●リプレイ本文
●視聴注意
シルバー・クロウが妖艶に微笑みながら言う。
「警告します。部屋を明るくして離れて見るのですよ。でなければ、あなたは永遠の闇に閉ざされる事でしょう」
●Aパート
「まったく強化だか新型だか知らないが我々も嘗められたものだな。ここは一つ我らの本気と言うものを見せておく必要があるか」
バグラム基地。ルーイ(
gb4716)は一人そう言うと、戦闘員に「例のキメラを出せ。3−B地区あたりに出現させて暴れさせろ」と命令して部屋を出て行く。
(「それにしてもシルバー・クロウ、作戦前に再洗脳が出来ればよかったのだが、妙に警戒をされていたな。もしや、洗脳が解けたのか? 姿が見えないのも気になるしな‥‥」)
歩いていくルーイの前に烏丸 八咫(
gb2661)演じるシルバー・クロウが音もなく姿を現した。
「ルーイ、例の巨大キメラを出すようですね。私はキメラ襲撃に乗じて街の占拠に取りかかることとします。異存はないですね?」
「はっ‥‥」
(「この女‥‥やはり監視をせねばなるまい」)
ルーイはそう考えながらキメラを出撃させる準備に入った。
(「やはりルーイは私を監視するようですね。それにしても、私に何があった? 洗脳されたときの記憶はあやふやだ。ただ、ニュクスだけでも生きて欲しいと逃がそうと‥‥それからのことは覚えていない。あの子は気が付いていない私が姉と言うことを‥‥いや信じたくないのかも知れない‥‥私に一体何が‥‥」)
ウレキサイト(
gb4866)演じるウルの経営する喫茶店にドラグナイツの面々が集まっているが、いつもならいるはずのドニー・レイド(
gb4089)演じる藍祥龍(ラン・シャンロンの姿がなく、ウルは何かそわそわしている様であった。ふと電話がかかってきて、それをキャプテン・エミター(
gb5340)演じるニュクス・アイオーンが受けた。
「はい。え、祥龍さん? 店の裏ですか? わかりました。すぐにウルさんを‥‥」
電話を切ったニュクスは、ウルに祥龍が店の裏で待っていることを伝えるとこっそりと自分も裏口にまわった。
祥龍は店の裏にバイクを止め、帽子までかぶった制服姿で緊張しながらウルを待っていた。懐には何か小さな箱。
「病院でお話したいことがあるとおっしゃっていましたが‥‥」
ウルがそう切り出した途端、残酷な運命はキメラの襲撃を告げる。
祥龍は一瞬残念そうな顔をしつつもウルに謝る。
「すみません。バグラムが来たようです。続きはまたあとで」
バイクに跨りエンジンをかける。
「戻られたらお話があります。必ず無事に戻ってきてくださいね」
ウルは涙を浮かべながら、それでも引きとめようとはせずに、走り去っていく祥龍を見送った。
そしてニュクスも泣いていた。
「‥二人が上手くいって嬉しい筈なのに‥なんで‥」
それは己の心をまだ知らぬ子供故の未熟だった。
『UPC各部隊は付近の住民の避難を』
『了解』
祥龍が無線用のインカムで指示を出す。そして一足先にキメラの元にたどり着く。
「街中に巨大モンスターだと‥これは悪い冗談か、ルーイ‥ッ!?」
祥龍は驚きながらも冷静な思考を走らせる。
「こいつの被害を食い止めるにはバリアーを‥‥確か技術陣が開発していたな」
『こちら藍・祥龍、バリア発生装置をフットボール場に運び込みそこにこのキメラを誘導する。そこでなら気兼ねなく戦えるはずだ』
『技術班了解。AUKVを輸送後直ちに設置に入ります』
『頼んだぞ』
『はい』
そして――
サイト(
gb0817)演じるイアン・ソルトは新型AUKVを載せた装甲輸送車両を喫茶店の前につけると、喫茶店の中にいるドラグナイツたちに声をかけた。ちなみにYシャツとネクタイの上に白衣と言う姿である。
