タイトル:【BI】ベラバルの戦い2マスター:望月誠司

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/02/27 17:39

●オープニング本文


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 ギラギラと輝く灼熱の太陽、黄塵吹きすさぶ荒野の果ての果て。
 インドが北西部、クジャラート州に属するステップ気候のその半島、戦火により荒れ果てた大地を千の兵団が動いていた。
「なんか世界各地域色んな所でハードにダンスってるよーな気がするけど、我等が第三独立大隊は〜、堅実地道に一歩一歩進んでゆきますよー、それ進撃〜!」
 軍帽をかぶりしなやかな肢体を軍服に包んだブロンドの髪の女が片手で地平の彼方を指差し、もう片方の手は戦車の取っ手を掴みタンクデサントで移動しながら言った。バーブル師団が展開する戦線の一翼を担う、第三独立大隊、通称ディアドラ大隊の大隊長ディアドラ=マクワリス少佐である。
「たいちょーなんで外出てんです?」
 コーカソイドの兵がバイクを並走させつつヘルメットを抑えつつ見上げて問いかけた。
「エアコン壊れちゃったんだ、中地獄だぜコンチキショー!」
 アラサーな女士官はそう言った。カーティヤワール半島は本日も暑い。
「へぇ、そりゃ災難。ま、でも戦闘が始まったらどの道使えないんでしょ?」
「UPCもSES付ける前にその辺り改善してくれりゃー良かったのになー」
 そんな事をのたまいつつ、ディアドラ大隊は半島を進撃し、競合地帯へと突入しベラバル市へと迫った。
 ベラバルは半島の南西の端に位置する市で、そこには港が存在する。補給線を確保する為にも海運は有用なものであり、この港の奪取は半島で戦うUPCから期待が寄せられていた。
 しかしながら、当然の如くバグア軍の守りも硬く、大小様々なキメラを組織した守備軍が存在しておりその守りは強固だった。やがて戦域に近づいた時、
「さて、戦の時間だ」
 女少佐が軍帽を被りなおし戦車の中に入って無線に言った。部隊の空気が張り詰めてゆく。
 バーブル師団のディアドラ大隊は歩兵およそ千二百名を主力に、攻撃ヘリ、自走砲、戦車と揃え、空軍からのKV隊の支援を受ける、ミニ混成旅団といった編成だ。これはバーブル師団の編成の特徴で、少ない兵力で広大な半島の各所を制圧してゆかねばならない苦肉の策の結果とも言えた。今の所は敗北していない。いつまで不敗でいられるかは解らなかったが。
 砂塵の立ちこめる地平線、親バグアの兵団とキメラの部隊が進撃し、UPCの混成隊と能力者が前進する。
 やがて戦が始まった。
 蒼空をKVが舞い迎え撃つようにHWが赤く輝き爆風を巻き起こしながら交差する。地上をゆく自走砲や戦車の砲が焔を吹き地平を薙ぎ払ってゆく。砲弾が爆裂し、親バグアの砲が爆裂して四散する。今回のディアドラ隊の砲は射程が長く数も多く親バグアの兵団を後退させ牽制する役割は十分に果たしていた。しかし、やはりフォースフィールドを纏うキメラ達には砲の効果は薄く、足を止める事なく前進して来る。
 超巨大なベンガル虎が咆哮をあげて爪に雷を宿して振るい砲弾の爆裂を割いて駆ける。六本の腕を持つ女の上半身と蛇の下半身を持つ白蛇が刀剣を鈍く輝かせ、像の顔と四本の腕を持った異形が双刃を旋回させ進む。その周囲をプロトンライフルを持った無数のオーク兵が固め、片手剣と全身を隠すサイズの大盾を装備した銀色の狼達が前進してきていた。
