タイトル:【D3】Annihilationマスター:あいざわ司

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや難
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/14 00:08

●オープニング本文


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 都心の、どこにでもあるようなコーヒーショップ。
 朝の、通勤時間の雑踏を避けるように、男は通りに面したカウンター席で、新聞を広げていた。
 盛況なコーヒーショップは、客足が途絶えない。テーブル席で出勤前の一杯を楽しむ客もいれば、テイクアウトでオフィスに持ち込むのか、カップを抱えて出て行く客。
 戦時下とは言え、前線から遠く離れた都市では、普通に人々が働き、遊び、日々の生活を送る。「地球の未来」などは、太平洋に浮かぶ島でぬくぬくとしている偉い人が考えればよい事であって、男の目の前の、通りを忙しなく行き交う人々にとっては、自分の未来、家族の生活が目前の最重要課題であった。
「隣、よろしいですか?」
 女の声。男の答えを待たずに、ベーグルとレモンティーを載せたプレートをカウンターに置いて、隣の席に着く。
 男は身じろぎもせず、新聞から目を放しもしない。開いたページには、先日の銀行立て篭もり事件が報道されていて、「グラナダからの撤退を要求していた!」と、実にタブロイド版らしいセンセーショナルな見出しが躍っている。さらに記事によれば、先日逮捕された立て篭もり犯の供述によると、近日中にアフリカ方面からの大規模な反攻があるらしい。
 男はちょっと可笑しく思った。勿論そんな供述は嘘だ。嘘にしても、これだけの記事を書けるのはある種才能だ。そして、グラナダ撤退要求は本当だ。それを何処からか嗅ぎ付けて来る。これも才能だ。
「‥‥犯人、喋ったらしいですよ?」
 不意に、女が話し掛ける。
「ここに、書いてある」
 男は顔色一つ変えずに答えた。
「そうではなくて、例の場所を」
 初めて、男が表情を変えた。ほんの少し、口元を綻ばせ、嫌味な笑みを作った後、すぐ元の表情に戻る。
「やはり、ただの間抜けな強盗だった、と。‥‥いつ動く?」
 今度は男が女に質問を投げる。互いに、視線は一度も合わせていない。
「年明けすぐ。休暇も取らず、忙しい事です」
「新任の指揮官の初陣は、そこか。‥‥何と言ったかな」
 新聞を閉じ、几帳面に折り畳む。男の前のトレーの上も、カップと、マドラーと、紙ナプキンとが丁寧に置かれていた。几帳面、というより神経質、と呼ぶほうがしっくり来る。
「ロッフェラーですか? 随分出来る人みたいですよ?」
 そう女が答えると、男は席を立ち、コートの襟を立てて店を出た。
 女は一人残され、何事も無かったかのように、通りを行き交う人々を眺めながら、残りのベーグルを口にした。男の姿は、雑踏に紛れてもう見えない。

 事実は小説より奇なり、とは言うが、水陸両用に変形する秘密の車とか、超小型の秘密の盗聴器とか、そんな都合のいいアイテムは存在せず、殆どは捜査員の地道な「足」によって情報を得ている。但し、その結果得られた情報が、想像を超えて奇異な事はままある。
 エドワードが示した数枚の写真には、工場の外観が写っている。どこにでもあるような、中規模の電子部品工場。
「ここが、例の?」
「はい。供述にあった工場です。‥‥大尉は、グラハム・エレクトロニクスという名前をご存知で?」
 エドワードの癖なのか、遠回しに勿体付けた喋り方は、ロッフェラーの苛立ちも募らせた。それでも、元来温厚な彼は、前任のウッディ程露骨に嫌いはしない。
「何分、私が着任する前なので、あらまし程度しか」
「ふむ」
 一度ここで言葉を区切るのが、エドワードの癖だ。
「グラハム・エレクトロニクスは大した物も残さず神隠しに遭いました、が‥‥この工場、九月までグラハム・エレクトロニクスと取引実績があります」
「で、ここを叩くと、芋づる式に何か出てくるかも、って寸法ですか」
「ご明察で」
 横からエヴァンスが別の写真を差し出す。資材搬入口のようで、数台の大型トラックが写っている。
「中の配置は解りません。ただ、陸戦型のKVが一機、搬入されたのを確認しています」
 写真には写っていない。このトラックが搬入したものかも知れない。
「KV方面にはそれほど詳しくは無いんだが‥‥」
 ロッフェラーが前置きしてから、話し始める。
「偽名やコードネームで傭兵として登録している者も居る。これはつまり、それらしい経歴で登録さえすれば――」
「後は、レンタル料が払えるかどうか、だけです」
 彼の言葉尻を、エドワードが受け取る。
「何時の時代も、兵器を売る企業なんてのは、そんなものです」
 呆れたように、一つ溜息を吐いて、ロッフェラーは話題を変えた。
「確認だ。作戦士官のシリング少尉は抜きで、やるんだな?」
「今回は、そうします」
「‥‥3チーム欲しい。KVがある、つまり能力者が敵に居る前提だ。うちのチームから2名、それから、信頼できる傭兵を4名、それを3チームだ」
「手配、します」
 言い残して、エドワードが席を立つ。後を追って、エヴァンスも出て行った。

