タイトル:見せしめの赤マスター:玲梛夜

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/01/02 05:04

●オープニング本文


 赤い色だけが世界を覆う。
 ああ、なんて色だと思った。
 きっとこれが最後のチャンスだろう。
 もうバッテリーが切れそうな携帯電話。
 ごめんなさいごめんなさい。
 勝手に大丈夫だと粋がって巻き込んだこと。
 きっとこれは罰なんだろう。
 目の前には赤だ。
 赤、赤、赤。

『たすけて』

 あんな恐ろしいものが、いるなんて。



「その館は‥‥怪しげな儀式で使われていた過去をもっているようだ」
 今回の依頼についてバルトレッド・ケイオンは説明する。
「この館からおかしな声がする、と興味本位で行った少年が帰ってこない。生死は‥‥現時点では不明。だが、一度助けてと家へと連絡が入っている。それが1時間前のことだ。急げば、もしかしたら‥‥」
 もしかしたら、の続きは口にはしない。
 期待は、時に裏切られることだって、ある。
「館の作りは二階と、地下。建てられた当初の間取りの地図は用意した。一部よくわからない空間があって‥‥そこがどうなっているかまでは突き止められなかったんだ、申し訳ない」
 だが、血なまぐさい場所だということは、確かだった。
「この館では悪魔召喚やらそういうことが行われていた。始めはオカルト紛いだったようだけど‥‥十数年前に虐殺事件があった場所でもある」
 何があってもおかしくない、場所だ。
「出発までできるかぎりのフォローはしよう。だから現地で、最善を尽くしてほしい」

●参加者一覧

幸臼・小鳥(ga0067
12歳・♀・JG
エスター(ga0149
25歳・♀・JG
エミール・ゲイジ(ga0181
20歳・♂・SN
神無月 紫翠(ga0243
25歳・♂・SN
時任 結香(ga0831
17歳・♀・FT
武田大地(ga2276
23歳・♂・ST
五代 雄介(ga2514
25歳・♂・GP
蓮沼千影(ga4090
28歳・♂・FT

●リプレイ本文

●突入
 連絡の発信元である廃館。
「なんちゅ〜か‥‥サバトでも行われてたッポイ館ッスね。面白そうッス」
 館の前に到着してエスター(ga0149)はその建物を見上げていった。
 そう思うのも無理はない。古く、ところどころ壁の色がはがれていたり、窓も割れていたり、一部壁が破壊されていたりとある種異様な雰囲気。
「曰く付きの館で鬼が出るか蛇が出るか。ま、なにはともあれ少年を助けてやらないとな」
 エミール・ゲイジ(ga0181)がそう言った時だった。
『うわあああああああ!!!!』
 高い悲鳴が館の中から、響く。
「緊急を要する‥‥みたいだな」
 その声に蓮沼千影(ga4090)はハッとして扉を見やる。
 館の扉は重く閉ざされていた。
「虐殺事件とか色々いわくつきのところだけど、今回はそんな事件にならないように、間に合わなきゃね」
 時任 結香(ga0831)は走りだす。
 そしてそのまま、扉を蹴破るように、中へ。
 重いかと思われた扉に鍵はかかっておらず、簡単にそれは開いた。
「早く‥‥助けましょう」
 精神的にも限界に‥‥近いでしょう、と神無月 紫翠(ga0243)は続ける。
 館内に走り、ここからは事前に決めていた通りに二手に。
「じゃあまたあとで!」
 入ってすぐの階段をあがり、二階へとあがるのはエミール、紫翠、武田大地(ga2276)と千影。
 地下には幸臼・小鳥(ga0067)、エスター、結花が向かう。
 二手に分かれ、ローラー作戦、開始。

