タイトル:【BI】ベラバルの戦い3マスター:望月誠司

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/02/28 21:25

●オープニング本文


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 ギラギラと輝く灼熱の太陽、黄塵吹きすさぶ荒野の果ての果て。
 インドが北西部、クジャラート州に属するステップ気候のその半島、戦火により荒れ果てた大地を千の兵団が動いていた。
「なんか世界各地域色んな所でハードにダンスってるよーな気がするけど、我等が第三独立大隊は〜、堅実地道に一歩一歩進んでゆきますよー、それ進撃〜!」
 軍帽をかぶりしなやかな肢体を軍服に包んだブロンドの髪の女が片手で地平の彼方を指差し、もう片方の手は戦車の取っ手を掴みタンクデサントで移動しながら言った。バーブル師団が展開する戦線の一翼を担う、第三独立大隊、通称ディアドラ大隊の大隊長ディアドラ=マクワリス少佐である。
「たいちょーなんで外出てんです?」
 コーカソイドの兵がバイクを並走させつつヘルメットを抑えつつ見上げて問いかけた。
「エアコン壊れちゃったんだ、中地獄だぜコンチキショー!」
 アラサーな女士官はそう言った。カーティヤワール半島は本日も暑い。
「へぇ、そりゃ災難。ま、でも戦闘が始まったらどの道使えないんでしょ?」
「UPCもSES付ける前にその辺り改善してくれりゃー良かったのになー」
 そんな事をのたまいつつ、ディアドラ大隊は半島を進撃し、競合地帯へと突入しベラバル市へと迫った。
 ベラバルは半島の南西の端に位置する市で、そこには港が存在する。補給線を確保する為にも海運は有用なものであり、この港の奪取は半島で戦うUPCから期待が寄せられていた。
 しかしながら、当然の如くバグア軍の守りも硬く、大小様々なキメラを組織した守備軍が存在しておりその守りは強固だった。やがて戦域に近づいた時、
「さて、戦の時間だ」
 女少佐が軍帽を被りなおし戦車の中に入って無線に言った。部隊の空気が張り詰めてゆく。
 バーブル師団のディアドラ大隊は歩兵およそ千二百名を主力に、攻撃ヘリ、自走砲、戦車と揃え、空軍からのKV隊の支援を受ける、ミニ混成旅団といった編成だ。これはバーブル師団の編成の特徴で、少ない兵力で広大な半島の各所を制圧してゆかねばならない苦肉の策の結果とも言えた。今の所は敗北していない。いつまで不敗でいられるかは解らなかったが。
 砂塵の立ちこめる地平線、親バグアの兵団とキメラの部隊が進撃し、UPCの混成隊と能力者が前進する。
 やがて戦が始まった。
 蒼空をKVが舞い迎え撃つようにHWが赤く輝き爆風を巻き起こしながら交差する。地上をゆく自走砲や戦車の砲が焔を吹き地平を薙ぎ払ってゆく。砲弾が爆裂し、親バグアの砲が爆裂して四散する。今回のディアドラ隊の砲は射程が長く数も多く親バグアの兵団を後退させ牽制する役割は十分に果たしていた。しかし、やはりフォースフィールドを纏うキメラ達には砲の効果は薄く、足を止める事なく前進して来る。
 超巨大なベンガル虎が咆哮をあげて爪に雷を宿して振るい砲弾の爆裂を割いて駆ける。六本の腕を持つ女の上半身と蛇の下半身を持つ白蛇が刀剣を鈍く輝かせ、像の顔と四本の腕を持った異形が双刃を旋回させ進む。その周囲をプロトンライフルを持った無数のオーク兵が固め、片手剣と全身を隠すサイズの大盾を装備した銀色の狼達が前進してきていた。