「伝えたか」
 ベッドから上半身を起こし、男が声を掛ける。女はドレッサーに座ったまま、鏡越しに一度男の顔を見ると「ええ」とだけ答えた。
「あの大尉、どのくらいやり手だと思う?」
 また男が訊く。女の興味はそこには無いらしく、また振り返りもせず「さぁ?」とだけ答える。
 気の無い返事に、男も興を削がれたのか、またベッドに体を横たえる。
「‥‥あたしはいつまで連絡係?」
 暫く黙ったまま、身支度を整えていた女が、ようやく振り返り、今度は逆に尋ねた。
「ロベルトに、気に入られる事だ」
 気だるそうに男が答える。この男に取り入ったのは失敗だったかも知れない。女はそう思った。
 女はドレッサーから立ち上がり、スーツの襟元を調え、ショートの髪を一度掻きあげた。男のものか、それとも女のものか、ベルガモットの香水が、ふわりと香った。

●参加者一覧

アグレアーブル(ga0095
21歳・♀・PN
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
フォル=アヴィン(ga6258
31歳・♂・AA
アンドレアス・ラーセン(ga6523
28歳・♂・ER
綾野 断真(ga6621
25歳・♂・SN
優(ga8480
23歳・♀・DF
神撫(gb0167
27歳・♂・AA
遠倉 雨音(gb0338
24歳・♀・JG
フェイス(gb2501
35歳・♂・SN
マヘル・ハシバス(gb3207
26歳・♀・ER
鳴風 さらら(gb3539
21歳・♀・EP
サンディ(gb4343
18歳・♀・AA

●リプレイ本文

●罠
 小さな缶から拡散したアルミニウムの粒子が、工場の南北にある入り口を青白く眩しい光に包んでいる頃。
 建物東側の大きな窓に接近したヘリから、数条のロープが降ろされる。
 優(ga8480)とサンディ(gb4343)が真っ先に取り付き、大きな窓を突き破るようにそのまま突っ込む。飛び散るガラス片が、優の頬に小さな傷を作った。
 鳴風 さらら(gb3539)と綾野 断真(ga6621)がそれに続く。先行した2人がKVの所在を確認しているのに気づくと、鳴風は建物全体に素早く目を走らせる。閃光手榴弾の光が2つ。そこと、今自分達が飛び込んで来た窓。退路に使えそうなのはやはりそこだけ。
 建物の広さに対して、閃光手榴弾の効果はやはり限定的だった。光の届かない薄暗闇の中、綾野は目を走らせる。幾つかの小部屋。フロアに人影は少ない。キャットウォークからの幾つものマズルフラッシュを見て、やはり待ち伏せを受けていた、と確信した。

 一度、アンドレアス・ラーセン(ga6523)と視線を交わすと、アグレアーブル(ga0095)は真っ直ぐKVに向かって走った。フロアの丁度真ん中あたりに、ぽつんとそれはある。
 神撫(gb0167)が後に続き、遠倉 雨音(gb0338)が突入した2名を援護するため弾幕を張る。しかし、閃光が効果無かったのか、もう立ち直ったのか、跳弾の音がすぐ近くからする。おまけに、工場と云う割にはよく射線が通る、何も無いだだっ広い室内。
 間違いなく罠がある事、虎口に飛び込んだ事は分かってはいたが、それにしても、嫌な予感しかしない。

