●リプレイ本文
●華やかなる会場で
華やかなるその場所では今日は闘う日々から離れた時間が流れていた。
そこにはたくさんの料理、さまざまな音楽があふれかえっていた。
メインのダンスホールでは軽やかに、音楽にあわせて踊る者たちがいる。
不敵な笑顔を浮かべた鯨井昼寝(
ga0488)と鯨井起太(
ga0984)。双子である二人の息はぴったりだ。
昼寝は髪はきっちりと結い上げ、衣装は薔薇の意匠をこらしたフラメンコ風の派手な鮮やかな赤のドレス。
起太は髪は横に撫で付け、衣装はスタンダードなホワイトタイで格調高くしたノーマルの燕尾服。
「いくわよ起太、私達のダンスがナンバーワンだと証明するために」
「ふふ‥‥ボクたちの華麗なダンスに酔いしれるが良い」
妙な気合の入り方で、ホールで華麗に、しかし激しく踊りつくしていた。
そしてもう一組、ホールをつっ切るように熱いダンスを繰り広げるものたちがいた。
「いくぞっカミーユ☆ 燃え尽きるまでっ♪」
「踊り疲れていても我が引き摺‥‥ではなく引っ張って‥‥大して違わんな。そうしてやるから案ずるな。何ならリフトでもやるか? 我が」
花火師ミック(
ga4551)とリュイン・カミーユ(
ga3871)ペアはキリキリと動きホールをつっ切っていく熱いダンス。
ベルベット地のノースリーブのワインレッドのミドル丈ドレスを翻すカミーユ、クリスマスダンスパーティーはサンタ服こそが正装とおもうミック。
その二人の赤色は情熱の表れのようだった。
そしてダンスには音楽がつきもの。
生で演奏される音楽。
そこには傭兵たちも混ざっている。
ロイヤルブラックのスーツに白いワイシャツ、そして白いロングマフラーに黒のボルサリーノの帽子といった装いのUNKNOWN(
ga4276)やスカート丈の長いメイド服のコスプレ姿で樹エル(
ga4839)は盛りあげるべく音楽を奏でる。
そして飛び入りでクレイフェル(
ga0435)はヴァイオリンを持ち久々にふれるその感触を感じる。
「久々やけど――こういうんも悪ないよなぁ」
演奏が終わり、視線はホール一周。
知り合いの姿を見つけ歩む。
「一緒にどや?」
エレナ・クルック(
ga4247)はその言葉に顔を赤くしつつ答える。
「わっわたしでよろしければ喜んで」
エレナの手をクレイフェルがとり、ホールへ。
その近く、赤霧・連(
ga0668)は神森 静(
ga5165)をダンスへと誘う。
「シャルウィーダンス?」
「私で、良いの? 慣れていないから、リ−ドは、お任せしていいかしら?」
連はサンタスーツに身を包み黒の深いスリット入りのドレス姿の静をホールの真ん中へとひっぱってゆく。
静はありがとう、と軽く連にキスをし、そしてメリークリスマスとプレゼントを渡した。
須佐 武流(
ga1461)はパーティーへと誘った麓みゆり(
ga2049)をダンスへと誘う。
「ダンスは踊ったことないの‥‥あんまり自信ないかも?」
「実は俺も怪しくてね。街中のストリートでやってるのとは違うから。でも、周りのヤツラの見よう見まねでやってみようよ。大丈夫、ちゃんと俺がリードするから‥‥俺にまかせてくれよ、な?」
緊張しつつ、武流はみゆりを伴う。
大分賑わっている会場に少し遅れてくるものも。
「足元に‥‥気をつけて‥‥」
終夜・無月(
ga3084)は如月・由梨(
ga1805)の手をとりエスコートする。
人込みから由梨を守りつつ、無月は動く。
漆黒の男性用チャイナドレスを纏った漸 王零(
ga2930)はそんな友の姿をみて将来結ばれる相手、胸元が大きく開いた真紅のチャイナドレスを着た王 憐華(
ga4039)と視線を交わす。
ひとしきり踊った後に二人はホールを離れ軽く食事をとりに。