●地下の悪魔
 地下へと向かう三人。
「うー‥‥少年を早めに見つけないと‥‥ですぅ‥‥無事だと‥‥いいのですけどぉ‥‥」
 悲鳴が聞こえてからまだ少し、命は無事ではあるのだろうが、その姿が確認できるまでは安心できない。
 階段を降りる間に、エスターは覚醒。
 今その瞳の瞳孔と虹彩は機械的に変化しカメラアイのようになっていた。そして胸のサイズ、1カップ分増量中。
 地下の部屋は階段を下りてすぐだった。
 扉は、一面破壊されない状態。
 暗い空間がそこに広がっているのがわかる。
「ワンフロアだからすぐに見回れそうかな。棚とかあれば見てかなきゃなンないけど‥‥」
「怪しい所は片っ端から暴いて曝して開け放って見落とし無く捜索ッス」
「地下‥‥怪しい儀式をやっていただけに‥‥不気味ですぅ‥‥」 
 広がる静かな空間。
 だが、うっすらと血のような、鉄の匂いがした。
「‥‥この匂いは‥‥」
 この地下にこびり付いた匂いではなく、まだ新しいような、匂い。
 中へとはいり、一通り見回っていく。
 あるのは倒れた棚や、放置された段ボール。
 誰もいない、と思った時がたりと物音が、奥から響いた。
 ばっとそちらに向かって身構える。
「‥‥ひ、ひと‥‥?」
 こちらを伺う、人影。
 小さな声を聞き逃さず、小鳥たちはそこにいるのが少年だと知る。
「助けにきたよ! もう大丈夫」
 その言葉に安堵したのか、のろのろと、でも確実に三人のもとへ向かってくる少年。
 彼を三人は迎え、ひとまず命の安全を確保。
 無事な姿が、見れて良かったとひとまず思う。
「無事でよかったッス」
「皆に連絡‥‥します‥‥」
 小鳥は携帯とりだし電話をかける。
 と、反応は、ない。
 耳を澄ませば、上から何やら騒がしい音。
 何かあったことをなんとなく感じる。
「安全な場所に移動しよう」
 そのあと合流でも遅くはない、という雰囲気。
 すぐにやられるほど仲間は弱くない。
「!! うわああああああ!!」
 暗闇の中にきらりと二つの、光。
 少年がそれをみて叫ぶ。
 そこには、いつのまにかバフォメットの姿が、あった。
「いつの間に!」
 少年を後ろに庇い、三人は前へ立つ。
 宙に浮かぶ、バフォメット。
 それは先ほどこの部屋の中には、いなかったはずだ。
 すぐさま、結香と小鳥は覚醒。
 翼のように、背中から光が溢れだす小鳥。
 宙ぶ浮くバフォメットの翼を狙い、ライフルを構える。
「羽を狙えば‥‥飛べなくなるはずですぅっ」
 それはエスターも同じで、二人同時に翼へと弾丸を放つ。
 その弾は羽根をかすり、バフォメットは一瞬怯む。
 怯んだ隙に、踏み込んで豪力発現、そして豪破斬撃を素早く振り下ろす。
 だが一瞬、バフォメットは体を反らし、大ダメージから逃れる。
 そしてそのまま、また暗闇へと引いて行った。
 逃げたのだ。
「‥‥逃げた?」
「みたいですぅ‥‥」
「とりあえず‥‥合流ッス」
 そのエスターの言葉に、三人は階段を上がっていく。

