タイトル:新しき鎧とワックスがけマスター:玲梛夜

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/11/27 04:35

●オープニング本文


 ナイトフォーゲルF−107、通称バイパー。
「乗ってみたい人ってやっぱりいるよなぁ‥‥どんだけ動けるかのテストもかねて、何かするか」
 ふと、思い立ったかのようにアメリカのドローム社本社にて、バイパーを開発したものたちの一人はふと思った。
 チャンスは多い方がいいに決まっている。
「まだデータも取りたいし、一対一の模擬戦闘をしよう。すべてペイント弾で‥‥終わった後は機体掃除とワックスがけはしてもらうことになるかな」

 と、いうことで。
 ULT経由で傭兵たちにこの期待の模擬戦闘参加者が募られることとなった。
 新型の機体に乗ることができ、なおかつ報酬がでる。
 おいしい依頼なのだった。

【模擬戦闘概要】
最初に簡単な機体の仕様などの説明。
その後、一対一の模擬戦闘。
参加者同士で対戦を相手を決めるものOK。
特に希望がなければこちらで決定。
弾丸は特殊なペイント弾を使用。機体を破壊する行動は不可。
なお、空中戦を想定。
ドローム社本社から機体を視認できる範囲で模擬戦闘。
ペイント弾には赤、黄、青とありそれぞれダメージが大、中、小となっている。
なお、何色がでるかは撃ってみるまで分からない仕様。
また特別ルールとしてペイント弾をコックピットに受けたらそれが何色でも負け。

負け決定の色組み合わせ(初弾によって組み合わせはかわる)
赤(一発終了)
黄(赤1発 OR 黄1発 OR 青1発)
青(赤1発 OR 黄1発 OR 青2発)

なお、模擬戦闘後、機体についた付着したペイントを落とす作業をしてもらうことになる。
洗浄用道具はこちらで貸出。
自分たちがつかった期待をまごころこめて手入れしてほしい。

※素晴らしい動きを生み出した操縦者にはドローム社より報酬に多少のイロがつくこともありえる。

●参加者一覧

リズナ・エンフィールド(ga0122
21歳・♀・FT
建宮 潤信(ga0981
28歳・♂・GP
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
西島 百白(ga2123
18歳・♂・PN
春風霧亥(ga3077
24歳・♂・ER
エマ・フリーデン(ga3078
23歳・♀・ER
櫻小路・なでしこ(ga3607
18歳・♀・SN
蓮沼千影(ga4090
28歳・♂・FT

●リプレイ本文

●模擬戦開始
「みんな名乗りをあげてくれてありがとう! 今日のってもらうのはこの通称バイパー。変形などもOKだから存分にその性能を試してくれ!
 事前にスペックとルールの説明は終了。
 今彼らの目の前には、これから乗る新機体があった。
「高分子レーザー砲の試射試験は行ったが、通常運用できず新型機の基本スペックが気になっていたから丁度いい」
 再びみるその機体。建宮 潤信(ga0981)は楽しみだ、と呟く。
 そしてまたその試射試験に参加していたものもこの場に他にもいた。
「模擬戦闘とは言え本格的に戦闘は初めて‥‥少々緊張してますね‥‥」
 櫻小路・なでしこ(ga3607)はひとつ、深呼吸。
 リズナ・エンフィールド(ga0122)と須佐 武流(ga1461)もそのメンバーであった。
「ペイント弾を使った模擬戦とな? コイツは面白いじゃねぇか!」
 武流はテンション高めにやる気十分。
「初めてのKV、緊張もするがスゲー楽しみだ! ゲーセンのシューティングで鍛えた腕‥‥役に立つといいんだがな」
 蓮沼千影(ga4090)も同じように、気持を高揚させている、まだまだ情報もすくないその機体に触れるということは、やはり誰もが楽しみで期待を抱いているものだった。
 顔みしり同士である朧 幸乃(ga3078)と春風霧亥(ga3077)は並んで機体をみていた。。
「折角の最新鋭機に乗る機会ですから十分に楽しみたいですね、がんばりましょう」
「宜しくお願いします‥‥」
 気心知れている同士、だが勝負はまた別のものだ。
「お互い、全力で‥‥負けません‥‥」
「そうですね。というか負けてしまえばこれからが‥‥」
 思うところがあるらしい霧亥。幸乃は幸乃で、気持は模擬戦へと向いていた。
 西島 百白(ga2123)も機体をみる。自分の腕がどれくらいなものか、今回見極めようという心づもりをもって。
「では機体との対面も済んだことだし、模擬戦に行ってみよう。勝負判定が入れば無線で連絡がはいるから指示に従うように、ともう一度確認。それじゃあ第一戦目にうつろうか」
 対戦相手はすでに決定済み。晴れた空の下、模擬戦開始。