 敵キメラ集団は一つの場所に固まるのではなく、幾つかの隊ごとに別れて距離を置いて突撃してきた。隊ごとの突撃である。
「能力者隊、前へ! 目標、キメラ各隊、迎え撃て!」
 キメラ軍団を蹴散らす為に、傭兵達もまた隊ごとに別れ荒野へと繰り出されてゆくのだった。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
砕牙 九郎(ga7366
21歳・♂・AA
M2(ga8024
20歳・♂・AA
植松・カルマ(ga8288
19歳・♂・AA
レティ・クリムゾン(ga8679
21歳・♀・GD
冴城 アスカ(gb4188
28歳・♀・PN
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA
ザインフラウ(gb9550
17歳・♀・HG
ジャック・ジェリア(gc0672
25歳・♂・GD

●リプレイ本文

 ユーラシア大陸がインドの西、カーティヤワール半島。マフバからベラバルへと向かう荒野の途中、コーカソイドの兵に続いて銀髪の女がバイクに乗ってやってきた。冴城 アスカ(gb4188)である。
「ハァイ、少佐、今回もよろしく〜」
 女はそんな事を言って手を振っている。
「お、冴城さんか、うむー、今回もよろしく頼むよ〜、どうか前線を支えてあげてくれたまえ」
 ディアドラはそう言って笑った片手をあげた。
「それにしてもここ、冬だっていうのに暑いわねー‥‥」
「まー、場所が場所だからね〜」
「そんなものかしら、っと、はいこれ」
 冴城は水の入ったボトルを取り出すとディアドラへと放った。女少佐は「おわっと」等と声をあげつつボトルをキャッチする。
「大将が倒れちゃ締まらないからね♪」
 冴城は少佐へと片目を瞑って言った。
「おぉ、さんきゅー! 喉かかわいてたからな、有難くいただいておくよ〜」
 どうしたしましてー、などと冴城は言ってバイクが加速し土煙りをあげて戦車を追い抜いてゆく。
 まぁなんだかんだでのんびりした大隊である。指揮官の性格が出るのだろう。


 しかしそれでも戦闘開始ともなれば一気に空気が張り詰め灼熱してゆく。UPC軍が進撃しバグア軍が迎え撃ち、砲弾が炸裂して爆焔が吹き上げ両陣営がカーティヤワール半島の荒野で激突してゆく。
 複数の隊に分散しているキメラが各方面へと突撃を開始した。それを迎え撃つべく迎撃の指令を受けた傭兵達も武器を手に駆け出してゆく。
「‥‥うわ、ヤな装備ー。流石に対策立てられちゃったか」
 司令部より敵勢の詳細を受け取ってM2(ga8024)が言った。
「また厄介な所に、物騒なキメラたちが来たものだ‥‥」
 ザインフラウ(gb9550)が呟いた。
 第二分隊の正面彼方、人の女の上半身と鱗の蛇の下半身を持つ体長十mの超巨大なラミアが見えた。ブレードナーガだ。六本の腕にそれぞれ曲刀を持ち鎖鎧に身を固めている。その付近にはさらに大盾を構える十匹のレギオンウルフが展開し、その後方からは銃を手にした十匹のプロトンオークが続いて来ていた。
 なかなかの陣容である。
「なるほど。これは‥‥切り崩し甲斐がある布陣だ」
 鹿島 綾(gb4549)は敵のキメラ隊をそう評した。
