タイトル:地下水道お掃除大作戦マスター:玲梛夜

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/04/22 03:49

●オープニング本文


 穏やかなLHの午後。
 依頼をみているとこんなものをみつける。
『地下水道お掃除大作戦』
 依頼の名前からして、地下水道掃除だ。
 だが、単なる地下水道の掃除が依頼でくるわけではない。
「あの依頼に興味がありますか?」
 ふっとモニターを見ていたところ、後ろからバルトレッド・ケイオン(gz0015)が声をかける。
「依頼の内容は地下水道での掃除ですね。キメラがたくさん出没しているようなのでその退治が主になります。キメラはとても弱いそうです」
 問題があるとしたら、数くらいらしい。
 依頼の内容をかいつまんでバルトレッドは話し、どうしますかと問う。
 依頼があるのなら受けるのは傭兵として当たり前だ。
 問われるまでもない。
「ああ、それと‥‥キメラ退治が終わった後に地下水道のお掃除もするらしいですよ」
 キメラの退治と地下水道の掃除の2本立て。
「キメラ退治後にまだ元気なようでしたら手伝うのも楽しいかもしれませんね」
 のんびりとそんなことを言いながら、詳しい説明はこれからあるんですとバルトレッドは言う。
 地下水道には等間隔に明かりがあり、何があるかなどは認識できるほどには明るい。
 広さは横幅4メートルほど、中央を幅1メートルほどの川が流れる。
 その川の深さはどんなに深くてもひざ下ほど。
 水もそこそこ綺麗なものが流れている。
 街の地下で、一斉にキメラ退治、その一区画を任せるということらしい。
 その区画の中にやってきたキメラを退治するのが、仕事だ。
 任される区画はほぼ100メートルほどの長さ。まっすぐ、一直線の場所だ。
「お仕事、行かれますか?」
 その言葉に頷いて、出発準備、開始。

●参加者一覧

リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
真田 音夢(ga8265
16歳・♀・ER
エメラルド・イーグル(ga8650
22歳・♀・EP
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN
エルサ・バレンティン(gb3413
24歳・♀・BM
長谷川京一(gb5804
25歳・♂・JG
天原大地(gb5927
24歳・♂・AA

●リプレイ本文

●お掃除すべき地下水道
「ちょっと明るいくらいか、ランタンとか持ってきて正解だったね」
 赤崎羽矢子(gb2140)は降り立った地下水道内をランタンを掲げて照らし見回す。
 水の流れる音だけがそこに響き、薄明かりが少し頼りない地下水道。
 足元を確認すれば、少し川の水が飛び散ったりもし、びしょりと濡れているところもある。
「仕事とはいえ下水道っていうのは憂鬱ねぇ」
 呟きを漏らしたエルサ・バレンティン(gb3413)の足元は長靴。
 彼女の額には一角獣を思わせる白い角のようなが伸び、ゆらりと獅子の尾が動くたびに優雅に揺れる。そしてその耳は今、長くとがり形を変えていた。
 戦いの場所を聞いて事前に用意していたものに履きかえれば、足元を心配することはもうない。
 同じように長靴を履いて、手にある懐中電灯をぐるぐる回す長谷川京一(gb5804)の表情はどこか不機嫌だった。
 それは大規模作戦で機体が大破したことが頭にあるからで、自然と眉間に皺ができてしまう。
「‥‥タマが嬉しそうです」
 地下水道に入ると同時に覚醒した真田 音夢(ga8265)の周りをどこか嬉しそうに、くるくるぐるぐる踊る白い猫のオーラ。
 音夢は瞳を細めてそれを微笑ましく見る。
 歩いて場所へと向かう仲間の先頭に立つのは天原大地(gb5927)だ。
 傭兵としてはまだ日が浅く、自分の力を知るためにもと、どこか気合いが入っている。
 薄暗い地下水道に入って覚醒した彼の体は真っ赤に光り、明かりの役目も担っていた。
 その後ろにはリゼット・ランドルフ(ga5171)。両手には借りてきた掃除用具のモップとバケツをもっていた。
「うーん‥‥こんな所にまでキメラって出没するものなんですね」
 リゼットはくるりとあたりを見回し、歩み始める。
「さて‥‥気乗りしないが行くかね‥‥」
 進み始める仲間の後方、紅月・焔(gb1386)も玩具のガスマスクをきちっとかぶっていることを確認して歩みだす。
 そして進む仲間の一番後ろではエメラルド・イーグル(ga8650)が周囲を警戒していた。
 どこからひょっこりとキメラが現れるかもしれないと時々探査の眼を使用する。
 そしてしばらく何事もなく歩いて、一行はキメラ退治を支持されたポイントへとたどり着いた。
 どこからかキメラの追いたてが始まったようで、シンとしていたはずの地下水道がどことなく、ざわつき始めていた。

