タイトル:壊滅村の生存者救助マスター:青井えう

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/11/29 06:47

●オープニング本文


 突撃医療騎兵隊、MAT(Medical Assault troopers)。
 それは、南北アメリカで発足した民間の医療支援団体、『ダンデライオン財団』の車両班に対する通称。
 MATはキメラ、ワームの襲撃が激しい競合地域であろうと、そこに治療を必要とする怪我人が居るのならどんな道でも走破する。
 危険地帯だから、という理由だけでは決して諦めない。
 逆に、どんな危険があろうと石にかじり付いてでも助けに行く。
 それが、MATだった。

「救助出動要請! 場所はアマゾン中央南部にある村落付近。一時間ほど前にキメラの襲撃により村が壊滅、住民はキメラの攻撃でほぼ死傷した模様。生存者は傷を負いながら村の八方へ散り散りに逃走したそうです」
 広大な競合地域が広がるアマゾンに隣接した都市の、ダンデライオン財団医療拠点。
 そのオペレーションルームにて、オペレーターが救助出動要請の概要を読み上げた。
「生存者の数は分かるか?」
 後ろで聞いていた拠点長がすぐさま問い返す。それを受けてすぐにオペレーターが支部へと質問した。
「‥‥それは分かりませんが、元々の村の住民は三十人程度だったそうです。そこへ襲撃してきたキメラは十体前後は居たようですから‥‥」
「‥‥なるほど。五、六人生きていれば良い方だろうな」
「はい‥‥。それにキメラがまだ周辺を徘徊している可能性もあり、それを避けながらの捜索は困難を極めるでしょう。最悪‥‥、怪我の悪化やキメラの追撃で全員死んでいるかもしれません」
 オペレーターの沈鬱な言葉に、拠点長は重々しく頷く。
「‥‥分かっている。しかし生存者が居る可能性が少しでもある限り、どんな危険にも我々が怯むわけにはいかない。それが――俺達MATだ」
「‥‥‥‥はい、了解です」
 拠点長のその言葉に、オペレーターは頷くしか無かった。
 実際、報酬の面から見れば、MAT隊員は命の安売りをしているとしか思えない。何しろ軍が投げ出した救助・救出作戦にわざわざMATが買って出る事まである。救える命よりも、危険に晒す命の方が多い、リスクが高いと軍に判断された場合だ。今入った救助要請も、実はその例に漏れないものだった。
 しかし、それでも続々とこの部署に志願してくる者が居るのは、『危険に晒されてでも怪我人を助けたい』という情熱を持った人間が多いからである。
 バグアの侵攻によって、目の前で友人や家族が死ぬのを数多くの人が目にしている。しかもその時自分はなす術も無く立ち尽くしたまま、死を看取るしかできないのだ。いやむしろ、看取る事も出来ずに逃げなければいけなかったかもしれない。
 仕方無かったとはいえ、その記憶は心に深い傷と後悔を残し、やがて彼らの一部はキメラ出没地域に戻ってくるのだ。
 命を賭けて人を救う、MAT隊員として。
「‥‥まぁ心配するな、今回は特別危険度が高い。ホープへ傭兵派遣を要請しろ。それと装甲救急車の準備、同時に各班リーダーをブリーフィングルームへ。支部へは壊滅した村落の周辺地図、または現地案内人の要請」
 拠点長が迅速に幾つもの命令を下す。
 オペレーターはそれを全て聞き取り、大きく頷いて答えた。
「了解です!」

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
聖・真琴(ga1622
19歳・♀・GP
ブレイズ・カーディナル(ga1851
21歳・♂・AA
神無 戒路(ga6003
21歳・♂・SN
ティーダ(ga7172
22歳・♀・PN
天城(ga8808
22歳・♀・ST
水円・一(gb0495
25歳・♂・EP
原田 憲太(gb3450
16歳・♂・DF