「‥‥ぅおっ! スマン!! 足踏んじまった‥‥わわっ!?」
と、慣れないダンスにわたわたとするのは小田切レオン(
ga4730)。恋人の聖 海音(
ga4759)とダンス中。
「レオンさま、大丈夫ですか? 手は此方に回して下さいませ」
海音がリードしつつ、だんだんと理解できてくるダンス。照れながらも、いい雰囲気がそこにはあった。
「それじゃあ‥‥行こうかクリス。今日はしっかりとエスコートさせて貰うぜ」
ゼラス(
ga2924)はファティマ・クリストフ(
ga1276)の手を引いていた。だがホールにつくと、その手を解く。
クリストフがどうしたんだろう、と思えば、トレードマークの赤のマフラーを靡かせつつ、一礼して手を差し出す。
「お嬢さん、踊って頂けますか?」
「ダンス‥‥実は私、踊りとかはさっぱりなのですよ。その、パートナーが務まるかは解りませんが‥‥よろしくおねがいしますね?」
それに否とクリストフが言うことはなく、二人はホールへと踊りに出てゆく。
今流れる曲は緩やかなワルツ。
一曲、とホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)は風(
ga4739)を誘う。
「一緒に出席してくれて、ありがとう。すっごく嬉しいよ」
風はホアキンに言い、この一時を楽しんでいた。
「ふむふむ‥‥なるほど‥‥こうですか?」
ホールのはしっこ、ステップの確認をするのは蒼井(
ga2848)。櫻井 壬春(
ga0816)に教えてもらったことを確認してゆく。
「‥‥折角の機会だ。愉しんでおいで、ミハル。俺は‥‥此処で、雰囲気を満喫すると‥‥しよう」
保護者ポジションであった犀川 章一(
ga0498)は壬春の背を押す。
「‥‥ユキヒトさんも、行く。ダンス、すル」
「ほら、バキさんに付いて行きなさい‥‥え、俺も‥‥ですか?」
空閑 ハバキ(
ga5172)はそんな様子をみて笑う。
ほらほらとホールに立って三人で。
正式なダンスパーティーではなく楽しむのが第一。
決まりもなにも気にせず踊ってゆく。
「! 咲兄も、めりーくりすます」
と、壬春は赤村 咲(
ga1042)を見つけて走る。
そしてダンスの輪へと一緒にと誘う。
「こういう楽しみ方もアリかな」
咲はそれを了承して、ダンスの輪へと加わった。
そしてそのうちダンスの相手を変えてゆくこととなる。
咲は女装した金城 エンタ(
ga4154)と踊り、エンタはまた女装を手伝ってくれた柊 晶(
ga4251)とも踊る。
「はぁぁ‥‥学園祭のほろ苦い思い出を、そのまま着こなせてしまう自分が、ちょっぴり悲しいです‥‥」
鮮やかなオレンジ色を合わせたドレスの背中のファスナーをあげたのは晶。エンタの言葉に晶は似合っているというのだった。
「お嬢さんよろしければ1曲ご一緒しませんか?」
一人でいる女性へとキョーコ・クルック(
ga4770)は誘いをかける。今は黒のタキシードをきて、髪は後で束ねオールバックに。
男装姿でダンスを楽しんでいた。
ナレイン・フェルド(
ga0506)は逆に女装で。ワインレッドのフワフワとしたドレスに身を包み、今は連と踊っていた。
ダンスを楽しむホール。
だけれどもパーティーの楽しみはそれだけれはない。
アヤカ(
ga4624)と佳奈歌・ソーヴィニオン(
ga4630)はまずおいしいものを堪能していた。
お揃いの色違いのドレスを着た二人、佳奈歌はワインを堪能し、アヤカは料理を楽しんでいた。
伊河 凛(
ga3175)も料理を楽しんでいた。というか妄想していた。
「戦時中にここまで豪華な料理が出せるとなると‥‥遺伝子組み換え食品か!?」