 敵キメラ集団は一つの場所に固まるのではなく、幾つかの隊ごとに別れて距離を置いて突撃してきた。隊ごとの突撃である。
「能力者隊、前へ! 目標、キメラ各隊、迎え撃て!」
 キメラ軍団を蹴散らす為に、傭兵達もまた隊ごとに別れ荒野へと繰り出されてゆくのだった。

●参加者一覧

鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
藤村 瑠亥(ga3862
22歳・♂・PN
エレナ・クルック(ga4247
16歳・♀・ER
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
ハミル・ジャウザール(gb4773
22歳・♂・HG
秋月 愁矢(gc1971
20歳・♂・GD

●リプレイ本文

「‥‥演劇への招待、ではなかったのか、場所が変だなとは思ってはいたのだが。そうか‥‥」
 コーホーと息を吐きつつ暗黒エミタ卿UNKNOWN(ga4276)が言った。軍の依頼書の地名表記に混乱が見られた。書類を作成した者のミスだろう。申請しておくので通れば何事もなかったように報告書においては正しい表記に戻る筈である。
 UNKNOWNがそんな嘆きと共に訪れた場所はインドがカーティヤワール半島の大地だ。雇い主であるバーブル師団のディアドラ大隊は目下ベラバルへと向かって荒野を進撃中であり、地平の彼方にはそれを阻むようにバグア軍が立ち塞がっている。
 空にKVが舞い、地をUPC軍の戦車と自走砲が進む、低空を攻撃ヘリがローターを回して飛んで、一二〇〇を数える兵が散兵で小銃や無反動砲を構えて前進してゆく。対するバグア軍もまたHWを飛ばし、戦車と砲を並べ、親バグア兵とキメラの群れが進撃する。
 戦局は一進一退で進み、やがて複数の隊に分散しているキメラが各方面へと突撃を開始した。迎撃の指令が下されキメラ隊を迎え撃つべく傭兵達もまた武器を手に駆け出してゆく。
「敵は‥‥いきなり変わりすぎた気もするが、やりすぎたか?」
 司令部からの情報を受け取って藤村 瑠亥(ga3862)が言った。これまでの所敵は数に任せて近接型のキメラを大量に揃えて敗北し、飛び道具を持ったキメラを大量に用意しても敗北している。そして今回はそこそこの質と数を揃え、近接と飛び道具の両方も混ぜてさらに打撃力に長けた巨大キメラをオーダーミックスしての編成である。順当といえば順当な変化だが対処に要求される複雑さはこれまでよりも格段に増している、かもしれない。
「今度は‥‥重装備ですね‥‥皆さんがやり過ぎるから‥‥」
 苦笑しつつハミル・ジャウザール(gb4773)が言った。
「さて、どうしたもんかねぇ。この前みたいに上手くはいかねぇだろうが‥‥まぁ、こっちのが燃えるわな」
 覚醒した宗太郎=シルエイト(ga4261)がニヤリと笑って言った。
「強力な盾が在るなら戦法を替えるまで‥‥」
 と言うのは終夜・無月(ga3084)だ。
「数の怖さってのを感じますです」
 ヨグ=ニグラス(gb1949)が言った。これ以上増やされないように、どんどん押し通らないと、と思う。
「きょうはキメラだけ‥‥がんばらないとっ」
 エレナ・クルック(ga4247)がぐっと拳を握って言った。参加したのは傷つく人を減らす為、頑張りたい所だ。
「俺が戦う事で兵士が一人でも救われるならそれでいい。実力が足りなくてもやれる所までやるだけだ」
 秋月 愁矢(gc1971)はそう思いを固めて荒野を駆けてゆく。
「前回はミスで参加できなかったので、汚名返上‥‥といきたい所です」