●二階の悪魔
 時間は少しさかのぼり、地下組と別れ階段を上がった後のこと。
「正直、書斎が気になるんだよな。俺真先に行っていい?」
 書斎は惨殺のあった場所。何故かはわからないが設計図の一部が塗りつぶされていた場所だった。
 千影にエミールも同調して、まず書斎の扉が開かれた。
「まずいかにもあやしい書斎、ってね」
 そして最初に目に飛び込むのは、淀んだ赤色。
 時間がたち、染み込んだそれだった。
 だがその中に、すこし色合が異なる赤が混ざっていた。
「‥‥返り血の、赤?」
 あってほしくない事態が、頭の中をよぎる。
 そして、黒く塗りつぶされたところの壁には本棚が置いてあった。
 そこに本は、まったくない。
「本棚って‥‥ん?」
 近づくと、何やらおかしなボタンが一つ。
 そして、本棚の足もとにはレールのようなものが引いて有り、いかにも動きますと言った様子。
 それを押してみれば、ゆっくり音もなく本棚が動き、そして人が通れるほどの大きさの穴がぽっかりとできていた。
「脱出口‥‥?」
 一応その中を覗きこむも、人の気配はまったくない。
 書斎に人影はない。捜索は隣の寝室へ。
 少年の名前を小さく呼びながら探すと、やがてシャワールームから音がした。
「た‥‥助け?」
「無事‥‥だったようですね‥‥」
 その姿をみて紫翠は良かったと言う。
「怪我はないか?」
「ちょっとだけ‥‥擦り傷‥‥」
 人の姿に安心したのか、少年は緊張させていた表情を緩ませる。
「どこに隠れてたんだ?」
「‥‥ひっくりかえったバスタブの中‥‥割れてて、中に入れたんだ‥‥‥‥ユーリ、は?」
 ユーリ? と、声を揃えて聞き返してしまう。
 少年の名前は、イースンだ。
「もう一人いるのか‥‥」
 すばやく状況を理解して大地は呟く。
 とりあえず、合流と入口を見た瞬間だった。
 その扉が静かにあき、そこにはバフォメットが、いた。
 大地が少年の前に立ち、かばうように。
「極力戦闘は回避なんだけどしょうがない」
「突破!」
「頼むぜ紫翠、エミール!」
 最初に向かうのは千影。
 覚醒をし、髪の色が紫へと染まる。
 振り下ろされるツーハンドソードを、バフォメットは受け止めようとするが、瞬間的に豪力発現。力勝りしたそれは、片腕に深い傷を負わせる。
「さって、いっちょ本気でやりますか!」
 風を受けて、靡くような髪。エミールはバフォメットの羽根を狙い銃を向ける。
 そして紫翠も、その銃をキメラへと向け、牽制していく。
 バフォメットが後退し、廊下へと出る。
 とりあえず少年の安全が先だと判断し、バフォメットを階段から遠ざけるように動く。
 タイミングをみて大地は少年をつれ階段へ。
「行かせません」
 もちろん追ってこようとするバフォメットだが、銃での足止めを喰らい身動きできにくい状況。
 そこへ、千影の流し斬りが、入る。
 豪力発現のかかったそれの重さによって、バフォメットは吹き飛び、部屋の扉をぶち破り、大きな音を響かせていく。
 この隙に、と態勢を立て直し、また地下班とも合流すべく、二階班全員、階段を駆け下りていくのだった。

