●オープニング本文
前回のリプレイを見る「生きていた‥‥か」
海軍ファラン・サムット少尉は、艦橋から海を見る。
安堵したのもつかの間だった。
純粋に、生きていてくれた事は嬉しいがと、軍上層部は苦笑いを浮かべた。
それにより、一気にバグア基地の殲滅が出来なくなったのも事実だからだ。
力押しをすれば、傭兵達の手を借りて、叩き潰すに時間はかからなかったろう。
僅かな犠牲で、最大の戦果を上げるのか、それとも、多大な時間と労力を使い、二名のパイロットを救出するのか。
今までのタイ軍ならば、迷う事無く、バグア基地を襲撃しただろう。
しかし、今は気風が変わってきている。
大勢を占めたのは、救出に全力を尽くす事。
艦に呼び寄せた傭兵達を思い、ファラン少尉は帽子を脱ぐと、撫ぜつけたオールバックの髪を、さらに整えて、軍帽を被り直した。
「事務官殿か」
「はいですの。そろそろ、ブリーフィングのお時間ですの」
「ん、了解した」
出撃前の傭兵達の顔を見る為に、ファラン少尉はKVが並ぶ甲板へと踏み出していた。
「さらなる探査‥‥二度目は、一度目に比べて、向こうも何かしら準備をしているはずだ。くれぐれも気を付けて欲しい。何かあるようならば、自らの身の安全を最優先に。捕虜となったパイロット二名は、君達が犠牲になったと知ればきっと悔やむ」
綺麗な敬礼を傭兵達へとファラン少尉は送った。
タイ軍KVが彼等を乗せて行き、問題の海域近くで降ろす事になっていた。
島は、徒歩で30分もあれば回りきれるほどの小島だ。
その小島の怪しい所ならば、上陸すればさほど探さなくても何か発見する事が出来るかもしれなかった。
タイ軍パイロットが捕虜になっているのは、サイコロの五の目を模したような島。
海流が激しくて、漁師たちが好まない海域。
しかし、能力者であれば、その海流はさほど問題の無い場所である事が確認されている。
中心の島の海中に、島を囲むように施設と思しき建築物。
そして、中心の島から、海底を通り、四つの島へと何かがある。
五つの島全てに、カムフラージュされた区域があり、その区域の詳細は不明。
ジャミングは中心の島から出ているようだという事。
捕獲されたKVリヴァイアサンは、中央の島の海中にある施設のドッグのような場所から現れた事。
それが、わかっている事の全てだった。
●
魚人バグアが、問題の島の海上にぷかりと浮いて、太陽の日差しを浴びながら、ぶつぶつと語り合っていた。彼らの姿は、頭から背中を通ってヒレがあり、尾が伸びている。パッと見、トカゲのヒレ付きのような姿だが、みっちりと青緑の鱗で覆われ、白銀の腹は固そうな皮膚。ぽっこり出ている奴や、ぱっくり腹筋の割れている奴やら太め細めと様々に居る。
「どんくらい時間稼げたと思う?」
「せやなあ、せめて後一週間ぐらいは待っててほしい気ぃもすんねんけど」
「どう出るかわからんのが、人類やしなあ」
「せや。いっつも思いもよらん事しよる」
「ま、あれやな。どないもこないも無いやろ。KVの姿見たら、人質一人連れてリヴァイアサンで出てくし」
「せやな。自分らの手で同朋殺しをしてもらおやないか」
魚人キメラはぎょろりとした目で笑い合った。
海中で1:1で戦えば、傭兵がいかに強くても、バグアに軍配が上がるはずだった。
タイ軍パイロット二名は、一部屋ずつ、離れた場所に監禁されていた。
薄暗い廊下の端と、比較的明るい場所の二か所だ。
明るい場所に閉じ込められているパイロット、ウィーラ・レックングンは、しっかりと食べ、寝て周囲の状況を確かめていた。静かな場所だった。まるで、遮る音が無いかのような。幸いにして、廊下から、自然光が入ってきていた。朝と夜の時間が測れるのはありがたい事でもあった。
(いっそ死んでおけばよかった所だが‥‥)