 着物姿の黒髪の女が言った。鳴神 伊織(ga0421)だ。
「二度も同じ轍を踏む訳にもいきませんからね‥‥」
 言いつつ漆黒の刀身を持つ太刀を抜刀する。刃が禍々しく輝いた。
 傭兵達は駆けつつ手早く作戦を打ち合わせる。
「紅茶を皆で飲みながら、といきたかったが‥‥うむ」
 UNKNOWNが呟く。敵に遭遇してからでないと情報は入ってこなく、敵と遭遇してからは優雅にやっている暇は――UNKNOWNならもしかしたらあるかもしれないが――軍全体には当然のように無い。爆炎吹き荒れる中、駆け足進行である。
「豚&狼は、まずは私が惹き付けるから、左右から頼む、よ。広がられると中々厄介だし、ね」
 男はそう言って面を被りコーホー、と息を吐く。
「みんなでふぁいとですよ〜」
 エレナは各員との役割を確認しそう言った。
「フォーs‥‥エミタを信じるのだ」
 UNKNOWNがそれに応えるようにお決まりになりつつある台詞を述べた。それぞれ作戦に合わせて展開してゆく。
 荒野の彼方、巨大なベンガル虎と十体のレギオンウルフと十体のプロトンオークで構成されたキメラ隊が迫り来る。
 距離が詰まってゆく。
 空でHWとKVが激突し、UPCと親バグア双方の砲が火を吹いて爆炎を巻き起こす。他の能力者分隊も周囲で次々にキメラ集団と荒野で激突してゆく。既に慣れつつある平野の戦。
 距離が詰まってゆく。
「あぅ〜トラさんおっきいです〜」
 エレナは虎の巨体とその動きを観察しながらそんな事を言った。近づく程にそのバカデカサが解る。
 相対距離一二〇。終夜、射程に入ったが仲間と連携して動きたい所、まだ放たずに弓と矢を手に距離を詰めてゆく。
「射程距離に入ったよっ」
 相対距離一〇〇、ヨグが言うや否やレギオンウルフの盾の陰から十体のプロトンオーク達がライフルの銃口を覗かせ淡紅色の光線を撃ち放って来た。ヨグもまた巨大なエネルギーキャノンを構えると左端のレギオンウルフの足元目がけて光線を撃ち放った。風塵を上げて視界不良にする事が目的だ。強烈な光が大地に突き刺さって大地を爆砕し土煙を巻き上げてゆく。
 他方、プロトンオーク達は前に出ているUNKNOWNへと射撃を集中させて来ていた。一体が三連射、十体のプロトンオークで三〇連射な勢いだったが、途中で一匹がヨグの射撃で吹っ飛ばされて脱落し計二十九連の光が襲いかかる。
 迫り来る猛烈な淡紅色の光線の嵐に対し、UNKNOWNはゆらりと身体を左右に揺らす。探査の目を発動して盾の隙間や虎の動きへも注意を払いつつ、光線をゆらゆらと身を動かして次々にかわしながら前進してゆく。その後方、UNKNOWNを盾にせんと藤村が追随していたが、前が避ければ光は後ろに抜けるものである。丁度UNKNOWNの身が目隠しの役割となって閃光が一瞬で飛び出し藤村へと襲いかかる。光が顔面へと迫り藤村は咄嗟に身を捌いたが、避けた。残像を残す驚異的な動きでスウェーし淡紅色の光線をかわす。人間か? 最早別次元の何かの動き。しかし、わざわざ難易度を上げる事も無いのでUNKNOWNから少し離れる事にする。
 他方mUNKNOWN、十二条の閃光をかわしたが十三条目の光に捉えられてその身に淡紅色光線が突き刺さっていた。さらに唸りをあげて飛んだ光が男の黒鎧を直撃しその装甲を削り飛ばしてゆく。衝撃に身を崩しつつもしかし、男は十五条目となる光線をゆらりと身を捌いて再びかわす。だが敵の射撃の密度も厚い。十六、十七と次々に身に直撃して装甲が削り取られ、十八条目を身をふって回避するも、十九、二十、二十一と光線が身に突き刺さってゆく。高速で身を沈めて二十二発目となる光線をかわし、続く三連の光線もゆらりと機動してかわしてかわしてかわす。しかしさらに続いた四連の光線は避けきれず、強烈な破壊力が炸裂して黒鎧の装甲が削り飛ばされていった。負傷率二割。敵もなかなか良い威力だ。
