タイトル:しっとり! 青も、こ?マスター:玲梛夜

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/04/24 16:43

●オープニング本文


「‥‥今回の相手は、地下水道にいるそうです。地下からきゅーきゅー鳴き声がするとか」
 バルトレッド・ケイオンはそして、と言葉を続ける。
「住民が青いふわもこがきゅーきゅー言いながら川などに飛び込む姿を確認しているそうです。いままでふわもこっとしたキメラが現れているので、同じ系統かもしれません。調査報告書などあると、今後のためにも役立ちますのでできればお願いします」
 こでが資料の写真ですとぺらっと一枚。
 数匹の青いふわもこが勢いよく川に飛び込む姿がとらえられていた。
「まだもう一枚あります」
 これです、と出された一枚には。
 ‥‥?
 青い色は同じ、だがふわもこも面影はなくしっとりと、長い毛におおわれた細身の生物がいた。
「これは自らあがってきた姿です。見ての通り、ふわもこの面影はありません。つぶらな瞳も毛に隠れてしまって、前が見えないのかよくぶつかったりしているそうです」
 そんなに強い相手ではなさそうだが、油断は禁物。
「住民の方々が協力してくれているようで、防護ネットなどによって彼らの生存区間は川の一部、となっています。抜けられることはないと思うので安心してください。川に入られると素早い動きになるらしいですが、川は膝くらいの深さなので入っても問題ないでしょう」
 詳しくは現地でも情報は得られると思います、とバルトレッドは言って、傭兵達を送りだした。

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
クロード(ga0179
18歳・♀・AA
鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
鯨井起太(ga0984
23歳・♂・JG
シャロン・エイヴァリー(ga1843
23歳・♀・AA
二階堂 審(ga2237
23歳・♂・ST
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
ナオ・タカナシ(ga6440
17歳・♂・SN

●リプレイ本文

●ふわふわもこもこ青たちとの葛藤はすでに始まっている
 その青い物体は、河原でのんびりと、昼寝をしているようだった。
「‥‥ふわもこ‥‥あいかわらず‥‥‥‥いけない‥‥情欲に‥‥流されちゃ‥‥駄目」
 クロード(ga0179)は青いふわふわもこもこキメラにほだされまいと、強く気持ちをもちなおした。
「同じ系統のキメラが量産されているからには何らかの意図があるはずなのよね‥‥青って私のイメージカラーなのよね‥‥まさに、私のために生まれたような。泳ぐのはペンギンみたいに潜水かしら、早く飛び込まないかな」
 双眼鏡を覗きながら、シャロン・エイヴァリー(ga1843)は呟く。
「にゃにゃにゃ! 幸せそうに寝てるニャ〜」
 アヤカ(ga4624)はふわもこキメラたちの様子にほわんとする。
 だがその後には、最終的に退治することを思いその表情は一瞬曇った。
「正直、あの可愛い敵を倒すのは良心が痛んだニャが‥‥それを敢えて乗り越えて退治するというのが、これの骨子ニャね‥‥」
「攻撃してくるなら倒しやすいですが‥‥無抵抗だと色々やり辛いです‥‥見た目云々よりこちらのほうが問題ですね‥‥」
 鳴神 伊織(ga0421)は手にしていた双眼鏡をおろしながら、呟く。
 わかっていはいることで、もちろんきっちり容赦なく仕事は完遂するつもりだが気乗りはあまりしない。
 河原がよく見えるビルの屋上から観察しつつ、町へと聞き込みや準備へ向かった面々の帰りを四人は待っていた。
 その頃、聞き込みをしていた二階堂 審(ga2237)は現地住民より詳細な話を聞いていた。
 昼は泳いで、昼寝の繰り返し、夜は河原のそばで、全てのふわふわもこもこキメラは固まって眠っているらしいとのこと。
 またこちらから危害を加えなければ攻撃のようなことはしてこないことなどなど。
「バグアはこんなキメラをつくって一体何を考えているんだろうな‥‥」
 一通りの話をきいて、審が思ったのはそんなことだった。
「あ、ネットなど借りてまいりました、これで大丈夫ですね」
 もし現在引かれているネットが破られた場合を考え石動 小夜子(ga0121)は手配していた、さらに頑丈なネットを入手して戻ってきていた。
 その手にはネットのほかにも猫用フードが。
「それは?」
「食べるかな、と思って‥‥餌です」
 審の問いににこりと笑顔で小夜子は答えた。
 立ち話をしているとナオ・タカナシ(ga6440)も目当ての物を得て、合流。
 その手にはボールや豆、そして懐中電灯が握られていた。
「興味を持ってくれるといいんですが‥‥じゃれついてきたり、豆をパクついてきたら‥‥ふふ、和んでしまいそうですね」
 もちろん、倒さなければいけないことはわかってはいるのだけれども。
「きゅーきゅー鳴くらしいが、それによって仲間同士の情報の伝達があるのか‥‥話を聞いただけではわからないな」
 情報収集を終えた鯨井起太(ga0984)は、川辺の方をみる。
 今も毎日と変わらずいるであろう青いふわふわもこもこキメラたちのことを思いながら。
「多くのキメラは気性が荒く、その性質・生態を観察することが困難だ。そういった意味でも、ふわもこは調査対象種として、うってつけの相手。倒すには倒すができるだけ多くの情報を‥‥」
 と、ぶつぶつと言うものの、内心は戦い辛いという気持ちでいっぱいだった。
 あんなに愛らしい生物を、なぜと。
 それは誰もが心のどこかに、持っている気持ちだった。

