タイトル:その小娘、やってくるマスター:玲梛夜

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/13 00:23

●オープニング本文


●とりあえず遊ばなきゃ
「うわぁ‥‥」
 携帯電話をみて、バルトレッド・ケイオンはものすごく微妙な顔をした。
 メールの相手が、餅をアホみたいに山のように送ってきたあの小娘だったからだ。
 関わると、正直ロクなことがない。
「‥‥こっちに戻ってくるのか‥‥」
「てゆーかもう、後にいるんだけどー、ルトやっほー」
「‥‥」
 その声にバルトレッドは後を振り向く。
 頭一つ分以上、自分より身長の低い相手。
 名前は、薬袋音。
「うわ‥‥久しぶり‥‥うわぁ‥‥」
「ひっさしぶりー! あははは! 何その顔! プッ!」
「いや、お前がいるから。相変わらず変わらないなぁ‥‥髪伸びた?」
「伸びたよ。むしろこれを伸びてないというのならちょっと目がおかしいと思う。てか、ほら遊びにいくから! おごって!」
「えー」
 と、バルトレッドはあからさまに嫌だという顔をする。
 そして、ちょうど、その周りにいた人たちを道連れにしようと思い立つ。
 一人じゃこの女の相手はしきれない、むしろ隙をみて逃げたい、押しつけてしまいたい。
 ありがとう、身代わり!(決定事項らしい。)
「どうせなら大勢のほうが楽しい。他の人も誘おう、な?」
「え、あ、うん、いいよ!」
 ということで。

 暇そうですね、ちょっと遊びませんかと捕まった者も。
 バルトレッドから大事件ですと切羽詰まった声で呼び出された者も。
 皆でラスト・ホープ、遊び歩きの巻。

「薬袋音でーす。音でいーよ。好きなものはおいしいものとキラキラしたもの、嫌いなものはトマトのファイター。よろしくね! ちなみにー、このルトは私のパシリ。兄貴の友達だけどパシリ」
「パシリじゃありません。断じて違います」

 バルトレッドさん必死です。

●参加者一覧

エミール・ゲイジ(ga0181
20歳・♂・SN
柚井 ソラ(ga0187
18歳・♂・JG
伊佐美 希明(ga0214
21歳・♀・JG
赤霧・連(ga0668
21歳・♀・SN
七瀬 帝(ga0719
22歳・♂・SN
藤枝 真一(ga0779
21歳・♂・ER
櫻井 壬春(ga0816
17歳・♂・SN
金城 エンタ(ga4154
14歳・♂・FC