●なでしこVS百白
 期待に乗り込みコックピットを見回す。
 心に描いた動き。それをもう一度思い浮かべながらなでしこの乗った機体は飛び立つ。
 それと同時に百白の機体も。
 上空に十分にあがったところで、無線。
 それが模擬戦開始の合図だった。
 その合図が入るとどうじになでしこは百白の機体と距離を取るべく動く。
 だが有効射程距離にはギリギリ収まるほどに。
 追いかけっこをしているように空中を旋回。
 先に動いたのはなでしこ、高度を一気に上げ、動きを最小に抑えた高速旋回。
 百白の後を一気に、とる。
 その瞬間に百白は一気に減速。
 後ろをなでしこがとらえた瞬間に、それが入れ替わる。
 百白のロックオンサイトに、なでしこの乗っている機体がはまる。
 百白は本体を狙って弾丸を撃つ。
 だがそれを紙一重でかわして、太陽へと進路をとる。
 光の中に機体は消えて、その存在は空のどこかにあるはずだが、百白がそれをとらえることはできなかった。
 風の音が聞こえないコックピット。
 だが、下から見ているものたちの耳にはその音が聞こえていた。
 最高速度で百白は撹乱。どこだとスピードを落とすよりも、動いていた方が攻撃が当たる確率は、下がるはずだ。
 だが、音が響く。
 連続した発射音。
「!!」
 百白の機体に衝撃が走る。
 だがその代わり、太陽の中に機影。
 攻撃を、と思ったところでガガッと、無線の音。

『終わりです。櫻小路さんの球の色は赤‥‥一撃色でした』

 連絡が入り、機体が降りてくる。
 地上に降りれば、なんだか少し不思議な感覚だ。
「‥‥いい訓練に‥‥なった」
 百白は相手をありがとう、となでしこに言う。
「こちらこそ、ありがとうございました」
 二人は言葉を交わし、次に乗り込む二人へとバトンタッチする。

●リズナVS潤信
「なるほど‥‥こういった感じなのか‥‥」
 戦闘前に軽く動きの確認。
 潤信はついこのまえできなかった事の一端を体験していた。
 だが本番はこれからだ。
『では、はじめ!』
 無線からの合図。
 まず先に動きをとったのはリズナだった。
 牽制射撃を行いつつ潤信の乗った機体の下方を通過。
 潤信はその射撃が牽制だと受け取りどうくるのかと、まだ出方を伺うように動かない。
 と、リズナの機体が一気に上空へ向かい駆け上がる。そして180度の旋回。
 インメルマンターンだ。
 すぐさま方向転換を入れ、潤信の後ろをとり、射撃。
 その弾は機体にあたる。だが終了の無線は入らず。
「いい腕だな」
 一気に加速をして潤信は眉一つ動かさず、賞賛をする。
 後ろをとられた瞬間にフルスロットルをかけ速度をあげる。
 逃げるように動き、空中を旋回するように。
 追いかける格好になると、どちらが後ろをとっているかはわからない状態になる。
 そんな状況で、一瞬の間の状況判断で潤信はバーナー停止、フラップラダーを全開にして、ふわりと期待を浮かせる。
 ふっとリズナの視界から消えた機体。
「ギリギリの勝負は嫌いじゃないッ」
 コックピットで潤信は叫ぶ。
 その叫びとともに、バーナー点火。
 下を通り過ぎたリズナの後につけると同時にトリガーオン。
 連射されたそれはリズナの機体へとまっすぐに走っていく。
 当たった弾は二発。
 その衝撃にリズナはこらえ、高く飛翔をし、潤信と向かいあう形となる。
 今、リズナの機体には青が二発、そして潤信の機体には黄色が一発。
 次の一弾を当てた方が、勝ちだ。
 機体の頭を左右にふるリズナ。フェイントをかけ、そして90度ロールしながら弾を撃つ。
 潤信はそれを真っ向から、と見せかけ紙一重。
 それぞれが、すれ違う。
 衝撃の一瞬が過ぎ去るとともに、無線の入る音。