こうして生き延びたからには、少しでも情報を得て、帰還しなくてはと思う。
一度、顔を見せたバグアは、不定期に顔を出す。
元気か? ならええ。と、なまりのある言葉で告げると、立ち去る。
次第に、ぽつぽつと会話が成立していっていた。
「‥‥何時までというのは聞いてはいけないのだろう」
「出る時は、死んでる時やで? もしくは死なないとあかん時や」
「まあ、それが普通だろう」
「あんさんは大人しゅうしとってや?」
「?」
「もひとりさん、見とらんと、何時か自分で死によるさかい」
細見のバグアだった。
薄暗い中、ポーン・キングペットは、始終、バグアが側に居た。
もとい。暴れているので、バグアが助けにやって来ていたのだ。
「あんなあ、もちっとのんびりしててんか?」
「ざけんなーっ!! 出しやがれっ!! 出せないんなら、殺しやがれっ!!」
「あー。あんさん自分の立場っちゅうもんをやな‥‥」
「知ってるっ! 舌噛んだって死ねないからなっ!」
「せやからって、額がんがん打ち付けたら、そりゃいつかは死ぬで?」
「あー。本望だし!」
小太りのバグアが、やれやれといった風に、額の手当てをしている。止血して包帯を巻いて、軽く叩く。
何度か抜け出そうと過激な行動をしたのだけれど、何と言っても相手はバグア。
瞬く間に後ろ手を取られて、喧嘩にもならない。
「あんなあ、ここ抜けても、エレベーターやらで、海上近くにいかんとあかんのやから。あんさん一人対、五人のバグアやで? あきらめえや」
「嫌だっ!!」
「終いにゃ、放っとくで?」
「してみろっ!」
「できへんなあ、大事な人質や。せやけど‥‥わしらが虐待したみたいやんか。もう止めてんかっ?」
「嫌だっ!」
「あーもー。大事にしたないのに」
数時間は睡眠薬の投与で眠ってくれているのだが、起きている間はとりあえず、一人のバグアがつきっきりなポーンであった。体調を考え、眠らせっぱなしといかないというのが実に悩ましいようすであった。
●リプレイ本文
「ええと、一応捕虜を取り返す方向で動きますんで」
高く結わえたポニーテールがお辞儀でさらりと揺れた。平坂 桃香(
ga1831)が概要をファラン少尉へと告げ、脱出の際、上手くいったら、捕虜となった兵も連れて帰る為、バックアップを願い出たのだ。
「無理はしないで欲しいが」
「もちろんです、ご懸念には及びません」
「‥‥すまん」
「いえいえっ」
にこりと桃香は笑い、踵を返す。
「万が一という事もありますので、よろしくお願いします」
「了解しましたの」
丁寧なお辞儀をする櫻小路・なでしこ(
ga3607)へと、深々とお辞儀返しをするティム。
万が一など無いに越した事は無いのだけれどと、なでしこはダーオルングからの援護を取り付けた。
●
KVにゆっくりと牽引されて行く。
問題の島近辺へと到着した傭兵達は、二人一組で、五つの島へと向かい、慎重に泳ぎ始めた。
桃香は、手にプラカードのようなものを持っていた。
それには『交渉がしたい』と、書かれている。
「こちらティルコット、バグアの島への潜入に成功した‥‥なーんちって!」
ざぶりと、島へと上がったティルコット(
gc3105)は、ちょっとばかり白い歯が光ったかのよう。
「探査の眼でお宝発見、色々発見‥‥あれ」
スキルを変えて忘れた事に気が付いたティルコットは、かしかしと頭をかく。
「何というか‥‥カメラとか、堂々とあったりしますねえ」
問題ないようだと、桃香は、ティルコットへと向かい頷く。何しろ、島中央へと向かう箇所におざなりに隠したような形で設置されていた監視カメラは、丸見えと言っても良い。
それへと手を振りつつ、桃香はプラカードを掲げてみせる。
草葉の陰から、がさりと出てきたのは、普通っぽい体系の、魚人バグア。