 終夜は射撃の際にレギオンウルフの盾の陰から顔を出すプロトンオークを狙う。魔創の弓に矢を番えて引き絞り射撃。矢が錐揉みながら飛び、プロトンオークはレギオンウルフの陰に身を引っ込めて回避。終夜は再度、矢を番えるとタイミングを計ってはっしと放つ。また射撃せんと顔を出したプロトンオークの顔面に矢が突き刺さって豚鬼が吹っ飛ばされてゆく。撃破。
 シルエイトは駆けつつ小銃ルナを構える。レギオンウルフAへと狙いをつけると猛射。弾丸が唸りを上げて飛び、狼人が翳す大盾に激突して火花を撒き散らした。レギオンウルフAへと終夜がさらにターゲットを合わせて追撃の矢を放ち、シルエイトは瞬天速で斜め前へと瞬間移動したが如き速度で加速してゆく。レギオンウルフは迫り来る矢に合わせて素早く大盾を翳す。大盾と矢が激突して矢が弾き飛ばされた。しかしシルエイトが斜めに入って射線を通している。敵の右足へと狙いをつけて発砲。轟く銃声と共に弾丸が勢い良く飛び出しレギオンウルフの具足を貫いて腿を穿った。強烈な破壊力に狼人はくぐもった声を洩らして片膝をつく。シルエイトはそのままウルフの四肢へと狙いをつけると連射して銃弾を叩き込み撃ち殺した。撃破。
 他方、キメラ隊の端を駆けているタイガーロードが猛加速し突撃を開始していた。相対距離七〇、鳴神はスノードロップを構えるとその銃口をタイガーロードへと向けて発砲。体長十mを号する巨大なベンガル虎はその自重に見合わぬ俊敏さで地を疾走して弾丸をかわし、その方向を鳴神へと転じさせ、鉄道もかくやという迫力で突っ込んで来る。
「俺は鳴神や藤村のように重い一撃や回避力はない‥‥」
 須佐 武流(ga1461)、タイガーロードを見据えて荒野を駆けつつ呟いていた。
「だがな、技の切れはこの中で一番だと思ってるんでな?」
 須佐、大地を蹴って加速すると地響きをあげて疾駆している大虎へと斜めから差し込むように猛然と迫る。須佐の接近に対しタイガーロードは反応、顔を向けると爪に爆雷を宿して振り上げた。瞬間、同じくタイガーロードを標的に駆けていたエレナは赤いプレゼントボックス型の超機械を宙へと掲げる。練力を全開に虚実空間を発動、赤い箱から蒼白い電波が飛び出して大虎へと向かってゆく。
 タイガーロードが咆哮をあげて剛爪を振り降ろし、須佐は高速機動を発動、さらに加速する。エレナから放たれた蒼白い電波が、振り下ろされるタイガーロードの爪に炸裂、瞬間、ふっと雷が消え失せた。だがそれでもそのまま颶風をあげて須佐へと巨大な爪が迫る。しかし男は冷静に軌道を見切るとスウェーし、紙一重で爪先をかわした。爪先が宙を貫き大地に突き刺さって爆砕し土砂を吹き上げてゆく。他方、鳴神、その瞬間を捉えてスノードロップで再度狙いをつけると発射、弾丸が唸りを飛び大虎の横腹に突き刺さった。凶悪な破壊力が炸裂して血飛沫があがってゆく。
「援護するですよ〜」
 態勢が崩れた所へエレナは練成弱体を発動、さらに超機械で虎の頭部を狙って電磁嵐を巻き起こした。虎の防御力が低下し、蒼い光が空間に発生してゆく。しかし猛虎は機敏に反応し素早く身を伏せて頭部を低くして回避。その勢いのまま須佐の足元目がけて右前脚の剛爪を振るう。閃光の如くに一閃された剛爪を須佐は後方に回転しながら跳躍、木の葉舞うように身軽に回避する。