●リプレイ本文

●それはもう突然に
「さっ! 行くよルト!」
「いや、ごめん本当、そのテンション無理だから‥‥」
 薬袋音と、巻きこまれのバルトレッド・ケイオン。
「ソラさん、楽しく遊びましょうね!」
「委員長さんとクラブ以外で一緒にお出かけできるのは、嬉しいですね」
 と、ぱっとあたりを見回した視界に見知った顔が入る。
 赤霧・連(ga0668)と柚井 ソラ(ga0187)の二人だった。
「あ、連さん!! 一緒におでかけしましょう!!」
「おはようございます! いいですよ、あら、そちらは‥‥」
 自己紹介もそこそこに、話はまとまってお出かけモード。
「じゃあ音をよろしくお願いします。僕は仕‥‥」
「あっ! 皆さんお揃いでどうしたんですか?」
 さえぎるようにかかる声。
 声のした方を見ればそこにはフォーマルドレスに身を包んだ少女と女性の間の年齢の子が。
「あれ、エンタさんその格好‥‥」
「催事がありまして‥‥あ、この前は」
「? だれ? え、私のこと知ってる?」
 誰だろう、と不思議そうな音に、金城 エンタ(ga4154)は笑顔を向ける。
「お会いしたこと有りですよ」
「‥‥‥‥あ」
 じーっとエンタの顔を見つめ一分。わかった! と音が叫ぶ。
「えー、え、オノコじゃ、なかった? え、逆!?」
「お仕事で女装を」
 かわいいの羨ましいー、と音はエンタの周りをくるくる。
「そだ、遊びにいくんだけどね、行く?」
「え? 遊びに‥‥? OKですが‥‥」
 人が増えて嬉しいね、という音と反対に、バルトレッドは僕はこれでと離れようとする。
「あれ? 何か焦ってません?」
 だがしかし、そんな様子を素早く感じたエンタが待ったをかける。
「これだけの美男美女に囲まれて、逃げようなんて‥‥しませんよね、バ・ル・ト・さん?」
「ええ? 逃げようなんて思ってないですよ。皆さんが僕の身代わりをしてくれるとかそんな」
 視線泳いでる、とすぐさま厳しいツッコミ。
 ということでまずはお腹減ったよ朝食だよ!
 とある喫茶店へと一行は向かおうとしたが、何もないはずがないわけで。
 ぱっと音が角を曲がった瞬間に、どんっと衝撃。
 驚く声とともに散らばるネギ。
「‥‥す、すまん‥‥大丈夫か‥‥」
 ぶつかった弾みで蕎麦は音の頭の上に。それを藤枝 真一(ga0779)は取ってハンカチでふく。
「‥‥‥‥あはははっ! やっばいツボった‥‥! ちょ、お腹痛い、笑いで痛いぃ、お蕎麦を頭にって一生に一回あるかないかだよね!」
 天気も良いし朝食のざる蕎麦を外で食べよう、と移動中だった真一は音とぶつかったのだった。
 もったいないことしちゃったなぁと、蕎麦をささっと片づけて。
「お蕎麦ダメにしちゃったねー‥‥よし、一緒に朝御飯食べに行こう。おごるから、ルトが!」
 真一は断るわけもなく、人数は増えてゆく。
 そして向かうははやりの喫茶店。
 そこで、一か所、キラキラ輝く、優雅な朝食タイム中の一組。
 七瀬 帝(ga0719)は今やってきた一行を見つけてキラキラ笑顔とともに声をかける。
 その声に櫻井 壬春(ga0816)も朝食の手を一度止めて手ふりふり。
「やぁ、バルトレッドさん! あれ? 元気があまりないね‥‥って、音クンもご一緒かい」
「あっ、にゃほーぃ! バルト兄、と‥‥写真のおねーさんも! おぉ、ミス・LHも? こっちで、皆で食べルっ」
 呼ばれれば行かねばなるまい、と一緒の席へ。
「此処のサンドイッチ、大好き。味見、してみル?」
「じゃあ一口」
「あ、餅パ、楽しかった、アリガトー。バルト兄、オヤスミも、イソガシー?」
「忙しいですねー。これからお仕事」
「ないくせに」
「ないですよね」
 壬春の言葉にチャンスと帰ろうとしたバルトレッドだが、連携攻撃で阻止される。
 バルト兄ガンバレ、と壬春はにゅふにゅふと柔らかな笑顔を浮かべつつエール。
「バルトレッドさんたちはこれからどうするんだい?」
「音のやりたい事が一番、みたいな雰囲気なんです」
「‥‥ねぇミハくん、僕らも一緒に同行願うかい? ゲームセンター、元からバルトレッドさんも誘おうと思ってたし、さ」
「ゲーセン! ゲーセン行く!」
 と、それに良い食いつきしたのは音。ゲームセンター行きも今日の予定に加わる。
「でもまずLHがどーんな感じか見て歩きたいかな」
 朝食食べながら今日の予定を練り錬り。
 そんな中でまた見知った顔がやってくる。
「ごめんねー。ちょっと欲しいものがあってね。醤油に味噌に米にトイレットペーパー、あ、あと灯油! いやね、男手が欲しいって思ってたんだー」
「味噌でも米でも、今日は荷物持ちでもなんでも‥‥お、何やら面白そうな一団発見」
 伊佐美 希明(ga0214)とエミール・ゲイジ(ga0181)の二人は今日はデート(?)のご予定。
 御互いを見つけあって、こっちこいこいと言われれば合流となるわけで。
 あっという間に遊ぼうぜ、イェイ! のノリとなってゆく。
「ではではっ! いきましょう!」
 おー! と腕付きあげそうな勢い、でない人もいます。
 そそ、と距離をとり逃げようとするバルトレッド。
 だがしかし、そうはさせない希明。短い時間の中でもひっそりと、バルトレッドは逃げようとしている、監視はしっかりと、と回っていた。
「どーこいくのかなー」
「え‥‥家の電気消してきたか自信ないので確認、に?」
 そんな理由は通じません、と連行。
 その姿をみてエミールは苦笑する。
「頑張れバルト‥‥助けないけど」
 逃亡を図るバルトレッドをキラリと光る瞳が射る。
「私のスナイパーのクラスは伊達ではない‥‥この鷹の目からは逃れられんよ‥‥クックック」
 強力な監視人を迎え一日が、始まる。 