並ぶ料理を見つめながら想いを馳せる。
レーゲン・シュナイダー(
ga4458)はその近くでメイン料理たちとデザートを眺めて頑張っていた。
早くデザートは食べたいが料理も食べたい。
バランスよく料理を食べつつ視線はデザートへ。
月森 花(
ga0053)と宗太郎=シルエイト(
ga4261)も料理を一緒に食べていた。
花は髪を普段と違っておろし、緩くウェーブをかけていた。そして花柄のレースを使った可愛らしい淡いピンクのイブニングドレス。
今日はお腹いっぱい食べるぞ〜、と花は意気込んでいるが宗太郎がドレス姿を気に入ってくれるくれるかなとドギマギもしていた。
「みなさんすごいですね‥‥見事なものです」
ダンス横眼に見つつ、宗太郎は呟く。
後で誘おう、と気持ちははやる。
と、壁際に知り合いの姿を発見。
「帝サマは相変わらずキラキラで素敵‥‥」
視線の先には自動販売機前でよく出会う七瀬 帝(
ga0719)と蓮沼千影(
ga4090)がいた。
帝が壁際で美しく気高い大輪の華となっているところに千影が合流したところだった。
「カップルいいなぁ‥‥来年はお互い、頑張ろうな」
「微笑ましいよね」
「ナンパか‥‥や、俺はもう、ナンパは卒業! 封印!! あ、でも‥‥あの子可愛いなぁ‥‥」
「あ、バルトレッドさーん !メリークリスマース!」
知った顔を見つけてきゃっきゃと帝ははしゃぐ。
手を振ればバルトレッドも気がついて、ミックとのデザート山盛堪能を一時ストップ、手に皿状態でやってくる。
「メリークリスマス、楽しんでますか?」
「また会えて嬉しいぜ。この前はありがとうな」
軽く談笑。
そこへ黒統一のパンツスーツの朧 幸乃(
ga3078)もやってくる。
「夜は、色々とご用意もしていただきまして、ありがとうございます」
「今日の幸乃君、スレンダーでスタイリッシュで‥‥素敵さ」
幸乃の姿をみて帝は言う。
「しかし‥‥ドレス姿もきっとマニッシュで麗しいんだろうね。今度はぜひ、美しいドレス姿を見たいね。黒髪と緑の瞳には、きっとワインレッドのドレスがよく似合う」
「ドレスよりもこちらの方が私にはしっくりきます‥‥」
少し照れつつ幸乃は答える。
人が集まっていれば、また増えていくもので夕凪 沙良(
ga3920)がダンスを抜けてやってくる。
顔見知りたちに挨拶しつつ沙良はバルトレッドの方を向く。
「私の出したプレゼントはバルトレッドさんの所に行ってたのですね」
「はい、大事に我が家で過ごしていただいてます。どうもありがとうございました」
「可愛がってもらえてれば幸いです」
それはもちろん、とバルトレッドは答える。
ダンスと会話エトセトラ。良い雰囲気が広がる会場。
「踊れなくても‥‥食べられなくても‥‥皆の笑顔が心を満たしてくれます‥‥」
会場の楽しげな雰囲気をいっぱい浴びてハンナ・ルーベンス(
ga5138)は微笑む。
この時間はもうしばらく、続くのだった。
●ダンスパーティーも中盤です
パーティーの中盤、ビンゴ大会が開かれることに。
商品は一つ。
このホールで一組だけでダンスを満喫する権利、もしくは好きな料理をたらふくもって帰っちゃいなさい、という権利だった。
提示される数字は20個。一つそろわず、というのは結構あるもののすべてがそろったものはいなかった。
残念、となるが一つ余興としては盛りあがったビンゴ大会だった。
そしてまた、ダンスなどめいめい自由タイム。
「バルトレッドちゃんも、踊るわよね? 私と一緒に楽しみましょう♪」
「はい、美人さんのお誘いを断るわけがありません」
ナレインはバルトレッドと共にホールへ。
「こんな楽しいパーティーを開いてくれてありがとう♪ とっても大満足よ♪ って主催者さんにお伝えできるかしら?」