「しかし、向こうも毎回良く工夫を凝らしてくるな。おかげで楽はさせて貰えない訳だが」
 白鐘剣一郎(ga0184)が微苦笑を浮かべて言った。そもそも楽して勝てるなどと考えてないので彼としては無問題ではあったが。
(うわー‥‥今度は完全武装の相手に加えて砲撃要請無理とかマジ逃げてェ)
 他方、表情には出さないが植松・カルマ(ga8288)は胸中でそんな事を呟いている。外に出さないのは「女の子達を不安にさせる訳にはいかないッスからね」という念からである。
「だんだん、戦術を駆使するようになってきたな。面倒この上ない‥‥」
 ジャック・ジェリア(gc0672)はそんな呟きを洩らしつつサブマシンガンと盾を手に駆けている。
「‥‥敵が徐々に戦術的な行動を取り始めている。前回と同じ方法は使えない、か。なぜだ。戦闘実験か?」
 レティ・クリムゾン(ga8679)は思考を巡らせつつそう呟いた。
「まあ、私達も先に進めるのには変わらない。油断せず、容赦せず、勝とう」
 判断するには材料が少なすぎる、考えていても栓は無い。結局の所そう結論付けて言った。なんであろうが勝てば良い。
「デケェ蛇だが、やるしかねぇか!」
 砕牙 九郎(ga7366)が牙を剥いて気合いを入れた。
「うん、頑張ろう!」
 M2がそれに頷く。
 傭兵達は作戦を手早く打ち合わせると、それぞれ標的を定める。
「あの蛇女は任せる。では始めようか」
「集団戦は、こちらの領分だと思い知らせよう」
 白鐘とレティが言って、一同は了解の声をあげると巨大なラミアと二十匹のレギオンウルフとプロトンオークのキメラからなる小隊を迎え撃つべく加速する。
 距離が詰まる。
 空にHWとKVが舞い、UPCと親バグア双方の砲が火を吹いて爆炎を巻き起こす。他の能力者分隊も周囲で次々にキメラ集団と荒野で激突してゆく。既に慣れつつある平野の戦だ。
 砕牙、SES武器の射程に入るよりも前にスブロフに布を詰めて作成した火炎瓶にジッポで火をつけた。レギオンウルフへと向かって五本の火炎瓶を次々に投擲してゆく。能力者の剛腕から放たれた瓶が唸りをあげて飛び、ウルフが翳す大盾と激突して音を立てて割れた。盾の表面に液体が散り引火して燃え広がる。投げられた五本のうち四本はそのまま大盾の表面を焦がすに留まったが、うち一本はスブロフが上手い具合にかかったのか盾を持つ腕から狼の毛に引火し全身へと火が回ってゆく。狼の身からFFが展開しそれでも熱さは感じるのか怒りの咆哮をあげた。火達磨になりながら突撃してくる。ナーガもまた加速を開始した。相対距離が一〇〇を切るとプロトンオーク達がウルフの陰からワーム級の破壊力を持つライフルを向け淡紅色の光線を爆音と共に猛射し始める。
「すまないが少し壁になってくれ」
「了解」
 ザインフラウはジャックの後方よりついていっている。白鐘もまたレティについて防御を任せている。オーク達は銃口を向けるとそれぞれ二匹づつで砕牙、M2、カルマ、レティ、冴城を狙い六条の光線を飛ばした。
 淡紅色の光線の嵐が荒野を灼きながら一瞬で迫り来る。