●もこ OR しっとりぺそ
 準備も万端、遠くから生体の観察も終了。
 いよいよキメラたちに接近しての、情報収集となる。
 現在、青いふわふわもこもこキメラたちは川の中だ。
 そして川からとてててとあがってきた姿はというと。
「昔飼ってたトイプードルを洗った時もあんな感じだったような‥‥」
 ぺそっとしっとり。
 もっこもこが嘘のようにしっとりと毛が水にぬれてぺたっとなっていた。
 起太はその姿に呟きをもらす。
「ふわふわもこもこじゃ、ありませんね‥‥」
 伊織もその姿に呟く。水にぬれるのだからなんとなく想像はできていたものの、それでもやはり、現物を見るのとでは違う。
 だが五分くらいするとその毛は日光で乾いてきたのか、もそっとだんだんとボリュームを増していく。
 川辺で気持ちよさそうに目を閉じて並ぶ姿は、とてもかわいらしい。
 少しずつ、傭兵たちは距離を詰めているのだが、まったく警戒する様子はない。
「光をあててみましょうか」
 ナオはぺかっとスポットライトを当てる。
 するとその光が向く方へと、青いふわふわもこもこキメラの体の向きが変わってゆく。
 そしてどうみても、気持よさそうな様子。
「日向ぼっこ‥‥」
 ふわふわもこもこキメラたちは、やがてぱちっと目をあけて川辺を走り回る。
 どうやら追いかけっこをして遊んでいるようだった。
 その様子に小夜子はそっと餌をなるものを転がし気をひいてみる。
 くんくん、と匂いやがてそれをしゃくしゃくと食べ始めるキメラたち。
「なんでも食べるのかな‥‥」
 ナオは豆をころころころ、と撒いてゆく。
 それにもふわふわもこもこキメラたちは反応し、ぱくぱくといそいそと食べ、だんだんと隠れている場所へと近づいてきていた。
「‥‥!!」
 そして、気がついてじーっと傭兵たちを見上げてくる、つぶらな瞳。
 だが、やがて問題ないと判断したのかすりすりとすり寄ってくる。
 審はそのすり寄ってくるふわふわもこもこキメラを優しく撫でた。
 そのキメラは簡単に、抱きあげさせてくれる。
 その様子をみた他のふわふわもこもこキメラたちも、傭兵たちに興味をもったのか、周りをちょこちょこと動き始めた。
「君はどこで寝ているんだい? ねぐらや仲間と意思疎通はできるのかい?」
「きゅーきゅー」
 起太はしゃがみこみ、一匹のふわふわもこもこキメラと会話を始める。
 理解しているのかしていないのか、キメラはきゅーきゅーと鳴いてまわりをくるくるとはしゃぎまわっていた。
 と、ボールがころころと転がってくる。
「きゅ!」
「きゅーきゅー!」
 ナオの転がしたそれに、二匹のキメラがたわむれ、鳴きながらそれをとりあい遊ぶ。
 どうやら仲間同士の意思の疎通はできているようで、その様子を起太は観察した。
「‥‥かわいらしいですね」
 ナオもいつのまにか、その姿をにこにこと見守っていた。
「ニャ!」
「きゅ!」
 目の前でぱんっと手を叩いて大きな音を立ててみるアヤカ。
 キメラはぴくっと驚いたものの、それは一瞬のようだった。
 すぐに大きな音があったことを忘れて、ほてほてと遊び始める。
「ニャ、この音は大丈夫ニャか‥‥じゃあ今度は‥‥」
 延々と調べ物は、続いてゆく。
「ふわふわもこもこですね、本当に。毛が乾くとあの細身の体系がまったくわからないわ‥‥」
 もふもふと小夜子はふわふわもこもこキメラを触る。
 ふわもこの弾力などを調べつつ。
 決して撫でているわけでは、ない。
 断じて。
 と、川に入ろうとするキメラが一匹。
 クロードは素早く覚醒し、そのキメラを抱きかかえる。
「‥‥やっぱり可愛い‥‥」
 スリスリモフモフ、相変わらずのもこっぷりに、思いつくまま、感情のままに抱きしめ撫でてゆく。
 徹底的な、調査だ。
「‥‥‥‥ぽっ」
 やがて大人しくもふもふされていたキメラは川にどーしても入りたくなったのか、ぴょこんと腕から逃れジャンプ。
 ばしゃっと水音が響いた。
「ふわふわもこもこ‥‥ハッ!? 私はなにを」
 きゅーっとふわふわもこもこキメラを抱きあげてうっとりしていたシャロンはハッと我に返る。
 その腕の中ではふわふわもこもこキメラが気持ちよさそうに、していた。
「運動性や防御力を見ようと思ったのにあっさり捕まるしふわふわもこもこだし‥‥」
 と、しっかりとふわふわもこもこの魅力にとりつかれていた。
 こうしてそれぞれ、思う存分調査という名のふわふわもこもこを、堪能していくのだった。
 調査です。

