タイトル:ミニタコの海岸、再びマスター:玲梛夜

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/07/30 00:43

●オープニング本文


 たこたこにゅーにゅー!
 ここはとある海岸。
 海岸の一角を埋め尽くす、タコタコタコ。
 タコタコタコタコ(以下略)。
 小さくてもキメラはキメラ。
 過去、この海岸に現れたタコキメラが、また再び大量発生。
 季節は、夏。
 夏祭りの、この季節に、再び。

「タコがでたー? えー、またあそこー? いくいくー」
「この前と同じような感じだから‥‥気をつけていってらっしゃい。ちょうど夏祭りの時期で、花火大会とかもあるらしいから」
「花火! いいね、いってくる! 」
 薬袋音は、バルトレッド・ケイオンから依頼内容を半分聞き流すような感じで、きゃっきゃとはしゃぐ。
 しばらく前に大量発生したタコキメラを倒しに、再び同じ海岸へ。
 今回も、現地住民たちは能力者たちがさくっとタコを倒してくれるのを待っている。
 タコを倒せば、あとはフリータイム。
 合わせて行われる夏祭りにいくもよし、温泉に入るもよし。
 一泊二日の旅行、ともいえる。
 ある意味、夏の良い休暇となるのだった。

●参加者一覧

神無月 紫翠(ga0243
25歳・♂・SN
犀川 章一(ga0498
24歳・♂・FT
藤枝 真一(ga0779
21歳・♂・ER
ロジー・ビィ(ga1031
24歳・♀・AA
美海(ga7630
13歳・♀・HD
蓮沼朱莉(ga8328
23歳・♀・DF
グレッグ・ノルフィ(ga9730
23歳・♂・GP
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
天道 桃華(gb0097
14歳・♀・FT
ジングルス・メル(gb1062
31歳・♂・GP

●リプレイ本文

●タコタコにゅーにゅー!
「おう! 相変わらずのタコいっぱい!」
 一面のタコキメラ。薬袋音はその光景に笑った。
「此処へ‥‥来るのも‥‥久しぶりですが‥‥またタコ出たんですか? ‥‥やれやれです」
 神無月 紫翠(ga0243)はその海岸の光景をみて、溜息混じりに呟いた。
 呟きつつも覚醒。瞳が紅にし、視線は冷たくなり小銃「シエルクライン」を手にもった。
「久しぶりに、銃使うか、苦手なんだが‥‥前回綺麗にしたと思ったんだが、詰め甘かったか?」
「っしゃー! 行くぞー!」
 そりゃあ海ですもの。多少なりともテンションは上がります。
 真っ黒い人もいます。
「ジングルスさん‥‥墨をかぶったいい男、です」
 ぐっと親指たててぐっじょぶ! とするのは蓮沼朱莉(ga8328)。
 視線の先、ジングルス・メル(gb1062)は、叫んでいた。
「‥‥って、ぎゃー! 何か吐いた! 何か吐いたコイツ等! ア゛ー!!」
「男前ですわッ!」
 タコキメラと黒くなりながら戦うジングルスに心からの賛辞をロジー・ビィ(ga1031)も送っていた。
 送りつつ、二刀流でさくさくとタコキメラを退治してゆく。
 タコキメラは一撃できゅうっと気絶してはその姿で山となってゆく。
「狩るぞォ!」
 と、勢いよくグレッグ・ノルフィ(ga9730)は赤と黒のツートーンカラーになったその髪を靡かせ、その伸びた犬歯を覗かせ片っ端から瞬天速を使い狩ってゆく。
 その傍らでは天道 桃華(gb0097)が黒のビキニ姿でタコキメラを下僕にしようと頑張っていた。
 だが未だ成果はゼロ、まだ道のりは長そうだった。
 そうしている間にも、海岸にいるタコキメラは減っていく。
「‥‥ん。タコ食べるの。楽しみ」
 重なりゆくタコキメラの山をみつつ最上 憐(gb0002)は小さく呟いた。
 と、ピョンっと飛び出たタコキメラを犀川 章一(ga0498)が盾でカバーし防ぐ。
 そんなこんなでさくさくとタコキメラ退治は続いてゆく。
「古今東西、生物が大量発生するという事例はよくある。杞憂かもしれないが、2度目となると慎重にもなる‥‥キメラなら尚更だ」
 退治も終盤、藤枝 真一(ga0779)は一匹のタコキメラを捕まえてそれをタコ壺へといれた。
 それは捕獲用の壺で、真一はこれから今回のタコキメラ発生についての情報を集める気だった。
 最後の一匹を退治して、海岸にはタコキメラの山が、出来上がっていた。
「退治、終わり!」