 唸りをあげて迫る光に対し砕牙は素早く身を捌いて一射をかわし、身を沈めて二発目もかわす、頭のすぐ上の空間を光が大気を灼き焦がしながら抜けてゆく。鋭く飛んで来た三条目を素早くステップしてかわすも、その着地先に光が迫り来て体躯を貫き次々に突き刺さってゆく。三発直撃して負傷率一割八分。M2もまた迫り来る三条の光を飛び退いてかわすも続く三条の光が次々に突き刺さって負傷率四割二分。M2はロウヒールを発動させる。細胞が活性化し急速に再生してみるみるうちに傷を癒してゆく。四回発動させて負傷率二割二分。他方、植松カルマは鋭く動いて二連の閃光をかわすも続く四発に捉えられる。負傷率一割一分。レティ、身を低くし盾を構えながら進んでいる。迫り来る光線に盾を翳してブロック、負傷率四分。冴城、軽くステップしながら全弾回避。
 ザインフラウ、弾頭矢を曲射で打ってレギオンウルフの後方に打ち込み爆発で体勢を崩させたい。だが、矢が迎撃される可能性がある、最悪、打ち落とされるのは避けたい。射撃のタイミングを計る。
 アルヴァイム(ga5051)は加速を開始したブレードナーガの進路や、間もなく射程に入る為ウルフの音速波について声を発して警戒を促している。
「まずはあの陣形を切り崩さないと、埒が明かない。前衛が切り込めるだけの状況を作るとしよう」
 ジャック・ジェリアはそう言った。相対距離五〇、ウルフ達が剣を振るって音速波の連射を開始し砂塵を巻き起こして前衛の五名へと衝撃波が迫り来た。
 ジャックは練力を解放しスコールSMGを構える。制圧射撃を発動、大盾を前面に集中させ固定させたい。ウルフの群れを薙ぎ払うように猛射。激しいマズルフラッシュと共に一五〇発もの弾丸の嵐を解き放ってゆく。
 アルヴァイムもまたバラキエル拳銃を構え制圧射撃を発動、ブレードナーガへと狙いをつけると轟く銃声と共に怒涛の勢いで連射してゆく。
 レティは二発の衝撃波を盾で受けて吹き散らし、砕牙、M2、カルマ、冴城は二発の衝撃波を素早く機動してかわし、鹿島もまた一発の衝撃波をかわす。
 ジャックのスコールSMGの弾幕がウルフ達が構える大盾に炸裂して火花を巻き起こしながら叩いてゆき、アルヴァイムから放たれた五連の弾丸がナーガの身へと突き刺さってその動きを阻害してゆく。M2は閃光手榴弾のピンを引き抜くと警告を発しつつナーガへと向かって投擲した。三十秒後に爆発予定。
 レティ、白鐘、鹿島、砕牙、カルマ、M2が加速して突撃してゆく。レティは前進しながらシエルクラインを構えるとフルオートで薙ぎ払うように前方を掃射した。ウルフ達へと向かって弾丸の雨をばらまいてゆく。レギオンウルフは大盾を翳して防御を固める。弾丸が盾を叩いて火花を巻き起こしてゆく。
「さて、少しは骨のある相手だといいんだけど」
 冴城は練力を全開に瞬天速と高速機動を発動、瞬間移動したが如き速度で快速一番飛び出してゆく。
「‥‥前は強固だが、後ろはどうかな」
 ザインフラウ、ウルフ達との相対距離と速度を計り呟くと洋弓「ダンデライオン」に弾頭矢を番える。弓をぎりぎりと音を立てて引き絞りながら斜め上の空へと向ける。力を調節してはっしと放つ。錐揉みながら飛んだ矢は放物線を描いて撃ちあげられ、ザインフラフは素早く弾頭矢を番えてもう一射を放つ。
 アルヴァイムは雷遁を起動させるとブレードナーガへと電磁嵐を巻き起こす。ジャックもまたSMGをリロードしつつブレードナーガへ向かって弾幕を解き放つ。蒼光の嵐がナーガの身に三度炸裂しそのチェインメイルと鱗を灼き焦がしてゆく。スコールの弾丸が蛇の下半身に次々に炸裂して鱗を爆ぜ飛ばしていった。