「3−B地区に巨大キメラが出現しました。近くにフットボール場がありますので、そちらへ誘導して下さい。それから、これはドラグナイツ用の戦闘服です。これに着替えてください」
そういって戦闘服を手渡す。
「了解! 今度は負けないわよ」
サラ・ディデュモイ(gz0210)演じる藍・カレンが戦闘服を受け取って店の奥に入る。
「今度はこの間のようにはいかない‥みんな、行きましょう!」
チェスター・ハインツ(
gb1950)が物陰で着替える。
「あの、あなたは?」
着替え終えた月影・白夜(
gb1971)がイアンに尋ねる。
「これの開発者の上司です。カレン君の物はスピード、チェスター君の物は命中力、そして白夜君の物は装備力とそれにともない防御力が、それから‥‥」
「ニュクス、準備完了です」
着替え終えたニュクスが走ってくる。
「ニュクス君のは攻撃力が強化されています。申し訳ありませんが細かい部分は戦闘で感じて下さい」
『はい』
全員が答える。そして白夜はイアンに博士の事を聞き、身を案じる。
「分りません‥この手紙を残して‥通信機等も全て部屋に残されたままなのです」
手紙には探さないで下さいとだけ書かれてあった。
「大丈夫でしょうか‥‥」
「わかりません。私は先にフットボール場に向かいます。皆さんはキメラを誘導しながらフットボール場へきてください」
「了解です。新たな力‥やつらに見せてあげましょう」
「ドラグナイツ、出撃せよ!」
『了解』
イアンの言葉に唱和し、ドラグナイツたちは発進し、街を疾走していく。
そして3−B地区にて、双頭の竜型の二足歩行キメラを発見したのである。
「わお、映画みたいね」
カレンが場違いな感想を漏らすと、キメラはこちらに気がついたのか片方の顔をこちらに向けて口から火の玉を吐く。
「うわっ!」
チェスターが慌ててよける。
「なんだよこれ!」
「‥‥本気で映画‥ですね」
白夜が呟く。
「来たかドラグナイツ。いま技術陣がフットボール場にバリア発生装置を設置している。君たちの任務はキメラを適当に相手にしつつ、タイミングを合わせてフットボール場に誘導することだ。わかったか?」
「了解です」
ニュクスが返事をすると祥龍は配置を支持した。白夜とカレンがキメラの前、チェスターとニュクスが後ろだ。そしてドラグナイツは配置につく。
「ソルト博士、設置率80パーセント。作業は順調です」
部下の作業員が報告をする。
「間も無くキメラがここに来ますっ! 急いでください!」
「了解です!」
(「落ち着け‥‥何をあせっている」)
チェスターはバイクを動かしながらも何がしかの不安を感じていた。だが新型のAUKVを見て気を落ち着ける。
(「思い出せ、あの特訓を‥‥」)
「ステータス、オールクリア。コンディショングリーン。いつでもいけます」
「あたしもいけるわ」
「僕も‥‥」
「私もいけます」
「よし、ドラグナイツ、発進!」
祥龍の指示に従って竜たちは翔る。
白夜がAUKVに接続されたガトリングガンでキメラの注意をひきつける。カレンがキメラの吐き出した火球を避ける。ニュクスとチェスターがそれを追いかけて誘導する。
「挙動が前より重いけど‥大丈夫。僕の新しい力、使いこなしてみせる」
チェスターは新しい機体にまだ慣れぬ様子であったが、意欲でそれをカバーしていた。
『こちら藍・祥龍。現在目標はメインストリートを北上中、ポイント・チャーリー現着まで300。市民退避後の攻撃判断は分隊指揮官に委ねる、街を吹っ飛ばすなよ!」
『了解!』
「何! 誘導されている? あんな誘導に引っかかるなど、有り得ん」