●リプレイ本文

「命を救う方達の護衛ですか。いつも以上の重さを感じますね」
 救助要請からしばらくして、ティーダ(ga7172)の声を先頭に救出作戦の要である傭兵が到着した。
「傭兵が来たぞッ!」
「拠点長を呼べ!」
 がぜん慌ただしくなるMAT隊員の動き。軍人のように無駄なく動く隊員達をほへーっと見ながら天城(ga8808)は、
(「やっぱりMATの人は筋肉質なんだなぁ‥‥」)
 と、のんびりした事を考えていた。
「命が救われた際の達成感は何物にも代えがたい‥‥絶対に成功させてみせる‥‥」
 パタリと小さな文庫を閉じて、神無 戒路(ga6003)は静かに言い放つ。
 それとほぼ同時に姿を現わす拠点長。傭兵達を見回して口を開いた。
「‥‥今回の任務は非常に困難で、救助対象が全員死んでいる場合もあります。しかし我々は――僅かでも可能性が残されている限り行かなければならない。‥‥無茶は承知ですが、どうかお付き合い下さい」
 深々と拠点長は頭を下げる。
 一瞬の間の後。
 傭兵の中から進み出たのは水上・未早(ga0049)だった。
「‥‥私も同じ考えです。たとえ救出の為に危険に晒す命の方が多かろうと、それでも見捨てる事は出来ません。
 この戦争で最後まで守り抜かなくちゃいけないものは、そういう『人間としての尊厳』だと思うんです」
 固い決意を込めて未早は断言する。
「助けられる命があるのなら出来るだけ助けたい、人として当然の考え方ですよね‥元はといえば僕もその為に能力者になったんですから」
 隣で同意して、原田 憲太(gb3450)は爽やかな笑顔を浮かべた。
「ホント‥‥こぉ言うの無くならないな‥‥。
 一人でも多く助け出したい‥みんな、待ってて‥‥」
 十字架のチョーカーに手を触れて、哀しげな表情だった聖・真琴(ga1622)は顔を上げる。
「伸ばせる手は限られているが‥‥それでも、な」
 救える限りを救おう、と水円・一(gb0495)はレザーグローブをキツくはめた。
「どんなに危険でもそこに生存者が居る可能性がある限り諦めない、か。
 俺もそういうのは嫌いじゃない。
 ――よし、行こうか、いざ助けを求めている人々の下へ!」
 ブレイズ・カーディナル(ga1851)が高らかに声を上げ――救助作戦は始動した。

 三台の装甲救急車が森を進む。
 スナイパーの未早、天城、戒路は一台ずつ分乗して警戒に当たる。
 三台目の現地案内人を乗せた車両では真琴がハンドルを握っていた。
 しかし獣道に近い悪路ではとてもスピードは出せない。悪戦苦闘してやっと村が近付いて来た頃、‥‥ふと前方から声が上がった。
「‥‥おーい! ここだーっ‥‥!」
 民族衣装を纏った若者が大きく手を振っている。それを全員が視認し――。
「――ッ! 彼の後方にキメラ、射撃を!」
 双眼鏡を覗いていた憲太が異変を発見して、無線機に鋭く指示を出した。
 同時に男のすぐ後ろの茂みから――、異形の獣が忽然と姿を見せる。
「――伏せて下さいっ!」
 未早は短く叫び、車上からシエルクラインで鋭角狙撃、正確にキメラにだけ銃弾を浴びせる。
 驚いて地面に伏せる若者――そのすぐ横を、天城のアルファルが射た矢が空気を貫いて迫った。
 続けざま、遠距離・走行中の車上という悪条件の中、戒路が見事全弾をキメラに叩き込む。強烈な集中砲火に、キメラは血を吹きながらその場に倒れる。
 ――少しの沈黙の後、青ざめた顔の若者が姿を見せた。

 早速一人を救助した三台はそのまま村へ入る。
 しかしそこに広がるのは――悲惨な光景だった。
 どちらを向いても、胸を締め付けるような破壊の痕。
 ほんの数時間前まで活動していた村は――――今はもう、死体と廃墟しか残っていない。
 周囲を警戒しながら無言で村を簡単に検分していくものの、人の気配は感じられなかった。
 ‥‥それを終えて一同は班分けを開始する。
 A班はティーダ、天城、一、MAT医療人。南北エリアを捜索。
 B班は未早、ブレイズ、憲太、MAT医療人。東西エリアを捜索。
 真琴と戒路は救急車の警護担当。
 作戦の流れは、救急車は村の中央で三台とも待機、捜索はAB班が行う。