●キメラの波がどんぶらこ
 任された場所に到着し、陣形を組む。
 中央を流れる川を挟むように左右に一列を作って並ぶ。
 どこから来られても大丈夫なように、気配を探るように気を張り巡らせる。
 と、どこか遠くの方から揺れるような、地響きのような響きが聞こえてくる。
 そして、薄暗い中にキメラの姿が、見え始める。
「‥‥可愛い」
 キメラたちはもふっとしたものやら、ネズミ型やらスライム型やら多種多様。
 そのキメラたちに共通しているのはすべて両手にのるくらいのサイズである小さいということ。
 姿形はさまざまなれどもその小ささはかわいいもので、音夢は無表情ながらぽつりと声を漏らす。
 だが、可愛くてもキメラはキメラなのだ。
 敵の姿を目視した瞬間、大地はハンドガンを向け射撃を開始する。
 その射撃の音とキメラの声が地下水道に反響、その音の合間を縫うようにさらにキメラがどばっと押し寄せてくる。
「これはサポートなんて言っている場合ではないような‥‥!」
 いままで経験を重ねた面々はサポートという趣でこの依頼を手伝おうと思っていたものの数が、数。
 最初の負担を少し軽くすべく動き出す。
 音夢の周りをくるっとタマと名付けた白い猫のオーラが回れば、手に持った茶釜型の超機械『守鶴』から電磁波がばりっと音をたてて放たれる。
 水路と通路と、誤爆に気をつけながらそれを放てば、キメラたちの動きが止まる。
 だがそれを抜けてくるものもおり、ぴょんっと飛び出し襲いかかってきたキメラを手にしたアイリスでエルサは斬り伏せる。
 そして後から、川の中から飛び出してきた気配には剣撃ではなくナイトシールドで守ることで相手にダメージをうまく与える。
 周囲の仲間と連携をとりながら効率よく、数を相手にするのだから体力を残しつつ戦えば、そう苦でもない。
「‥‥次から次へと、うっとおしいです!」
 リゼットは金の髪を黒に変え、機械剣『莫邪宝剣』を強く握る。その柄からレーザーが剣を形作る。
 それを振るえば、レーザーの軌跡と一緒に、左手の上を舞う青白い蝶も飛ぶ。
 弱いといってもキメラ、仲間に攻撃が当たらないようにしながら蝶が舞うかのようにリゼットは戦う。
「さて、今日のお兄さんはちょいと不機嫌ですよっと」
 薄く瞳を翠に光らせ長弓『草薙』を放つのは京一だ。
 その弓はキメラへとあたり、多少たまっていたものが晴れてくれば、調子がだんだんと良くなってくる。
 ばっと上からやってくるコウモリ型のキメラを勢いよく射抜き落とせば、その落ちるキメラとともにエメラルドはそのバトルモップで大きく周りを掃除する。
 空間を開ければ戦いやすくなる。
 場所を作って、それぞれ戦いやすいように。
 それは支援にもなる。
 銃の斜線がそれで確保されれば羽矢子は小銃でキメラを打ち抜いて行く。
 その背には猛禽類の翼、目つきは鋭くなり、周囲の様子を的確にとらえる。
「‥‥ふ‥‥この暗い味気ない場所にも可憐な天使達がいる‥‥それだけが救いだ」
 キメラを退治しつつも視線が明らかに女性陣へ。
「必殺、焔ミサイル!!」
 そんな焔を、もっとしっかりとやれというように羽矢子が思いきり蹴り飛ばしてキメラの中へと突っ込ませる。
 やがてキメラの数が少なくなれば、対応も変わってくる。
 ハンドガンで攻撃していた大地は攻撃をソード重視に切り替える。
 覚醒中は髪が肩まで伸び、犬歯も伸びる。
 その筋肉質である体からはしなやかな攻撃が繰り出されていた。
「だいぶ、減りましたね」
 回りを確認する余裕ができ、音夢はくるりと周囲を見渡す。
 そこには、倒してきたキメラの後。
 掃除が大変そう、と音夢は思いつつまた意識を戦闘へと戻した。