『終了です、結果は引き分け。エンフィールドさんの機体には赤が、建宮さんの機体には青が当たりました』

 連絡を受けて地上へ。
 二人を待っていたのは白熱した戦いだった! という言葉だった。

●霧亥VS幸乃
 機体は空に。
 どんな負荷がかかるか不明、ということもあり幸乃は覚醒をする。
 戦闘開始の合図があり、まずどちらも相手と距離をとる。
 相手を見失わないようチェックしつつ、スペックや負荷、操作性を確認する幸乃。
 向かい合った二機は威嚇射撃を交えて、交差し合う。
 そのまま霧亥の機体は下方へ。
 下から上へと狙いを定めて打つ戦法に。
 だが幸乃はふとみえた雲の中へと入る。
 後ろからくる弾を回避、そして逆に今度は雲の中よりの攻撃。
 再び対峙。
 だが雲の中にある機体を狙うことは難しい。霧亥は攻撃から逃げ、そして機をうかがう。
 下にいて狙われるのであれば、上にいけばいいだけのこと。
 急加速し、幸乃がいると思われる雲の上へと突き抜ける。
 そしてちらりと雲間にとらえた機体。
 霧亥はチャンスとばかりに上から攻撃をかける。狙うのはコックピットだ。
 上からの攻撃に気がついた幸乃。だが回避は間に合いそうにない。
 素早く変形をかけ、コックピット部分を腕でカバーして守る。
 腕部分へと当たった弾は黄色だった。コックピット直撃ならば終了だがまだ戦える。
 素早く変形を元に戻し、弾数を見つつ威嚇は可能だと判断。
 何発か使い霧亥の進路を制限。
 そして狙い通りのコースへと誘導し、トリガーを引く。
 発射した弾数三発。
「!!」
 そのうちの二発が霧亥の機体へと命中する。

『終了です、勝者は朧さん。黄色と赤色が出ました』

 その無線に霧亥はやれやれとひとつため息をつく。
「負けるつもりはなかったのですが‥‥」
 だが結果は結果なのだ。

●武流VS千影
「お手柔らかに頼むぜ」
 機体に乗り込む前に千影は武流へと一言。武流からもおう、と軽く声が返ってくる。
「基本は相手の後ろを取る‥‥ワクワクしてきたな!」
 コックピットに乗り込んで、武流の機体が先に出発。
「俺のR−01は小回りきくけど、これはどうだろうな? ‥‥うしっ、準備運動終わりっ。頑張るぜっ!」
 そして千影も軽くならしたあとに空へと上がる。
 先に動いたのは武流。
 一度雲の中に隠れ、目くらまし。そして千影の背後を取るべく動く。
「太陽はあっち‥‥」
 雲の中では目視はできない。太陽の位置を覚えておき、自身の位置を確認。南がどちらか、そしてレーダーをもって千影の乗る機体のポジションを掴む。
 後ろを取れば攻撃のチャンス。
 一気に雲から出て背後に。
 攻撃は厳しく、素早く。
 それを紙一重で千影はかわす。もちろんこのまま防戦になるつもりはない。
「ぐ、なかなかやるな‥‥」
 守ること優先、な騎士タイプのジェントルメン、千影はコックピットを狙われないように気を配り細かく動く。
「おっし!今だっ! 赤ー出ろー赤ー!」
 そしてこの一弾にすべてをかけているんだというように、赤色がでるよう念を発する。無理にコックピットは狙わず、運にかけて。
 数弾発射、武流はきりもみ回転を加え、狙いをつけにくいよう飛んでいた。
 回転するその機体に弾があたる衝撃。
 ふっと後に疲れた瞬間に変形をかけブレーキ代わりに。
 千影が追い抜いた瞬間に再び変形して、下方からの攻撃。
 その弾が千影の機体にあたる。