●悲しみの決別
「‥‥一通り、調査が終わってしまったわね」
「そうニャね‥‥」
「十分なほどデータは‥‥」
「心を鬼にしなければいけませんね‥‥あの子もキメラでいる事を幸福とは思わないでしょう」
 ふっと溜息がどこからか漏れる。
 だが、やめるわけにはいかないのだ。
 相手はキメラで、自分たちは傭兵、なのだ。
 ある種の気合を入れて、キメラたちへ向かう。向かう、といってもまだ物影から見ているだけなのだが。
「なんという‥‥なんという、ふわふわもこもこ! これは予想以上の強敵だよ」
 くっと起太は言って、一度視線を逸らす。だが、もう一度しっかりとふわふわもこもこのキメラへと向き直った。
「すまない、君のことは忘れないよ‥‥!」
 河から陸へと上がってきたふわもこブルーへと、起太は銃を向ける。
 せめて苦しまぬように、一撃で、と皆とタイミングを、合わせながら。
 小夜子はネットをかぶせ、動きを封じるために動く。
 覚悟をきめ、ふわふわもこもこキメラたちが集まったところで、ネットをばっと広げる。
「きゅー!!」
「兵法『窮修流』丸目蔵人、参る!」
 クロードは覚醒し、一気に踏み込む。
「情欲に駆り立てられるな、煩悩に心を任せるな、成すべき事を‥‥成す‥‥手は綺麗に、心は熱く、頭は冷静に、一度剣を抜いたなら‥‥何事にも動じず‥‥刃圏に入りし悉くを‥‥斬る!」
 自分を震わせるようにいい、そして刀を向ける。
 時間をかけると鈍る心、そして苦しませぬためにとその一撃は、強力な攻撃をもって。
 そしてその横、ではシャロンがふわふわもこもこキメラと己の心と闘っていた。
「つ、つぶらな瞳‥‥ここに剣を振り下ろすなんてっ」
 覚醒し繰り出した豪破斬撃のふりはふわふわもこもこキメラをそれる。
 これではだめだと攻撃を流し斬りに切り替えるものの、やはりダメージを受けるのは自分の方だった。
「けど‥‥この、ふわふわを背後から切りつけるなんて人としてっ」
 と、ソニックブームを思い出し、シャロンはふわふわもこもこキメラへと繰り出す。
「これだわ! 一応は正面から! けど視線を意識するほど近づかずに済む!」
 だがしかし、ふわふわもこもこキメラは恐ろしかった。
「きゅふぃーん!」
「っ‥‥! ふ、ふらつきながら立ち上がって痛々しい鳴き声っ!」
 生命へのダメージではなく、他の何かにダメージを受けながらシャロンの戦いは、続く。
 伊織が向かうのは、騒ぎに驚いて川の中へと入ったキメラだ。
 水に逃げられれば武器の威力も落ち、相手のほうが素早い。
 息をしに陸へ上がってくるのを待つ。だがふわふわもこもこキメラも、それはわかっているのか陸に上がった瞬間しゅたっと態勢を整え伊織へと向かう。
「あまり気乗りしませんが‥‥仕方ありませんね‥‥せめてもの手向けです、これでお逝きなさい」
 強力な攻撃をもって、退治したキメラを打倒した。