「ほんま、どーどうと、侵入してくるやないか」
「交渉したかったもので」
「交渉ってのは、出すカードがある奴が言うねんで? あんさん達に何があるっちゅうねん」
「実はですね」
桃香が声を潜める。
「何や」
「軍上層部にも穏便に済ませたい派と、急戦派みたいなのがありまして」
「‥‥」
「うち、急戦派が、人質はブラフで、実はもう死んでいるはずだから、この島を攻撃すると言っている訳です」
「何やてーっ?! ちゃんと二人とも無事やて、言うたやんかっ!」
「ですから。勢いの強い急戦派を黙らせるために、一人返して欲しいなと」
「‥‥情報だけで、一人返せ言うんか?」
渋面を作った、バグアに、桃香がですよねえと頷く。
「虫の良い話だとは思います。でも、この情報が真実なら、人質ごと、攻撃されるなんて事になりますよ」
「‥‥人類っちゅーのは、仲間大事な種族やないんか‥‥」
「ま、いろいろです。どうでしょう?」
痛い所を突かれたようだった。
ちょっと待てと、海へと飛び込んだバグア。
その隙に、ティルコットがどうやら施設への入り口と見られる場所を発見した。
直径1m程の、ハッチだった。
鍵でもかけてあるのだろうか、開かなかった。
近づかれたくないから、人質を取った。そのバグアの言葉を、大泰司 慈海(
ga0173)は反芻していた。キメラプラントの他にも何かあるのだろうかと考えるが、それならば、うっかりがデフォのバグアがぽろりと漏らさないはずもない。
島と海のさかいには、何もないだろうかと、辻村 仁(
ga9676)は慎重に確かめる。中央の島の様な施設は無いが、排気口のようなものを発見した。
それは、この島の何処かに施設があるという事に他ならない。
「色々、隠してそうですね」
仁が慈海へと伝え、しっかりと記憶する。
何かあるにしろ、それは、島の大きさから言って、小さな物だろう。
「あの辺だったよねえ」
慈海は、上空から見た場所へと、灌木や雑草をかき分けて進む。
直径1m程の円形のハッチの様なものを発見した。
「施設の入り口と言っていいでしょうか」
「だねえ。あ、カメラだ。やっほー☆」
「潰しておきます。万が一の事があれば‥‥突入したいと思います」
「えっ?!」
「無理には行きません」
「良かった〜。でも、確かに、中、見てみたいよね」
仁の提案にぎょっとなった慈海は、安堵の息を吐く。
カメラは、次の機会があればまた増えているだろう。だが、今、こちらの動きを丸まま伝えるのもどうかと仁は様々に思いを巡らせ、カメラを破壊した。
ハッチは能力者の力をもってしても、開かない。
ここを使用するのならば、それなりのスキルを乗せた攻撃が必要になるかもしれないと仁は思った。
「流されないよう気をつけていきしょうっ」
慎重に慎重を重ねた泳ぎと装備で、ヨグ=ニグラス(
gb1949)は海中を行く。
「中々に、早い潮ですが、泳ぎ切れそうですね」
如月・由梨(
ga1805)が頷く。
(はぁ‥‥人質ですか。この前の時の反応と言い、私とあまり相性の良くなさそうな相手ですね。何だか絡め手ばかりで、牡羊座と似てなくはない、でしょうか。ともあれ、何とかして救出しませんと)
やっかいなと、は嘆息しつつ、島へと上がる。
多少小太りなバグアが、上陸地点で、岩を盾にするかのように、顔だけ出して待ち構えていた。
「何しに来たんやっ!!」
恐々と叫ぶバグア。
「ふふっ、陸でならいくらでもお相手できますよ‥‥? とは言え、今日は戦うために来たわけではないですけど」
「ま、ま。あのですね、交渉に来たので、お話したいなーとか思うですよっ」
「交渉やてぇ? ビーチにどえらいデカい武器持ち込むような奴と何話せっちゅうねん」
顔だけ出したバグアが、がうがうと言わんばかりに叫ぶ。