 南にある正面入り口から、須佐 武流(ga1461)とフォル=アヴィン(ga6258)が飛び込み、KVに向かう。KVまでの距離は、ここからが一番近い。まずは稼動を阻止するために。
 フェイス(gb2501)が西側の壁沿いに進む。さらに後続のマヘル・ハシバス(gb3207)と連携し、前衛の2人の障害となる敵を排除してゆく。
 こちら側からも、射線がよく通った。排除すべき目標の姿はまばら。しかし目視できた数より多く、四方から弾が飛んでくる。

 やはり待ち伏せか。フロアに居た敵は、飛び込んだ際の攻撃でほぼクリアした。が、銃声は止まない。
 真っ先にKVに取り付いた須佐が、左肩に直撃を受けた。SESの無い銃からの攻撃は、彼ら能力者にとっては大した障壁にならないが、それでもダメージはある。
 須佐はダメージも気にせずコックピットを確保する。付近に敵の能力者は居ないらしい。このKVはもともと動かす気が無かったのか。それとも何かの囮か。
 すぐにフォルと、逆側の入り口から侵入したアグレアーブルがKVに取り付く。コックピットを確保する須佐のカバーに動き、味方に合図を送る。
 KVは確保した。敵の本命は2階キャットウォークから、遮蔽物の無いフロアに散る味方を狙い撃ちしていた。
 須佐の後に続いたウォンとモートンも、KVに取り付く。
 KVは確保した。確保したが、嫌に簡単すぎやしないか?
 ふと不安がフォルの脳裏をよぎった。須佐は、KVの起動を始めている。

●葛藤
 鉄筋の柱を遮蔽物にして、綾野はKVに集まるトレーサーの光を追って、2階の目標を狙っていた。KVは確保できた。どうやら、愛用のライフルにペイント弾を装填しなくても済みそうだ。
 綾野は北から侵入した遠倉とアス、それからグレシャム、ジーニーと、互いに視界が通る位置で、KVと敵の殲滅に走る味方に援護を送っていた。
 トレーサーの先のマズルフラッシュ目掛けて、トリガーを引く。どうやら、当たったらしい。そこからの発砲は止まった。見ると、階段を駆け上がる神撫の姿がある。
 KVは任せて、神撫の行く先に、綾野は射撃を始めた。突入前から離れない、嫌な予感を振り払うように。

 神撫がキャットウォークへの階段を登りきると、丁度正面に居た敵に気づかれた。向き合った敵の右手のサブマシンガンが短く爆ぜる。
 正面からまともに直撃を食らったが、それでも真っ直ぐ突っ込む。元々、KVから目を逸らすため、派手に暴れる心積もりだった。
 神撫の動きを見て、敵もサブマシンガンから、片手剣に持ち変える。
 咄嗟に、敵の能力者はこいつだ、と神撫は思った。一般人で能力者相手に接近戦を挑むなど、余程の自信家か阿呆しか居ない。
 お前を止めれば、この勝負は勝てる。
 そう確信した。二つの刃が交わり、乾いた金属音が鳴った。

 ラペリングで飛び込んだ優と、それから鳴風、サンディは、丁度反対側から射線の通る遠倉の援護を受けつつ、キャットウォークへと登って行った。さらにロッフェラーとプロクターも続く。
 登りきった所で、一度優がソニックブームで進路を薙ぎ払う。サンディは鳴風と共に、優が向かったのとは反対方向、幾つかの小部屋がある方へと向かう。
 優の放ったソニックブームは、何人かの敵を倒した。が、中に1人、倒れずに立っていた。神撫が引き受けた能力者以外にも、まだ居たのか。
 見た事のあるライフルが、彼女に向かって火を噴く。と同時に、KVの起動音が響いた。確保した須佐が動かしたのだろう。ちらと視線を送ると、動き出したKVの奥から、フェイスとマヘルが援護射撃を行っているのが見えた。
 彼女には懸念があった。KVに爆発物が組み込まれてはいないか。何かあった際の脱出用に使えないか。
 視線を戻すと、目の前の能力者が彼女に銃口を向けている。まだ敵の能力者を無力化しないうちは、確保したとは言い切れない。
 彼女は考えるのを止めて、その銃口がマズルフラッシュで光るのとほぼ同時に、懐に飛び込んだ。