●公園でハッスル
「ここが公園です!」
「いい天気ですねぇ」
 ぐっとのび一つ、ソラは体を伸ばす。
 晴れ渡る空の下、公園では人々が自由に時間を楽しんでいる。
 そしてぱっと目につくクレープの屋台などなどと、どうやらフリーマーケットもしている様子。
「おー、公園良いね!」
「お天気が良いと歌いたくなります‥‥ソラさん、一緒に歌いましょう!」
 ぐぐいっと手を引っ張って連はソラを連れてゆく。
「どうぞ皆さん、手拍子をお願い致します!!!」
「らじゃー!」
 手拍子パンパン、すぅっと息を吸い込んで連の歌声が響く。
 そこにはいつか人が集まって、音がくわわり賑やかになってゆく。
「作り方を聞いたから僕も作ってしまったよ!」
 と、歌もひと段落、帝はさっと餅あられを取り出す。
「音クンがバルトレッドさんに送ったお餅がこうなりました、美味だよ!」
「おー、すごいー!」
 ぽりぽり、と回ってゆく餅あられ。
 他にもでていた屋台からちょっとずつ色々なものがその場に並んだ。
「はい、差し入れ‥‥たまにはね。こういうのも悪くないでしょ? ‥‥今は、今だけは、何も忘れて楽しめばいいじゃない」
 ぽいっとジュースを投げて希明はバルトレッドに差し入れ。
 監視しつつ、適度に気遣いは忘れない。
「そうなんですけど、音との過去の色々が胃をキリキリと‥‥」
「気のせい、気のせい。ね、にーさん!」
「そう、気のせいに違いな。気持ちはわからんでもないが‥‥」
「暴れん坊の保護者ですよ、本当に」
「ちょっと誰が暴れん坊なのー!」
 苦笑しながら漏れた言葉はしっかり届いていたらしく、すぐさま否の声。
 わいわいと談笑しつつ、お昼食べつつ。
 時々離れてはフリーマーケットを見に行ったりもしていた。
「きれい‥‥」
「すごく、良い‥‥」
「何見てるー?」
 よいしょー、と帝の後から覗きこむ壬春。
 キラキラ大好き、帝と音は輝く小箱の前でじーっとしゃがみ込んでいたのだった。
 しばらく動きそうにない気配。
「あ、このデザインかわいいなぁー。にーさんに似合いそう」
 服飾ものを見ていた希明の手には女物の服。
 蘇る女装の記憶にエミールは苦笑する。
 フリーマーケットの雰囲気を楽しみ、一行は移動開始。

●午後はお財布の危機
 ゲームセンター、そして買い物ができる場所はたくさん街の中へ。
「あれ、あれほしい!!」
「音クン‥‥奇遇だね、僕もアレにとても惹かれるよ」
 びたっと二人が張り付いたクレーンゲームの先にはキラキラ輝くアクセサリー。
 先ほども、同じようなことがあったような気がする。
「ルト、お財布」
 お財布、と言った時にはすでに音の手の中。
 これで皆遊ぼうねー! と音が言えば財布からっぽの未来を感じるバルトレッド。
「ケイオンさん、大丈夫ですか? 無理はなさらないでくださいね?」
「ソラさん‥‥」
「あ、あれ、俺もやりたいですっ」
 気遣ったその後に、ソラは瞳輝かせダッシュ。
 抱き枕狙いで良さ気なものを見つける。
「じーっと眺めているだけ助けられず歯痒い思いで悶々する毎日‥‥そんな毎日も今日でお終いです!」
 と、連はキラリと瞳を輝かせて子猫のぬいぐるみを見つめる。
 いざ! とゲームに挑めばうまくクレーンに、引っかかったものの逃げられる。
 チャレンジもう一回!
「UFOキャッチャーは‥‥空間認知能力がモノをいう。アームの速度、強度、癖、死角、捕獲対象の角度‥‥あらゆるものを計算して‥‥狙う。そこだっ!!」
 気合の入った1ゲーム。真一は見事、獲物をゲットした。
 そしてそれをバルトレッドへとつきだす。
「やる」
「え、でも‥‥」
 これは、持ち歩きにくい、萌え系フィギュア。
「いや、かさばるからな‥‥」
「‥‥ありがとうございま、す?」
 困惑しながらも真一から受け取ったバルトレッド。
 と、クレーンゲームにあきれば他のゲームにも手は伸びてゆく。
「やっぱゲームは気楽だから好きなんだよ」
 シューティングに興じるエミールは呟いて銃をくるくると回す。
 画面にはもちろん高得点。
「いい勝負だったぜ‥‥!」
「次は勝つ…!」
 格闘ゲームコーナーでは真一と音が勝負を終えて妙な連帯感を醸し出していた。
「あ、プリクラ! バルトレッドさん早く!」
「にゃっほーい! ミハルも!」
 ぱしゃっとそれぞれポーズきめてプリクラ大会。それを他の面々もみつけて飛び込んでくる。
「10人ってすごい! ぎゅー、あ、倒れる!」
「一番下の人堪えてー!」
 賑やかにとったプリクラは切って一人一枚ずつ。
 そして一行は買い物へ。
 るんたった、と出かけていく女性陣を男性陣はお見送り。
「‥‥音、相変わらずだなぁ‥‥」
「元気でいい子じゃないか。少なくとも、俺は結構好きだ。こういう仕事していると、辛い事も多いからな‥‥そういう時、ああいう子がいてくれると、な」
 と、その話の中心の音は、エンタによってメイクされ中だった。そして反応していたソラも、一緒にと音によって捕獲される。
「音さん‥‥メイクの魔法で、バルトさんを驚かせてみません?」
「驚くものかなぁ‥‥」
「ルージュは、まずペンタイプので輪郭を書いてから‥‥内側を塗るんです‥‥あ、連さん、グロス取って下さい」
 アシスタント連は素早く渡し、この後が楽しみです! とにこにこ。
 やがて変身し終わって、音の化粧顔をみたバルトレッドは一瞬固まって、笑った。
「酷っ!」
 容赦ない膝カックンという地味な嫌がらせが、この後多発。まだまだ、二人の関係は、変わらない様子だ。
 それにちょっと残念そうな、二人くっつけよう作戦の実行者たち。
「ほむ、まだまだ道のりは長そうです」
「ですね‥‥」
 変身報告終了後、またお店を巡り、それぞれ欲しいものを得て集合。
 荷物が朝よりも増えている。
 そして、まだ時間は夕方、そろそろお腹がすく頃です。

