耀だったが、騒然とする豚に取り囲まれて少し自信が揺らぐ。
 しかし家畜相手に臆するわけにもいかない。
 二人は入り口の柵を思い切って閉じ、オズオズと前に進みだした。

「異常なし‥‥と」
 タバコを咥えながら、屋根の上から油断無く周囲を警戒するリディス。森だけではなく上空へも気を配っていた。
 少し離れた住居の屋根では、首に双眼鏡をぶら下げたさやかも警戒に当たっている。真剣な表情で周囲を見渡すが異常らしき異常は無い。
 二人は定期的に顔を見合わせてはサムズアップ。また森に視線を巡らせる。
 南東方面でも同じだった。
「‥‥出ずに時を待つのは慣れているが」
 一が呟く。住居の屋上から警戒に当たるが、敵の姿は露とも見えない。獄門と共に事前に駐屯地で聞いていた僅かな敵情報を思い出しながら、襲撃の徴候を逃さないよう目を配る。
 ――いつ、どこから現れるか分からない敵。
 森の喧騒を背にして時間は穏やかに進んでいく。


●同日 夜間突入
 森はすっかり暗闇が支配していた。二度ほどお騒がせな動物に鳴子を鳴らされたが、事件といえばそれだけである。
 しかし傭兵達の表情は優れず、全員がゲッソリとしていた。緊張を保ち続けた疲労か、慣れない家畜の世話のせいか。それとも――。
「‥‥‥‥。まさかメルス・メス社の糧食がこれほどマズイとはな‥‥」
「まったく。お世辞も言えないよー‥‥」
 剣一郎と獄門が深刻にボヤきながら空き缶を拾う。
 そう、それこそが傭兵達の空気を重くしている原因だった。第五駐屯地から支給されたMM系列会社の戦闘糧食。それを食した瞬間にみんなの笑顔は消えたのだ。
「‥‥こちら異常ありません」
「了解です。‥‥南東方面、異常なし」
 任務にあえて専念する未早と耀。
 北西方面では剣一郎の代わりに一が立ち、ロゼアと共に胸焼けを耐えて森を警戒していた。
 D班は家畜や村を見回る。口直しに一服するリディスを、この時ばかりはさやかも羨ましそうに見る。
 ‥‥それでも一時間ほどで全員調子を取り戻した。
 各員は通常の仕事に加え、監視所に使っている屋根の足場補強や、家畜柵の要所に柱を打ち込んで補強する。その甲斐もあってキメラ迎撃準備は一日目でほぼ整ったと言って良いだろう。
 家畜も各々の傭兵が慣れないながら頑張ったお陰で、快適に過ごしているようだ。
 こうして長い夜間、キメラは現れる事も無く。
 しかし傭兵達の休まらない夜は更けていった――。


●二日目 早朝
 鶏の鳴き声が朝日に響く。休憩中の耀と未早は寝袋の中へ耳を塞いで深く潜る。
「そういえば動物の世話など小学校以来だな。‥‥放し飼いに近いが、これはこれで案外健康的なのか」
 剣一郎が感心しながら餌を受け箱に入れていく。深手を負った身ながら軽作業を中心に動いていた。
「でも、犬が居なくて‥‥良かった」
 鶏の柵の中を掃除しながら、ホッと溜め息を漏らすロゼア。犬が居たら卒倒は確実である。
 ‥‥とその時、ちょうど時間になってリディスとさやかが現われた。簡単な報告と共に交替する二班。
 それが済むと、さやかが餌やりの為に鶏の柵に入っていく。
 しかし後は大体終わったらしい。手持ち無沙汰のリディスは水とブラシを手に豚の方へ入った。
「まさか傭兵をやっていて家畜の世話をする事になるとは思いませんでしたよ」
 軽く微笑みながらリディスは順番に豚の身体を洗っていく。このサービスには豚も機嫌良く鼻を鳴らした。
「はわっ! お、追ってこないで〜!」
 見ると隣の柵では無数の鶏がさやかを追い回している。餌を握るこの人間を逃すまい、と鶏達は突っつきまくった。
 そんな和やかな光景がある一方、見張りに立つ傭兵達はピリピリとした緊張感を漂わせていた。ロクに睡眠時間も取れなかったせいで疲れが滲み始めている。
 そんな状態で双眼鏡を覗く耀の視界に、ふいに獣の影が映り込んだ――。

 テントの中で鳴り響く鳴子の音。
 仮眠中だった獄門と一は慌てて飛び起きるとテントの外へ這い出る。鳴子の種類から方角を割り出し――。
『こちらA班、先ほどの鳴子の音はただの獣でした。繰り返します――』
 トランシーバーからの報告で、一気に気が抜ける二人。
「ったく、またハズレか‥‥」
「敵の襲撃に傾向があれば良かったのに、無いみたいだしねェー‥‥いたたっ」
 急激に飛び起きたせいで獄門の傷が開いてしまった。一は眉をひそめる。
「まだ時間もある。無理はするな、テントで休んでろ」
「うう、申し訳ないー‥‥」
 二人は別々のテントに散る。昨夜にも休憩班は何度も起こされ、考えていた以上に全員は休めていなかった。
 それでも仕事の水準は保ち続ける傭兵達。
 ‥‥その努力をあざ笑うかのように、二日目もキメラは姿を見せなかった。