 他方、UNKNOWN、近未来的な対戦車ライフル型のエネルギーキャノンを構えていた。レギオンウルフの中央へと狙いをつけ発射。次の瞬間、爆音と共に壮絶な破壊力を秘めた光が一直線に飛び出し、空間を灼き焦がしながら唸りをあげてレギオンウルフへと迫った。狼人はそれに対し素早く大盾を翳す、凶悪な光と大盾が激突し、そして光が吹き散らされた。事前情報通りの凄まじいレベルの強固さ。
「うむ、欲しいな。あの盾は」
 UNKNOWNはそんな事を呟きつつ十匹のレギオンウルフの足元目がけて次々に光線を猛射、足場を崩す事も狙いつつ大地を爆砕して土煙を巻き上げてゆく。藤村は迅雷を発動、大虎へと突っ込んだ。宙に残光を引きながら猛加速し須佐へと爪を振るっている大虎へと一瞬で間合いを詰めると、横合いからその胴の下へと身を低くして踏み込み後脚を狙って二刀小太刀で斬りつける。剣閃が走り抜けて刃が虎の大木のような脚に食い込み、その表面を切り裂きながら抜けてゆく。血飛沫が噴き上がって虎の態勢が崩れ、須佐がステップインして大虎へと超機械の篭手を繰り出し、掌底の形から当たる瞬間に電磁嵐を解き放つ。蒼光が虎の身に炸裂しその表面を灼き焦がした。鳴神は左前脚を狙ってスノードロップで猛連射、弾丸を次々に脚の付け根へと叩き込んで血飛沫を噴出させる。衝撃にさらに崩れた所へエレナが再度大虎の頭部へと電磁嵐を発生させ蒼光を頭部へと叩き込んだ。
「やらせないのですっ!」
 エレナは大虎が咆哮をあげながら爪と牙を振るのに合わせて電磁嵐を解き放って攻撃を妨害し、須佐はスウェーして迫り来る爪をかわし、牙を剥いて迫る虎の顔面に対してミスティックTでカウンターの電磁嵐を叩き込みながらステップし回避する。後方に出た藤村は迅雷で加速しながら真燕貫突を発動、先に攻撃を加えた右後脚へと八連の剣閃を叩き込んで一瞬で破壊する。赤い色をぶちまけながら虎の身が沈み、須佐がスコルでミドル、ロー、回し蹴りと三連の蹴撃を大虎の首へと叩き込んでゆく。
「――捉えましたよ」
 鳴神が間合いを詰めている。周囲からの猛撃に身を崩して虎へと向かって天地撃を発動、大虎の横腹へと黒刀による猛打を炸裂させて壮絶な衝撃を叩きつけ、十mの巨虎の身を横倒しに荒野に吹き飛ばす。壮絶なパワーだ。
「こいつでとどめだ!」
 吹っ飛んだ大虎に対し須佐はグラスホッパーに切り替えると空中へと跳躍、真燕貫突を発動させる。頭部を起こし牙を剥く大虎の顔面へと降下ざまに二連の飛び蹴りを叩き込んで凶悪な破壊力を炸裂させ、鳴神もまた追撃に踏み込んで両断剣・絶を発動、虎の首筋へと黒刀を一閃させ泥のようにその肉と骨を断ち切って掻っ捌く。盛大に鮮血が噴出し、首を斬られ蹴りを叩き込まれた大虎は頭部を妙な角度に傾けながらその瞳から光を消し倒れた。撃破。
 レギオンウルフ達は剣を振るって音速の衝撃波を巻き起こし、爆風で砂塵を吹き散らす。UNKNOWNはレギオンウルフの大盾の上部を狙ってキャノンで猛射。レギオンウルフは半身に腕を折りたたんで大盾を構えがっしりと光線を受け止めて吹き散らす。
「乱戦に持ち込めれば盾は邪魔になるはずだよっ」
 ヨグ、竜の瞳を発動、前進する秋月を援護するようにレギオンウルフへと光線を猛射してゆく。レギオンウルフは大盾を翳して光線を吹き散らし、突出して来た秋月へと九匹で集中して衝撃波を連射する。
 秋月は不惑の盾を発動、紋章を輝かせながらプロトクトシールドを掲げて防御を固める。