●今日の締めはYAKINIKU
「夕飯はケイやんが焼肉をご馳走してくれるそうでーす!!」
「えー!」
 希明の一言、大きな一言。
 一気にテンションがあがった面々に嫌だと言えなくなったバルトレッドは、覚悟を決めた。
「‥‥もう、好きに、食べてください」
 そのテンションのまま、焼肉店へ。
「‥‥お肉‥‥何年ぶりだろう‥‥じょ、上カルビ、頼んでいいんだよね?」
「何年ぶり!? な、しっかり食べてください!」
 メニュー見ながらの希明の一言に、バルトレッドの何か変なスイッチが入った。
「連さん、お皿が空いてますよ、どうぞ。ソラさんも、こっち焼けてますよ」
「ありがとうございます!」
 良いお肉をちょっとずつ、とお皿に乗せてソラも頬張る。
「音、トマト残すなよ」
 そーっとサラダのトマトを端に寄せていた音をみつけてキッとバルトレッドは睨む。
 と、壬春がちょいちょいと音の服を引っ張った。
「‥‥残すの、勿体ナイ。ミハルにくれると、良いんだヨ」
「あげるっ」
 はい、と差し出したトマトを壬春はぱく。おいしそうに食べてゆく。
「あ、エンタ君もお皿あいてるよー」
「しっかり食べてますよ」
「よしオッケイ! 真一君はー、言うまでもなくー」
「食べてる!」
 ぐっと親指立てて堪能中の意思表示。
「にーさんは食べないの?」
「ちゃんと食べてるから」
 そっか、と希明は言ってまたお肉もりもり。
 嬉しそうに楽しそうに食べる姿を見るのが嬉しい楽しい、のエミールは瞳細めて笑む。
「僕はビビンバで」
「私もー」
「ビビンバお願いしまーす!」
「バルトさん僕もビビンバを」
「三つ!」
 で、戦ともいえる焼肉も終わり、清算タイム。
 いくら食べたのか、それを知る者はバルトレッド一人。
「バルトの財布‥‥アーメン」
 今日の色々を思い出しエミールは十字をきった。
「でも楽しんでもらえたならいいか‥‥あ、目から水が‥‥」
「バルトレッドさん、今日は御馳走さま! 相変わらず太っ腹だね、僕尊敬しちゃうよ! あれ‥‥泣いてる? ははは、そんなに感動しなくても!! 」
 違いますよ、帝さんの言葉は他の言葉に重なって、届くことはなかった。
「ごちそうさまー! やー、いっぱい食べたー」
「ほむ、おいしかったです。ね、ソラさん」
「はい。素敵な一日を有難うございました」
 連とソラは並んで礼ひとつ。
 仲良しの二人はそのタイミングも同。
「いいえ、本当にもう楽しんでもらえたならそれで」
「ま、お疲れさん」
 焼肉終って今日はお開き。
 お開き、ですが。
「また焼肉食べようねー遊ぼうねー! ‥‥ルトにたかって」
 見送る音からタカリ再び宣言。
 運が良ければ、また楽しい時間に出会える、かもしれない。