 やがてザインフラフが高く射た矢が前進するウルフの背面を目がけて落下した。天空より飛来した矢に対しオークは後方に飛び退くも連続で降り注いだ弾頭矢は地面に突き刺刺さると強烈な爆発を巻き起こし、ウルフEとFの背へ吹きつけてその態勢を崩させる。
 冴城、駆けつつ銀の装飾がなされた拳銃をウルフEへと向けて発砲、弾丸が唸りをあげて飛び出し大盾の表面と激突して甲高い音を立てる。弾丸を追いかけるように一気に至近まで突っ込むと高く跳躍して宙から脚甲ペルシュロンで踏み抜くように蹴り降ろした。ウルフは身を屈めながら大盾を斜め上に向けて蹴りを受け止める。顔面を狙ったが脚甲は大盾と激突して鈍い音を立てる。
「よっと!」
 冴城はバランスを上手く保つとそのまま大盾の表面を蹴りつけて跳躍した。ウルフとオークを飛び越えてその後方へと回転しながら降り立つ。振り向くプロトンオーク、その懐へと稲妻の如くに飛び込むと腹を目がけて肘を打ちつける。赤い障壁が展開して弾かれた。FFだ。オークは横に動きながら冴城へと銃口を向ける。冴城は身を沈ませてその射線をかわしつつオークの足元へと鞭の如くに下段の回し蹴りを放つ。脚甲が炸裂して強烈な衝撃を巻き起こし、冴城はその反動で逆側へ駒のように回転しながら後ろ回し蹴りを放った。踵が顎に炸裂して鈍い音と共に骨を砕かれながらオークが吹っ飛んでゆく。そのまま地面に倒れて動かなくなった。撃破。
 他方、砕牙、ナーガを足止めしたい。駆けながらアラスカ454の銃口を向け発砲。猛烈なマズルファイアと共に巨大な拳銃弾が飛び出し下半身に炸裂させる。弾丸が鱗を突き破ってその身を穿った。しかしアルヴァイム、ジャック、砕牙の射撃を受けてもナーガは止まる気配なく、蛇の身をうねらせ上半身を揺らしながら猛然と突進して来る。男は1.3mの直刀を振り上げて砕牙が迎え撃つように前進し、ナーガは身を捻って尻尾を鞭のように振るわんとする。砕牙は素早く反応するとリボルバーを向け猛射、弾丸を尾の中央に当てて勢いを弱らせその隙に回避せんとする。弾丸が次々にナーガの尾に炸裂し、血飛沫を吹き上げながらも圧倒的な質量で尾が迫り、砕牙は高く跳躍して尾の一撃をかわす。ナーガが宙の砕牙へと四本の腕で挟みこむように四本の曲刀を振るい、カルマがナーガの尾へ向けてブラッディーローズの散弾を撃ち放った。
 砕牙は宙で曲刀の一本を剣で受けつつも三本がその身に直撃して轟音と共に装甲が陥没してゆく。散弾がナーガの尾に直撃して鱗と肉を爆ぜ飛ばし鮮血と共に壮絶な破壊力を撒き散らした。ナーガは叫び声をあげて態勢を崩しつつも落下してゆく砕牙へと向かって残りの二本の腕で曲刀を振り下ろす。砕牙は身を捻りざまに宙で刀振るって二本の曲刀を受け止める。弾かれるように下方へ叩きつけられ足から地面に着地、大地がその勢いで爆砕されてゆく。
 その隙にM2、槍の間合いへと踏み込んでいる。練力を解放して急所突きを発動、大地に縫いつけんと体重を乗せて細くなっている尾の先端へと振り下ろす。穂先が鱗を破って貫通してゆく。
 カルマ、最も警戒するのは尻尾での巻きつき拘束だと考える。故にまずは尻尾を優先してぶった斬らんとする。最上段に魔剣ティルフィングを振り上げて飛び込むと、先に散弾を叩きこんだ箇所を狙って振り降ろす。落雷の如くに剣が一閃され泥の如くにナーガの強靭な鱗と厚い肉を切り裂いてその奥までを抜けて大地を爆砕する。盛大に鮮血が噴き上がってナーガの尻尾が両断される。叩き斬った。強化タロスの斧槍に勝る破壊力。本当に人間か?