●退治の後の後始末
 やがてざわついていた気配がなくなる。
 しん、と地下水道に響く音はない。
 キメラの気配はなくなり、平和な地下水道が戻ってくる。
 そうなれば、退治と別のお仕事がもう一つ。
「やるのならば、徹底的に」
 すちゃっとエメラルドは掃除用具を構える。
 お掃除用具はレンタル品。だが洗剤など必要なものは一通りそこにある。
「倒したキメラとかもともとこびりついてる汚れ‥‥手強そうね」
「ゴミを運ぶ距離も考えてこっちからあっちにむいてやったほうがいいね」
 羽矢子は視線を右から左、やってきた方へと向ける。
 自分たちが通ってきたあとにはキメラとの戦いを示すあとが残っている。
 それはもう盛大に。
「掃除、がんばるっス!」
 覚醒は解かぬままやる気満々、大地は掃除道具をしっかりと手に持っていた。
「どんな場所でも綺麗になると気持ち良いですからね‥‥戦いはあまり好みませんが、家事全般でしたらお任せください‥‥」
 さっと襷をかけ、袴はまくりあげ割烹着をきて準備万端なのは音夢だ。
 その表情はきりりと、掃除人としてのオーラは全開。
 それぞれ武器ではなく、掃除用具を持って地下水道の掃除を始める。
 音夢と羽矢子がホウキでさっさとゴミを集めていけば、そのあとをモップでごしごしとこするエメラルドたち。
 と、そんな掃除雰囲気の中でタバコふかしつつ、京一は軽く手に持ったモップに体重をかけながらおさぼりモード。
「まぁ待ちなって。こんな時、作業中に後ろからキメラが! なんてB級映画じゃよくある話だろ?」
「は、確かにそうッス!」
 その言葉に関心する大地にそうだろう、と頷く京一、だったが。
「でもどうみてもおさぼり‥‥」
「‥‥あー、へぇへぇ、分かりましたよ。って、おいそこ! まだ汚れが残ってるぞ、何処を見て掃除してやがる!」
 さぼりモードに視線をじっと集められ、それで説得されれば意識は一気に掃除、小姑のごとく、汚れを目の敵のようにせっせと京一は掃除し始める。
「ふ‥‥掃除‥‥」
「はいはい、動かないでいると一緒に掃くよー」
 動かぬままの焔を箒でざっざと吐き、羽矢子は作業をてきぱきと。
「箒の神様‥‥箒神は産神とされてきました。願わくば、次の命として生まれてくるときは、きっと‥‥幸せに産まれ、生きられるように‥‥」
 退治したキメラの残骸。それを丁寧に片付けつつ、音夢は倒したキメラたちを弔う。
 地下水道にこもっていた臭いは掃除で薄れゆく。
 薄暗い中だが、だんだんと綺麗になっていっているのは明白。
 任された場所を終えればどこかそこはすっきりとしていた。
「ゴミの分別もしたし、川のごみも掬いあげたし、終わりかな」
 ゴミは置いておけばあとで回収に回ってきてくれる。これだけ分別もしていれば大丈夫だろうと羽矢子は言う。
 掃除が終わり、来た時よりもずいぶんと綺麗になった地下水道。
 その様子を無表情のまま、エメラルドは受け入れ依頼の終わりを感じる。
「普通の掃除は、やっぱ俺らの仕事じゃないでしょうに‥‥さて、一服一服」
 そんなことを言いながらもどこか満足げ、京一はふーっと長い息を吐いた。
「きれいになると気持ちいいッス」
「そうね、お疲れさま」
「あ‥‥は、はいそうッス!」
 女性になれない大地は軽い言葉でも緊張してしまうもので。
 今まで退治に掃除と気を張っていたのが抜けたとたん一気にそれが表に出てくる。
 緊張しつつ、掃除用具をまとめて。
「汚れたし熱いお風呂に入りたいね」
 そんなつぶやきを残しながら一向は地下水道を後にするのだった。