「ま、ま。とりあえず、話だけ聞いてくれませんかっ?」
とりつく暇もなく、帰れと叫ぶバグアへと、ヨグが宥めにかかる。
「むぅ‥‥私も嫌われたものですね」
口元に拳を当てて、由梨は軽く眉を顰める。
「あのですね」
ヨグは、空母で桃香から聞いた交渉案を練習していた通りに切り出す。
「‥‥何の証拠もない情報に、こっちから一人ぶんどるっちゅーんか」
「偉い人には何かないと駄目なのっ」
世の中の偉い人の相手は大変なのだと、盛大にため息を吐くヨグ。
すると、バグアは、何か通じるものがあったらしい。
せやなあと溜息で応じ、少し待つようにと言い、海中へと飛び込んだ。
「‥‥着陸は、通常機では出来なさそうですが」
垂直離着陸ならば可能な場所はありそうだと、由梨は頷く。探査の目を発動させるが、罠らしきものは無い。粗雑に木々で覆った、ハッチのような入口が地面にとりつけられているのを発見する。直径1m程だ。ぐっと引いてみるが、開かなかった。
「入口といったらカメラです」
やっぱりありましたと、ヨグが頷く。
発見したそれを壊すかどうか悩むが置いておく。交渉をしていなかったら、壊していた。
島に上陸した威龍(
ga3859)は、辺りを見渡す。
「敵に捕虜が居る以上、あまり無茶の事も出来ないしな」
バグア側に気取られぬようにと気を配って進む。
突破口を見出す為にも、慎重にと。
カメラが周囲を見渡している。
なでしこは、そのカメラをじっと見た。
もしも、カメラを見て、バグアが現れるのならば、相談で決定した交渉が上手くいくはずである。
パイロット二名の生存は確認できている。
出来れば、二名のパイロットを交渉で連れ帰る事をしたい。
ならば、まずはバグアに会わなくてはならないと。
威龍は、カメラがある地面にぞんざいに隠されたハッチを見つけた。
直径1mほどのそれは、尾しても引いてもビクともしない。
「‥‥ここから中に入るとすれば、破壊しかないだろうな」
小さく呟く威龍。
「‥‥ジャミングが強いですね」
島に上陸してから、無線が使えない。
中央の島から、強いジャミングを発せられていたのは、先の依頼で確認していた。
上空と海底からとはまた違うようで、島づたいでも、小型無線程度では、仲間との会話は不可能のようだった。五つの島で同時に何かを成そうとすれば、綿密な行動のすり合わせが必要であるようだった。
ざばんと上陸した鯨井昼寝(
ga0488)は、細身の魚人バグアを見て、何となく反射的に青筋が立ちそうな気がした。だが、表立っては努めて平静に近づいて行った。
「あんさん達、何しに来てんねん。人質がどうなってもええっちゅう腹かい」
「違うわ。交渉に来たの」
探査の目を発動させているのは、リュティア・アマリリス(
gc0778)。
昼寝に何も罠は無いという意味で目くばせを送っている。
「交渉すんのは、こっちが主導ちゃうか? あんさん達人質大事やろ?」
ちらりと、覚醒をしているリュティアを胡散臭そうに見、伺うようなバグアに、昼寝は軽く息を吐く。
「そうだけど、そうでない人も居る訳」
「‥‥バグア無視するあんさんみたいにか」
「そうとってもらっても構わないわ」
桃香が発案した、『軍上層部の強行を止める為に、一名の開放を求める』そういう意味合いの言葉を投げれば、バグアは盛大に溜息を吐いた。
「ま、同じ種族でもいろいろおるさかいなあ、そういうんがおっても不思議や無いか‥‥」
「どうなの?」
「ちょっと待っとってや。話し合いしてくるさかい」
頷く昼寝とリュティアを背に、ぶつぶつ言いながら、バグアは海中へと飛び込んだ。
その合間に、二人は島を探索する。
おなざりに隠されたハッチを発見した。直径1mほど。
これを開けるには、かなりな力の発動が必要のようだ。
「無闇に突っ込む事は出来ないわね」