●三日目
 傭兵達の疲労は増していく。
 家畜の世話する時間の大半を休憩に回していたが、餌を切らすわけにはいかない。早朝を最後に今度は昼の一時、マズイ糧食を食べ終えた獄門と一がゲッソリとして家畜の下へ向かった。
「確かに‥‥今なら美味そうにも見えるな」
 極限状態のせいで不謹慎な事を呟く一。
「学術的な観察も兼ねて世話をしたかったのだけどー‥‥
このザマでは鶏に追い回されるばっかりだねェー。うわっ!?」
 鶏はやたら好戦的で獄門にも容赦無く飛びかかる。疲れのせいもあって、四苦八苦しながら家畜の世話をする二人。
 ――――その時、また鳴子が鳴った。
 テントの中からリディスとさやかが武器を手に外へ出る。鳴子はいつまでも鳴り止まない。トランシーバーから漏れ出す緊迫した声――。
 ――敵襲だった。

「村には入れさせませんっ!!」
 空に弾ける銃声。未早がとうとう現われたキメラへ強烈な弾幕を張る。
「悲しみは‥‥繰り返させない。絶対に一匹も‥‥逃がさないっ!」
 蛇剋を掻き抱いた後、耀は顔を上げて屋根を蹴る。上空で左手の銃を連射、着地と同時にキメラを剣で貫く。
 猛突した耀に殺到するキメラ。未早の弾幕もその全てを押し留める事は出来無い。一匹が体当たりで耀を突き飛ばし、もう一匹が牙を剥いて跳ぶ――。
 その時、強力な電磁波が突然キメラを灼いた。耀の横を風が通り過ぎ、黒髪のリディスが緋色の爪を振り下ろす。
「私が相手だっ!」
「支援する。‥‥一匹も抜かせねぇよ」
 弾丸の雨を降らして敵を薙ぐ一。
「『わだつみの防人』‥‥里見さやか。いきます!」
 更に超機械を撃ち放つさやか。
 続々と集まってキメラを蹴散らしていく傭兵達。
 ――だがそこへ、一匹の巨体が割り込んだ。
 元の動物の原型も留めない異形。獅子の顔、馬の身体、大蛇の尾尻を持つ『キマイラ』。
 強敵の参戦が戦闘を泥沼化させる。傭兵とキメラの激しい乱戦。火花散り風を貫くような激突の最中、一つの声が戦場を切り裂いた。
「飛行型だ! 上空に四体!」
 重傷で、その分戦況の見極めに重点を置いていた剣一郎はその敵をいち早く発見する。
「――撃ち落とす」
 住居の屋根に上っていたロゼアが狙撃する。さらに、未早、獄門、一、さやか、剣一郎、最前線のリディスまでもが空へ砲火を加えた。
 地上からの集中攻撃に、四体の飛行キメラはバタバタと地上へ落ちていく。しかし代わりに地上のキメラが猛反撃。
 それを耀が果敢に単身迎撃し、深い傷を負いながらも一匹を仕留めた。
「耀さんっ! ‥‥すぐに治療させていただきますね。よーい‥‥てい」
 脱力的な掛け声で練成治療を施すさやか。おかげで耀は何とか行動に支障が出ない程度に回復する。
 態勢を立て直し、優勢に戦闘を運ぶ傭兵達。次々とキメラを殲滅し、最後に『キマイラ』へと迫る。
 さやかが敵に練成弱体を掛ける。
 だが直後、キマイラはリディスと耀へ同時に襲い掛かった。体当たり、そして爪と牙の連撃。蛇は独立して動き、リディスに巻きつき締め上げる。
「キマイラに与えた打撃、仮に回復したとしても狙う価値はありそうだッ!」
 剣一郎が矢を引き絞り、放つ。十四歩兵小隊の軍曹から聞いていた左脇腹へ――直撃。
 キマイラが苦悶の声を上げた。
「そこですね――?」
「ほれ、切り札だっ!」
 弱点を見た未早はスナイパーライフルに持ち替え、強弾撃。同時に一が撃ち放った貫通弾も脇腹を抜ける。
「――当てる」
 さらにロゼアの強弾撃が追撃した。
 思わず身を引こうとしたキマイラを――しかし巻きつかれていたリディスが逆に蛇の尻尾を掴んで放さない。
 その引っ張られた大蛇に差す――影。
「いっけぇッ‥!」
 耀の黒剣が蛇の身体を叩き斬った。更に追撃、瞬即撃を併用して敵の急所を抉り取る。
 大きく揺らぐキマイラ。その首へ――二手の赤い爪が振り落ちる。
 急所を狙ったリディスの二連撃。まだ蛇の半身が巻きつくその腕が――大将の首を刈り取った。
 血を噴き、地に臥せるキマイラ。
「所詮キメラ如きではダンスパートナーは務まらなかったか‥」
 リディスは覚醒を解き、最後の一本になった煙草を咥える。
「お二人とも大丈夫ですか? 治療させて頂きますね」
「練力はあまり無いが‥‥少しは役に立てるかねェー?」
 さやかが前線に立った二人に治療を行い、獄門も同じく超機械を起動させた。


●任務終了
 八名の傭兵達は、村人達に感謝の言葉を盛大に投げられながら村を出る。
 体力的というよりも精神的に疲れた体を引きずりながらも、村人達の心からの笑顔を見て達成感が全身を包むんだ。
「これで此処も少しは落ち着くと良いが」
 呟いて帰路に目を向ける剣一郎。その隣で耀はもう一度振り返り、どこか遠い目で儚く微笑んだ。
 そしてゆっくりと歩き出す八人の傭兵達。
 その耳にはまるでお別れを言っているように騒がしい、――豚と鶏の鳴き声がいつまでも届いていた。