「こっちの射程は届くんだっ」
 ヨグはレギオンウルフJが剣を振るう瞬間を狙い澄ませてエネルギーキャノンを猛連射、カウンターで光線の嵐を叩き込んで衝撃波の二発目を撃たせる前にふっ飛ばして荒野に打ち倒す。
 十七連の音速波が唸りをあげて秋月へと襲いかかり暴風の如くに衝撃を炸裂させてゆく。五発を盾で吹き散らし、十二発の直撃を受けて秋月負傷率一割二分。非常に硬い装甲だ。
 秋月は装甲に物を言わせて爆風を突き破ってレギオンウルフIへと肉薄すると盾を構えながら体当たりするようにぶちかましをかける。レギオンウルフが構える大盾と秋月の盾が激突して轟音と共に強烈な衝撃が炸裂、レギオンウルフが押されてたたらを踏んだ。秋月は1.9mの長大な太刀を振り上げると態勢を崩しているレギオンウルフの盾の上から差し込むように突き降ろし、切っ先がレギオンウルフの兜の端を削りなが抜け火花を巻き起こした。次の瞬間、レギオンウルフが剣を振って太刀を払い、秋月は身を捻って切り替えし黒刀を振り下ろす。レギオンウルフは大盾を素早く翳してガード、刃と盾の表面が激突し再度火花を散らした。
 他方、その間に接近していたハミルは駆けながらレギオンウルフEの顔面へと狙ってケルビムガンで射撃、狼人は大盾を翳して銃弾を防御。態勢低くレギオンウルフの眼前まで踏み込んだハミルは地を蹴ってレギオンウルフへと跳躍、駆け昇るようにさらに盾の上辺を蹴りつけて高く宙へと跳ぶと身を捻りながらレギオンウルフとプロトンオークの後方へと降り立った。挟んだ。
 プロトンオークの十匹が一斉にハミルへと振り向き、ハミルはペイント弾を装填しプロトンオークEFGの顔面を狙って三連射、それぞれのバイザーへと弾丸を直撃させて爆ぜさせ色鮮やかなペイントを撒き散らす。三匹のプロトンオークの視界を塞いだ。
 プロトンオーク達は後方へ降り立ったハミルへとライフルを向け猛射、閃光を爆裂させて集中射撃してゆく。ハミルは自身障壁を発動し白銀の盾を構えて防御、十五発の光線のうち七発を盾で吹き散らし八発の直撃を受けて負傷率四割。ペイント弾を連射してプロトンオークDHIのバイザーへも塗料を付着させてゆく。
 シルエイトと終夜は瞬天速で加速して突撃している。終夜は突撃しながらプロトンオークAへと超機械「扇嵐」を連続起動させて二連の竜巻を巻き起こし、風の刃で斬り刻んで打ち倒していた。
 シルエイトはレギオンウルフBへと、槍を真横に構え低姿勢で潜り込むように踏み込んだ。大盾と大地の隙間、僅かしかない。狭きそのスペースを狙って穂先を突き込み、そのまま上へと槍を振り上げんとする。パワーの勝負。エースアサルト腕力は凄まじい、力任せにレギオンウルフの盾を上へと跳ね上げて仰け反らせると足元を狙って槍を振り抜いた。ランスの穂先が横殴り狼人の脚部に炸裂し猛烈なパワーで両脚まとめて刈り取る。もんどりをうって鎧を着込んだ狼人が倒れ、シルエイトはすかさず槍を突きこんで凶悪な爆裂を巻き起こし粉砕した。撃破。 UNKNOWN、プロトンオークJへと光線を一射して吹き飛ばして沈めている。レギオンウルフCの盾上部を狙って猛射、レギオンウルフは大盾を翳してそれを受け止める。終夜はそのレギオンウルフCの側面へと踏み込むと大剣を稲妻の如くに一閃させた。刃がレギオンウルフCの肩から入ってその装甲を泥のように叩き斬りながら抜けてゆく。血飛沫を噴出しながらレギオンウルフCが倒れた。UNKNOWNは間髪入れずにプロトンオークCへと狙いを定め凶悪な光線を撃ち放ってこちらも一撃で消し飛ばす。