最初はキメラの破壊活動を高みの見物と洒落込んでいたルーイだが、今は明らかに誘導されているキメラを見てあせっていた。
「くっ、馬鹿っ、止まれ! そんな露骨な誘導に引っ掛かる馬鹿が何処にいるんだ!!」
あせって命令を出すがキメラは命令を聞かない。
「どうなっているんだ、いったい‥‥」
バイクチェイスを空で姿を隠しながら見ていたシルバー・クロウは、弓を構えるとニュクスの進路上に放った。
「あなたの決意がどれほどの物か見せ貰うとしましょうか」
そういうと急降下して停車したニュクスの前に立つ。
「覚悟っ!」
剣を振るう。
バイクを急始動して回避するニュクス。
「ついて来なさい」
そう言って分かれ道に入るシルバー・クロウ。
「シルバー・クロウ様、何処へ!? ちっ、あの女、勝手なことを‥‥」
『皆ごめん。なぜかこいつとは決着をつけなければいけない気がするんだ』
ニュクスからの通信が皆に入る。
『‥分かったニュクスちゃん、君を信じよう。だが、駄目だと感じた時は直ぐに呼ぶんだ。必ず皆が‥俺が助けに来る‥!』
「僕も‥‥いや、追い込み役がいなくなったら作戦が成功しなくなる。僕には僕のやるべきことがある‥ここは、ニュクスさんを信じるしかない」
チェスターはそう呟くとキメラの追い込みにさらに力を入れる。
『GooDLuck』
カレンが応援する。
「頑張ってくださいね」
白夜が声援を送る。
「必ず、帰ってくる」
ニュクスはそういいながら分かれ道を進んでいく。
「ここならいいでしょう」
シルバー・クロウはそう言って止まると。ニュクスも止まってAUKVを纏う。
「力を‥‥」
光と共にAUKVが装着され、光が収まるとそこは二人だけの空間だった。
「発ッ!」
全力で打ち込んでくるシルバー・クロウにニュクスは一瞬戸惑いを覚えるが、すぐに気持ちを切り替える。
「『君がもし死んだら悲しむ』と言ってくれた人がいる。幸せになろうとしているその人の為にも、多くの人々の為にも、あのキメラは絶対に倒す! 貴女を超えてでも」
ニュクスは剣を抜かず合気道の技を使っての超接近戦に持ち込む。
「零距離ならば異空間も通用しないはず!」
シルバー・クロウの攻撃をいなし体をつかんで投げ倒す。
もろに頭から地面に叩きつけられたシルバー・クロウは血を流しながら立ち上がる。それでも躊躇する様子を見せずに打ちや突きを連続で叩き込んでいくニュクス。
「ソレがあなたの思いですか、良くここまで私を苦しませるとは‥‥成長しましたね」
意味ありげな言葉を放ち、シルバー・クロウが愛しい者を見るような表情になったそのときだった。激しい頭痛がシルバー・クロウを襲う。
「コレハ、ナンダ。私ハシルバー・クロウ。違う。エオス‥‥」
「エオス? 貴女は一体何を?」
戸惑うニュクスに、シルバー・クロウが苦しげにオシマイダと話しかけると虚空へと消えた。
「なんだったんだ一体‥‥とにかく、皆のところへ急ごう」
そういってアーマー形態を解除してバイクに跨るニュクスは、何かに思い至ったかの様な表情で「そんな‥‥まさかね‥‥」と呟いた。
●Bパート
『今ですっ! SES発動して下さい!!』
『今だ! チェスター、カレン、白夜! スタジアムの中へ飛び込むぞ!』
追い立てられたキメラがフットボール場へ入るのと同時にイアンの号令と祥龍の指令が交差する。
バリア発生装置が起動し、フッドボール場をバリアーが包む。
『これでキメラはココから出られません。皆さん、思う存分暴れて下さい!』
無線でイアンの声が入ってくる。
『『『力を!』』』
三人がAUKVに力をよこせと念じる。竜はそれに答え、光を発する。
光が収まると三人は真新しい鎧に身を包んでいた。