「‥‥誰かー? 居ませんかー?」
 西エリア。憲太が大声にならないように呼びかけるが、応答は無かった。
「この辺も候補のポイントなんですが‥‥」
 未早はマークされた地図を確認した後、樹上や背後もゆっくりと目視していく。
「――あっ。おい、人だ!」
 ブレイズが倒木によりかかる人を発見して指を差すが――すぐに勢いを失った。
「ダメだ‥‥即死だな」
 同行のMAT医療人は即座に判断を下す。
 しかし、ブレイズは無言でその死体に歩み寄っていった。
「せめて安らかに眠ってくれ‥‥」
 そう言ってブレイズは虚ろな目を閉じさせる。それから遺品として血に濡れた首飾りを外した。
 その時ふと――死体の後ろ、倒木と地面の間に大きな窪みがあるのが見えた。
「――あ。‥‥おい、来てくれ! ここにもう一人居るッ!」
 その声に三人は驚いて振り向き、――震える子供をブレイズが穴から抱き上げるのを見た。

『B班、子供を一人発見。ベースへ帰還します』
「A班了解、‥‥と言いたい所だが。一人応援が欲しい」
 一が木を背中に無線機に呼びかける。捜索の途中、要捜索ポイント付近でキメラ群と遭遇してしまったのだ。
「私達には使命があります。邪魔はさせません‥‥!」
 ティーダはキメラの猛攻を獣のような動きで次々と避ける。それどころか紙一重で抜けていく敵の横腹にルベウスを見舞った。
「トドメです――!」
 更にもう一撃、ティーダの振るったリベウスが敵に致命傷を与える。
 絶命したキメラは吹き飛ばされ、木に強く叩きつけられて――、
「きゃっ!?」

 ――現地民らしき女を樹上から落とした。

 一瞬だけ戦闘は止まる。
 しかし直後、――戦いは熾烈さを増した。
 キメラ達が突然の乱入者へヒステリックに疾駆する――!
「と、止めないとっ」
 限界まで引き絞られた天城のアルファルから弾頭矢が弾丸のように放たれる。一瞬でキメラへ到達、激しい爆発を急所で引き起こした。さらに続く一の銃撃が、そのキメラを仕留める。
 しかし残る二体のキメラは止まらない。一匹は立ち塞がるティーダに飛びかかる。
 そしてもう一匹はティーダの脇を通り過ぎて――その後ろへ跳んだ。
 森に響く女の悲鳴――――。


 ――――それを、激しい銃声が掻き消した。


 キメラが空中で弾き飛ぶ。その体には――二十発の弾痕。
「なんとか‥‥間に合ったようですね」
 そこには一の要請で駆け付けてきた未早が、ホッとした顔で立っていた。

『えっとA班、女性を保護で‥‥あ、あと軽く水分補給もさせておいたよ』
「了解! ンじゃこっちでも紅茶を用意しとく」
 明るく返事した真琴だったが、通信を切ると一変して憂鬱そうに溜め息を吐いた。
「‥‥もぅ、ヤになるな‥‥」
 真琴の目の前には血に染まった民家があった。
 村内を念入りに捜索すればするほど、襲撃の傷跡にばかり行き着く。どこもかしこも――顔を背けたくなる光景だった。
 もう一人の警護担当、戒路は車上から辺りを双眼鏡で警戒している。
「傭兵さん、異常無いか?」
「ああ、問題無い」
 運転席のMAT隊員に、戒路は短く応じた。細心の注意を払って周囲を警戒していたが、今の所これといった異常は無い――。