 他方、
「逃げ腰だな。そんなので大丈夫か?」
 横方向へと機動してゆく左端のウルフとオークを見やって鹿島が言った。距離を保とうとするウルフの動きを逆手に取り、オークの味方への射線を塞ぐ様に誘導せんとする。女は疾風の如くに踏み込むと右手に構える天槍ガブリエルを真っ向から繰り出した。閃光の如く放たれた穂先にウルフは反応すると大盾を翳して受け止める。瞬間、鹿島は剣劇と流し斬りを発動、側面へと踏み込むと左の天槍で流星の如くに突きを連射する。穂先がレギオンウルフの脇下、脇腹、腰、側頭部を捉えて一瞬で爆砕した。凶悪な破壊力。赤い色をぶちまけながらレギオンウルフが倒れてゆく。
 ウルフAを打ち倒した鹿島は槍を振り払いオークBへと素早く駆けてゆく。ウルフBが間に入って剣を振るい音速の衝撃波を巻き起こした。鹿島は突撃しながらステップして音速波をかわすと左の天槍を繰り出す。ウルフが大盾を掲げてガードし、瞬間流し斬りと剣劇を発動、稲妻の如くウルフの側面へと踏み込むと右の天槍を烈火の如くに振るってウルフBもまた爆砕した。
「良い盾だな。感心する。だが無意味だ」
 白鐘は味方の弾幕を悉く弾き飛ばしているウルフの大盾を見やって言っていた。
「何故ならば、構えるだけで防げる程俺たちの攻めは甘くないからだ。これがな!」
 黄金の闘気を纏った男は練力を全開にすると流し斬りを発動、加速してウルフFの側面へと飛び込む。レティはシエルクラインの銃口をウルフFへと合わせると大盾を移動させぬように猛射。ウルフは銃弾の守備の為に盾を動かせず、その隙に白鐘が陽炎の太刀を一閃させた。真紅の光が奔り抜け一撃でレギオンウルフが肩から深く切断されて倒れてゆく。
 白鐘はウルフGへと向かって突撃し、レギオンウルフは迎え撃つべく剣を振り降ろして音速衝撃波を発生させる。
「天都神影流・流風閃っ」
 円を描く軌道で衝撃を回避しつつ横手に踏み込み、レティがシエルクラインで猛射し、白鐘が太刀で薙ぎ払う。ウルフは素早く反応して大盾を翳して太刀を受け止める。轟音と共に壮絶な衝撃が炸裂して火花が散り、レティからの弾幕がそのまま襲いかかって蜂の巣になって倒れた。白鐘は月詠を大地に突き刺すと倒れたレギオンウルフが持っていた大盾を素早く拾い上げてかざす。ウルフHIJから音速の衝撃波の嵐が飛び、白鐘が拾い上げた大盾に激突して次々に吹き散らされてゆく。白鐘、無傷。良い盾だ、と改めて感心しつつそれを手にさらに疾風の如くウルフHへと突撃してゆく。流し斬りからのフェイントや方向転換などを交えて烈閃を巻き起こすがそれはレギオンウルフの構える大盾に悉く止められて弾かれた。一人で破るにはコツが要りそうだ。
 冴城、オークFへと向かって淡紅色の光線をかわしながら突っ込んでゆく。
「陸戦HWワームの比じゃないわね、豆鉄砲じゃ私は殺せないわよ?」
 低く踏み込んで閃光をかわしながらオークの懐へと飛び込むと、サマーソルトで後方へ回転しながらその顎へと足裏を叩きつけて骨を粉砕する。よろめくオークへとステップするとその腹目がけて中段蹴りを繰り出した。稲妻の如くに足が突き刺さって血反吐をぶちまけながら緑鬼が崩れ落ちる。冴城はさらにオークG、Hへと突撃して次々に蹴りの連打を浴びせて打ち倒す。
 白鐘はオークとウルフからのプロトン砲と衝撃波をかわし、あるいは大盾で受け、ウルフHへと突っ込んでゆく。レティは白鐘がウルフの側面へと踏み込むのに合わせてシエルクラインで猛射、盾の位置を固定させると白鐘が太刀を一閃させ泥でも叩き斬るかの如く一撃で斬り倒す。二人で連携してウルフIJも瞬く間に打ち倒すと、白鐘はオークJへと猛然と迫ってこれも太刀を袈裟に振るって一撃で斬り倒した。
