タイトル:黒ふわもこ変化!マスター:玲梛夜

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/02 00:37

●オープニング本文


 白いふわふわもこもこのキメラを倒したのは先日のこと。
 傭兵たちによって提出されたレポートはしかるところへと届けられていた。
 そしてその中の報告の一つ。
 あたりで最近起こったできごとの一つ。
 それが、まだその白いふわふわもこもこキメラを倒しても続いていた。
 白いふわふわもこもこキメラたちのいた廃墟からほど近い街にて。
 その街では食料品がかじられるという事件があったが量は少量、おまけにあの白いふわふわもこもこキメラを目撃したものたちがおり『まぁそんなに大したことはないし、それにかわいいから』とみられていたのだ。
 そしてキメラたちが退治され、その被害はなくなった。
 なくなったはずだったのだ、しかしまた同じような被害があった。
 その被害量は依然よりも増え、そして犯人とおぼしきものの毛玉が現場から発見されていた。
 毛玉の色は、白、ではなくて黒。

「と、いうことで‥‥白いキューキューふわもこたちのいた現場からほど近い街でのお仕事となります。よく被害を受けている倉庫があるそうなので、そこにいればやってくると思われるとのことで‥‥というかくるんです。毎日のように。ただふわもこのかわいさっぷりと素早い動きで捕まえられないそうで」
 罠をしかけてもさっと逃げてしまうようでなかなか捕まえられないらしい。
「ただ今回は白いあのふわもこたちではないと思われます。現場にあった毛、というか毛玉が黒だったんです。突然変異か亜種か、はたまたまったく別の生物になるのかはわかりませんが、よろしくお願いします。白いふわもこたちのようにあっさり終わるかどうかはわかりませんので注意はしてくださいね」
 白いふわふわもこもこキメラたちの時とはちょっと様子が違う黒いふわふわもこもこキメラ。
 傭兵たちは現場へと向かう。

●参加者一覧

赤霧・連(ga0668
21歳・♀・SN
木西 陽(ga0935
16歳・♀・FT
ネイス・フレアレト(ga3203
26歳・♂・GP
レーゲン・シュナイダー(ga4458
25歳・♀・ST
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
冬月 万里(ga5550
19歳・♂・SN
絢文 桜子(ga6137
18歳・♀・ST
緋沼 京夜(ga6138
33歳・♂・AA

●リプレイ本文

●黒いふわふわのもこもこ
「今度は黒ふわもこニャか〜〜〜」
 依頼のあった場所へと向かいながらアヤカ(ga4624)は呟いた。
 思い出すのは先日戦った、白いふわふわもこもこキメラたち。
 無邪気にころころ転がっていたりした、白いふわふわもこもこキメラたち。
「白ふわもこも退治するときはちょっと切なかったニャ‥‥だけど、敵なのは変わらないのニャよね‥‥」
「ソレは染みとなって心にポツリと色を残した‥‥」
「どうかしたニャ?」
「なんでもありません」
 アヤカと同じく、白いふわふわもこもこキメラたちとの戦いを経た赤霧・連(ga0668)は心のどこかでホッとしている自分がいることに気が付き、それを受け止めていた。
 前に進むには、必要なこと。
「黒ふわもこ‥‥どんな感じなのかな」
 白ふわふわもこもこキメラの報告書を見て、件のキメラの生態に興味を持ったレーゲン・シュナイダー(ga4458)。戦闘経験も積んでおきたいと思い、この仕事を請け負っていた。
 そして黒ふわふわもこもこキメラに興味を抱いているものがもう一人。ネイス・フレアレト(ga3203)だ。その黒、という色に愛猫のことを思い出し、少し姿を重ねてしまう。
「あ、もうすぐ現場だね! 初依頼っ! ふわもこっ! 可愛いものに悪い子はいないけど、ちょっと‥‥じゃすまない悪戯ばかりする子にはお仕置きも必要だよねっ!」
 元気に意気込みを声に出したのは木西 陽(ga0935)だった。火のような色の赤い髪を揺らし、海のような色の瞳を瞬かせる。
「いくら敵が可愛かろうと‥‥まっ、俺は自分の役割をこなすだけだな」
 陽の言葉に緋沼 京夜(ga6138)は呟いて、自分の役割を思い出す。ただ倒すだけではなくて調査も依頼の一環だ。自分の役割をしっかり、胸にとどめる。
「もうすぐその倉庫ですねぇ。皆様ぁ。可愛さに油断しないように参りましょうね」
 あれかしら、と現場の食糧倉庫が見えてきた所で絢文 桜子(ga6137)は皆へと声をかける。
「足手纏いにならないように頑張るので、皆、よろしく頼む」
『躓かない』『噛まない』を心がけながら冬月 万里(ga5550)は挨拶をする。その大きな体格で怖がられることもあり、小さなもこもこは可愛い、大きな体格は怖い、といったイメージを内心打ち破りたいと思っていた。
「一般の方々は寄り付かないようですし、調査と‥‥退治、頑張りましょう」
 一行は目と鼻の先にある、件の食糧倉庫へと向かう。