●海辺でBBQ
「デビルフィッシュをよりデビルに致しますわッ」
 気合の入ったロジーは服の袖をまくりあげる。
 その手には包丁、ではなくて刀があった。
 蛸の活造りですの、と『たっこたっこにゅーにゅー♪』とご機嫌に歌いながらその刀を振るってゆく。
 そんな様子を章一は怯みつつ見守っていた。
「はは‥‥これはまた、斬新な‥‥」
「ロジーちゃん‥‥なんだかカッコイイよ!!」
 そんな楽しいBBQ用意をみていた音は食べるのが楽しみだ、と笑う。
「BBQセット、用意完了です」
 にこ、と笑みを浮かべて朱莉は言う。そこには現地調達の肉や魚などなど。
 紫翠も準備を手伝いここまでくるとあとは焼くだけで、することはなくなってくる。
「お料理できるまで時間あるし海で遊んじゃおうかなぁ」
「それなら私も。海にぷかぷか、たゆたいに」
 と、いうことで手持無沙汰になった音と朱莉は水着に着替えて浮き輪を持って海へ向かう。
「んお、桃華ちゃんも海はいって遊ぶー?」
 と、海岸で何やらしゃがみこんでいる桃華を大きな声で呼ぶ。
 だが桃華はとても忙しかった。
 タコキメラの調教に。ビキニからスクール水着に着替えタコ壺からでてこないタコキメラと睨み合っているのだ。
「言う事聞かないとたこ焼きにするわよっ」
 そういった瞬間、ぴゅっと勢いよく吐かれる墨。
「はうっ‥‥! タコのくせに!」
「‥‥がんばれー」
 桃華とタコキメラの戦いは、まだ続く様子。
 じりじりと距離は変わらぬものの、桃華とタコキメラの間にはぴりぴりとした空気が漂っていた。
「‥‥何をしているんだ」
 タコキメラ調査中の真一が桃華をみつけやってくる。すぐさま調教よ! と答えが返ってくると真一は少しの間をおいて言葉を生む。
「よく、似合っている。可愛いぞ。馬子にも衣装とはいったものだな」
「ありが‥‥どうして今言うの!」
 今はタコキメラとにらみ合うのに一生懸命です。
 と、それぞれの時間を満喫してBBQ準備も完了です。
「‥‥ん。いただきます。タコ食べ放題。凄く幸せ」
 じゅーっといい匂いがあたりに広がる。
 憐ははふはふとどんどんタコを食べてゆく。
「タコって食べた事がないから、スッゲ楽しみ‥‥この依頼を見た時、思わず受付のお姉ちゃんに飛び付いたくらいに」
 そしてビンタも貰ったんだけど、とジングルスは笑いながらいいつつ、初タコ体験。
「俺もタコは食べるのは初めてだな」
 ジングルスに続いてグレッグももぐりと食べる。
「これがタコか‥‥!」
「‥‥ん。おかわり。全然足りない。もっと沢山欲しい」
 BBQ用としてとっておいたタコはどんどんなくなる。
 なくなる、というか焼くのが追い付かなくなっていた。
「‥‥ん。おかわり。全然足りない。もっと沢山欲しい」
「ちょ、早い! 早いよ! 朱莉ちゃんも憐ちゃんも黙々と‥‥!」
「音、食ってるか? たんと食えよ?」
「食べてるけどあのスピードに追い付けないよ」
 と、そこへどん、と大皿が現れる。
 そこには原型はなんとなくタコとわかるもの。
「‥‥これはロジーちゃん作?」
「そうですわ! タコの活造り、吸盤でオブジェってみましたの」
「味は大丈夫なはずです‥‥多分」
 タコオブジェ活造りをぽかーんと見上げた後に、章一は言う。
「‥‥ん、おいしい」
「‥‥タコって、生で食えるんだな。よし」
 がぶ、っと生タコにかぶりつくジングルス。
 気絶していたタコはその瞬間目を覚まし、その吸盤を広げる。
「吸ってる! 吸い付かれてる! 痛いから痛いから!」
「! みつけたわよタコ! 調教から逃げて!」
 と、キラリと瞳を光らせて桃華がダッシュしてくる。ジングルスにきゅっとくっついているタコキメラは桃華のタコキメラだったのだ。
「逃げ出すなんて! タコ焼き決定!!」
 そんなこんなで、わーわーと騒ぎつつ、BBQタイムは過ぎてゆく。