●三頭の悪魔
「イースン!」
「ユーリ!」
 少年二人、お互いの姿を見て走りあう。
 地下班も、少年からもう一人いることをこの少しの間に聞いていたのでさほど驚くことはなかった。
 少年たちは無事に保護、だがまだ問題は、残っている。
 そしてその問題が、再び、目の前に現れる。
 地下で出くわしたキメラと思しきものが、二階から。
 二階で出くわしたキメラは、そのまま二階から。
 そして一頭、一階の食堂からでてくる。
「なんで二階から? あの怪我してるのは地下であったよ!」
「もう一頭、怪我してるのも二階であった」
「となると、一階から出てきたのは‥‥無傷でぴんぴんしているようですね‥‥」
「ふぅ、なんかこう‥‥もっと可愛らしいキメラはおらんのかねぇ?」
 大地は言って、サングラスを外す。覚醒したその青の瞳は一層の光をもって、輝いていた。
 大地が少年たちの保護に、そして残りのメンバーでキメラを相手にする。
 飛んでいるキメラだが、ここは屋内。
 その動きは、制限される。
「来たようだな? 援護してやるから、後方は、まかせろ。弾が、間違って当たっても恨むなよ」
 紫翠は呟き、覚醒。結んでいた髪は解け、瞳は紅に。
「後で回復してくれよ、大地」
「この子たちが味わった恐怖、絶望‥‥その身に償わせてやるっ!」
 前衛は、千影と結香。
 まずは弱っている相手、とそれぞれ対した相手に向かう。
 二人が前にでて引きつけている間に、エスターは射線に味方が入りにくいようポジション取りをする。
 そして二人の動きに合わせての、攻撃。
 振り下ろされようとする腕に、一撃。
 味方の援護をするように、ボディを狙いつつ攻撃していく。
 小鳥も後方より援護。
 敵の動きを制限する攻撃を行っていく。
「ほらよ、出血大サービスだ! ただし、出血するのはお前だけどな!」
 千影が相手をしていたキメラからふっと身を引く。その後ろにはエミール。
 込められた弾は強弾撃を受けたもの、そしてエミールの手には二丁の銃。
 最大火力をもって、まず一匹仕留める。
 バフォメットの最後の声に、他の二匹は一度距離をとろうと動く。
 今までよりも少し高めに浮き上がり、電撃と炎を放つ。
「羽根を狙って‥‥落しますぅ‥‥」
 小鳥が銃を向け、急所を狙い、銃を向ける。
 その弾は多属性攻撃を繰り出すことに熱心になっていたキメラの羽根をたやすく射ぬき、その高度を落とさせる。
「屋内ってのが仇になったわねっ。その距離、十分届くわよっ!」
 結香は跳躍し、豪破斬撃をバフォメットへと向ける。
 重い攻撃だったが、まだ足りない最後の一撃。
 それを補ったのはエスターだ。
「Rest in Peace!」
 鋭覚狙撃、強弾撃、急所突きのコンボショット。
 十分な威力で、バフォメットは完全に地に落ちる。
 あと、この場に残るは一頭。
 その一頭にむけ、大地が練成弱体をかける。
 防御力を下げられたバフォメットと、傭兵たち。
 どちらが勝つのかは一目瞭然。
「この館の悪い噂‥‥今日ですべて終わりにしてやらぁ!」
 最後のあがきとばかりに属性攻撃をしかけてくるキメラ。
 だが、銃弾の雨にあってはその行動を抑制されることは必至。
 すぐに、倒されることとなる。

●戦い終わり‥‥
「他に‥‥何かないか‥‥調べたほうがいいですねぇ‥‥」
 戦闘後、小鳥の一言により館内探索再び。
 少年たちは二人できたといい、他に人はいないかの確認。
 そして、バフォメットは倒したが他にもキメラがいないのかも、確認。
「この書斎の仕掛けが地下とつながっているのか‥‥」
 少年たちの話から、どうして地下にいて、階段から上がってきた姿をみていないバフォメットが二階から降りてきたのか、謎が解ける。
 そしてそれのおかげで、少年が助かっていたことも。
 書斎でみつけたしかけの行き着く先は地下。
 その仕掛けのなかで地下にいた少年は隠れていたのだった。そして人の声がしてでてきてみれば傭兵たちがいた。
 もし、もう少し地下班が現れるのが遅くなっていたら少年の命は失われていたかもしれない。
 そしてこの仕掛けをつかって、バフォメットは二階へと上がったのだった。
「やれやれ‥‥銃は苦手ですねえ‥‥使え慣れてないから‥‥扱いづらいです」
 紫翠は覚醒をとき、そして少年たちへと向かう。
「これで‥‥もう懲りたでしょう? ‥‥好奇心は自分の身を滅ぼす事も‥‥ありますので‥‥これから注意するんですよ?」
「はい‥‥」
 少年二人は声を揃えて頷く。
 度胸試しをしようと入った館で、恐ろしい目にあい、反省はしているようだった。
「後味の悪いことにならなくてよかったなぁ‥‥」
 館の外、澄んだ空気の中でその様子をみつつ、千影は一服。
「間に合ってよかったッス」
「ほんとにね」
 少年たちは、やがて家族の元へと無事に、送り届けられる。
 お小言をもう少しくらったあとで。