白夜は師から送ってもらった門外不出の竜を模した槍斧ドライグで舞うように動き、キメラに突きつけて構え「竜騎士の誇りを‥此処に‥」と言う。
キメラが叫び二つの口から炎を吐く。だがドラグナイツたちは間一髪それをかわすと、チェスターがAUKVの腕と頭部をスパークさせながらライフルで狙撃する。
「なかなか速い。だけど‥当てる!」
それはキメラの右の額に命中する。痛みでバリアに頭をぶつけるキメラ。バリアが軋む。
「今だ! ドラゴンネイル!」
AUKVの腕をスパークさせながらカレンがキメラの胴を切り裂く。しかし前脚がカレンを襲うのも同時だった。
「危ない!」
白夜が竜の咆哮でキメラを吹き飛ばす。
「あ、ありがとう‥‥それにしても、これだけ大きいと決め手にかけるわね」
「希望の欠片の完成は‥ドラグナイツが揃い完成する‥」
「何?」
尋ねるカレンに
「希望は‥必ず形を成します‥。信じましょう」
と白夜は答える。
だが、一向に攻撃が響いた様子がないキメラを見て、ルーイが
「はははっ! そんな豆鉄砲でこいつを倒そうというのか」
と、高笑いをあげる。しかしドラグナイツの中にニュクスがいないことに気がつくと、急に慌てた様子になる。
「まさか、奴と一緒にいるのか? まずい。まずいぞ、それは‥‥」
何を恐れているのか、ルーイは辺りを見回す。と、その途端だった。フットボール場の壁を越える大ジャンプでニュクスのAUKVが到着したのは。
「皆、お待たせ! さあ、合体兵装を!」
再び鎧をまといニュクスが言う。
「ふぅ‥やっと全員そろいましたね‥さぁここから反撃といきましょう!」
チェスターが安堵の溜息をつく。
「ようやくあれの出番ね!」
カレンが張り切ってチェスターとニュクスの間に立つ。
「皆さん!」
4人の武器が合体し大砲のようなものになる。だがそこに大きな隙ができる。
「いまだ、やれ!」
ルーイがキメラに命令するが、どこからともなく矢が飛んできてキメラに命中する。
「なっ!」
ルーイが矢の飛んできた方向を見ると、シルバー・クロウが第二射を構えていた。
「なっ、何をしているのですか、貴女はっ!?」
(「ニュクス‥‥あなたは、死に急ぐことだけはしないで‥‥」)
「これが私の裏切りの証。行きなさい、アルテミス!」
ビルの屋上から二本目の矢がキメラに命中する。
「今だ! 照準‥ロック‥チャージ‥3・2・1」
白夜がカウントし、ニュクスが技の名前を叫ぶ。
「機龍咆哮 ドラグーン・ハウリング!!」
粒子が砲口より発射され、キメラが光に帰ってゆく。
「馬鹿な‥俺の最高傑作がこうも、簡単に‥」
呆然とルーイは呟く。
「これが僕たちの力なのか‥‥凄いな」
そう考えながらもチェスターは、この力がバグラムに悪用されたら大変だったと少し怖くなった。
シルエットでドロマイトのみが映し出される。
シルバー・クロウのがキメラに矢を放ち裏切った様子を見届ける。
「ほぉ‥‥とうとう洗脳が解けたようだな‥‥さて、どのように始末をつけてやろうか‥」
そしてドラグナイツの必殺技が決まってキメラが崩れ去る。
全てを見届けたドロマイトは、最後に一言、こう呟いた。
「祥龍‥‥明日で‥‥全てが決まる‥いや、決めてみせる」
そしてそのままフェイドアウトしていく。
●撮影終了
「カーット!」
撮影が終了し、カメラが止まる。
「よし、ご苦労だった。さて、俺たちがロスから離れなければならなかった理由はもう皆も知っての通りだが、俺たちがロスに戻れるかは皆の腕にかかっている。頑張ってバグアからロスを守ってほしい。頼んだぞ、諸君!」
「はい!」
セルゲイの言葉に、能力者たちは思いを噛み締めたのだった。