 UNKNOWNが射撃してレギオンウルフDが大盾で止め、終夜がその瞬間に横手から入って大剣を振るい、その首を刎ね飛ばして荒野に沈める。
「逃がさねぇ! SES、フルドライブ!!」
 シルエイトはプロトンオークDへと猛然と迫ると猛撃を発動、槍を突きこんで壮絶な超爆裂を巻き起こして吹き飛ばす。
 秋月は太刀を振るってレギオンウルフIへと太刀を打ち込みレギオンウルフIは大盾を翳してガード。レギオンウルフG、Hは機動しながら剣を振るって音速衝撃波を秋月へと次々に叩き込み、レギオンウルフIはすかさず剣で秋月へと打ち込みをかける。
 秋月は爆風に対して盾を翳して受け止め、レギオンウルフIの打ち込みに対しては身を沈めてプレートアーマーの装甲の厚い部分で受け止める。AU‐KVをバイク形態に変形させたヨグが砂塵を巻き上げ、光の翼を左右へ広げ、高速で霞めるように斜めに突っ込んで来て、衝撃波を撒き散らしレギオンウルフとプロトンオークのIHGの六体へと衝撃波を炸裂させてゆく。レギオンウルフIがつんのめった所へ秋月はすかさず太刀を打ち込んで斬り倒した。
「すぐに治療しますねっすこしだけ我慢してくださいです」
 大虎を撃破した対応班はレギオンウルフとプロトンオークへと向かい、エレナはハミルへと距離を詰めると赤箱を掲げて練成治療を連打した。男の身から痛みが失せ細胞が再生して傷が癒えてゆく。
ハミルはバイザーを外しているプロトンオークEへと踏み込むとクロックギアソードを袈裟に振るって装甲を切り裂き、返す刀を唐竹割りに打ち込んで頭部を粉砕して撃破する。
 ヨグの翼に轢かれて態勢を崩しているレギオンウルフとプロトンオークへと須佐、藤村、鳴神の三人が横手より突っ込んだ。快速一番に須佐が突っ込んで跳び蹴りを放ってレギオンウルフHを蹴り倒し、鳴神がスノードロップで猛射してプロトンオークGHIを次々に爆砕してゆく。藤村が駆けて小太刀を振るってレギオンウルフGへと小太刀を一閃させて荒野に沈める。
 後方へ抜けたヨグがエネルギーキャノンを猛射してプロトンオークFへと二連の閃光を突き刺して撃ち倒し、UNKNOWNが射撃して大盾を固め終夜が横手から斬りつける形でレギオンウルフEとFも斬り倒して荒野に沈めたのだった。




 かくて、傭兵第三分隊の活躍によってタイガーロードと十体のレギオンウルフと同じく十体のプロトンオークからなるキメラ隊は殲滅された。
 やがて他の傭兵隊も無事にキメラの小隊を打ち破ってUPC軍は進撃し、ディアドラ大隊はバグア軍をベラバルの野で潰走させて勝利を収めた。
 荒野での戦いに勝利したディアドラ隊は余勢を駆ってバグア軍を追撃し、これをさらに撃破してベラバル市を陥落させた。
 こうしてまた新たにカーティヤワール半島の街の一つを奪還したディアドラ大隊はベラバルの街にUPCの旗を立て、兵達はその勝利に歓声をあげたのだった。


 なお秋月はレギオンウルフの大盾を回収していたが「いやー、規則なんだー、悪いね、HAHAHA」と笑う大柄な軍曹がやってきてさらに秋月の手から回収していってしまった。恐らく軍の防御的な何かに使われるのだろう。偶に横暴さを感じる所である。
「みなさんお疲れ様です〜ジュースいかがですか〜?」
 戦後、夕暮れの街でエレナは希望者へとリンゴジュースを配った。半島は暑いので喉が渇く、希望者達は有難く受け取ってそのジュースで喉の渇きを潤したという。
「あぅ〜汗と埃でべたべたです〜」
 エレナは土埃に塗れて汚れた我が身を嘆いてそんな事を言ったという。




 了