 ジャック、担当はウルフだが、単独で別行動する敵を確実に排除したくまた前衛が前方に集中できるよう敵の位置を調整したい所。盾を失ったオークBへと狙いをつけるとスコールSMGで猛射して蜂の巣にして倒し、続いて鹿島の背へと猛射しているオークAへもリロードしつつ弾幕を叩きこんで荒野に沈める。
「あまりものだ、持っていけ」
 ザインフラウは弾頭矢を番えるとレギオンウルフCの頭部へと狙いをつけて発射。回転する矢が唸りをあげて飛びレギオンウルフは素早く大盾を翳して矢を受け止める。爆裂が巻き起こり、その隙に横手に踏み込んだ鹿島が天槍を一閃させて打ち倒した。
「御大層な盾だが‥‥本人の方は脆いな」
 呟きつつ音速波とプロトン砲をかわしながらウルフDへと向かう。ザインフラウが再度弾頭矢を撃ち放って爆裂させ鹿島が横手に入って槍を振るって突き殺した。
 アルヴァイムはバラキエルをリロードすると制圧射撃を発動、前衛達の合間を縫ってナーガの巨体へと狙いをつけると拳銃を怒涛の勢いで五連射して銃弾を叩き込みその動きを阻害してゆく。
 制圧射撃で動きが制限されているのを見るとカルマはすかさず剣の紋章をティルフィングへと吸収させた。両断剣・絶だ。
「パワーだけは人十倍! 受けれるモンなら受けてみやがれェ!」
 颶風を巻き起こし竜巻の如くに長さ1.4mの両刃の直剣を振り抜く。刃がナーガの胴に直撃しチェインメイルを紙の如く切り裂いてその奥の身をかっさばきながら抜けてゆく。赤い色が滝の如くにぶちまけられる。一撃だけなら竜王殺しのKVと同等クラスの破壊力。アリエンだろうというレベルの剛剣だ。
 鬼神の破壊力に態勢を崩しているナーガへとM2は練力を全開に両腕を輝かせてブレイクロッドを叩きつける。出し惜しみは無しだ。
「回復はさせねぇよ!」
 砕牙、豪破斬撃を発動、切り裂かれた鎧の避け目へとアラスカの銃口を押し当てると猛連射。破壊力が増大された凶悪な弾丸が次々にナーガの身を次々にぶち抜いて奥まで貫通して抜けていった。駄目押しとばかりにアルヴァイムが電磁嵐を叩き込み、ナーガが鮮血を吐きだして瞳から光を消す。手から六本の剣が零れ落ちて糸が切れたように大地に倒れた。撃破。
 その後、M2が投擲していた閃光手榴弾が炸裂しナーガを盾にしようとしていた砕牙を巻き込んだが既に大勢は決していた。
 ジャックと鹿島が連携してウルフを打ち倒し、ザインフラフが弾頭矢を連射してプロトンオークCを爆砕して屠り、オークDは冴城の脚が唸って荒野に沈んだのだった。



 戦後、冴城は、荒野に打ち捨てられたバグア軍の戦車の残骸の上に昇り、ぼんやりと夕陽を眺めながら日本酒を一献やっていた。
「はー‥‥一人で酒飲むのも悪くないけど‥‥相手が居ないと寂しいわねぇ‥‥」
 景色は赤い。
 荒野を風が一陣、吹きぬけていった。



 かくて、傭兵第二分隊の活躍によってブレードナーガと十体のレギオンウルフと同じく十体のプロトンオークからなるのキメラ隊は殲滅された。
 他の傭兵隊も無事にキメラの小隊を打ち破り、UPCの大隊はバグア軍をベラバルの野で打ち破って勝利を収めた。
 ベラバルの戦いに勝利したディアドラ隊は余勢を駆ってバグア軍を追撃して撃破し、ベラバル市を陥落させ、また新たにカーティヤワール半島にUPCの旗を立てたのだった。







 了