「会場のどこかにいるはずですけどねナイスミドル主催者‥‥もしみつけたら伝えておきますね。」
「一曲願いたい」
その頃、カミーユはそのナイスミドル主催者を見つけ出し一曲、と望んでいた。
「今夜は踊り明かす! 指せ、型破りDancing Queen!」
先ほど辛味で栄養補給を済ませたカミーユはとても元気だった。
「よろしければ1曲お相手願えませんか」
エレナからの誘いに沙良は頷く。タキシードに着替えたエレナと沙良はどこか可愛らしい。
沙良と踊った後、エレナは晶へとまた御誘いを。
と、御誘いをしていたエレナに御誘いがかかる。
「可愛い紳士さん1曲お願いできますかしら?」
そこには髪を下ろし黒のドレスに身を包んだ姉であるキョーコがいた。
「よろこんで」
二人は仲良く
「あっ。戦隊バトルレッド司令官! あれ。司令官じゃなくてリーダーでしたっけ? この間はお世話になりました〜」
ナレインとのダンスを終え、壬春のところまでエスコート帰りのバルトレッドをみつけレーゲンは声をかける。
「そのうち司令官になってみようかなぁなんて思ってます‥‥踊らないんですか? よろしければ」
「あの、私間違いなく3回は足を踏んでしまうと思うのです。それでも良ければ‥‥」
問題ありません、と答えが返りレーゲンはホールへと入る。
そしてその後はデザート再び。
「おいしいです〜」
「自分はチョコケーキが好きやな、ケイオンはどや?」
「それも好きですね、でも旬のフルーツタルトも良いです」
いつの間にかミックも加わり甘味の会状態。
一休みしたミックはダンスをまた申し込みに行く。
「姫、よろしくおねがいします」
恥ずかしげも無く手の甲にキスを。
連の前では紳士を貫く気満々のミックなのだった。
ホールは常に賑やか、ダンスの相手を変えたり大勢で踊ったり。
「アヤカちゃん、ちょっとはしゃぎすぎ」
「歌って踊って盛り上げ中ニャ!」
苦笑してたしなめる緑のドレス姿の佳奈歌と真っ赤なドレスのアヤカ。
姉妹仲良しの雰囲気がほわほわと和やかにただよっていた。
「モンブラン‥‥!」
ダンス一休み中、モンブランを見つけてクレイフェルは急ぎ足で近くへ。
そして皿にモンブランをとって堪能をおいしいと心ほくほく。
目移りするデザート、それを食すものは他にも。
凛はどのデザートにするか、とあたりをまずつける。
「チーズケーキ、モンブラン、ティラミスあたりが妥当か。ミッション・スタートだ」
ばっと素早く鮮やかな足運びでわずかなクリーム量も見逃さない選定眼。思っていたよりも大量のデザートを抱えることになる。
「‥‥何をやっているんだろうな、俺は」
だがその表情はとてもよい笑顔だった。視線はちょっと遠くを見つめていたが。
ダンス一休み組は他にもいる。
鯨井兄妹ペアは飲み物を進められるも節制。
勝負はまだこれからとモチベーションはかなり高い。
壁の花々をダンスへと誘い、今は一休み中の蒼井。会場をみつつ、ぽそっと呟きを洩らす。
「いつまでも‥‥こんな平和が続けばいいですね‥‥」
穏やかで楽しい時間が束の間のものだとわかっていても、呟かずにはいられないのだ。
「‥‥これはおいしい‥‥材料と味を覚えておこう‥‥」
と、その近くで料理を食べていた章一は一口食べた料理の美味しさに何が入っているかをまじまじと見る。
よく味を覚えてあとで再現してあげなくては、と想いを巡らせながらだ。
「おいしそうに食べるよなぁ」
数年来の付き合いをしている章一の食べっぷりに笑いながらハバキも一緒に食べる。
そこへ章一が料理を再現してあげたい相手がダンスを休憩、お腹すいたとやってくる。
三人ならんで御飯タイム。