 真っ直ぐに伸ばしたレイピアの切っ先を、サンディは止めた。
 彼女の戸惑いが、彼女の手を止めた。
 例えばフォルなども、同じような迷い、躊躇いを抱えていたが、フォルのように咄嗟に刃先を返して峰討ちに出来るほど、彼女はまだ人生経験も傭兵としての経験も積んでいない。
 そして、戦場での一瞬の迷いは隙を生んで、敵に付け入る切欠を与える。
 レイピアが止まったのを確認した敵は、逃げようとも、隠れようともせず、そのままサブマシンガンの銃口を向け、無造作に引き金を引いた。
 9mmホローポイント弾が、彼女の体を弾く。咄嗟に、柱の陰へとプロクターが彼女の手を引く。
 敵は混乱しているのか、それとも素人なのか、どちらにしてもありがちな事に、バーストを切らず、トリガーを引き続けた。その銃弾が、プロクターの体も弾く。
 2人の前に鳴風が割って入る。鳴風の体も弾かれるが、それでも怯む事無く、サブマシンガンのトリガーを引いた。
 動かなくなったプロクターを見遣り、倒れた敵の奥に居たもう1人目掛けて、サンディは飛び込む。
 レイピアを振り上げる前に、もう一度、やや躊躇した。けれど今度は、真っ直ぐ伸ばした切っ先を止めなかった。

●全滅
 綾野の狙撃が、神撫と対峙する敵能力者を釘付けにしていた。
 グラップラーか知らないが、その爪を盾で受け流し、神撫は剣を振るう。
 狙撃を行う綾野の手によって、敵の動きはかなり制限されている。さらに、一般人の敵などはものの数には入らない。
 二対一。
 神撫の振り下ろした一撃が、肩口から袈裟懸けに切り裂き、敵能力者は動きを止め、倒れた。
 まだ息はある。彼は、敵を事情聴取のため生け捕りにする余裕など無いと考えていたから、これは僥倖と言えた。
 援護のために、キャットウォークに登っていたマヘルを呼び、後を彼女に託す。
 恐らく、拘束しなくても動けはしないだろう。そう判断すると、綾野に短く合図を送り、彼は次の敵へと走った。

 KVから離れ、柱の陰から、フェイスはぐるりと周囲を確認した。
 須佐、アグレアーブルが確保したKVは、須佐がコックピットに入り、それを起動した。取り付いたアグレアーブルとフォル、それからウォンとモートンが、そのまま機体の検査を始めている。
 1階フロアは突入とほぼ同時にクリアした。残りは2階のキャットウォーク。
 敵のものと思われる発砲は、だいぶ減った。サンディと鳴風が、2階にある小部屋を一つ一つクリアしてゆく。
 それから能力者。神撫から綾野に宛てられた通信は全員に届いていて、まず1人確保。それからもう1人。
 丁度優が、最後の一撃を与えているのが目に入った。直後に、優から通信が届く。こちらも息はあるらしい。
 これで、ほぼ全滅。
 だがまだ、気は抜けない。

 遠倉とアスが、入ってすぐ右手にあった小さな部屋をチェックする。何の変哲も無い、ただの事務室だ。
 だが、罠がある前提で突入している。現に、ほぼ制圧しつつはあるものの、待ち伏せを受けた。どこに何が仕掛けられているか判らない。
 壁際の書棚は綺麗に何も無くなっていて、引き出しに何も無い机と、おそらくこの状況では何も入っていないであろうPCが乗っている。
 隣の部屋はトイレのようだ。丁度そこを調べるために、2人が移動した時、アスはアグレアーブルに呼ばれた。