『終了です、蓮沼さんの機体に赤色、 須佐さんの機体には青色です』

 どうやら、千影の念は武流の方へと向かってしまったようだった。

●お掃除しましょう!
 模擬戦終わり、使用したKVの洗浄開始。
 汚れても良いように用意されていたツナギなどに着替えて準備はOK。
「これが特殊洗剤。ここにリクエストのあった道具は置いておくよ。あと終わったらシャワーなどもつかっていいからね。ピッカピカによろしく」
 それでは始めますか、と霧亥と潤信がまず最初に全体に水をかけて埃などを落としていく。
「纏わり付いた砂で機体に傷が付いてしまいますからね」
 そしてそれから洗剤をつけまず大まかに汚れをおとしていく。
 高い場所にはどうせ汚れるならとタンクトップとショートパンツ姿となった小柄な幸乃が上り汚れを取っていく。
 なでしこはしつこく残っている汚れの部分を小さいブラシでこしこしと。
「手強い汚れです‥‥丁寧に丁寧に」
 と、そんな丁寧にやっていくなでしこの姿を見て千影は勉強する。
「なるほど‥‥あんな感じか‥‥」
 機体の掃除をするのは初めてで、さらに車も持っていないのでどうやろうと思っていたのだ。
「KV‥‥俺の命を守ってくれる存在でもあるわけだもんな。心を込めて丁寧に掃除させていただくぜ」
 もう着ないTシャツをもってきて雑巾用に。エコ精神も忘れない。
 リズナはバケツをもちサイズ違いのブラシをもってごしごしと。
 変形部分などに入り込んだ塗料を落としていく。
「ホラホラ、根性入れて磨かぬか、お前ら〜!」
 と、ホースで水をばっしゃー! とまいて遊んでいたのは武流。
 即座にお前もやれー! とツッコミが入り作業に連れ戻されていく。
 そして、協力し合い、やがて機体はぴかぴか。
 乗る前よりも綺麗な状態になっていた。
 その機体をリズナは見上げる。
「またその翼で翔ける時を楽しみにしてるわ」
 小さな呟きは、今日のお礼の意味も含めて。
「鏡面並、まで仕上がりましたね」
「‥‥ええ、お疲れ様」
 霧亥と幸乃も並び立ち、見上げる。
 幸乃はこれから、シャワーを借りてくると離れていく。
「あとでお茶でもいきましょう、操縦の話などもっとしたいですから。皆さんも時間があれば」
「いいな。後学のためにも。模擬戦も掃除も、楽しかったな。お疲れ様、勉強になったぜ!」
 ぽん、と武流の肩をたたき千影は言う。なんだか言うタイミングをはずしていたが、今日の相手の礼を。
 そして、潤信もまた礼を心の中で伝えていた。
 機体に。
『戦場で出会えれば、よろしく頼むぞ』
 身を預けるKVは、自分専用であってもなくても、向ける気持ちは同じ。
 この機体も、もしかしたらそのうち誰かが命を預けることになるのかもしれない。
 その時は、味方であればいいと思う。
 もちろん、この中の誰かが、もしくは自分が乗ることも無きにしも非ず、なのだ。
 作業終了をドローム社に伝え、今日の模擬戦、無事に終了。