●潮風の後は攻防★露天風呂
「情熱が俺を動かすのかもしれないな‥‥」
「覗きは男の浪漫なんだぜ‥‥!」
 白い湯気がもくもく、とする露天風呂。
 浜辺であびた潮風のにおいを落としに一向は露天風呂に入っていた。
 女湯との障害となる柵。その向こうを思い描いて立ち上がるは真一とジングルス。
「行こうぜブラザー・真一」
「伊達にサイエンティストはしていない、実は前回‥‥」
 こそこそと柵の付近で活動する二人。
 そんな様子をほかの面々は生暖かく見守っていた。
 曇るから、と眼鏡をはずし、髪をアップにした紫翠は苦笑交じりに呟く。
「また‥‥今回も、ですか? ‥‥こりませんねえ‥‥離れていましょう」
「そうですね」
「間違いなく返り討ちだろうなぁ」
 グレッグはそっと風呂桶の中に救急セットを用意して、二人とともに距離をとる。
 ゆっくりまったり、酒を飲みつつ見上げるのは月。
 そのころ女湯では、すべてをお見通しでちゃくちゃくと風呂桶が積まれていた。
「ママが言っていたわ、変態は容赦なく叩き潰せと!」
「憧れですわよね、風呂in酒! この時間を邪魔するものがいるならば容赦しませんわ」
「絶対来ると思うんだよね!」
 臨戦態勢の女子チームは、邪な気配を感じるまでゆったりとお風呂を楽しんでいた。
「‥‥ん。大丈夫。覗かれても死なない。気にしない」
「覗かれたら反撃、これ乙女の摂理!」
 ぐっと拳を握りつつ音が言うのと同じタイミングで、ごそごそと柵の向こう側に気配。
 柵の向こう側では、男二人が湯気と格闘していた。
「‥‥くっ、湯気が‥‥ッ」
 柵の一部をスライドすると、そこから覗き穴が。
 方向などなどベストポジション、のはずが湯気に視界を覆われる。
「ブラザー! 湯気なんて気合で!」
 と、ぎゃーぎゃー騒いでいればすぐにばれるもので。
「のぞきめ!!」
 それに気がついた桃華ががんっ! とそののぞき穴を殴る。
 女湯からの一撃と、男湯からの負荷。
 柵が倒れないわけがない。
「お、待て、なんだか柵が動いて‥‥!」
 と、騒いだ時にはすでに遅し。
 のぞき穴を出現させたことによって今までうまくバランスを保っていた柵が、倒れる。
 派手な音をたてて、女湯に向かってそれは倒れてゆく。
「あーあ‥‥」
「予想通りの展開だな‥‥」
 もうちょっと離れていよう、と湯船につかっていた男チームはそそと距離をとる。
「やっぱりきたー!」
「このロリコンどもめ!!」
 キメラ相手、バグア相手よりも激しい戦いがそこで始まる。
 桶を手にスコーンと遠慮なく投擲。
「大体、お前、隠すもの無いだ‥‥ぐはっ」
「悪かったわね、つるぺたでっ!」
 真一の言葉に桃華は遠慮なく攻撃!
「‥‥やん、えっちv ぶふっ!! フトモモ、万歳!」
 きゃっ、と言わんばかりにジングルスが逃げれば、逃がしはしませんとロジーからの水圧攻撃。
「水圧をお楽しみあれ☆」
 ばしゃああああっと勢いよくお湯が二人へと向かう。
「あ、やばい、タオルが!」
「スナイパーではありませんが、遠慮なく撃たせていただきます‥‥殿方の急所を」
 静観していた朱莉がざばっと湯船から立ち上がる。その手には水鉄砲。
「俺は逃げも隠れも隠しもしない!!」
「そこは隠せえええ!!!」
「ぎゃあああああ!!!!」
 男湯も女湯もなく、そこは戦場。
「‥‥ん。お湯に浸かって。百まで数えた後の。コーヒー牛乳は格別」
 そんな中で覗きさんを撃退する間も、憐はゆっくりと湯船につかっていて、百まで数えて露天風呂を出て行く。
 一番大物は、憐かもしれない。