 B班は救助した子供を連れてベースへ引き返している。
 何度も村人の死体と遭遇し、その度に子供は放心した瞳をそちらに向けた。
 ブレイズの手の中には既に五個あまりの首飾りが握られている。全員の足取りが重かった。
「‥‥誰?」
 ふと、子供が立ち止まり視線を先に向ける。
 他の三人が目を向けると――僅かに揺れている茂み。
「誰か‥居るの?」
 微かな期待の篭もった声で、子供はそちらへ歩き出す。
「あ、行っちゃ駄目だっ!」
 憲太が短く叫ぶ。
 ほぼ同時に突然、草の中から大きく振り上げられる――巨大なカマキリの鎌。
 それが子供へと素早く振り下ろされ――‥‥。
「やらせるかッ!」
 割って入ったブレイズが――グレートソードで受け止めた。子供を後ろに隠し――第二撃、第三撃を身を挺して防ぐ。
 そこに居たのは、カマキリの姿をしたキメラだった。
 すぐさま死角から花鳥風月を両手に握った憲太が近付き、流れるような連撃で切り裂く。敵の反撃はブレイズが立ち塞がり、壁役を務めた。
 激しい戦闘の後、――キメラを仕留める二人。
「‥‥ふぅ。坊や、大丈夫?」
 一息つきながら憲太が声を掛ける。
 呆然としていた子供は、その声で突然顔を歪めると――、
「うあああああああああああああんっっ!!!」
 ――切なげに、大きく泣き出した。

 その後、両班ともがベースに到着、MAT隊員による簡単な治療と真琴の紅茶が振舞われた。
 捜索班はまた捜索に戻ったがほどなくして一次捜索を完了。
 全員が一旦本部へ引き返し、状況報告と方針の検討、更に救助者から情報を聞く。
 それが済むと、休む暇も無く二次捜索へと向かう一同。
 全員が疲労を感じ始めていたが、それは肉体的にではなく――精神的なところが大部分だった。

 再び村へ向かう途中、最後尾でハンドルを握る真琴はサイドミラーに目を投じる。その中に時折小さな影が映った。
『‥‥キメラが一体、距離を置いて付いて来ている』
「どうにも‥‥嫌な感じだな」
 真琴は呟く。
 車上の戒路は牽制のつもりで魔創の弓で攻撃を仕掛けたが、距離が遠くて簡単に避けられてしまう。
 しかし、村に近くなってやっと黒いキメラをまいたようだった。
 そのまま村に到着すると、すぐさま二次捜索を開始した。地図には救助者から得た新しいマークが増えている。

『A班、北第三ポイントにてキメラと遭遇‥‥』
『B班戦闘終了。捜索を再開‥‥』
 ベースに入ってくる無線連絡。心なしかキメラとの遭遇率が上がっている。
 捜索班が地図のポイントに近付くと案内人が細かい指示を出すが‥‥一次捜索と違って今回は進展が無かった。
 その間、真琴はもう一度村を見回る。本部へ帰還している間に戻ってきた村人が居る可能性がある。
 ‥‥しかし、やはり村に生存者の影は無かった。
「ダメか――」
 真琴は溜め息を吐き、ベースである村の広場の方へ歩き出す。
 そしてふと視界の端に――――。

 黒いキメラが立っていた。

「――ッ!?」
 息を飲んだ直後、そのキメラの背中に一本の矢が突き立つ。
「グギャアアアアア!!」
 遠距離からの戒路の援護射撃だった。二本目の矢は際どく外れたものの、その間に真琴が接敵してルベウスを振るう。
 一撃で呆気ないほど簡単に絶命するキメラ。
「コイツ、さっき追ってきてた‥‥?」
 真琴が訝しげに首を捻った時――後方で銃声が響いた。
 振り向くと装甲救急車の窓から、連続したマズルフラッシュが閃いている。
「襲撃だ、至急戻ってくれ」
 戒路が無線機で真琴に言うと、すぐさま弦を引き絞って頭上に矢を放つ。
 空から迫るキメラ、その羽の根元を鋭角狙撃で射抜いて地面に落とした。さらに着地直後の追い討ちの一矢が息の根を止める。
 しかし、他にニ体の獣型キメラが車に迫ってきていた。
「クソッ!」
 MAT隊員達が必死の銃撃を加えるがほとんど怯む様子は無い。
「ぅらぁッ! ――止まれッ!」
 瞬天速を併用して猛スピードで戻ってきた真琴がさらに疾風脚を発動――風のようにキメラを切り裂いて走り抜けた。傷を負わされた二体は、標的を車から真琴へ変える。
 体当たりを受け、瞬間真琴は怯む。劣勢になりかけた所を――戒路の攻撃が戦況を繋ぎとめた。二本の矢が一体を射抜いて仕留める。
 更に続いて、真琴のルベウスが――もう一体の顔面を粉砕した。