昼寝が呟いた。
●
「3つ‥‥人ほどの大きさ。待って‥‥6つ‥‥」
バイブレーションセンサーを発動していたリュティアは、この島の下から伝わる人程の大きさの居場所を知る。地下10mも無い場所だろう。海側から入ったらしきバグアと思しき気配と、地下から地上へと向かうように接近する気配を感知していた。
「人質、連れてきてくれるみたいね」
昼寝が油断無く周囲を見渡す。
ハッチが開いた。
ぐるぐる巻きになった、若いパイロットが、トカゲバグアに引かれ、押しやられて現れた。
二体のバグアは、両脇から若いパイロットを抱えて、げんなりとした顔をしていた。
「‥‥人類程度に捕虜の扱いをするって言ってたわよね?」
バグアの数が増えている事に、昼寝は内心で舌打ちする。
騒ぎを起こそうと思っていたのだが、これでは不味い。
「しとって、この様やさかいっ! ええか? このお人が死のうとするんを何度助けたかしれんのやからなっ!!」
キツイ目をした若いパイロットは、昼寝とリュティアを見て情けなさそうに顔を歪めた。
ポーン・キングペット。前回、軍に問い合わせていた人物像と重なった。
捕まったという事実から導き出される事態に我慢がならなかったのだろう。
「もう一人は、こんな状況になってないでしょうね?」
「もうおひとりさんは、大人しくて助かっとるし。こん人みたいに最下層で見張らんでもええから、楽や。っちゅうても、あれやで? わしらも朝昼晩三回は食事やらなんやらで見に行っとるんや。体調管理は万全やからなっ!」
「元気な訳ね?」
「ったりまえや。こん人が異常なだけやっ!」
何度か遭遇した昼寝は口の軽さは十分に知っている。だが、具体的な質問を投げなければ、これ以上の答えは戻らないようだ。十分だろうと昼寝は内心で頷いた。
「仲間に連絡だけさせてもらうわよ?」
「攻撃せんのやったらかまへんで」
照明弾が、中央の島から打ち上がった。
島のマッピングをしていた由梨が顔を上げる。
ヨグは、撤退準備を始める。
「二名のうち、どちらでしょうねっ」
もしも、一名だけ助かるのを良しとしないようならば、何とか説得を試みようかと思う。
「行こっか」
「了解です」
慈海が頷き、仁が立ち上がる。
「成功っ!」
「ですね。帰りましょう。多分、これが上出来のはずです」
ティルコットがガッツポーズをするのに、桃香が頷く。
バグアと遭遇したAとCの島班は、海から顔を出した先ほどのバグアが、中央に送り届けたから、もう帰れと言う言葉に頷き、撤退を開始する。遭遇しなかったBとDの島班も、探しうるだけの情報を手に海へと飛び込んだ。
「怪我をしています。補助お願いします」
なでしこは、通信が出来るようになった区域から、KVへと連絡を飛ばす。
「大怪我じゃない!」
慈海は、海で邂逅したポーンへと、錬成治療をかける。
おかげで、KVまで何とか共に泳いで行く事が出来た。
引いてきたKVがコクピット辺りを浮上させ、ポーンを補助席へと押し込む。
真っ青になり死にそうな顔をしているポーンは唇をかみしめている。
「‥‥ポーンさんはウィーラさんの事、知っているのかな?」
空母に戻ったポーンへと、ヨグが声をかける。
ポーンは力なく、首を横に振った。
タイ軍のパイロット仲間が数名軽く声をかけ、そのまま医務室へと運ばれていった。
五つの島には、監視カメラが数台づつあり、その近辺に、直径1mの出入り口。
トカゲバグアは海中からも出入り自由。
中央の施設にどうやら捕虜は囚われているようで、それは、比較的地上に近い場所。
リュティアの探査後、動きが無ければ、その位置は特定出来た。
一名のパイロット救出。
その報にタイ軍は軽く沸き立った。
士気が上がる。
この機に乗じて、もう一名の救出を兼ねた、大攻勢をかける事が決定した。