●夏祭りの時間
 露天風呂での戦争(?)も終わり、正座と柵直しという仕事を真一とジングルスが終了したころ、一向な夏祭りへ向かう。
「さぁ、この浴衣に萌えるが良いわ!」
 といって、桃華はダッシュで夜店の並ぶ道へと消えていく。
 その素早さに、誰もが待ってという瞬間を逃していた。
 だがあとで花火をみる場所は決めているから、大丈夫だろうということに。
「浴衣っていいですわね、それに夜店に花火! 楽しいですわ」
「花火までまだ時間あるね‥‥夜店! りんご飴! 綿あめ! タコ焼き!」
「‥‥ん。屋台。端から順に制覇して行く」
 憐はまだ、食べる気だった。
「‥‥ん。カレーない? カレーであれば。問わない」
「カレーならそこにありますね」
 その言葉に食べてくる、と憐は素早く向かう。
「浴衣も、イイよな‥‥!」
 そう言うジングルスの頭にはお面、そして手にはりんご飴。
 それぞれ花火まで一時散開、思い思いのものを見に行ったり食べに行ったり。
「お疲れ様‥‥です。少し休憩、付き合いませんか?」
「うん、いいよ。ユキもお疲れ様ー」
 冷たい飲み物受け取って、夜店の中を歩いてゆく。
「贅沢な時間。俺は‥‥役に立てた、かな」
「うん、とっても! ユキといるの楽しいよー」
 にっこり笑顔を向けられればどこか熱くなる頬があって、扇子でぱたぱた仰いで章一はそれをごまかす。
「お、もうすぐ花火始まっちゃうから早く行こう!」
 ぱっと手を繋いでちょっと急いで人ごみぬければ、大きな音を立てながら夜空に盛大に花が咲きはじめる。
「夏の暑さも吹き飛ぶような盛大さ、です」
 朱莉はうっとり、それを見上げる。その隣では憐が夜空、ではなく手元の焼きそばをみつめつつもしゃもしゃと食べていた。
「日本では『玉屋』でしたかしら?」
「そうそう、たーまやー」
 夜空にうちあがる花火は煌々と、彼らを照らしていた。

●就寝、そして二日目はというと
 花火も見終わり、夜更けて。
「‥‥あれ。もしかして年長じゃね? 俺」
 就寝前、ふとジングルスがそんなことを思ったころ、女子チームの部屋では枕投げ大会が勃発していた。
「負けませんくてよーッ!」
「ぶふあっ! えーいっ!」
 とっても賑やかにしばらく遊ぶと、昼間の疲れも出てくるのかもそもそとそれぞれ布団に入りだす。
 だがまだまだ続く、話。
「今日楽しかったね。明日もまだちょっと時間あるから、遊べそう」
「もう一度海でぷかぷか‥‥温泉もよさそう」
「温泉! 温泉と言えば今日の覗き‥‥ウチのパパとママもあんな感じで出会ったらしいのよね。それで結婚するママも明らかにおかしいと思うけど」
「えぇー、なになに、どんな出会い、もっと詳しく!」
 女子チームのの夜はまだまだ長いのだった。
 そんなこんなで夜が明けて、二日目もいい天気。
 昼間は海で再び帰りの出発まで遊びつくしたり、再び温泉に入ったり。
「お疲れ様でした‥‥楽しかったですね? ‥‥またあると‥‥良いんですが」
「タコキメラについて調査もしたし‥‥研究所に送っておこう。二度あることは三度ある、かもしれないし毎度退治に呼ばれてもな」
「や、私はおいしいし楽しいからいいよ!」
 と、地元の人たちにも挨拶をすませてゆく。
 あらかたそれが終わったところで紫翠がふと思い立ったように記念写真をとろうと提案する。
 海辺に全員並んで、まだ少し残っていたタコキメラも一緒にはいチーズと記念写真。
 タコキメラ退治の後の、ちょっとした息抜きの時間。
 記念写真という形で、それは一つ思い出として残ってゆくのだった。