●食糧倉庫の黒いふわふわもこもこ
 薄暗い食糧倉庫。
 扉から中をうかがうのは京夜。暗闇の中で動くものがいるかどうか、目と音で探す。
 そして、食糧庫の一角からガサゴソバリバリボリボリと何かをかじっているような音がきこえた。
「いるみたいですね」
「じゃあ、いきましょう!」
「はい!」
 作戦、開始。
 まず褒めちぎり作戦チームが黒いふわふわもこもこキメラたちへと接触。
 その作戦が失敗しても成功しても、他の面々はそれぞれ予定している場所へとはたどり着けるはず。
 レーゲンと陽、そしてアヤカが食糧庫の中へとまず入ってゆく。
「ここにすっっっっっごい可愛くて、ふわふわした生き物がいるって聞いたけど、本当かなァ?」
「うん、いるといいね。きっと可愛くてキュートで愛くるしくて‥‥連れて帰りたくなるんだろうね」
「ほんとうにいるのかニャ〜」
 敵度に大きな声を出しつつ、きょろきょろと探すような素振り。
 ガサガサと何かを食べているような音が、止まる。
 そしてもこもことしたものが、影から様子をうかがうようにこちらを見てきた。
「きゅーきゅー」
「! あっ! いたっ! かわいいー!」
「ほんとうにふわもこー!!」
「きゅっ!!!!」
 かわいいかわいいという声に反応して黒いふわふわもこもこキメラたちは物影からでてきて転がり始める。
 その数は三体。他にいる気配は、なかった。
 警戒しているのか多少の距離はあり、捕まえようと距離を詰めるとすぐ逃げられる。
「かわいい‥‥さわらせてー!」
「もふもふしたいニャ〜!」
 転がって逃げる黒いふわふわもこもこ。
 だが褒めまくりの攻撃に気を良くしたのか、だんだんとその距離は縮まっていた。
 そして。
「捕まえたー!」
「本当にふわふわ‥‥!」
 さわさわと体を触られるのが気持ちよくなったのか、赤い瞳は細められてゆく。
 そんな様子を物影から万里はみていた。静かに身をひそめるための隠密潜行。
 覚醒のため瞳は金色に輝き、その右腕には幾何学模様が浮かび上がっていた。
「自分は自分の仕事をするのみ‥‥」
 褒めて褒めて褒めまくった様子を十分観察できたあとに、作戦は第二段階へと移る。
 悪口班の出動だ。
「このブサイクな汚れ毛玉!」
 ぴくっ! と新たに現れた京夜の言葉に反応する黒いふわふわもこもこキメラ。
 そしてそれに追い打ちをさらにかけるように桜子は言う。
「よく見たら黒いと汚れてるみたいで可愛くないですわぁ‥‥真っ赤な目が怖いですの‥‥」
 今まで良いようにさらわれていた黒いふわふわもこもこキメラたちは、その手を逃れ、ぴょんっと地面に降りる。
 赤い瞳をギラギラさせながらころころ転がり、そして三匹そろって、体当たり攻撃を始める。
「うおっ!」
 そしてその体当たりは、今まで褒めちぎっていた面々にも、関係なく行われた。
「うわっ‥‥と、危ない危ない」
 ひらりと身をかわし、陽は避ける。
 アヤカも向かってくる黒いふわふわもこもこキメラを交わし、その瞬間にシャー! とかみつこうと牙を見せる顔を、目撃した。
「ほ、ほんとうにちょっと凶悪だニャ〜」
「うわわわわわ」
 レーゲンは高めにジャンプして襲いくる黒いふわふわもこもこキメラをさっとしゃがんでかわす。
「ふわもこもかわいいけどやっぱりメカメカしい方が好み‥‥」
 呟いた言葉はしっかりと聞こえていたらしく、キメラはまたも向かってくる。
 このままでは態勢が崩れると判断したネイスたちはフォローに乗り出す。
 そちらに気が向いた黒いふわふわもこもこキメラ。
 このまま戦闘に入る、と誰もが思った時だった。
 黒いふわふわもこもこキメラがぷるぷると震え、脱皮するように、その姿を変えてゆく。
 そして現われたのは、ふわふわもこもこはトゲトゲの毛となりも、大きさは一回り大きくなり、四本脚を伸ばしたキメラだった。
「変化した!?」
 黒いふわふわもこもこキメラ、ならぬ黒いトゲトゲキメラは牙を向けてやってくる。
 そのタイミングをずらすように、覚醒した連が足止め攻撃を行う。
「倒すのは若干かわいそうですがこれも任務ですから。少しでも被害が出ているのならば仕方が無いのでしょうね‥‥それにもうあのかわいさは‥‥」
 ネイスは言って、気持を切り替える。
「戦闘態勢に入ります。包囲を崩さず、各自慎重に行動下さい」
 長い髪が緩やかに踊り始める。全身から放たれる燐光が、今冷静さを増した桜子の身を包んでいた。
「おイタが過ぎたねェ、おチビちゃん。覚悟はいいかい?」
 覚醒したレーゲンの髪がゆるふわウェーブのプラチナブロンドへと変わる。
 なかなか動きの素早いキメラへとむかって、広範囲攻撃。
 それをうけて立ち止まった瞬間をアヤカが狙う。
「やっぱり‥‥同じ世界には生きられないのニャ‥‥一気に‥‥行かせて貰うニャよ‥‥」
 猫の耳としっぽをぴょこんと出した覚醒姿。武器をすぐさまつけて、攻撃を放つ。
「公にも夢はあったか? それとも幻だったか? ‥‥」
 向かってくるキメラへと向かって問いかけるように、けれども攻撃は容赦なし。
「おおっと、相手はこっちだぜ。みすぼらしい黒毛玉ども」
 広範囲攻撃は分が悪いとみたのかサイエンティストたちへ向かおうとしたキメラがいた。
 だがそれを京夜が阻む。
 悪口で引きつけつつ、攻撃。
「そろそろ――お寝んねの時間だぜ!」
「さァ、やっておしまい!」
 レーゲンは京夜に練成強化をかける。
 黒いキメラたちは、一度集まり、そして脱出しようと傭兵たちの間を抜けようとする。
 だがそれは連が狙撃で押しとどめ、加えて攻撃の手も増える。
「終わらせましょう」
 誰の呟きともなく、キメラたちとの戦いは終局へとはいった。
 攻撃の手は強く激しく、数の上でも勝る傭兵たちのほうが分が良かったことは言うまでもない。