 後部の兵員輸送用カーゴのハッチが開けられ、ウォンとモートンが乗り込んだ。フォルは機体下部をチェックしている。
 アスを呼びに向かったアグレアーブルが早速戻って来て、後部カーゴを覗き込む。何故か、事務室の書棚にあったであろう、ファイルが大量に積んである。そして、ウォンとモートンは、みかん箱ほどの大きさのケースを探っていた。
 アスがKVに近づく。
 まずいとか、離れろとか、伏せろとか、そんな物騒な叫びが聞こえたのはその時だった。
 須佐は素早くキャノピーを開いて、コックピットから飛び出す。
 フォルは向きを変え前転するように跳び、姿勢を低く取る。
 アグレアーブルもまた、飛び退いて伏せた。
 その声に立ち止まったままのアスは、爆音と同時に衝撃で吹き飛ばされた。
 須佐、フォル、それからアグレアーブルにも、衝撃波と飛散した金属片が襲う。
 カーゴから、ウォンとモートンが逃げ出したかは、誰も見ていない。
「嘘‥‥だろ‥‥?」
 吹き飛ばされて放心したまま、アスは爆発でひしゃげたカーゴを見つめていた。

●幕間
「――それで、捕まった連中は?」
「能力者2人と、後は若いのが2人。若いの2人はこれが初実戦なので、叩いても何も出ない下っ端です」
「能力者のほうは?」
「組織の運営には関わっていませんでしたので、そちらから何か漏れる事は無いと思いますが‥‥『イベリアの風』から来た連中です」
「そっちを手繰られると厄介、て事か。舌でも噛んで死んでくれる甲斐性でもあればいいが」
「舌、噛ませますか?」
「いや、いい。どちらにせよ、デルタの実働部隊は全滅だ。立ち直る時間を与えてやろう。ハンデだ」
「戦死は3名‥‥ウォン、プロクターの両名は階級から分隊指揮官になれました。モートンは部隊のメディックも兼ねていました。惜しい事です」
「惜しい、という顔には見えないな?」
「とんでもない! 3名共、同僚でしたから」
「同僚か、そういう事にしておこう」
「記録映像がこれです。会話も拾っています。ヘリからの撮影なので多少ノイズが乗っていますが――」

 作戦終了直後の現場。数台の消防車。カメラはロッフェラーを中心に捉える。周囲には優とサンディ、それからアス、フォル。
『――作戦は成功だ。サンディの迷いも、優の判断も、間違いではないよ。犠牲は仕方ない事だ』
 ロッフェラーの声。
『仕方ないって言い方は無いだろ?』
 アスがやや声を荒げる。フォルがそれとなく制止する。
『私の迷いは私のミスだ。相応のペナルティを課して欲しい』
 サンディが詰め寄る。
『さっきも言った通り、ペナルティなどは無いよ。作戦は成功している』
『あんたは部下を亡くしてんだろうが!』
 アスがロッフェラーの胸倉を掴む。暫く無言で睨みあった後、手を放す。
『‥‥あんたの前任の隊長は、もっとちゃんと人間だったよ』

「こりゃあ、傑作のコントだな。新任の大尉殿の初陣は、全滅したものの作戦は成功か」
「どうも、現場に出るところっと人が変わるらしいです。普段は人当たりのいい温厚なタイプなんですが。作戦遂行を何より最優先するようで」
「人情を挟むタイプでは、特殊部隊の指揮官は務まらんか。‥‥例の作戦士官はどうした?」
「今回の作戦は知らされていない筈なので、ほぼ白ではないか、という方向に傾いています」
「‥‥なら、デルタが立ち直るまでに、消して白黒はっきり付けてやろう」


「――彼は勇敢に戦い、友人達を助け、勇敢に散ったのです。生前彼は――」
 墓地の一角。参列した人々から少し離れて、作戦に参加した何人かが立っていた。
「作戦は、成功か?」
 葬儀の様子を見たまま、須佐が呟く。
「成功してませんよ。あの中には、ウォン准尉のドッグタグしか入っていません」
 優が須佐に答える。
「はっきりしたのは、アニー少尉が白って事と、俺らの疑いが晴れたって事くらいか‥‥」
「後は、捕らえた犯人から何が出るか、ですね‥‥」
 神撫とマヘルも、葬儀の様子を見たまま、顔を動かさない。
「事情聴取に期待するしか無い、という事ですね。‥‥どちらにせよ、デルタは牙をもがれました」
 呟いて、遠倉が目を閉じる。
「――ウォン准尉に、黙祷を捧げましょう――」