 ――捜索の終盤、キメラの襲撃率は明らかに高くなっている。しかしそれでも捜索は続けられ、村の聖地とされる場所から生存者を二人保護出来ていた。
「北エリアの捜索を完了、A班帰還します」
 最後のポイントを回り、ティーダがベースへ連絡する。捜索時間も限界に迫ろうとしていた。
「‥‥ったく、敵は簡単に帰してくれなさそうだ」
 一が頭上を見上げて呟く。
 木々の隙間から、複数の鳥型キメラが旋回しているのが見えた。
「そっと動けば気付かれないでいけないかな?」
 天城がポツリと提案するが、‥‥ティーダは首を振って空を見る。
「無理そうですね‥‥。反撃しながら帰還しましょう」
 ルベウスを構えるその頭上から――キメラが急降下を始めていた。

「ハッ!」
 異形の獣を優美な二刀が鮮やかに切り裂いた。息を整えながら、憲太は自身に活性化を施す。
「急いで帰還しましょう――!」
 言いながら、未早はシエルクラインを後方に掃射する。木々の隙間をぬって数体のキメラが追ってきていた。
「医療人、左だっ!」
 ブレイズが叫んで走り出す。併走する医療人の左方から突如飛び出したキメラの攻撃を受け止め、グレートソードで叩き斬った。
「よし、ベースが見えてきましたよ――後一息です!」
 憲太が指を差す先に――村が見え始めていた。

 A班とB班はベースへ同時に姿を現した。警護班とMAT隊員は、ベースを死守しながらそれを視界の端に認める。
「みんな急いでッ!」
 真琴が襲撃してくる敵を撃破しながら叫ぶ。
 しかし、その反対側から救急車目前まで迫る――キメラ。
「ひぃぃっ!」
 救助された村人が悲鳴を上げ――同時に放たれた一発の銃弾がキメラの頭蓋を砕いた。
「安心しろ。絶対に守ってみせる」
 車上から声を掛けながら、戒路は更に発砲を続ける。
 捜索班も敵を倒しつつ全員が装甲救急車に乗り込むと――最後の敵からルベウスを抜いて、真琴も運転席に飛び込んだ――。


 夕方。
 今にも壊れそうな装甲救急車三台が、本部へと帰還してきた。
「壊滅した村三十三人中‥‥救助人数五名。しかし、今回はあなた方が居なければ、きっと一人も救えなかった」
 厳めしい顔で拠点長は傭兵達を出迎えて、一人一人に熱い握手をしていく。
 そこへ後ろから、救助した村人達が傭兵達に近寄って来た。
「ミナサン、どうも‥‥アリガトウ」
 ショックが抜け切っていないように、呆然としながら頭を下げる村人達。
 そこへふいに――ブレイズが前に進み出て、ポケットから何かを取り出した。
「これ‥‥、全部じゃないかもしれないけどな‥‥」
 その手にあったのは、死体から遺品として集めた首飾りだった。
 二十近く数えるそれを見て、村人達の表情が変わる。
「コレは、ヤムの‥‥」
「アペコノ、フォレ、タイニー‥‥!」
 ある者は胸に押し抱き、ある者はそれを目にして咽び泣く――。
 しばらくして顔を上げた村人達は、涙に濡れた瞳の中に強い光を宿していた。
「アリガトウ‥‥、ミナサン。私達は、ツヨク生きてイキマス‥‥」
 村人達は死者の首飾りを自分の首に付けて――ソッと呟く。
「――仲間の分マデツヨク、生きる」