●黒いふわふわもこもこ
「怪我はない? あったら練成治療するよ」
 戦闘後、まだ覚醒状態のレーゲンはそれぞれに確認する。治療を要するような大きな怪我はなく、よかったとひとまず安心。
「見た目ほど‥‥つーか、見た目途中で変わったが甘くはなかったな‥‥警戒しといてよかったぜ」
 大きな怪我は仲間にないとしって京夜の表情に笑顔が生まれる。
 自分が怪我をするのはもちろん嫌だが、仲間が怪我をするのも面白くなかったからだ。
「やっぱり今回も、同じことになるんですね‥‥」
「白ふわもこの時の方に比べれば若干退治はしやすいと思うニャが‥‥やっぱり可哀想に感じちゃうニャね〜」
 溜息をつきながらアヤカは言う。
 最初の姿からの変化は、ころころと可愛かったがその体を成長させたのか変化させたのか、可愛さを消してキメラと思わせる姿を作る。
 気持ちとしては可愛い姿よりも、そちらの方が重さは少ない。
「ふう‥‥やはり可愛いものを屠るのは心が痛みますの。でも、これで食糧は護られましたわねぇ。お疲れ様でした」
 心痛ませつつも、この街に住んでいる人のこともある。
 桜子は笑顔で今回ともに戦った者たちへと頭を下げた。
「またこのようなことがあるかもしれませんねぇ‥‥」
「あ、サンプルとか‥‥」
 連は毛など採取できるものをとって保存する。あとで本部に渡して鑑定などをしてもらうために。
「黒いふわもこはころころしてて最初は手足みたいなものはなかった、かな‥‥触ってもなにもなかったよ」
「ほむ、そうですか‥‥あとでレポートに入れますね、ありがとうございます」
 陽は他にも何か気がついたことあったかな、とむむーと思いだす。
「写真もあります、こっそりととっておきました‥‥あ、生態調査が目的ですよ! 生態調査が」
「お写真‥‥ネイスさん、あとで焼き増しを‥‥わたくしもあとで気がついた点をまとめてまいりますわねぇ」
 写真ときいて桜子はそそとネイスに寄りひそりと焼き増しをお願いする。
 黒くてちょっとばかり性格がよろしくなくてもかわいいものは、かわいかった。
「可愛らしくとも‥‥やはりキメラはキメラか‥‥」
 闘い終わった食糧倉庫。
 被害は少しずつでも積み重なれば被害は大きい。
 万里は倒したキメラたちを思い浮かべ、そして今だわだかまる心を納めてゆく。
「白もこが黒もこへ成長したと過程すると、その先にまだ成長の過程があるかもしれません‥‥関連を徹底的に調べて何かわかると良いのですが」
 連は手の中にあるサンプルを見つめて呟く。
 まだ、ふわふわもこもこキメラたちとの戦いは続いてゆく、のかもしれない。