「おいしいゴハン。とっても、シアワセ」
ひとしきり食べて満足したハバキはデザートへ。苺を使ったものはしっかりチェック済み。
それに壬春もついてゆく。
と、丁度壬春の気になる人がそこに。
「兄さんも、甘いモノ、すき?」
「とっても好きですね」
バルトレッドがそう言うと壬春は一つ小箱を取り出す。
「めりーくりすます、これ、プレゼント」
それは専門店のチョコレート。
バルトレッドはありがとうとそれを貰う。
ひっそり甘いもの好き同士たちの交友が深まるデザートコーナー。
一足先に甘味堪能おえたハバキは連のウキウキな三拍子ステップにつられてダンスを。
先にいた咲やクレイフェルたちと楽しい雰囲気のノリに任せて男同市でも踊ってゆく。
もちろん壁の華をしている女性陣を御誘いするのも忘れない。
「可愛く、綺麗なおにゃのこ達ー!」
中睦まじいカップルたちは少し羨ましく、恋したい、トキメキたい! と思いつつも男連中とワイワイするのがまだ一番たのしいお年ごろ。
同じような男連中をみつけてははしゃぐ。
「キラキラみっちー! ちっち!!」
帝と千影は手をふるものの、こいこいとやめないハバキに負けてホール中央へ。
パーティーも終わりに近づいて行くとハメをはずし過ぎた人もでてくる。
会場でぐでっとしている人へハンナは大丈夫ですかと声をかけたり眠気でダウンした人などに毛布をかりてかけてあげていた。
「あ、ハンナさーん!」
と、覚えのあるファティマの声が聞こえそちらをみる。手を振られ、笑顔でまた振り返す。
それぞれの楽しみ、やることをみつけ、それに想いと時間を費やしながらゆっくりと時間は流れてゆく。
●恋人たち、恋人たち未満
「1、2、3‥‥1、2、3‥‥ふふっ。練習した甲斐あってか、結構うまく踊れます」
練習してきてよかったと宗太郎は言いつつ花をリードする。
「あのね‥‥宗太郎クン‥‥ボク、宗太郎クンのこと、大好きだよ」
花は小さく小さく、囁くようにぽそっといい、顔を真っ赤にするが、宗太郎にその言葉は届いていなかったようだった。
所かわっていくつかある小さなテラスの一つ。
武流はみゆりへと翼を模った銀製のネックレスを差し出していた。
「ま、まぁ〜そんな高いものじゃないし、気に入らなかったらゴメンな? ‥‥前も言ったけど、俺は君を愛してるさ。可愛いからってのもあるけど、俺は君のその夢に惚れたのさ。ソレを守りたいってね。だからとりあえず‥‥友人としか見れなくても、それでもいいかな〜って‥‥待つのは苦手なんだけど、頑張って待つからさ?」
自分の想いを武流はみゆりへと、伝えていた。
そしてまた別のテラスでは無月と由梨が会話をしていた。
「寒いね‥‥」
ふっと偶然ふれた手に赤面しつつ、手を引いたあとで夜風から守るように肩を抱き寄せる無月。二人きりで話すことが今まであまりなかった二人は傭兵になった理由は趣味や、取り留めない話を楽しんでいた。
風はホアキンへとボルドー色のクロスモチーフのペンダントを渡していた。自分にはこっそり色違いのものも購入して。
「高いものじゃないけど、似合うと思って‥‥」
つけてあげると屈んでもらった瞬間にキス。
「ケナ‥‥メリー、クリスマス」
赤面しつつ初めてよぶ愛称。風にホアキンは笑んで、自分もプレゼントを渡す。
「あなたの周りは、いつも心地よい風が吹いている。俺はそんなあなたが好きだ」
故国の鉱山だけで採れるボリビアニータの18Kリングをホアキンは彼女に手渡した。
そしてそっと肩を寄せ合い夜景を見つつ二人の時間に心満たしていく。
「いい一日になったよ。ありがとな‥‥乾杯だ」
ゼラスはファティマへと飲み物を渡す。
小休止、と夜空を見上げつつ二人で過ごす。
また料理堪能中のカップルもいた。