「こういうのを退治するのはあまり良い気分ではありませんね‥‥」
 伊織のつぶやきは、戦いの喧騒の中へと沈んでいく。
「こんな世界で生まれてきちゃって‥‥ゴメンニャ‥‥今度生まれてくるときは、平和なときに生まれてきてニャ‥‥」
 覚醒したアヤカはルベウスをつけ構える。
 向かうふわふわもこもこキメラへと言葉を向け、攻撃をしかける。
 今までの経験上、長い間戦うことは辛さも増す。
 黒いふわふわもこもこキメラのときのように、変化してむかってくればまた気持ちも違うのだが、今回はそれもなさそうだった。
 ナオは連続攻撃をふわふわもこもこキメラへと向けていた。
 感情の波が、覚醒することによって抑えられ、攻撃は生まれてゆく。
 影打ちを一撃、それによって動かなくなるキメラの姿をみてふっと解けそうになる覚醒。
 だがすぐに持ち直し、他のものの援護へと回った。
「こいつらが人を傷つけた後では遅い」
 覚醒し左手に「judge」という文字が刻まれた蒼白い光の腕輪のようなものを現せた審は超機械をふわふわもこもこキメラへと向けていた。
 ぴょんっと体当たり攻撃をしてくるものの、それはダメージと言えるほどのものでもない。
 審はそれを受け流しつつ、攻撃を続けてゆく。
 それぞれが一匹ずつ倒し、青いふわふわもこもこキメラたちは倒れた。
「せめて、あの世では幸せにな」
 審は両手を合わせてキメラたちの冥福を祈る。
 それぞれも胸に同じような思いを抱いて。
 キメラを退治する、という力においては問題なく終わる依頼ではあったが、気持的にはどっと疲れがたまってゆく。
 このキメラたちが安らかに眠れるよう、それぞれ思いつつ本部への帰途につくのだった。