「うっひゃ〜 海音! 見てみろよ! スッゲーご馳走だぜ!! テイクアウトはOKかな!?」
料理がいっぱいだと喜ぶレオンに海音は料理をとりわけて差し出す。
それをレオンは美味しそうに食べ、その姿がなんだか可愛くて大好きな海音は幸せ気分だった。
「‥‥あら? レオンさまったら、ソースついていますよ?」
くすくすと笑顔向けつつ頬についたそれをぬぐうとレオンはありがとうと照れつつはにかみつつ礼を言う。
幸せいっぱいの恋人たちがここにも。
●ラストダンスのお時間
「レディース&ジェントルメン‥‥メリー・クリスマス。冬の女王の冷たい吐息でも、聖夜で熱くなったは心は冷えやしないだろう‥‥まだ夜は長いが、もうすぐシンデレラは帰らねばいけない時間、だ」
UNKNOWNの言葉にそれぞれ、最後のダンス相手にめぐり会いに動き出す。
「――シンデレラとなって逃げられぬ前に、愛しき者を捕まえておけ‥‥」
ふっと視線を向けた先にはホアキン。帽子を目深にかぶりふっと笑みを向けて『‥‥JOAQUIN、I leave kitty to you』と言葉を贈る。
もちろんホアキンは風を誘ってホールへと向かう。
「私と一曲、踊っていただけますか、レディ? なんてな」
「最後はやっぱりあなたとがいいわ♪」
クレイフェルはナレインのもとに。
「んと‥‥俺と、踊って、頂けますか‥‥?」
壬春は幸乃を誘い、幸乃は先ほど帝にアドバイスもらったドレスを、その身に纏う。
と、どこの馬の骨とも知らぬ男から誘いを受ける花を目撃した宗太郎は咄嗟に腕を引いて連れていく。
「ごめんなさい! 私達ちょっと用事が!」
「宗太郎君!?」
「我侭言ってすいません‥‥でも、花さんに他の誰かと踊って欲しくなかったんです」
ざわめきから少し離れて、宗太郎は花に向き直る。
「お願いがあります。今夜、もう一度だけ‥‥私と踊っていただけますか?」
やんわりと微笑を湛えた宗太郎の言葉に花はもちろん、頷く。
良い雰囲気の、二人。
「是非、最後のダンスを一緒に踊って頂きたい。受けて貰えますか?」
沙良をダンスに誘うのは咲。
「私でよければ‥‥お受けします」
差し出された手に沙良はゆっくりと自分の手を重ねる。
テラスで良い雰囲気だった無月も当然恋人へと手を微笑み手を差し伸べる。
「一緒に踊っていただけますか‥‥」
はい、と由梨はその手を取ってドレスの裾を翻した。
「『ファティマ』‥‥ラストダンス‥‥ご一緒頂けますか?」
ゼラスはテラスで踊ろう、といつもと違う呼び方でファティマへと手を差し出す。
ゼラスと一緒にいつ時間は楽しく時が止まればとおもうファティマにとっては嬉しいこと。
「ゼラスさんみたいな方が‥‥こい‥‥兄様なら素敵でしょうね」
笑顔は柔らかく、ファティマは嬉しそうに、ちょっと言葉を飲み込みつつ、差し出された手に自らの手を重ねる。
流れだす音楽。最後は優雅にワルツを。
カップルたちはこぞって参加して、踊りつつ会話がそこかしこでかわされる。
「なんだか、ちょっぴり変な気分ですよねぇ‥‥『男の子が女装して男の子のステップを踏む』っていうのは‥‥あはっ」
「女装男装カップルだけど案外普通に見えるかも」
エンタとエレナは現在逆転カップル。
だが普通に周りへと溶け込んでいた。
そしてそのうち、やっぱり皆と踊りたいと輪は広がっていく。
どこからか、聞き覚えのある歌やクリスマスにちなんだ歌が聞こえれば知っているものは口ずさみ始める。
最後のダンスの曲が終わっても、それを音代わりにダンスは続いた。
それぞれ最後の時間を楽しんで、華やかなダンスパーティーの幕は閉じる。
このクリスマスの一時がすべての人に良き時間になり、また新たな糧になることを祈って。